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OTAM 65 HT – The Fastest OTAM Ever

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ラグジュアリーパフォーマンスボートの雄として、ジェノバの「OTAM(オタム)」を本誌は2015年のMillennium 58HTに始まり、
2016年にMillennium 80HT、そして2019年には85GTSを紹介してきた。
特にMillennium 80HT “Mr.Brown” は4基のMTU 1,620psとZFサーフェスドライブでトップスピード58ノットを誇るモンスターだった。
「これがpure OTAM style」とGianfranco Zanoni CEO自らがそのデビューを誇っていた。
そのOTAMが、驚愕のスピードを誇るワンオフ艇を2020年11月にデビューさせた。
COVIDで海外試乗の誘いはままならないが、現地情報をもとに紹介したい。

text: Kenji Yamazaki photo: Alberto Cocchi

“Made in Italy one off” クラス最速60ノットの純白の怪鳥

 ロングノーズショートデッキ、一見クラシックモダンなフォルムの「OTAM(オタム)」、そのDNAを引き継ぐワンオフモデルの「OTAM 65 HT」。流麗さの中にスパルタンな趣が隠れ住む。低いアフトのブルワークから伸びあがるシアーライン。深い傾斜のフロントスクリーン、カーボンルーフとクーペフォルムが60年代のスーパースポーツカーのようだ。カーボンはルーフのみならずデッキリギングにも、アンカーからトランサムプラットフォームまで随所に採用されている。カーボンは軽量化以外に、純白のハルにブラックの色彩のコントラストを作り出す。

 メインキャビン後部は仕切りを持たない吹きさらしのオープンコクピット、オープンエクスプレスへのこだわりだ。強烈なエアコンが快適を保証する。搭載エンジンはMAN V12‐2,000ps 2基、計4,000ps。ドライブはサーフェスドライブの代名詞ARNESON(アーネソン)ASD14L、ROLLA6ブレードペラ。全長20.30m、全幅4.68m、スリムだ。ハルはデッドライズ21度、張りのあるチャインとストレーキ、Umberto Tagliaviniデザインのハルはレーシングモードすら漂う。

 フロントスクリーンの下左右とバウデッキのキャノピー付け根の左右にエンジンルームへのエアインテークがある。4,000psへの酸素吸入システム、レーシングマシンを想起させる。ストイックでスパルタンとも思えるスタイリングとその存在感を漂わせる「65 HT」。トップスピード60ノット、クルージング50ノットを自負し、OTAM史上最速のみならず同クラス艇の最高速度保持艇を標榜する。

開放感あふれるサロンとアフトコクピット

 この「65 HT」はワンオフカスタムメイドとして建造され、デザイナーFrancesco Guidaのチャレンジングな仕掛けが鏤められた。カーボンケブラーのハードトップ、開放感あふれるサロンとアフトコクピット。ARNESONユニットを隠す広々としたトランサムプラットフォーム、エンジンハッチの上はサンパッドが張られ、フロアは伝統的なチークデッキではなくオランダESTHEC製のアウトドアデッキプレートを採用。サロンのウォールやルーフはブラック&ホワイトのカラートーンが生かされ、右舷にはウェットバーやワインキャビネットにバーカウンターとエンターテイメントユニットが配されている。左舷にはシルバートーンのソファにテーブルが用意されサロンゾーンとなる。

 左舷前方のヘルムステーションはブラックアウトされたカーボンの扇型コンソールにマルチディスプレイを中心に航海計器が整然と並ぶ。カーボン製のステアリングホイール、深いヘルムスマンシート、ここはまるでプライベートジェットのキャプテンシートのような錯覚を覚えさせる。右舷フロントスクリーン下にはデジタル表記のコンパスや各種データをグラフィック表示する横長のディスプレイが最新を主張する。

 一切舷窓を持たないサイドハル、ロアデッキは3ステート。インテリアはプライベートジェットからのインスパイアだ。速度をインテリアで表現するアバンギャルドな設え。サイド照明がデザイナーズルームをアピールする。カーボンを意識する白黒の配色、パールホワイトとブラックオーク、バウVIPルームはまるでコクーンの中、そのルーフはジェット機のオーバーヘッドストレージをイメージ。カーボンファイバーを含んだハイテックコンポジットを生かしたインテリアが超モダンなインパクトを与える。メインステートの設えもメタリカルでクール。ファーストクラスのエアトラベラーにシンクロする。ギャレーの大理石カウンターもブラック&グレーのストライプが入りモダンを象徴する。Francesco Guidaは「すべてがチャレンジする喜びに満ちている。新たなベンチマークとなるだろう」と自信を見せる。絶えず進化するOTAM、その歴史を垣間見る。

純粋イタリアブランド


 「OTAM」はジェノバにそのヤードを持つ純粋イタリアブランドだ。ジェノバはヴェネチア、ピサ、アマルフィと並ぶかつてのイタリア海洋国家のひとつ。海とともに発展を遂げ、現在もイタリアを代表する貿易港として知られる。

 1954年7月19日に、OTAMは4名の夢多き男たちの手で誕生した。Organizzazione Tigullio Assistenza Motoscafi(ティグリオ・モーターボート・アシスト・オーガニゼーション)の頭文字をカンティエリ(造船所)の名称とした。世界のセレブリティたちが挙って購入したカルロ・リーバ全盛期のAquaramaやOlympic等を扱うメンテナンスと販売の「RIVAボートセンター」として成功をおさめ、80年代にはマイアミのパワーボート界のレジェンドMAGNUM MARINEと提携し、25艇を地中海にデビューさせている。90年代にはOTAMブランドの45と55を建造、2006年にはジェノバ国際空港近郊に独自のヤードを新設し、Millennniumシリーズの50、58、65、80をデビューさせてその存在感を増幅させてきた。

 現在のホームポートはサンタ・マルゲリータ・リグレ。カルロリーバマリーナのラパロとポルトフィーノの間にある地中海マリタイム文化の歴史深いマリーナだ。OTAMはハイパフォーマンスボートを象徴するブランドとして進化している。強靭なハル、バキュームケブラーAramatを使い、トランサムデッドライズはクラシックディープV21度。マイアミレジェンド、ドン・アロノーのレーシングVハルはここ地中海リグリアに継承されている。

 キーンとジェットサウンドが遠くに聞こえる。トリムをゼロに、ROLLA6ペラが濃厚なリグリアの海を掻き水煙を巻き上げる。蹴りだしのトルクが強烈な推進力に変わる。35ノット何事もないクルージング、50ノット穏やかなピッチング、何のてらいもなく軽快なマニューバ。60ノットまるでジェット機! 水面を滑走する痛快至福、ルースターテールダンシングの極みを楽しむ……。
 リグリアの海や地中海のリゾートより、なぜかマイアミの妖しさが似合うと感じる不謹慎な想い。グルービーなクラブサウンドとシャンパン。ルースターテールを巻き上げながら走る華麗なマリン文化が、湘南や瀬戸内海を中心に生まれつつある。2021年エンドレスサマー、「OTAM 65 HT」、改めて日本の海に一番似合うと思い始めた。


OTAM 65 HT
全長 20.30 m
全幅 4.68 m
喫水 1.30 m
重量 32 ton
エンジン 2× MAN V12
ドライブ ARNESON ASD 14L
最高出力 2× 2,000 HP
燃料タンク 3,800 L
清水タンク 500 L
スピード Max 60+ kt
     Cruise 50 kt
問い合わせ先 OTAM
www.otam.it

PerfectBOAT 2021年9月号掲載
https://www.fujisan.co.jp/product/1281681872/b/2146809/