Hatteras GT70
Sustainable Battleship
伝統のカロライナスタイルを踏襲する唯一無二のスポーツフィッシングボートビルダー HATTERAS 熟成を重ね送り出されたサステナブルなフラッグシップ「GT70」が 新時代の幕を開く
text:Yoshinari Fumiya photo:Makoto Yamada
special thanks:HATTERAS YACHTS JAPAN.SALES https://hatteras-japan.com
1960年、世界で初めて40フィートを超えるFRP製スポーツフィッシングボートを建造。
革新的なモディファイドVハルを開発。60年以上の歴史を重ね、今も進化を続ける「HATTERAS YACHTS(ハトラス)」。
そのレジェンダリービルダーを代表するフラッグシップが「GT70」。
いつの時代も先端を走り続けるHATTERAS YACHTSが、エアーインジェクションやウッドアートなど最新の技術を取り入れ、
新たなスポーツフィッシャーのベンチマークを我々に示してくれる。
「HATTERAS YACHTS(ハトラス)」。それは、世界で初めて40フィートを超えるFRP製スポーツフィッシングボートを建造し、革新的なモディファイドVハルを開発したレジェンダリービルダー。また、モールドを使い量産することで工期とコストを抑え、プライベートボートによるオフショアフィッシングを全米に広めた先駆者としてリスペクトされている。
HATTERAS YACHTSの由来は、アメリカ東海岸ノースカロライナ州、大西洋に突き出たCape Hatteras(ハッターラス岬)やHatteras Inletなど、東海岸のフィッシャーにはよく知られた名所から用いられたもの。このCape Hatterasは、黒潮と並ぶ世界最大の海流ガルフストリーム(暖流)とラブラドル海流(寒流)が出会う北米一のフィッシングポイント。また、Cape Hatteras周辺の浅瀬は、「船の墓場」とも言われるほど荒れることで有名な場所。特にパムリコ湾と外洋を結ぶInlet(水路)は、潮汐による流れも加わり、激しい波が起こる悪条件が揃う場所として悪名高い。だが、通らなければポイントに辿り着けないし、母港に帰れない。したがって、このエリアで建造されるオフショアフィッシングボートは、安全に出帰港するために、波に強く強靭に造られてきた。ノースカロライナに、HATTERAS YACHTSをはじめ、名だたるオフショアボートビルダーが多く存在する理由だ。
また、一流ビルダーがノースカロライナで生まれたもう一つの理由は、北米最大の家具見本市「High Point Market」が開催されることでも知られる通り、家具作りが盛んなエリアであること。家具職人から受け継がれた木工技術が、品質の高いインテリアを生み出し、世界最高峰のスポーツフィッシャーブランドを誕生させたのだ。
「GT70」の特徴は、HATTERAS伝統のカロライナスタイルのフレアとタンブルホーム。高くワイドなバウデッキが生みだす広大な空間には、快適なアコモデーションとリュクスなインテリアが収められている。2016年にワールドプレミアを果たしてから今日まで、カスタマイズされたGT70が数多く進水。HATTERAS YACHTSのフラッグシップとして、建造ごとに進化を続けている。
ハルカラーは、パルマブルー。ボートショーやカタログに登場する〈Hatterascal〉にも使わているHATTERAS YACHTSを代表するハルカラー。見る角度や光の当たり方で陰影が変化し、複雑な輝きを放つ。GTシリーズ中最も人気の高い色だ。
そして、モダンなカラーリングに対し、チークのボードにクリアを重ねたクラシカルなチークトランサム。この美しいトランサムは、バーニッシュ仕上げに見えるが、実はリアルなチークではなく、塗料で木目が描かれたフェイクチーク。だがネガティブな模造品という意味に取られてはいない。フェイクファーと同じエシカルな理由から広まりを見せるウッドアートとして、採用するボートが急増している。もちろん、スリップを防ぐ機能的な素材として使われるデッキフロアやブルワークは無垢のリアルチーク。しかし、それ以外、キャビン後部全面の壁やリアドア、キャビネット、バウデッキのチークトリムなど、グロス仕上げのエクステリアは全てウッドアートで描かれたものだ。描いたのは、Everett Nautical Designsを率いるJosh Everett。ウッドアートとトランサムアートのトップを走る人気アーティスト。SPENCER Yachtsをはじめ、JARRETT BAY Boatworks、SCARBOROUGH Boatworks、WEAVER Boatworks、PAUL MANN Custom Boatsなど、名だたるカスタムビルダーからも信頼され、多くのウッドアート作品を残している。このような人気から、ウッドアートを描くアーティストが新たに現れ、さらに注目を集めている。
なぜ、ウッドアートを採用するボートが増えてきたのか? その理由はいくつかある。まずは、軽量化によりスピードと低燃費を得られること。そして、メンテナンスフリーで、美しいトランサムアートやグロスの光沢を常に維持できること。劣化も少なく、毎年の塗り直しもなくストレスフリーだ。他には、チークが手に入りにくく価格が高騰しているという事由があり、さらには、「森林を守り、CO2を減らす」という大きな意味合いも持つ。世界的に環境意識が高くなり、全ての事がサステナブルな方向に向かっている。少なくとも、スピードと同時に低燃費が求められるスポーツフィッシャーにおいては、今後ウッドアートが主流になっていくことは間違いなさそうだ。
広大なアフトデッキ
スポーツフィッシャーにおいてメインステージとなるアフトデッキに降り立つ。メザニンを含まないデッキだけでも14㎡以上のゆとりあるアフトデッキ。ウェットな状態でもスリップしにくいリアルチークがブルワークとフロアに贅沢に使われている。中央にはRelease Marineのファイティングチェア。トランサムは大きく湾曲し、ファイト中のリバースもスムーズでドライ。70フッターという巨漢でありながら、ブルワークから水面までの高さは1,050mmに抑えられ、タグ&リリースもスムーズに行うことができる。どのサイズにおいてもHATTERAS GTは、トーナメントに勝つためのバトルシップなのだ。
アフトデッキ前部は、中央部で450mmの高さがある視認性の高いメザニン(2階席)。メザニンには幅2,500mmのワイドなメザニンシートと、タックルボックスが収まるBBQグリル。メザニンエリアは、フライブリッジを延長したイーブスに守られている。リアやサイドの壁、キャビネット以外にも、スピーカーやハンドレールもウッドアート。壁面に馴染み、言わなければゲストは誰も気がつかないだろう。
戦闘力が高いフライブリッジ
フライブリッジはバトルシップの司令塔。全幅はおよそ4,600mm、前後は長いところで6,300mmに及ぶ広大なフライブリッジ。シンメトリックのセンターコクピットは移動がスムーズなトレンドのレイアウト。およそ2,000mmのワイドなコクピットの中央にはヘルム用のパイロットシート。左右にナビゲーターシートを加え、3列シートのヘルムを形作る。さらに左右には、前後長2,900mmのワイドなベンチシート。このサイドソファの最後尾には、取り外しのできるバックレストを装着することができ、長時間におよぶ後方のワッチを快適に行うことができる。ゲストエリアとなるコクピットの前方には、2人掛けのソファと大型のリフリジェレーター。その向かい側、フライブリッジの最前部には2,230mmのワイドなベンチソファ。フライブリッジには合計16人分の座席が用意されている。
フライブリッジからさらに高みへ。ツナタワーのラダーを登ると2人掛けのベンチシート。ヘルムステーションには、ステアリングホイールやスロットルコントロール以外に、GarminのGPSやオートパイロットのコントローラー、IcomのVHFが備わる。広範囲の潮目やベイト、水中の魚影を確認しながら、ボートを的確にコントロールすることができる。
ストレスを感じさせない豪華なキャビン
RA HATTERAS YACHTSが支持されてきた理由は、これらの高いフィッシャビリティだけではない。リュクスなインテリアこそ、HATTES最大のアドバンテージ。メインキャビンには、電動ドアからエントリー。ワイドなサイドウィンドウとアフトデッキを望む大型ウィンドウにより、明るく視認性の高いメインサロン。スターボードサイドには、大型のL型ラウンジソファと、光沢が美しいローテーブル。その前方には、食事がしやすいテーブルが備わるダイネッティ。ポートサイドには、2脚のカウンターチェアが並ぶ人工大理石が美しいアイランドカウンター。カウンターの下には、スライド式のリフリジェレーターやフリーザーが2段3列で並ぶ。それぞれ、冷蔵か冷凍かを切り替えることができ、利用時のバランスにより選ぶことができる。カウンターを境に、左右から出入りできるフルサイズのギャレー。Mieleの4口コンロやSHARPのコンベクションオーブンレンジ、Brew Expressのコーヒーメーカーが美しく固定されている。収納も多く、長期遠征や長距離航海でもストレスはない。
ステップを降りると上質なアコモデーションに包まれる。最前部のバウキャビンは、専用ヘッド(トイレ&シャワー)が備わるダブルのVIPルーム。2段ベッド仕様も選ぶことができる。ポートサイドの最初のドアはロッドとリールを収納するストレージ。第2のドアは、クルーキャビンと兼用のデイヘッド。第3のドアはランドリー。そして第4のドアは2段ベッドのクルーキャビン。ランドリーには、Whirlpoolのウォッシュマシンとドライマシンが上下に備わる。常に船内を清潔に保つことができるランドリーは、長期遠征や長距離航海にマストなファシリティとして搭載するボートが増えている
フルビームを使ったオーナーキャビン
スターボードサイドの最初のドアは、マスターステートキャビン。最大の広さを誇るオーナーのためのキャビン。中央にはキングサイズのアイランドベッド、広いトイレとシャワーブース、そして大型のクローゼット。オーナーのプライバシーが守られたリュクスな空間だ。
さらに後方のステップを降りる。ポートサイドには、2段ベッドのクルーキャビン。スターボードサイドにも2段ベッドのクルーキャビン。クルー用のミニシンクやヘッドコンパートメントも備わる機能的な空間。キャプテンやクルーも快適に過ごすことができる。トーナメントで最高のパフォーマンスを発揮することができるだろう。
このクルーキャビン用のヘッドには、エンジンルームに直接アクセスできる水密ハッチが配置される。エンジンルーム内の異常にも早く気付くことができ、また、アフトデッキに波が打ち込むような大荒れの時でも安全にエンジンルームにアクセスすることができる。
アフトデッキに戻り、メザニンシートの一部を上に跳ね上げエンジンルームにエントリー。白く塗装されたCATERPILLAR C32 Acertが2基並ぶ明るいエンジンルーム。エンジン間の通路は1,980mmのヘッドクリアランス。かがむこともなくアクセスしやすく、エンジン前部や反対の側面にも体を入れることができる。主機の後方には21.5kwのジェネレーターが2台。1台が不調でももう1台のジェネレーターで整備や修理を交互に行うことができる。メンテナンス性が十分に考えられたエンジンルーム、これもHATTERAS YACHTSの伝統だ。
ハトラス岬で培った安定性
フライブリッジのコクピットに立ち、スロットルに手を掛け前進に入れる。デッドスローは600rpmで7.3ノット。このままセーリングボート並みのスピードで航行すれば、標準の燃料容量(8,100リットル)の場合でも3,400ノーティカルマイルの航続距離。もちろん海況にもよるが、ミクロネシアを余裕で往復できる計算。パッセージメーカーとしても十分な航続距離だ。
デッドスローから加速する。1,000rpmで9.9ノット。1,500rpmでは18.3ノット。軽量化されてはいるが、さらに剛性が高められた船体は、軋み音一つなく、波を切り加速する。2,000rpmでは28.5ノット。トップスピードは、2,330rpmで35.5ノットを記録。トンネルハルが効率良く推進力に変換。波あたりはソフト、ダブルチャインが飛沫を落としミストもなくデッキはドライ。そして、HATTERASの特徴として、ノイズが少ないことも触れておきたい。それは、独自の5ブレードプロペラとエアーインジェクションシステムの効果。トランサムから負圧を利用し吸い込まれたエアーをトンネルの前方からハルに沿って流す。バブルの層がクッションとなり、プロペラが起こす衝撃や音、振動を和らげる。HATTERAS YACHTSが特許を持つ独自のシステムだ。
クルーズスピードの30ノットで旋回に入る。70フィートの巨漢は安定した姿勢で前後左右から迫る外洋の波をものもとせずに均等な弧を描く。ハンドリングに不安な要素は微塵も感じることはない。だからと言って、曲がらないわけでもない。ステアリングの動きにリニアに反応し、スムーズにマニューバを描く。
スポーツフィッシャーを常に進化させてきたHATTERAS YACHTSのデザイン力や開発力。フィッシングボートだけでなく、モーターヨットを建造してきたノウハウを持つHATTERAS YACHTSだからこそ叶えられた上質なインテリアやエクステリア。たとえ同じモデルでも、一艇毎に異なるカスタマイズに対応できる技術力もHATTERAS YACHTSのアドバンテージ。半世紀にわたり常にスポーツフィッシャーのベンチマークとして君臨し続ける唯一無二のボートブランドHATTERAS YACHTS。そのフィロソフィの全てが注ぎ込まれた傑作、それが珠玉のスポーツフィッシャーGT70なのだ。P.B.
HATTERAS GT70
全長 21.49 m
全幅 6.5 m
喫水 1.53 m
重量 54.43 ton
エンジン 2× CATERPILLAR C32 Acert
最高出力 2× 1,925 HP
燃料タンク 8,101 L
清水タンク 1,249 L
問い合わせ先 HATTERAS YACHTS インターナショナルセールス 日本窓口
Email: hatterasyachts.jp@gmail.com
https://hatteras-japan.com/usedboat