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BOAT&YACHT

JACK 50

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オーナーの夢をめいっぱいに取り込んだオリジナル・カスタムボート。50フッターの究極のフィッシングマシーン。

text: Atsushi Nomura 
photo: Makoto Yamada
special thanks: Creation .Co.,Ltd
https://creation-marine.co.jp

ボートオーナーであればいつかは夢見る自分のためだけに造られた世界に唯一のオリジナルのマイボート――カスタムボートは、ボートオーナーにとっての究極の姿である。オーナーの嗜好や用途によって自由にアレンジできるカスタムボートは、世界的に見ればかなりポピュラーな存在であるが、価格や手間、オーナー自身のボートや海への知識量なども必要とされ、いきなり飛び込むにはややハードルの高い世界でもある。しかしながら、そういったさまざまなハードルを押し下げてくれるカスタムボート・パッケージとも言うべき存在がある。(株)クリエイションが手がける「JACK(ジャック)」シリーズである。JACKは同じ冠名を持ちながらも1艇1艇がそれぞれまったく異なる個性を持っている。

堺市に本拠地を置くクリエイションは、長年、台湾の数々のボートビルダーと深い関係を築き上げてきた。現在では台湾メイドのボートといえば世界でも屈指のブランドに成長し、建造隻数・建造艇長数を誇ることで知られているが、その黎明期から関わりを持ってきたのがクリエイションである。同社ではこれまでに「INFIN(Iアンフィニ)」に代表されるオリジナルのプロダクションシリーズを数多く展開。セールボート、パワーボート、さらにはスーパーヨットまでプロデュースしてきた実績がある。そんな中でクリエイションは、既存のプロダクションベースのボートには無い、顧客ごとに異なるオリジナリティ、カスタマイズなどへの要望に柔軟な対応してきた。結果としてカスタムボートへの対応力は国内でも屈指の存在となっており、“One mold one boat”をコンセプトとするJACKというカスタムボート・パッケージが誕生した経緯がある。クリエイションが、JACKにおいてタッグを組んでいる相手は台南にあるドラゴンヨット。ドラゴンヨットは1986年創業、これまでにグラスファイバー製の観光船や旅客船などを数多く手掛けてきている。特に簡易モールドの製造に定評と実績があり、“One mold one boat”にはまさにうってつけ、カスタム製造に特化したボートビルダーと言える。JACKはそのデビューから10年以上の月日を経ているが、ドラゴンヨットの建造クオリティは年々良化しているように思う。また、そのほとんどのモデルを日本を代表するボートデザイナーである薄雅弘氏がデザインしている。

JACKの場合、たとえばオーナーの要望がフィッシングであれば、その釣り方やフィッシングエリア、時には係留エリアの状況にまで踏み込みカスタマイズしていく。オーナー、デザイナー、プロデューサー(クリエイション)……作り手側と買い手側とが強いこだわりを持ち、その結晶として生み出されるのがJACKシリーズと言えるのだ。

今回ご紹介するのは「JACK50」。全長15.85mで実船長は52ft近くあるボリュームのあるフィッシャーマンだ。こちらも薄氏によるデザインだがハル自体の基本設計は以前建造された「52」をベースとしているとのことで、スーパーストラクチャーに大幅な変更が加えられている。もっともJACKは“One mold one boat”であり、今回の試乗艇についても新たなモールドから製造されている。主要諸元は全長15.85m、全幅4.55m、喫水0.95m、パワートレインはツイン・インボードVOLVO PENTA D13(1,000HP)を搭載。燃料容量は4,000L、清水容量は300Lとなっている。

デッキレイアウトは、ウォークアラウンド・センターキャビン(パイロットハウス)の構成でFBの無いハードトップ仕様。ハードトップ上にはレーダー・アンテナの他、独特の形状をしたマストを、さらに両舷には大型LEDライトを配置。アウトリガーも取り付けられている。バウフレアの広がりが特徴的でフォアデッキはかなり広々としている。最前部にアンカーロッカーがあり全体をバウレールが囲う。またアフトも含めデッキ面全体とコーミングトップはグレー&ブラック仕様のプラスチック製チークとなっている。アフトデッキは深めのブルワーク囲まれ中央にはファイティングチェアをセット。オーナーはフィッシングに特化した利用を考えて今回のJACKをオーダーしており、かなり細かな点までこだわっている。たとえばステーションの位置と数。サロン内前部にヘルムステーション、パイロットハウス後部右舷にセカンドステーション(ここのデザインもオーナー自ら行ったそうだ)が配置されているのは一般的だが、このJACKにはもう2つ簡易ステーションが設置されている。1つはフォアデッキの右舷のパイロットハウス側、ちょうどサイドデッキとの境目辺りに、もう1つはアフトデッキ右舷ブルワークに埋め込まれている。前者のステーションは目の前のバウレールも開放でき、ブルワークトップにはロッドホルダー用のマウントも設置されている。フォアデッキの高さ的にも離着岸時の利用というより、ボトムフィッシングなどで使うことが前提だろう。後者も同様でこちらもフィッシングでの利用を、すなわち文字通り「手前船頭」で釣りが愉しめてしまう工夫がなされている。どちらの簡易ステーションもシフトレバーとジョイスティックが装備されている。さらにアフトデッキには海水循環タイプのイケスが合計3箇所に配置されている。またセカンドステーションのあるボックスにはシンク、冷凍庫、製氷機なども備える。

続いて室内を見ていこう。パイロットハウス後部のドアを開けるとまずメインサロンとなる。サロン右舷にはソファと簡易テーブル、左舷には大型ロッカー、最前部左右にそれぞれ独立したパッセジャーズシートとドライバーズシートとが並ぶ。右舷側にメインのヘルムステーション。シートの間にロアフロアへ通じるアクセスステップが来る。特にオーナーのこだわりを感じられるのが、左舷の大型ロッカーだ。ロッド類の収納および各種タックル類の収納スペースとなっているのだが、リールやルアーなどのサイズに合わせ、まるで和箪笥のような工夫がなされている。文字通り圧巻のこだわりの大型ロッカーだ。ドライバーズシートとパッセジャーズシートはSTIDD製、ヘルムステーション周りは2面の大型ディスプレイの他、VOLVOなどの各種計器類が並び、ISOTTA製ステアリングホイールを搭載。またセカンドステーションなども含めてZFSmartCommandSystemを採用しており、油圧式のバウ&スターンスラスター(SIDE POWER Hydraulicbow & Sternthruster)と連動している。またトリムタブはVOLVO Auto Trim Tabだ。

ロアフロアへ下りると左に広々したダウンギャレーがある。ここにはコリアン製カウンタートップを中心にシンク・家庭用冷蔵庫・IHクッキングヒーター・電子レンジなどを配置。その前部に独立したシャワールームが来る。また最前部のフォアキャビンは左舷に上下2段のシングルベッドを配置、右舷側に独立したヘッドルームを擁する。ロアフロアの右舷側はマスターステートルームとなっており、右舷側に寄せた配置のダブルベッド、ストレージなどがあり、前寄りには個室ヘッドルームが備わっている。サロン、2キャビンという構成は50ft艇としてはかなり贅沢な作り。しかもそれぞれにヘッドルームを設け、共通の個室シャワールームまで備わる。こういったキャビン数へのこだわりも自分の用途をはっきりと意識しているオーナーによるカスタマイズならではと言えるだろう。

JACK 50のパワートレインは前述のようにインボーVOLVO PENTA D13(1,000HP)を2基搭載している。堺港奥のクリエイションの桟橋をデッドスローで離れ、沖合いのシートライアル水域へと向かっていく。途中からステアリングを握り、徐々にスピードを上げていく。1,000rpmで11.0kt、徐々に加速し始め、わずかなハンプを見せながらスムーズにプレーニングしていく。1,400rpmで18.5kt、1,600rpmで23.8kt、1,800rpm27.7ktに達する。この辺りからクルージングスピードだ。2,000rpmで30kt、2,200rpmで34kt、2,400rpmで37.4ktに達する。プレーニング以降は全速度域で非常に安定しており、スムーズなマニューバが可能だ。1,800rpm程度へ落としてスラロームや急旋回を行う。とてもスムーズ。そして適度に傾くためとても身体にも優しい。右舷側のやや高い位置にヘルムステーションがあるが、後方視界、特に左舷後方も良く見える。左へ急旋回する場合も不安なく視界を確保できるのはさすがだ。続いて2,200rpmまで速度を上げて同様の旋回マニューバを行ってみたがやはり安定感がある。落ち着いた挙動で安心して走らせられる。旋回半径もかなり小さめ、50フッターとは思えない軽快な走りとともに非常に好印象だ。オートトリムタブも効きが良く使いやすい。シートライアル当日はほとんど波・風も無かったため自船の引き波や時折通る本船の引き波に当ててみたが波当たりは実にソフト。波に当たれば、もちろん衝撃はくるのだが、衝撃そのものは非常にソフトで、ある程度速度が出ていても音も含めて静かだ。冒頭でも触れたがドラゴンヨットの建造クオリティの良化は、インテリアや細かな部分だけでなく、艇体自体のバランスや作り込みにも現れている。

その他、JACK50にはONAN17.5kWジェネレーター、GARMIN製オートパイロット、22000BTUマリンエアコン、MC2 QUICK GYRO MC2X16アンチロール・ジャイロ・スタビライザーなどを搭載。ほぼすべての備品のチョイスにおいてオーナーの用途と意向を反映させている。今回試乗したJACK50は、オーナーが想定するであろう各種釣りに対し、究極の機能と使い勝手が備わったフィッシングマシーンである。そこにはプロダクション艇には不可能な深いこだわりと、自分の用途に見合ったあっさりした割り切りを感じられるし、なによりもそのオーナーならではの夢がいっぱいに詰まっている。カスタムボートは、いきなり1艇目のマイボートにするよりも、さまざまなボートを乗り継いでから到達した方が、用途の見極めなども含めて満足度は高いように思われる。しかしプロダクション艇では味わえない自らボートを作るという楽しみがあるのもまた事実だ。通常、JACKの工期は2年程度で建造可能。自分の使い勝手に合わせ、“Onemoldoneboat”の世界に唯一のマイボートを作る、そういったオーナーの夢を実現してくれる究極のカスタムボー
トシリーズである。P.B.

JACK 50
全長 15.85m
全幅 4.55m
喫水 0.95m
燃料容量 4,000L
清水容量 300L
エンジン 2 × Volvo Penta D13
最大出力 2×1,000HP 問い合わせ先 クリエイション
TEL:072-223-5884 
https://creation-marine.co.jp

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