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ABSOLUTE Navetta 64 – The Absolute Pathfinder

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コロナ禍の中、2020年9月にデビューした「ABSOLUTE Navetta 64(アブソルート ナベッタ64)」がヨーロッパの3大アワードを受賞した。
その理由は、走りや剛性など優れた基本性能に加えて、斬新でイノベーティブなアイデア。
広大なスペースのあるメガヨットだけに許されていたエクステリアやインテリアを、64フィートの限られたスペースに取り入れたデザイン。
その先進のデザインは、次世代のベンチマークとしてヨーロピアントローラーをリードする。

text: Yoshinari Furuya photo: ABSOLUTE YACHTS
special thanks: TECNOMARE INTERNATIONAL www.tecnomare-yachts.co.jp

ヨットクラスにのみ許されてきた
“ビーチクラブ” を64フッターで実現

 ヨーロピアントローラーの中でも個性的なデザインが特徴の「ABSOLUTE Navetta 64(アブソルート ナベッタ64)」。メガヨットの機能やデザインを、64フィートという限られた空間に収め、優れたシーワージネスやマニューバビリティも併せ持つ。優美かつ斬新なそのデザインは、世界各国の専門家が評価するヨーロッパ3大アワードを受賞し、先進性や品質が認められた。

 ABSOLUTE Navetta 64が受賞した3大アワードの一つが「Best of Boat Award」。ポーランド、オランダ、USA、ロシア、ドイツ、フィンランド、UK、スペイン、オーストリア、イタリア、スロベニア、デンマーク、ウクライナ、ギリシャの14か国、17のボートマガジンのエディターやライターにより投票されるアワード。「Beginners」、「Family」、「Fun」、「Future」、「Fishing」、「Travel」の6つのカテゴリーの中から、その年の最も優れたボートが選ばれる。この投票でNavetta 64は「Best For Travel」を受賞した。

 もう一つのアワードは「European Powerboat Award」。ノルウェー、イタリア、ドイツ、オランダ、フランス、スペイン、スイス、オーストラリアを代表するボート雑誌のエディターが投票し、デュッセルドルフ ボートショーで受賞者が発表される。カテゴリーは、「8m以下」、「10m以下」、「14m以下」、「20m以下」、「排水型」の5つ。Navetta 64は、「20m以下」のカテゴリーでウィナーに選ばれた。

 そして、3つ目のアワードは、「World Yachts Trophies」。13mから140mまでのヨットクラスを対象に、1988年創刊の歴史ある「Yachts」誌のグループが選考する。例年ならカンヌ ヨッティング フェスティバルの開催中に受賞式やガラパーティーが開催される名誉と権威あるアワード。ここでNavetta 64は、「Best Innovation」部門の64~80フィートクラスを受賞。3大アワードの受賞、それは、革新的なアイデアとデザインが多くの専門家に認められた証なのだ。

アフトキャビンの新しい使い方を提案

 100フィートを超えるようなワンオフのメガヨットは、スペースやコストの自由度から、常に革新的なボートデザインを発表し続けている。デザインのトレンドはメガヨットから始まり、「ABSOLUTE(アブソルート)」のような24m以下のプロダクション艇に取り入れられ、ブラッシュアップしながらスタンダードとなっていく。

 しかし、メガヨットから小型船舶に移植するためには、乗り越えなければならない問題がある。それはスペースが限られていること。その為、システムの小型化やエンジンルームの省スペース化、レイアウトの工夫やギミックが不可欠となる。今ではスタンダードとなっている昇降式のスイミングプラットフォームやテンダー用ガレージ、サイドデッキの拡張システムやフライブリッジのBBQグリルやカウンターバー、バウデッキのラウンジ化など、デザインが工夫され、小型化され、多くのサロンクルーザーに取り入れられている。

 そして、最も新しいトレンドは、アフトキャビンの有効利用。世界的なボートショーに展示されるメガヨットが、アフトキャビンの新しい使い方を提案し、来場者をひきつけている。以前は、テンダーの格納庫にするか、水密ハッチから出入りするクルールームにしていたアフトキャビン。この水辺に最も近い特別なスペースを「ビーチクラブ」という名のキャビンとしてデザイン。ABSOLUTE Navetta 64では、高耐水圧のトランサムウィンドウと、左右に大きくスライドするガラスの水密ドアが備わり、明るいコンサバトリーのような空間を生みだした。ビーチクラブの中心には、ベッドにも変形することができるソファ。ポートサイドには、デイヘッド(トイレ&シャワー)が備わる。海水浴時でも、濡れたままサロンを通ることなく、トイレやシャワーに行くことができる使いやすいレイアウト。この数歩で海に入ることができるビーチクラブが、ラグーンに建つ水上コテージのように、非日常の世界に誘ってくれる。

2020-2021のアワードを総なめにする
新時代のヨーロピアントローラー「Navetta 64」

 もう一つ、Navetta 64の特徴に挙げられるのは、クラス最大のフライブリッジ。ショートなバウデッキは、トラディッショナルなトローラースタイルに近いレイアウト。ほぼ垂直のフロントウィンドシールド付近から始まり、トランサムまでビームいっぱいに使った広大なフライブリッジは、70フィートクラスに匹敵する広さを誇る。

 エクステリアもヨットクラスと同等。最前部はナビゲーションゾーン。中心のヘルムシートは、左右前方の視認性が良いベストポジション。ヘルムシートを囲うように、左右シンメトリーにレイアウトされたU字ソファ。その後方、ポートサイドには、バーカウンタースタイルのアウトドアギャレー。シンクやリフリジェレーターの他に、グラストップのエレクトリックコンロが備わり、フライブリッジで調理をすることもできる。スターボードサイドには、大型テーブルを囲むようにL字のソファと向かい合わせの折りたたみのチェア。6人で食事を楽しむことができるルーフトップは、潮風を感じることができるテラスダイニング。ヘルムシートからダイニングエリアまでは、日差しを遮る大型のハードトップが覆い、快適に過ごすことができる。また、電動サンルーフが大きく開き、太陽の日差しを浴びることもできる。そして、フライブリッジ後方のおよそ半分を占有するテラスは、4人掛けの大型ソファとカフェテーブル、シングルソファ2つが並べられたカフェラウンジゾーン。昼間は太陽をいっぱいに浴びるサンタンスペースとして、夜は寄港地にスターンファーストで係留し、港町の夜景や星空を見ながらゲストと過ごす、特別なバーラウンジになる。

 アフトデッキには、大型のソファとチークトップのテーブル。アフトデッキ全面はイーブスで覆われるテラスラウンジ。イーブスの後端を支えるポールに沿ってサンシェードを下すことができる。さらに、アフトデッキの左右にもサンシェードを下すことができるので、日差しを遮り、プライバシーが守られる。こうした細かい配慮もABSOLUTEの人気の理由だ。

 ポートサイドにはフライブリッジへあがるステップ。サイドデッキ側のコーナーハッチを開けると、IPS用のジョイスティックのコントローラーが装備されている。桟橋や岸壁を目視しながら操船でき、ショートハンドでの離着岸を安全に行うことができる。サイドデッキを囲むブルワークの上部はGRPで成型され、下部は金属のステイでシースルーに。アフトデッキはもちろん、キャビンからの視界も広がり海面を望むことができる。この美しいシアーラインと造形は、Navetta 64の独創的なキャラクターを生み出している。

 サイドデッキから4段上がる高目のバウデッキは、開放的な展望ラウンジ。フロントウィンドシールドのすぐ前には、前方を向いた大型のU字ソファ。折りたたみ式のテーブルをはさみ、バウ側にはサンタンベッド。サンタンベッドに背もたれ用のクッションを置いて、向かい合わせのソファ仕様にすることもできる。

 アフトデッキのキャビンドアを全開にするとアフトデッキとキャビンが一体となる。キャビン後方のポートサイドにはカウンターで仕切られたギャレー。ギャレーとアフトデッキを隔てる電動ウィンドウを下げるとアフトデッキに向けたカウンターバーとなる。スターボードサイドには、ダイニングテーブル。6人が掛けることができる。その前方は、ソファラウンジエリア。ギャレーとシングルソファとの間にはクリアのシールド。天井近くまで高くプロテクトできるので、シンクの水はねや匂いなども広がりにくい。ABSOLUTEの繊細な心配りが伝わる装備だ。

アコモデーションも独創的

 メインサロンからポートサイドのステップをバウ方向に降りて行く。中央にアイランドベットを配したマスターキャビン。ベッドから起き上がると、正面には、大型のシャワールームを有したヘッドルームを仕切るTVボード。その左右の壁全面に広がる大型シービューウィンドウが開放的。海面から高さのあるアイポイントは、大海原を見下ろすことができる。外観上にも特徴的なシービューウィンドウは、Navetta 64のキャラクターデザインにもなっている。このようにバウキャビンをマスターキャビンにするレイアウトは、メガヨットのトレンドでもある。直立したステムやボリュームのあるワイドなバウがかなえてくれたレイアウト。海を見下ろすパノラマビューや、開放感のある天井高は、ミジップのマスターキャビンにはないゆとりだ。また、エンジンルームやサロン、他のキャビンから距離を置いた静寂性の高いバウキャビンは、マスターキャビンの理想のポジションだ。

 マスターキャビンから後方に降りると、2つのキャビン。ポートサイドのおよそ3分の2のスペースを使ったVIPキャビンには、クイーンサイズのアイランドベットが横方向に設置されている。そして、スターボードサイドには、シングルベット2台のツインルーム。さらに、ツインルームと壁を隔てた後方には、サイドデッキから出入りするクルーキャビンのスペース。ビーチクラブやクルールームも含む5つのキャビンすべてに専用のヘッドルーム(トイレ&シャワー)が備わる贅沢なアコモデーション。プライバシーが守られた設計思想もメガヨットライクだ。


 Navetta 64のパワートレインは、ツインVOLVO PENTA IPS1350(1,000hp)。ABSOLUTEは、いち早くVOLVO PENTAと共同開発を行ってきたIPSの先駆的ビルダーであり、IPSを最も理解するビルダーとして知られている。Navetta 64の他、ABSOLUTEの全13モデルでIPSを採用。ボトムデザインはIPS専用に設計され、前後浮力やウェイトバランス、マニューバビリティなどマッチングは完璧だ。
 トローラースタイルでありながら、燃料と水を満載した状態でもトップスピードは2,450rpmで27ノットを超える。また、1,000rpm8~9ノットの時の消費燃料は時間あたりおよそ37リットル。3,600リットルの燃料タンク容量の内、10%を予備として残す計算で、735マイルの航続距離を可能とする。トローラーとしても十分な燃費と航続距離を満たしている。

 ABSOLUTE Navetta 64が、世界中の専門家やジャーナリストに認められた理由。それは、単に目新しいデザインやギミックだけではない。全てのモデルが、高い信頼性と堅牢性を誇るABSOLUTE独自の統合建造システム「ISS (Integrated Structural System)」で建造されていることも大きな理由だ。
 船体を多軸構造グリッドで補強し、あらかじめ主な船内造作を完全な水平面上で構築し、その後ハル内に接合するISS工法。その革新的な建造プロセスは、アムステルダムで開催されるMETS (Marine Equipment Trade Show)で「Boat Builder Awards」を受賞し、専門家から高い評価を得ている。
 居住性の高いイノベーティブなデザインに加え、スピード、燃費、剛性……モーターヨットに必要な要素全てにおいて高いレベルに到達しているABSOLUTE。完成されたヨーロピアントローラーの新たなベンチマーク、ABSOLUTE Navetta 64が今、世界に示されたのだ。


ABSOLUTE Navetta 64
全長 19.63 m
全幅 5.52 m
エンジン 2× VOLVO PENTA D13-IPS1200 (2× 900 Hp)
OP    2× VOLVO PENTA D13-IPS1350 (2× 1,000 Hp)
燃料タンク 3,600 L
清水タンク 910 L
スピード Max 27 kt
     Cruise 16~24 kt
問い合わせ先 テクノマーレインターナショナル  TEL: 048-878-6806
www.tecnomare-yachts.co.jp

PerfectBOAT 2021年4月号掲載
https://www.fujisan.co.jp/product/1281681872/b/2086317/