SILVER YACHTS 85m “Bold” – Captain Nigel’s Mega Choice #131

英国海軍からチャーターヨットまで様々な船を渡り歩き、これまで30万海里以上にもなる航海経験をもつキャプテン・ナイジェル。
世界のトップセレブリティを相手にチャーターやコンサルティングを手がける彼が、
独自のネットワークでつながるメガヨットの世界を紹介する。壮大かつ華麗な、メガヨットワールドをご堪能あれ。

text: Captain Nigel Beatty photo: SILVER YACHTS

SILVER YACHTS 85m “Bold”

　2012年と2016年に2隻の素晴らしい77mのヨット〈Smerelda〉と〈Silverfast〉を紹介した。当時、オーストラリアの「SILVER YACHTS（シルバーヨット）」はエクスペディションスタイルのヨットをデザインしていたが、それを建造しようとする客はまだ現れなかった。

　だが、ここへ来てついに〈Bold〉という名の世界最速のエクスペディションスタイルのメガヨットが誕生することとなった。このヨットは世界最速なだけではなく、世界で最もイケてるヨットだと私は思う。エクスペディションスタイルが好きな私が一目惚れしてしまったのが、この85mのモダンなスタイルが目を惹くヨットだ。このヨットのアイデアは、経済的で、ヘリコプターが格納でき、船内外にゆったりとした空間を持ち合わせたタフなワールドクルーザー。素材はリサイクル可能なアルミを使い、航続距離は8,000マイル、たった一回の給油でオーストラリアからヨーロッパまでの航海が可能だ。

　このヨットには、「SAV」、スポーツアクティビティベッセル（Sports Activity Vessel）といった形容が相応しいだろう。長さ34mにも及ぶ広大なデッキスペースには複数のテンダーと8人乗りのツインエンジンヘリコプターの格納が可能だ。デッキのオープンスペースは合計400平方m、そして12,000kgのクレーンがどんな機器や器具でも持ち上げてくれる。デッキの前方はヘリコプターガレージとなっているが、パーティールームや映写室としても使うこともできる。

　社交スペースはもう少し上にいったところにある。一番上にはサンパッドとスパプールが設置されている。また、ファイヤーピットにもこれまた映画などを楽しめる施設が揃っている。デッキを一つ降りるとそこはブリッジデッキとなっており、オープンデッキエリアにはヘリコプターをもう1機置くことができる。ヘリコプターがそのデッキを使用しない場合はアウトドアバーとバーベキュースペースとして使うことが可能だ。

　このヨットの目玉はオーナーのデッキだろう。このデッキ後方は広いテラスとなっており、天窓を開けると爽やかな風が駆け抜けるのが気持ちい。もちろん、気温が低い時はしっかりと密閉されそこから降り注ぐ自然の光でサロンを明るく暖めてくれる。

　同じデッキ上にオーナーのスイートもあり、そこは完璧にプライベートな空間となっている。オーナーのキャビンはシンプルラグジュアリーという言葉がふさわしいだろう。静かで落ち着いたスペースなのは、SILVER YACHTSがテクノロジーを駆使してエンジンや重機などから起こる騒音を遮断しているからだ。

　メインデッキにはエレガントなゲストキャビンが7室。全てにバスルームが備え付けられている。それに加えて病室としても使えるマッサージルームもあり。全てのキャビンにはかなり大型の窓が設けられている。

　ロアデッキは22名のクルーが生活できる空間となっている。そこにはキャビン、クルーラウンジ、スチュワーデスオフィスなどがある。ギャレーには食品用のエレベーターも設置されている。それに加えてランドリールーム、大きな食料倉庫に冷凍冷蔵庫も完備。おおよそ5ヶ月分の食糧などを保管できる。フォワードのクレーンは食糧を積んだパレットを持ち上げてハッチ内に下ろすことができ、このハッチにはジェットスキーやセイリングディンギーも格納されている。ロアデッキからはエンジンルームやビーチクラブにアクセスすることができる。

　〈Bold〉のトップスピードは24ノット、クルージングスピード18ノットで5,000マイル航行可能だ。エンジンは2基のMTU 16V 4000 M73L。それぞれ2,880kw（3,900hp）のパワーを出すことができる。最新のナビゲーションテクノロジーに水中カメラ「ドルフィンカム」などのカメラも装備されている。

　見れば見るほど惚れてしまう〈Bold〉は、どんな状況であっても最高のヨットだ。ついに「SAV」が誕生したわけだ。このヨットはアドベンチャー好きを世界中のどこへでも案内してくれる。そしてもちろん、最高のラグジュアリーさも兼ね備えている。〈Bold〉はとにかく、「かっこいい！」の一言に尽きるヨットだ。 P.B.

SILVER YACHTS 85m “Bold”
全長　85 m / 278 ft
全幅　11 m / 36 ft
喫水　2.8 m / 9 ft
重量　1,504 tons
構造　Aluminum Hull / Aluminum Superstructure
エンジン　2× MTU 16V 4000 M73
出力　2× 2,880 kw
トップスピード　24 kt
クルージングスピード　18 kt
レンジ　5,800 NM at 14 kt
燃料　176,000 L
清水　34,500 L
ゲスト　16 in 8 cabins
クルー　22 in 13 cabins
ビルダー　SILVER YACHTS
建造　2019
ナーバルアーキテクト　Espen Øino International
エクステリア　Espen Øino International
インテリア　Vain Interiors
船級　 Lloyd’s Register

Captain Nigel Beatty
Profile　ナイジェル・ビーティー：1969年、英国ベッドフォード生まれ。高校卒業後、欧州放浪の旅にでる。その後、英国海軍に入隊。航海術や操船術などを学び、海軍ヘリコプターコントロール専門の統制官になる。5年後、バハマでスキューバダイビングのボートキャプテンとなるべく英国海軍を退役。1997年にヨット界に飛び込み、ヨットキャプテンになる。英国MCA3000トンのキャプテンライセンスを所持。これまでにメガヨットのキャプテンとして、米国東海岸、バハマ、タークス・アンド・ケイコス、カリブ海、日本、中南米、地中海、インド洋、ペルシャ湾を航海し、航海経歴は30万海里以上におよぶ。2004年、スーパーヨットロジスティクス(SYL)を立ち上げ、ヨットセールス、チャーターコンサルティング、マリンパーツ販売を手がける。急速に拡大し、日本、フロリダ、オーストラリア、イギリスに拠点を置く。プロジェクトマネージャー、テクニカルマネージャー、リフィットマネージャーとして数多くの新艇プロジェクトも実施している。2008年、新人メガヨットキャプテンのインストラクターに就任。2009年には新キャプテン最終試験官に就任し、後輩キャプテンとなる生徒をビシビシと厳しく指導した。10年以上にわたり、日本だけでなく海外で、メガヨットのセールス、チャーター宣伝活動に注力している。2017年にはメガヨットセールス、チャーターを専門とするYACHTZOO TOKYO を立ち上げた。YACHTZOOはモナコをベースとしフロリダ、ロンドン、オークランドに拠点を持つ。目下、日本語誠意勉強中。日本語力はまともな焼酎を注文したり、間違えずに電車に乗れるくらい上達した。SUPER YACHT LOGISTICS JAPAN 050-5539-7667（日本語） USA +1-954-990-0094（日本語）　e-mail: info@superyachtlogistics.com　www.superyachtlogistics.com