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PRINCESS Y72 – Yacht Class PRINCESS

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「PRINCESS YACTHS(プリンセス)」の中核Fクラスを超える70フィートオーバーのサイズとラグジュアリーさを備えたモーターヨット「Yクラス」。このYクラスに72フッターの「Y72」が登場。2年ぶりの開催となったカンヌ ヨッティング フェスティバルでグローバルデビューを果たしたのだ。Y78、Y85に次ぐ、Yクラス最新のY72は24m以下のYクラス。
日本でも所有しやすい小型船舶枠で登録できる珠玉のラグジュアリーヨットの登場により、Yクラスの日本上陸が現実味を帯びてきた。

text: Yoshinari Furuya photo: PRINCESS YACTHS
special thanks: PRINCESS YACTHS JAPAN  www.princessyachts-japan.com

24mに収まる「PRINCESS Y72」
Yクラスがフリートの新たなメインストリームとなる

 現在、「PRINCESS YACTHS(プリンセス)」には6つのクラスがある。最も小さいサイズは、PRINCESS最速のオープンデッキモデルR35を擁する「Rクラス」。パフォーマンススポーツヨットと位置付けられたRクラスには、R35の1モデルが唯一ラインナップされている。

 次に、中核をなす「Fクラス」は、伝統的なスタイルのフライブリッジヨット。Fクラスと呼ばれる以前は、PRINCESS YACTHSの象徴として頭文字のPの称号がつけられていたもの。日本でのPRINCESSのイメージは、このFクラスが強い。F45、F50、F55、F62の4モデルとモデル数は絞られているが、いまだに日本では最も販売数の多い人気のクラスだ。

 中核のFクラスを超える70フィートオーバーのサイズとラグジュアリーさを備えたモーターヨットが、今回紹介する「Yクラス」。Y78、Y85に次ぎ、今年のカンヌ ヨッティング フェスティバルでY72がグローバルデビュー。さらにYクラスのフラッグシップとなるY95も既に発表されている。

 他には、フライブリッジを持たないハードトップにサンルーフの「Vクラス」。V40、V50、V55、V60、V65、V78と最多の6モデルが建造されるスポーツヨットと称されるクラス。さらに、FクラスのフライブリッジスタイルとVクラスのサンルーフという特徴を合わせ持つスポーツブリッジと呼ばれる「Sクラス」。S62、S66、S78と3モデルが用意されている。

 そして、Yクラスよりさらに大きいボリュームを誇るスーパーフライブリッジヨットを「Xクラス」と呼ぶ。全長ではYクラスと変わらないX80、X95だが、トライデッキ(3層デッキ)のボリュームと装備は、PRINCESSのプロダクションモデル史上最大を誇る。また、Xクラスは、Yクラスとも異なる類を見ないカッティングエッジなデザインに溢れている。PRINCESS YACTHSが切り開く、モーターヨットの新しい世界である。

進化したYクラスの最新モデル

 Yクラスで先行してグローバルデビューを果たしているモデルはY78とY85。次世代のPRINCESS YACTHSの世界観を示した意欲作として注目を集め、世界的に成功を収めている。そして、YクラスのサードモデルとなるY72は、さらに進化したYクラスの最新モデル。最大の特徴は、Yクラスのデザインやクオリティを24m以内に収めたラグジュアリーモーターヨットであること。デザインは、イギリスのBernard Olesinski Naval Architectsと、イタリアのデザインハウスPininfarina(ピニンファリーナ)、プリンセス デザイン スタジオの3者のコラボレーションが生み出した先進のデザイン。さらに2022年のグローバルデビューに向けた新たなフラッグシップY95も発表され、YクラスはPRINCESS YACTHSの新たなメインストリームとして、拡大を続けている。

 プリンセス デザイン スタジオが信頼を寄せるBernard Olesinskiは、40mのスーパーヨットImperial PRINCESSや、船体を浮かせて走るフォイリングボートとして世界を驚かせたRクラス、革新的な3デッキスタイルのデザインが常識を変えたスーパーフライブリッジヨットXクラス、ラグジュアリーモーターヨットYクラスなど数々のプリンセスヨットの設計・デザインを任されてきたナーバルアーキテクト。

 そして、デザインハウスPininferinaは、1930年にGiovanni Battista Farinaが創業した歴史あるカロッツェリア。ちなみに、Pininfarinaの名称は、創始者の幼少時の愛称 “Pinin” Farinaから。フェラーリやマセラティ、アルファロメオ、ランチアなど多くの名車をデザインしてきた世界で最も有名なデザインハウスは、自動車以外にも、列車やトラック、建築や時計、アパレル、文具など、幅広い工業デザインを手がけている。PininferinaがトラッドなPRINCESS YACTHSに、デザインコンシャスなスタイリングやエクステリアを加えてくれたのだ。

フルフラットなメインキャビン

 Fクラスと比較したインテリアの決定的な違いはフルフラットなメインキャビン。アフトデッキからバリアフリーでキャビンに連続したフロアレベルのまま、フロントウィンドウ手前まで続くワンデッキ。70フィートオーバーのサイズと計算されたバランスがスタビリティを損ねることなく3デッキを実現している。

 そしてロアーデッキは、メインキャビンの前方からトランサムまで、メインデッキフロア部分の下全域にわたりおよそ2,000mmの天井高が確保されている。つまり、マスターステートキャビンと同レベルの天井がトランサムまで続き、エンジンルームもクルールームもロアーキャビンと同じヘッドクリアランス。その高さによりエンジンルームのメンテナンス性は非常に高く、ベンチレーションにも優れ、エンジン効率も向上。もちろん最後尾のクルールームも同等の高さがあり、床面積の割に広々と感じる。その空間の一部を利用して、トランサムのストレージも生まれている。

 ワイドなスイミングプラットフォームは、油圧で上下するシステム。RIBのWILLIAMS Sportjet 395か、PWCのSEADOO Spark、または同等のものを搭載することができる。プラットフォームを水中に沈めることで、RIB等を楽に水面に浮かせ、格納することができる。またトランサムボードの中央には、フェンダーや係船ロープ、ライフラフトやウォータートイを収納するストレージがある。スターボード側にはクルールームの水密ハッチ。ハッチを開け、ステップを降りた左側にツインベッドルーム。正面にはエンジンルームアクセスドア。クルールームから直接エンジンルームにエントリーできるので、メンテナンスの動線もスムーズだ。

 アフトデッキは、フライブリッジを兼ねたルーフに覆われ、日差しから守られたテラス席。U字ソファと折りたたみできるチークトップのテーブルは定番のスタイル。キャビン側のポートサイドには、フライブリッジに上がるステップとバーキャビネット。バートップの上部を仕切るアップウィンドウを跳ねあげれば、キャビン内のカウンターとシームレスにつながる。スターボードサイドの壁には、ハッチと一体となったドッキングステーション。アフトデッキで、スロットルレバーとスラスターのコントローラーを操作し、スターンファーストのドッキングも安全にスムーズに行うことができる。

 スライド式のパティオドアを開けメインキャビンへ。ポートサイドには、カウンターに囲まれたギャレー。スターン方向はアフトデッキにサーブするカウンターと連続し、バウ方向は、サロンエリアに飛び出したバーカウンター。カウンターには2脚のカウンターチェアが用意されている。ギャレーの反対、スターボードサイドには、折りたたみのテーブルが大きく広がるダイネッティ。L字のソファと対面にチェアをセットすれば4~5人がゆったりと食事をすることができる。ギャレーを囲むように家族が集まるダイニングとなるだろう。

 フローリングのダイネッティからバウ側に進むと、カーペットに覆われたサロンエリアに切り替わる。ワンレベルのフロアは素材の違いでゾーニングされている。スターボードサイドにはU字のラウンジソファと低めのカフェテーブル。向かいのポートサイドには、ゆったりとした2人掛けソファ。ソファの後ろから55インチのTVがポップアップし、ワインクーラーも備わり快適に寛ぐことができる。

 そして、メインキャビン最前部のゾーンは、クルージングゾーン。スターボードサイドには、航海計器の並ぶコクピット。フロアやヘルムシートが高いライズドコクピットは、前方視界が良い。ヘルムのすぐ横には、サイドドア。サイドデッキからコクピットに直接アクセスできるので、サロンを横切ることなく、素早くサイドデッキに出ることができる。ポートサイドには、コクピットと同じ高さまでフロアが上げられたパッセンジャーのラウンジシート。ヘルムと同じアイポイントの展望ラウンジは、航行中の最も快適なVIP席となる。

 コクピットの横からロアーデッキに降りていく。正面のバウキャビンはVIPゲストのために。VIPキャビンの中央にはクイーンサイズのアイランドベッド。フルサイズの窓から風景を楽しむことができる。大型TVやハンギングロッカー、VIPキャビン専用のトイレ&シャワーブースが備わる。VIPキャビンを出てすぐ、スターボード側の扉を開けるとランドリー。その横のドアを開けるとツインのゲストルーム。ツインの片方のベッドが電動で横に動き、ダブルベッドに形を変える。向かってポートサイドにもツインのゲストルーム。こちらも電動でツインかダブルにすることができる。このゲストルームからアクセスできるトイレ&シャワーは、廊下からも直接アクセスできるデイヘッドとして使うことができる。そして、左右のゲストルーム天井にはアクセスハッチがあり、コクピットの裏側に手が届く。航海計器のチェックやメンテナンスを素早く行うことができる。

 メインキャビンの展望ラウンジのすぐ後方にも、ロアーデッキに降りる階段がある。この螺旋階段は、マスターステートルーム専用のもの。プライバシーが守られた空間は、フルビームを使い、左右全面の大型サイドウィンドウからは光が溢れ、海の眺望に包まれる。ベッドサイドには、2人掛けのソファやワーキングデスク。海を見ながらデスクワークができるテーブルは、天板をあげればミラーが現れ、バニティテーブルとして使うことができる。トイレやシャワールームはヘッドボードの後方。ツインの洗面台やレインシャワーなど全てがラグジュアリーだ。

フライブリッジ

 アフトデッキからフライブリッジに上がる。トータルにデザインされたハードトップに覆われている。ハードトップはスライドのサンルーフではなく、メガヨットで使われるようになった開閉式のルーバーを選ぶことができる。

 フライブリッジ最前列はヘルムシートとナビゲーターシートが並ぶコクピット。スターボードにはL字ソファ。フライブリッジの中央には、カウンターバー。シンクやリフリジェレーターの他、BBQグリルやアイスメーカーなどパーティーに必要な全てが整うウェットバー。カウンターの向かい側にはU字ソファとチークトップの大型テーブル。ハードトップに埋め込まれたダウンライトの演出で、デイだけでなくナイトもアウトドアダイニングやテラスラウンジとして使うことができる。

 フライブリッジ後方はユーティリティスペース。固定のサンタンベッドの他、オプションのクレーンを装備すれば、WILLIAMS Sportjet 395または同等のテンダーを持ち上げ搭載することもできる。

 そして、Y72の特徴として挙げられるのがシーワージネス。エンジンは、ツインのMAN V12。1,400mhpか、1,650mhpを選ぶことができる。ハイパワーな1,650mhpを搭載すれば、72フッターの巨体を34ノットのスピードまで引き上げてくれる。ナーバルアーキテクトBernard Olesinskiにより開発された先駆的なディープVハル。アンチローリングジャイロやフィンスタビライザーを備え、安定性とスピードを両立させた類まれなパフォーマンス。それが、「PRINCESS Y72」の最大の特徴でもある。


PRINCESS Y72
全長 22.80 m
全幅 5.45 m
喫水 1.72 m
重量 53.30 ton
エンジン 2× MAN V12-1650
最高出力 2× 1,650 mhp
燃料タンク 4,500 L
清水タンク 909 L
トップスピード 32-34 kt
問い合わせ先 プリンセスヨットジャパン  TEL: 045-441-7700
www.princessyachts-japan.com
https://www.princessyachts-japan.com/models/y_class/72/

PerfectBOAT 2021年12月号掲載
https://www.fujisan.co.jp/product/1281681872/b/2180989/