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JARRETT BAY 43 – Wooden Battlewagon

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シャープ・エントリー、モデレート・トランサムデッドライズ、フレアバウ、
ブロークンシアーライン、タンブルホーム、それがカロライナボートの伝統的なスタイル。
そして、スピードと燃費における高い効率とシーワージネス、マニューバビリティが、
進化したカロライナボートの特徴だと「JARRETT BAY(ジャレットベイ)」のファウンダーRandy Ramseyは言う。
このカロライナボートのスピリットが詰め込まれた美しきバトルワゴン「JARRETT BAY 43」。
珠玉のカロライナエクスプレスが、大洋を渡り日本の海に舞い降りた。

text: Yoshinari Furuya photo: Makoto Yamada
special thanks: BOAT CENTER NISHIKINOHAMA www.boat-center.net
GREAT MARINE www.greatmarine.net

現代を生きる伝説の “バトルワゴン”

強調されたカロライナフレア、美しい線を描くコールドモールドのハル
クラシカルな装いを最新の環境エンジンで武装した、現代を生きる伝説の “バトルワゴン”

 「JARRETT BAY BOATWORKS(ジャレットベイ)」の創業者であるRandy Ramseyは、「カロライナボートの特徴は、外洋でのパフォーマンス。スピードと燃費の高い効率とシーワージネス、マニューバビリティがなくてはならない」と話している。そして、カロライナスタイルを継承するPaul Mann Custom Boatsの創業者Paul Mannは、カロライナボートのデザインについて「シャープ・エントリー、モデレート・トランサムデッドライズ、フレアバウ、ブロークンシアーライン、タンブルホーム」と、5つの特徴を挙げている。

 コンピュータでデザインする以前、そのデザインを正確に作りあげるジグもない時代。当時としては斬新かつ機能的なデザインや、美しいスタイリングを取り入れ、カロライナスタイルを生み出したWarren O’Neal。そしてOregon Inlet Fishing Centerを作り、チャーターフィッシング文化を広め、多くのキャプテンやボートビルダーに惜しまず指導をしたOmie Tillet。この二人のレジェンドから生まれたカロライナスタイルのフィッシングボート「SPORTSMAN」。彼らから釣りを学び、Oregon Inlet Fishing Centerのボートキャプテンを務め、ボート建造を学び、カロライナボートのフィロソフィを継承するノースカロライナのボートビルダーは数多い。Paul Mann以外にも、Briggs BoatworksのSunny Briggsや、Spencer YachtsのPaul Spencer、Bayliss BoatworksのJohn Baylissなど、ロアノーク島に集まるカスタムボートビルダーの創業者たちが、今も二人の意思を受け継いでいる。そして、オレゴンインレットの南、ビューフォートに構えるJARRETT BAY BOATWORKSのRandy Ramseyも、カロライナスタイルを継承し、さらに進化させたカロライナボートビルダーの一人だ。


 Randy Ramseyは、父親が所有する23フィートのトレーラブルボートで、毎週末釣りに出かけるフィッシングファミリーの中で幼少期を過ごした。サウスカロライナでチャーターボートを所有する叔父の影響もあり、他の子供達が警官や消防士に憧れていた頃には、チャーターボートキャプテンになりたいと思っていたという。その後、18歳で資格を取得し、実際にチャーターボートキャプテンとなる。

 その頃、運命の出会いがあった。Omie Tilletの所有する伝説のチャーターボート「SPORTSMAN」でOmie Tilletと一緒に釣りをする機会を得たのだ。Randy Ramseyは、今まで乗ったことのあるどのボートよりも外洋での走りが素晴らしいと「SPORTSMAN」に感銘を受ける。Omie Tilletは、この

「SPORTSMAN」のボトムデザインやボート建造方法について隠すことなく全てを教えてくれ、Randyのボート建造に協力してくれたという。そして、1986年の終わり、土の床で雨漏りもする家賃250ドルの古い倉庫で、Randy Ramseyは、ハルナンバー#1となる52フィートの〈Sensation〉の建造を始めたのだ。ビルダー名「JARRETT BAY」の由来は、ノースカロライナ州ウィリストンのジャレット湾から。コールドモールドのWest Systemに使うエポキシ樹脂を大量注文するとき、オペレーターからビルダー名を聞かれ、とっさにつけた名前が、目の前に見えていたJARRETT BAYだったと言う。

JARRETT BAY 43〈Marshall Line〉

 今回日本に上陸を果たしたJARRETT BAY 43〈Marshall Line〉は、2002年に建造されたハルナンバー#29のエクスプレス。新西宮ヨットハーバーに係留された美しいフォルムのJARRETT BAY43は、JARRETT BAYのアイコンでもある強調されたカロライナフレアが特徴。ウッドゥンボートをアピールするヴァーニッシュ仕上げのトランサムボードには、躍動感のあるカジキのイラストとゴールドに輝く〈Marshall Line〉の船名。船体とともに引き継がれた船名には、アメリカ本国で描かれたままの旧ホームポートAtlantic Beach NCも表示されている。桟橋から見るトランサムは、本場の雰囲気をそのまま残し、存在感を際立たせている。

 分厚いチークに覆われたブルワークに足をかけ乗船する。一般的に40フィート前後のエクスプレスでは、ライトタックルのスタンディング仕様が多い。だが、およそ13㎡の広さを誇るアフトデッキ中央には、POMPANETTEのファイティングチェアが固定され、ビッグゲームに対応している。ホールドの良いファイティングチェアは、両手を使え長時間に及ぶファイトの疲労も最小に抑える。波の中や慣れないゲストアングラーでも体はホールドされ、安全にファイトすることができる。そして、海面から860mmとブルワークの高さも抑えられているので、タグ&リリースもしやすい。トーナメントリーダーを狙える最強のバトルシップだ。

 アフトデッキには、スポーツフィッシングのために欠かせないエクステリアが装備されている。スターボード寄りにオフセットされたステップを挟み、ポートサイドには左右2つのハッチに分けられたキャビネット。船首に向けて左側のハッチを開けるとベイトや釣った魚を処理するためのシンク。その下にはタックルボックス。中央のハッチを開けると、ライブベイトを生かすためのベイトタンク。ボトムフィッシングの時には強制循環イケスとしても使える。イケスがシンクと並んでいるので、魚の処理も素早くスムーズに行うことができる。

 ステップを挟みスターボードサイドのハッチを開けると深めのフリーザー。アメリカで一般的に使われている冷凍のデッドベイトを保管するためのもの。そして、殆どの場合、ライブベイト用の強制循環イケスとして装備されていることが多いトランサムのボックスも特別な仕様。クラッシュアイスを自動投入するフィッシュボックスとして使えるようになっている。このように、エクステリアをカスタマーの希望通りに建造できるのもカスタムボートのメリットであり、アドバンテージだ。

 コマンドブリッジはアフトデッキから2段のステップ(約580mm)を上がった見晴らしの良いスペース。ハードトップまでの天井高は2,030mmと高く開放的。レイアウトはバウ寄りにヘルムステーションが備わるトラッドなフォワードコクピット。センターライン上にチーク製コントロールポッドとヘルムシート。ポートサイドにはナビゲーターシート。POMPANETTEのパイロットシートが、波の中でもしっかりと体をホールドしてくれる。コマンドブリッジ後方は左右にL字のラウンジソファ。視点が高いので、ルアーの動きも見やすく、アフトデッキとの距離も近く、すぐに戦闘モードに入ることができる。
 そして、コマンドブリッジの下にはエンジンルーム。フロア中央を開け、ラダーを使いボトムまで降りると、左右に650馬力のCAT C-8が搭載されている。エンジンルームの天井高は中央通路上で1,260mm。エンジン上部のクリアランスは230mm。43フッターのエクスプレスとしては十分なメンテナンス性が確保されている。

遠征中でも快適に過ごせそうだ

 ヘルムステーションの右側からキャビンに入る。スターボード側には、背もたれを跳ね上げれば2段ベッドとしても使うことができる2,100mm以上のロングソファ。メインキャビン後方にはトイレ&シャワー。それぞれ奥行きは820mm以上、幅1,000mm以上のスペースが確保され意外なほど広い。トイレがコクピットから降りてすぐ、揺れの少ない船体中央付近のベストポジション。ロングソファの向かい側、ポートサイドには幅1,200mmのギャレー。VITRIFRIGOのリフリジェレーターとフリーザー、電子レンジが備わる。ギャレーの横にはTVがインサートされ、ソファから観ることができる。

 メインキャビンの奥、バウキャビンは2人が寝ることができるVバース。2,000mm以上のサイズが確保され見た目よりも広いベッドは、遠征中でも快適に過ごせそうだ。
 ツナタワーは、極端に高くない実用的なもの。3人が着座できるワイドなベンチシートの前には、ステアリングホイールを挟み、GARMINの12インチディスプレイと、GLENDINNINGのコントロールユニット、VHF無線機が備わる。このままトーナメントに参戦できるシンプルで実用的なものだ。

 ヘルムシートに着座し、パームビーチスタイルのコントロールポッドをシングルレバーに切り替える。600rpmのデッドスローは7.5ノット、1,000rpmまで上げると10.5ノット。1,200rpmでは12.0ノット、1,400rpmでは15.5ノットでエンジンロードは50%。1,600rpmでは19.0ノット、エンジンロードは75%。加速の間、走行姿勢はほとんど変わらない。エンジンロードの上昇からハンプ状態だとわかるが、ノーズはほとんど上がらず力強く加速を続ける。

 1,800rpmでは23.0ノット、ロードが71%に一旦下がり、滑走状態に入る。安定した姿勢を保ち、前方視界も良好、ストレスを感じない。そこから一気に加速し、2,000rpmでクルージングスピードの27.4ノット。無理のない79%のエンジンロード。2,200rpmで30.0ノット、そして、エンジンロード100%の最高回転は2,300rpm、トップスピードは32.0ノットを記録した。

 大阪湾を出て、オフショアのうねりの中、クルージングスピードの27~30ノットで様々なマニューバを試す。横波や斜めからの波やうねりに対してもローリングが少なく、直進性が高い。ステアリングをとられることもなく、ステアリングホイールから手を離しても安定した姿勢で真っ直ぐに走り続ける。急旋回を試みるが、内傾は少なく穏やかに旋回を始め、高いスタビリティで姿勢を保ったまま大きな弧を描く。43フッターとは思えない安定感と直進性は、乗員に安心感をあたえてくれる。

 本船や漁船の曳き波を前方から受ける。シャープなエントリーと強くしなやかな木製の船体が衝撃を受け止め、振動を分散する。ピッチングも最小で、ソフトにランディングし、体にやさしい。また、音も吸収され、静音性も高く、スピード感を感じさせない。
 直進性やソフトライディングは、長距離の釣行や長時間に及ぶトーナメントでも人を疲れさせない重要な要素。チャーターボートキャプテンRandy Ramseyが、チャーターボートのために設計し、そこにラグジュアリーなインテリアを取り入れたJARRETT BAYの真骨頂。JARRETT BAYが、プロのボートキャプテンにも、リッチなカスタマーにも愛されている理由だ。 P.B.


JARRETT BAY 43 “Marshall Line”
ハルナンバー #29
建造 2002
全長 13.18 m
全幅 4.34 m
喫水 1.06 m
重量 15.87 ton
エンジン 2× CATERPILLAR C-8
最高出力 2× 650 HP
燃料タンク 1,665 L
清水タンク 189 L
問い合わせ先 ボートセンター二色の浜  TEL: 072-438-9822
www.boat-center.net

https://www.jarrettbay.com/carolina-construction/custom-yachts/hull-29/