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The Cannes! – CANNES YACHTING FESTIVAL 2021

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秋はヨーロッパと北米のボートショーシーズン。
例年その幕開けを告げるのが南フランスCannesにて開催される「CANNES YACHTING FESTIVAL(カンヌ ヨッティング フェスティバル)」である。
2020年はCovid-19の影響によりキャンセル。2年ぶりのショーは、9月7日~12日の6日間、Vieux PortとPort Cantoの2会場に分かれて開催された。
出展575社、展示620艇、うち141艇がワールドプレミアという豪華なフェスティバル。
公式レポートから紹介しよう。

text: Atsushi Nomura photo: Yachting Festival Cannes – Abracadabra Studio, Exhibitors
special thanks: CANNES YACHTING FESTIVAL  www.cannesyachtingfestival.com

2年ぶりに戻ってきた「YACHTING FESTIVAL」
再びここカンヌから2022年のマリタイムが始まる

 ヨーロッパと北アメリカのマリン業界におけるカレンダーは、徐々に通常を取り戻しつつあるようだ。去る2021年9月7日~12日まで、地中海に面した南フランスのCannesにて「CANNES YACHTING FESTIVAL 2021(カンヌ ヨッティング フェスティバル2021)」が開催された。2020年は直前ぎりぎりまで開催を検討していたが、8月下旬にキャンセル発表。当時のフランスのパンデミック状況を考えればやむを得ない中止だった。その他の欧米の主要なボートショーも開催、中止の判断が分かれ、リアルなショーは縮小し、バーチャルショーを充実させるなど、さまざまな工夫が見られた一年だった。

 2021年に入ると、概ね開催の方向で進んでいるように思える。特にヨーロッパと北米では、昨年中止されていたショーも春先から各地で復活。日本も例外ではなかったが、やはりマリン先進国と言われるヨーロッパ諸国のボートショーの復活は早かった。

 そして9月、ヨーロッパでも最も著名なボートショーのひとつである「CANNES YACHTING FESTIVAL 2021」が無事開催された。このショーが注目を集める理由は、発表されるニューモデルの多さ、そして実際にシートライアルが可能な環境、この2点が大きい。特にニューモデルについては次シーズンに向けたプロモーションスタートのタイミングとしては最適であり、特に地中海をメインマーケットにしているボートビルダーは、CANNESをターゲットにニューモデル開発のスケジュールを組んでいる。

 さらに北欧系のビルダーは春先のドイツDüsseldorfでニューモデル発表を行うケースが多いものの、Düsseldorfはドーム内展示のみ。ゆえにシートライアルが行えるCannesはヨーロッパのみならず世界から注目を集めるショーとなり、世界中のボートメディア、ディーラーが集結するのだ。Cannesには100フィートを超えるスーパーヨットも数多く展示されるが、ミドルクラス以下の日本でも一般的なサイズが多いのも特徴。この後開催されるGenoaやMonacoのショーよりも、日本のユーザーにとって注目度の高いサイズが集まる点も見逃せない。

620艇のパワーボート&セーリングボートが展示

 今年のショーには575社が出展、620艇のパワーボート&セーリングボートが展示された。一般入場者も多く、ソーシャルディスタンスやら、マスクやらはどこへ……という印象だ。もちろんマスク姿もあるが、全体としては二年前の会場風景とあまり変わらない。

 その会場は今年も二つに分かれて開催。メイン会場のVieux Portには3~50mのレンジの480艇のパワーボートが集結、カタマラン、RIBなどの専用エリアも設けられた。セーリングボート会場は少し離れたPort Canto。展示110艇の他、ブローケージでは約30艇のメガヨットの販売も行われた。6日間の開催でのべ54,400名が入場、うち半数が海外からの来場者だという。これらの数字は、2019年とほぼ変わらない数だとか。実際、2019年に比べると出展社7%減、展示艇4%減とわずかに減少したものの、ワールドプレミアは141艇(内20艇がセールボート)で10%増というから羨ましい。また、エコロジーをコンセプトとする新たなテクノロジーも積極的で、エレクトリックボートの展示も目立っている。さらにチケットやパンフレットのペーパーレス化、カーペットや看板のリサイクルなど “持続性” にも着目したショーとなった。

ワールドプレミア艇

 ここからは注目のワールドプレミア艇を紹介しよう。まずは地元フランスのボートビルダーから。フランス最大のボートビルダーBENETEAUは「Gran Turismo 45」と「Grand Trawler 62」をプレミア、JEANNEAUからは「Cap Camarat 7.5 WA Serie 3」が登場した。PRESTIGE YACHTSは「690」がプレミア。カタマランのFOUNTAINE PAJOTは「MY 4.S」をリリース。またBALI CATAMARANSは「BALI 4.2」を発表。水陸両用RIBのIGUANA YACHTSは「X100」を発表。さらにカタマランのVISION YACHTSからは「F80」が発表された。

 続いてイタリアンビルダー。ABSOLUTE YACTHSは「48 Coupé」と「60 FLY」の2艇、老舗ビルダーAPREAMAREは「Gozzo 35 」をワールドプレミア。AZIMUT YACHTSは「53」がデビュー。FERRETTI YACHTSからは「780」が登場。PERSHING YACHTは「6X」をリリース。RIVA YACHTは「RIVA 68 Diable」など3モデルを新投入した。

 さらにイギリスのラグジュアリークルーザービルダーPRINCESS YACHTSからは「PRINCESS Y72 」がデビュー。ドイツのHANSE YACHTSはRYCKというニューブランドを立ち上げ「RYCK 280」というパワーボートをリリースした。同じくHANSE傘下のクルーザーブランドSEALINE YACHTSからは「C390」が登場。またポーランドのラグジュアリーカタマランSUNREEF YACHTSからは「60 Power」が発表された。

 また、他の地中海エリアからはチュニジアのカタマランビルダーAVENTURA CATAMARANが「14 Power」を発表。スペイン メノルカ島を本拠とするSASGA YACHTSは「Menorquin 42」をリリース。トルコに本拠地を置くSIRENA YACHTSは同社としては2番目のサイズとなる「SIRENA 68」を登場させた。

 北欧からは、日本でもお馴染みのフィンランドデザインAXOPARから新シリーズの「22」と「BRABUS Shadow 900 XC Cross Cabin 」が登場し、新たなフラッグシップ「AXOPAR 45」も発表。同じくフィンランドのラグジュアリーセーリングボートビルダーNAUTOR’S SWANは初のパワーボート「SWAN Shadow」をリリース。SWAN同様、セーリングボートブランドとして名高いデンマークX-YACHTSも「X-POWER 33C」というパワーボートを初投入してきた。

 今年の傾向は、フロント逆傾斜のラグジュアリーSUVタイプの増加、セーリングボートブランドのパワーボート投入、そしてカタマランなどマルチハルのいっそうの増加。地中海のマルチハルブームはまだまだ収まりそうもない。来年こそは日本からも取材に行き、シートライアルが行えることを強く願っている!

PerfectBOAT 2021年11月号掲載
https://www.fujisan.co.jp/product/1281681872/b/2169292/