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CRANCHI E56F Evoluzione T-top – Italian Summer

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湘南、まさに日本のマリン文化を育み培ってきたエリア。
その中心にシンボリックに存在するのが「リビエラ逗子マリーナ」だ。
富士山を望み、茫洋とした太平洋の相模湾に面して豊かなマリタイムを過ごす、まるで地中海のようなマリンリゾート空間がそこにはある。
大切な家族と、気の合った仲間たちと海に出る喜び。この環境をベースとするのがイタリア生まれの「CRANCHI YACHTS(クランキ)」だ。
その最新鋭モデル「E56F Evoluzione T-top」を改めてテストする。

text: Kenji Yamazaki  photo: Makoto Yamada
special thanks: RIVIERA ZUSHI MARINA www.riviera-r.jp/zushi-marina/

真夏の陽光を遮るカーボンケブラーの天蓋をまとった「E56F Evo T-top」

 気鋭のマリンデザイナーChristian Grandeをトータルアートディレクションオフィサーとして迎え、更なる変革と進化を追求する「CRANCHI(クランキ)」。E52S-Evoluzione、E52F-Evolizione、E56F-Evoluzione、そしてこのカーボン製Tトップを持つ進化モデル「E56F-Evoluzione T-top(E56FエボルツィオーネTトップ)」がEVOラインに追加された。旗艦のSettantotto78の登場とともにCRANCHIは新たなステージに入ったことを象徴している。

 CRANCHIの歴史は古く、誕生のその地も歴史の趣を持つ。その創立はまだ自動車も生まれていない1870年のこと。150年もの歴史を誇るビルダーだ。美神の王国イタリア、その美とモードの中心ミラノの北、湖水地方の中でも宝石のような湖と呼ばれるコモ湖の中部にCRANCHI生誕の地がある、Bellagioだ。貴族たちに愛されたこの地は現在でも世界のセレブリティやディレッタントがビラを構える究極のリゾート地。Giovanni Cranchiの創設以来5世代に亘ってボート創りにいそしんできた「Cantiere Nautico CRANCHI」は1970年にはコモ湖北東部のPiantedoに本社ファクトリーを移し、1997年にはアドリア海Nogaroにテストセンター、さらに2009年には本社近くのRogoloに25mクラスの大型艇工場を新設し発展を続けている。日本では逗子マリーナとシーボニアマリーナを運営するリビエラリゾートが2015年にインポートを開始して以来、15艇が湘南の海にいる。

カーボンケブラー製のTトップ

 初夏の湘南、時折の雨も上がり空気も光も夏の趣きを漂わせている。北東の風が卓越し始めているが陽光はすっかり夏。E56F-Evoluzione Tはエッジの効いたクリスタルなフォルムで佇んでいる。メタリックシルバーのメインカラーと舷窓やサイドウィンドウのブラックが実にクールなインパクトを与えている。シャープな直線基調のフォルムはハル設計のAldo Cranchiをリーダーとするインハウスデザイン。フライブリッジ上の新たなカーボンケブラー製のTトップもベストマッチだ。なんともグラフィカルでハイテックな印象を醸し出している。

 乗船する。チークの貼られたスイミングプラットフォームはもちろんチルトダウン可能。シートイガレージの両側から2ステップアップでアフトコクピットへ。右舷サイドに電動ギャングウェイがある。ガレージの上はサンパッドにソファ。左舷にフライブリッジへのなだらかなラダーがある。ステップにはチークフロア同様無垢材のウッドステップが生かされている。その背後にサードヘルムが潜んでいる。ジョイスティックとバウスラスター、着岸に至極便利だ。

 サロンは濃いブラウンのブラックオークのフローリングフロア、両舷にはゆったりとしたファブリックのソファとテーブルが対面して置かれている。リビエラ仕様としてインテリア素材にPoltrona Frau(ポルトロナフラウ)を選ぶこともできる。同じくオーディオにBang&Olufsen(バング&オルフセン)を選択することも可能と嬉しいビスポークが用意されている。左舷サイドは前方に1脚のキャプテンシートを持つヘルムステーションがあり、アフトコクピットから見通せる。右舷サイドはサロンエリアの前方がクリスタルなパーティションに遮られ見通せない。その先はアップギャレーが用意される。ギャレー前方にはL字のダイネッティシートにテーブルがある。キャプテンシート背後にはロアフロアへの緩やかなアプローチラダーが回り込む。パーティション前方に用意されるギャレーは右舷ウィンドウサイドに大型冷蔵庫に4バーナーのグリル、その下にオーブン。中央サイドにシンクとカウンターテーブル、その下にワイングラスやシャンパングラス、食器類のストレージがある。プレートはBAUSCHER、グラス類はZWIESELのドイツ製、カトラリーはINOX FORGEとイタリア製とこだわりを見せる。更にデッシュウォッシャーも潜み左舷にはワインキャビネットがある。このメインフロアの素晴らしさは、グリーンエリアの広さがもたらす採光の良さが明るい室内を作り出していることだ。設えのふとした意匠に研ぎ澄まされたアートフルな感性が漂う。

ビスポーク可能なサロンに、シャープなハル形状が実現した37ノットのスポーティネス!

 メインヘルムにはバケットタイプのキャプテンシートが1脚のみ用意される。着座位置は高め。フロントウィンドウは広大な1枚ガラスだ。下方まで切り込まれ極めて見通しは良い。左右の視界もサイドウィンドウの切込みがデザイン上からでなく実効性として死角を無くす効果を発揮している。コクーンを思わせるコンソールも小粋なイメージだ。インスツールメントパネルは上部にVOLVO PENTA D11エンジンのアナログな丸いレブカウンター2基を正面に、燃料、左右の水温、左右の油圧の5連丸メーターが並ぶ。その下に21インチのRAYMARINのレーダー&GPSプロッターのマルチモニターが据えられ、その右にオートクルーズユニットがセットされ、3スポークのステアリングホイール前には両舷エンジンのデジタルモニターが並ぶ。その右にジョイスティックレバー、更にHUMPHREEのオートトリム、ステアリング右にIPSドライブのD11-IPS950、750ps×2基のエンジンコントロールレバーがセットされる。バウスラスターレバーはステアリングポスト左下に。SEAKEEPERユニットモニターはエンジンモニター左に潜んでいる。

 ロアフロアは3ステートルーム。バウにはVIPステートが設えられる。右舷前方には2ベッドのゲストステートが用意されている。ミジップにはビームいっぱいのオーナーズステートがある。シービューウィンドウを両舷に備えアイランドベッドは右舷サイドを頭にセットされている。パウダールームはウッドチェアを備えるシャワースペースを持つ。ウォークインクローゼットを持つエレガントな設えがうれしい。

 フライブリッジはリラクゼーションゾーンとして解放感にあふれ、心地よさをテーマに設えられている。広々としたフロア後部にはコの字のゆるやかなソファがある。この下はメインフロアのアフトコクピットのエンドに位置している。左舷にはBBQグリルにウェットバー、製氷機と冷蔵庫のカウンターボックスがセットされる。右舷センターにヘルムステーションがある。その前方と左舷にはサンタンベッドが敷かれている。2人掛けのヘルムシートの前にはコクーンをイメージしたコンソールがある。ステアリングの前にはレーダー&GPSのマルチモニター、オートクルーズユニット、ジョイスティック、その下に左右のエンジンデジタルモニター。オートトリムスイッチ。右にはエンジンコントロールレバー。左にはバウスラスターレバーが用意される。使い勝手のいいヘルムが用意されている。キャプテンシートに座る。フライブリッジの中央部に位置し絶妙なポジションであることに気付く。

シートライアルに出航

 ヘルムはフライブリッジのアッパーヘルムで。あらためて見まわす。全長17.20m、全幅4.85m。バウからアフトまでの見通しは良い。ジョイスティックでの横移動離岸から回頭、デッドスローでゆっくりマリーナを脱出。安全浮標の先までのコリドーを1,000rpm-9.3ノット-燃料消費35L/hで走行。初夏の溢れる太陽光が深いブルーに相模湾をきらめかせている。北北東の風が卓越してきている。ところどころ白波が目立ち始めている。波高1mうねり1.5m。江の島を右に見ながら沖出しをする。

 1,250rpm-10.5ノット-72L/h、1,500rpm-12.3ノット-124L/h。VOLVO PENTA D11-725psのパワーユニットとポッドドライブの組み合わせ。IPS950×2基。インボード950psに匹敵する高効率ドライブユニット。低燃費高効率はこのクラスで更に効果的な結果を見せる。スロットルレバーを押し込んでいく。タイムラグのないまま溢れるばかりのトルクに満たされ、一気に加速しプレーニングしていく。HUMPHREEのオートトリムを効かせる。1,800rpm-18.6rpm-165L/h、2,000rpm-24.1ノット-178L/h。時折波の底に突っ込み派手なスプレーが上がるがヘルムへの影響はない。ジャイロスタビライザーはSEAKEEPERを搭載、安定した姿勢を保ち続けている。

 ステアリングを切り込んでターンを試みる。ターンインは想定以上のインサイドバンクを伴いながらターンに入る。その先は安定した姿勢を保ちながらトレースを続けていく。これに慣れるにつれそれがスポーティさとなり快感を生みだしてくる。更に300rpmエンジン回転を上げる、加速が加わる、2,300rpm-31.8ノット-238L/h。直線走行の痛快な加速感は更に最高速への試みを即してくる。ディープV、2条のチャイン、まるでアメリカンカスタムスポーツフィッシャーのようなシャープな船底側面を持つハル形状。細身のビームと相まってスポーツ特性を際立たせる設計と感じさせる。2,515rpm、トップスピードは追い風とはいえ37.1ノット!、燃費284L/hを記録した。

 回転数を2,000rpmに固定しヘディングを南にセット、オートクルーズをオン。伊豆の島巡りをゆったりと堪能してみたくなる。さあ心のサルディニアへコスタスメラルダへ更に南下しよう。にぎわう真夏の前に露天風呂と夕陽を楽しもう、さあ新島へ。美味しいワインとシーフード、このギャレーを生かして美食を作る仲間も来てくれる、夏はもうすぐそこだ。

CRANCHI E56F Evoluzione T-top
全長 17.20 m
全幅 4.85 m
喫水 1.25 m
重量 23.30 ton
エンジン 2× VOLVO PENTA D11 – IPS950
最高出力 2× 725 HP
燃料タンク 1,850 L
清水タンク 520 L
問い合わせ先 リビエラリゾート リビエラ逗子マリーナ
TEL: 0467-24-1000
www.riviera.co.jp/marina/sales/

PerfectBOAT 2021年8月号掲載
https://www.fujisan.co.jp/product/1281681872/b/2133780/