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VIKING 48 Sport Tower – Next Gamer

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アメリカで最も成功を収めているフィッシングボートビルダー「VIKING YACHTS(バイキング)」から「VIKING 48ST」が登場。
VIKING YACHTS社が名付けたSTとはSport Towerの事。
VIKING YACHTS伝統のConvertibleとは違う、Openスタイルの派生系Sport Tower。
アメリカ本国でも人気と存在感が高まる新しいカテゴリー。
そのVIKING 48STの特徴、そして魅力とは。

text: Yoshinari Furuya photo: Makoto Yamada
special thanks: QUAY SIDE www.quayside.co.jp

VIKINGが現代に昇華させた「48ST」

文豪が試行錯誤し創り上げたスタイルをVIKINGが現代に昇華させた「48ST」
群を抜くシーワージネスとフィッシャビリティ、最新のVIKINGクオリティに惚れる

 数多くのモデルを紹介してきた「VIKING YACHTS(バイキング)」。今回紹介するVIKING YACHTSは、伝統のConvertibleとは異なる48フィートのスポーツフィッシングボート「48 ST」。STとはSport Tower(スポーツタワー)の意味。そのスタイルは、VIKING YACHTSのエクスプレスであるOpenシリーズのコマンドブリッジに、リアを除くフロントとサイドをFRPのハードエンクロージャーとウィンドシールドガラスで囲んだオープンキャビンスタイル。近年スポーツフィッシャーの新しいスタイルとしてニューモデルが投入されているエクスプレスの進化系。スポーツフィッシャー最大のマーケットである北米での人気も徐々に高まり、VIKING YACHTS以外のビルダーもラインナップに加えているトレンドの一つだ。

 ST、Sport Towerの特徴は、Openの機動性と、Convertibleの快適さを併せ持つハイブリッド。レイアウトは、基本的にはOpenと同じ。また、アフトデッキとコマンドブリッジのレイアウトだけでなく、エクステリアや装備も同じ。ハードエンクロージャーやST用ツナタワーなどST独自の装備は、Openモデルのオプションとして扱われている。では、なぜSTが登場したのか? 理由はエクスプレススタイルのOpenとは異なるメリットがあるからだ。

 その一つは、前方視界がすっきりとして見やすいこと。Openのツナタワーに必要な横方向と前後方向のブレスが不要となる。左右2本ずつ、計4本のパイプは省かれ、視認性も向上。キャビン周りの外観もConvertible同様にスッキリとする。STのツナタワーは、Openのように重量物であるFRP製のルーフを支える必要もない。しかも、バウデッキとアフトデッキの他、キャビンルーフで支えられ、剛性が格段に高められている。

 もう一つのメリットは、Convertibleにはないアフトデッキとコマンドブリッジの連動性。フライブリッジのような高低差がなく、3段のステップだけで移動できる戦闘力を持つ。また、コマンドブリッジはOpenをベースにしたキャビンスタイル。Convertibleのサロンとは異なり、コマンドブリッジはアウトドアを前提に設計されている。ロアキャビンの入口は水密性の高いスライドドアで遮断され、デッキを濡らしても汚しても水洗いできる構造。デッキシューズのまま気兼ねなくアフトデッキとヘルムシートをボーダレスに行き来することができる。バトルシップに相応しいフィッシャビリティの高いデザインなのだ。

 そして、ST最大のメリットは、コマンドブリッジの快適性。当然ではあるが、Openに使われるソフトタイプのエンクロージャーは、薄く断熱性が低い。ファスナーには防水のカバーが付くが、取り付け部のコーナーなど、隙間から多少の水は侵入する。対してFRPのエンクロージャーは一体に成型されているので、高気密、高断熱。リアだけはソフトタイプのエンクロージャーではあるが、エクスプレスタイプに比べ、エアコンもヒーターも比較にならないほど効きが良い。Convertibleのキャビンに近い断熱性と空調で、外気温にかかわらず快適な室温をキープすることができる。ビッグマーリンとのファイトに備え体力を温存でき、連日長時間の乗船となるビルフィッシュトーナメントにおいても、ベストな状態で戦いに挑むことができる。それが、Sport Towerの魅力だ。

時代を超えて生まれ変わったオープンキャビンスタイル

 VIKING Sport Towerのデザインは、実は最新のアイデアというわけではない。フライブリッジが登場する1940年代までは、オープンキャビンのクルージングボートがスポーツフィッシング仕様に改造され使われていた記録が残る。IGFAの創設メンバーであり、スポーツフィッシングを愛した文豪ヘミングウェイの愛艇〈PILAR〉もオープンキャビンスタイル。フライブリッジやツナタワーが存在しない時代、ヘミングウェイは、ルーフ上に操縦席を搭載。オリジナルのファイティングチェアやアウトリガーなど、スポーツフィッシング仕様にリフィットしている。
 その後、RYBOVICHによりスポーツフィッシング専用モデルが建造され、フライブリッジは完成をみるが、初期の頃は、オープンキャビンのスタイルにフライブリッジを載せたデザインが主流。現存しているビンテージボートも、後にリアドアをリフィットしているものが多い。また、クローズドキャビンのコンバーチブルが登場した後も、機動力と実用性を重視するハワイやフロリダのチャーターボートキャプテンには、オープンキャビンが好まれ使われている。それらを受け継ぐSport Towerは、オープンキャビンの優位性や魅力に再注目した現代のスポーツフィッシャー。最新のマテリアルとデザインで、時代を超えて生まれ変わったオープンキャビンスタイルなのだ。

深紅に輝くVIKING 48ST

 VIKING YACHTSの輸入元である「キーサイド」の磯子サービスヤードで待機するVIKING 48ST。深紅に輝く船体、船底塗料が塗られたボトムデザインは、近年のVIKING YACHTSに共通した最新のボトムデザイン。その一つがダブルチャイン。バウのステムから始まる2本のチャインが、スプレーを飛ばし、デッキをドライに保つ。上段のチャインは船体中央付近で無くなりワイドなチャインがトランサムまで続く。トランサム側に回り込むとトンネルハルと5ブレードのプロペラが確認出来る。トンネルは、直径およそ800mmの大口径プロペラの外周に沿って弧が成型されている。最大150mmほどの窪み。トンネルハルにすることで、プロペラの位置は高くなり、シャフトは水平に近づく。エンジンも水平にマウントでき、重心を下げることができる。トンネルで整流された水流は、水平に近い方向で押し出され、パワーロスも少なく推進力に変換。高速走行を可能にする。また、喫水が浅くなるので、安全性も高くなる。

 アフトデッキに乗船する。VIKINGらしい剛性感のあるデッキ。突起物がない安全性の高いエクステリア。精度が高く均等なクリアランスのハッチ類など、全てがVIKING品質。特にフィッシャビリティにつながる細部まで考えられたエクステリアの完成度の高さは、同一モデルを数多く建造し、ブラッシュアップし続けるプロダクションビルダーのアドバンテージ。その一つ一つを見て欲しい。 

トランサム中央にあるのは、1,060mm×400mmの楕円形をした大型のベイトタンク。一見、他のビルダーのものと同じに見えるが、ここにも工夫が見られる。タンクのボトムには、逆向きにカバーがつけられた給水口。楕円形のタンクに水流をつくり、魚が弱るのを防いでいる。左右から上に開くハッチの裏側には、ライブベイトや生かしておいた魚を処理するのに役立つカッティングボードが貼られている。取り外し式のハッチは海に落とすことがあるので、ショックコードで止められているものが多い。だが、VIKING 48STでは、ハッチは3分割され、中間部の裏側は頑丈な金具で取り付けられ固定されている。脱落の心配がなく、脱着も可能だ。

 デッキフロアの左右にあるフロアハッチも工夫されている。今までのスポーツフィッシャーは、大きく重い大型ハッチを開け閉めしていたが、それらを2分割に変更。開け閉めが楽になり、全面を開けることなく出し入れができるようになった。ポートサイドのフロア下にはフィッシュボックス。ESKIMO社のアイスメーカーが搭載され、クラッシュアイスが常に作り出されている。フィッシュボックス内部は、3分割に仕切ることもできる。必要に応じ隔壁用のボードを抜き差しし、スペースも氷も有効に使うことができる。スターボードサイドは2分割。一つは強制循環イケスにも使える丸いドレン付きストレージ。もう一つは、多目的に使えるドレン付きのスクエアなストレージ。魚以外にもウェットなものを収納することができる便利な装備だ。

 アフトデッキの中央にはRELEASEのファイティングチェア。クラス最大のアフトデッキは、幅およそ3.6m、前後およそ2.6m。クルーワークもスムーズに行うことができる。トランサムには、ビッグフィッシュをデッキに引き上げるための幅750mmに及ぶワイドなフィッシュゲート。ブルワークを上に開け、安全に素早くランディングすることができる。

 他にも、フィッシングボートに必要なエクステリアが充実。VIKINGが取り入れ、今ではスタンダードとなったメザニンシート。センターの3段ステップの左右それぞれに幅1,000mmの2人掛けのベンチシート。300mm高く上げられたメザニンシートからは、着座したままブルワーク越しにルアーの動きを視認することができる。左右の座席の下、足元のフロア下にはリフリジェレーターやフリーザーが収まり、デッドベイトやドリンク類の収納に使うことができる。

48フィートのコンパクトなスペースにVIKING品質の上質なインテリア


 コマンドブリッジは、アフトデッキから660mmの高さがありアフトデッキや海面を見渡すことができる。ルーフまで2,000mmのゆとりある空間。後部にはそれぞれ3人がゆったりと座ることができるL字ソファとチークテーブル。左右シンメトリックに並び、大勢でのクルージングでも快適に過ごすことができる。

 前方には、3台のアームレスト付きのパイロットシート。その一つ、センターラインにセットされたヘルムポジションは、フロアが180mm上げられ視認性が高い。高くなったフロア形状に合わせ天井を窪ませ高くしている。そのデザインは、機能的でありながら、芸術的ですらある。ルーフまで目一杯広げられた高さ1,260mmのフロントウィンドシールド。フロントウィンドシールドと大型のサイドウィンドウにより、ヘルムシートから360度全周囲を見渡すことができる。そして、注目してほしいのはルーフ内に設けられたロッドなど長尺物の収納スペース。1,770mm×860mmの開口部が左右にあり、ロッドの出し入れもしやすい。さらに、ストレージの奥行きはルーフ最後部まで続き、バットを外すことなくロッドを収納することが可能だ。

 スライドドアから5段のステップを下がると、プライベートスペースが広がるロアキャビン。天井まで1,950mmの高さがあり、閉塞感は感じない。スターボードサイドには、L字ソファとチークテーブル。対面には壁掛けの大型TVが搭載され、ダイネッティと寛ぎのラウンジを兼ねる。L字ソファの上の壁にはリトラクタブルのベッドが内蔵され、エクストラの簡易ベッドとしてクルーのアコモデーションも確保されている。

 ポートサイドには、フルサイズのL字ギャレー。一般的なL字ギャレーとは異なる45度回転したVIKING 48のオリジナルデザイン。そのアイデアにより、ビッグボートと変わらない725mmの奥行きの調理スペースを確保。またギャレーに立つ料理人は、コーナーに収まり通路を妨げることはない。グラストップの大型コンロやマイクロウェーブの他、ビッグボートと変わらないドロワータイプのリフリジェレーターやフリーザーを4台搭載。十分な食材のストック量で遠征をサポートする。

 ダイネッティの前方、スターボードサイドには2段ベッドのクルールーム、ポートサイドには、独立したシャワーブースを持つトイレ。さらに前方の扉を開けると、バウのVバースがマスターステートルーム。1,100mmまで高さを上げることで、最大幅1,500mmのクイーンサイズベッド、左右の大型ハンギングロッカーを設置。ビッグボート並のアコモデーションを確保した。ギャレーやシャワー、マスターステートルーム……、48フィートのコンパクトなスペースにVIKING品質の上質なインテリア。スモールラグジュアリーも48STのキャラクターだ。

ZF社が開発したJMS 搭載

 ジョイスティックを操作し、桟橋から離岸する。VIKING 48ST に搭載されたジョイスティックコントロールは、マリンギアのトップメーカーZF社が開発したJMS(Joystick Maneuvering System)。ツインのインボードシャフトドライブのクラッチとギア、バウスラスターを統合し電子制御するシステム。シンプルな構造で、信頼性が高いインボードシャフトでありながら、ジョイスティックで直感的に操船することができる。ジョイスティックの傾きに呼応し、激しい作動音やトリッキーな動きはなく、静かに力強く、真横や斜め、その場回頭をスムーズ行う。定点保持ができるiAnchorも搭載。沖での停泊や着岸準備など一時的に止めたい時に使う便利な機能。PODドライブのようにヘディングを維持するため多方向に勢いよく水流が出る仕組みではないので、釣りにも使いやすい。ジギングやキャスティングなどアンカーを打たず移動の多い釣りには有効だ。

 また、48STに使われている油圧のバウスラスターは、電動のものとは異なり連続使用が可能。制御力も信頼性も向上し、利用の幅が広がっている。JMSは、VIKING YACHTSのほとんどのモデルで採用される先進のテクノロジー。シーワージネスとイージードライブを両立する信頼のシステムとして、注目を集めている。

 主機は、オプションで選ばれた1,200馬力のMAN V8。シフトレバーに持ち替え、前進にギアを入れる。デッドスローは740rpm、スピードは8.1ノット。1,000rpmでは、10.8ノット。1,250rpmでは、15.1ノット。ハイパワーエンジンが繰り出す強大なトルクが、低速から力強く加速させる。1,500rpmでは、21.1ノット。1,750rpmでは、28.0ノット。クルーズスピードは2,000rpm前後。エンジンロード70~80%で余裕の30ノットオーバー。2,100rpmで34.4ノット、2,200rpmで37.4ノット、MAX2,300rpmで38.1ノットを記録した。

 クルーズスピードの30ノットでタイトターンに入る。ステアリングホイールの回転と同時にバンクし、ヘルムを中心に軽快に旋回する。レスポンスはクイックだが、切り込みすぎず、ルーズに大きな弧を描くこともない。アンダーでもオーバーでもなく、ミッドシップのバランスを保ち、水を掴み、安定してレールライドをする。最良のバンクやフィーリングで、イメージ通りのマニューバを描く。VIKING YACHTSの目指すパワフルな走り、見事なバランスを体感することができる。

 48フッターとは思えないシーワージネスにマーニューバビリティ。そして、48フィートの限られたスペースに、リュクスなエクステリアやインテリア。ビッグボートを所有するカスタマーも嫉妬する、珠玉のバトルシップ。それがVIKING 48STだ。 P.B.


VIKING 48 Sport Tower
全長 15.0 m
全幅 5.2 m
喫水 1.4 m
重量 30.09 ton
エンジン 2× MAN V8 1200CRM 
最高出力 2× 1,200 HP
燃料タンク 4,599 L
清水タンク 674 L
問い合わせ先 キーサイド  TEL: 045-773-0777
www.quayside.co.jp