1. HOME
  2. BOAT&YACHT
  3. SAXDOR 270 GTO
BOAT&YACHT

SAXDOR 270 GTO

BOAT&YACHT

2019年フィンランドに登場した「SAXDOR(サックスドール)」。発表後すぐに「Best of Boats」、「European Power boat of the Year」、「Motor Boat Awards」の世界3大アワードをはじめ、各国のアワードを次々と受賞。そして2023年、世界の注目を集めるSAXDORがついにジャパンプレミアを果たした。シートライアルの第一弾は「SAXDOR 270 GTO」。日本総代理店「アドカスタムヨット」とともに、日本のアーキペラゴ(多島海)を疾走する。

text:Yoshinari Furuya 
photo:Kai Yukawa 
special thanks:AD CUSTOM YACHT
https://adcustomyacht.com

世界的なトレンドを創る北欧フィンランドからのニューカマー「SAXDOR」カッティングエッジなデザイン、優れたパッケージ、そして剛性の高いソフトライドに驚かされる

シートライアルは、「SAXDOR(サックスドール)」の日本総代理店「アドカスタムヨット」の本拠である瀬戸内海で行われた。アドカスタムヨットのベースは、広島県と愛媛県を道路で結ぶしまなみ街道で繋がる「生口島」。現在は、上下架用のクレーン車が用意されたヤードだが、今後アドカスタムヨットのショールームを兼ねたマリーナを建設する予定地だ。そしてシートライアルの海面は、生口島の南、大三島、伯方島、津波島、赤穂根島、岩城島に囲まれた入江。フィンランドのアーキペラゴを彷彿とさせるロケーションで行われた。

クレーンで吊り上げられた「SAXDOR 270 GTO」。下から見るボトムの特徴は、バウステムのすぐ後ろから始まる2本のリフティングストレーキとダブルのステップが備わる細身のチャイン。一段高い位置には静止安定性を高めるワイドなチャイン。ダブルのチャインが飛沫を落とし、デッキをドライに保つ。また、水線長を最大化し、エントリーを目一杯前方に伸ばしたボトムデザインは、多くのフィンランドボートも採用するスポーティなハルデザイン。他のフィンランドボートと異なるところは、垂直から10度マイナスに傾くバウステム。セールボートやメガヨットの一部にも見ることができるカッティングエッジなデザインがSAXDORのキャラクターだ。

トランサムには、黒く輝く225馬力のMERCURYアウトボード。その左右には、トランサムから550mm後方に延びるスイムプラットフォーム。ポンツーンからの乗り降りや水遊びだけでなく、エンジンの点検やプロペラのトラブルにも対処することができる。

アフトデッキへは一段上がり、トランサムゲートを開きエントリー。強化ガラスにチークトップのトランサムゲートが、北欧スタイル。左右のドアを開けアフトデッキに入ると、最後部にはアウトドアギャレー。2口の電気コンロとシンク、カウンター下にはリフリジェレーターが備わる。そのすぐ前方に3脚のボルスターシート。二つに折りたたむことができる1,200mm×610mmのチークテーブルを挟み、前にヘルムシートとナビゲーターシート。ヘルムの二つのボルスターシートはフリップアップし180度回転させることができる。対面で5人が食事をとることができるテラスダイニング。また、コクピットやアフトデッキ全体を覆うのは、2,140mm×3,300mmに及ぶフルビームのTトップ。ワイヤーで強く張られたソフトトップは、軽量でありながら、バタつくことはない。そして、左右ブルワークにはサイドウィンドウ。視界を確保しつつ、飛沫や風からコクピットを守ってくれる。

センターコクピットの左右は、非対称のサイドデッキ。スターボードサイドは、デッキが高く、上段はキャビンの採光のためのグラストップ。ポートサイドは3段のステップを上がりバウデッキに移動するためのエントリー。高目のバウデッキは全体が最大幅1,500mm、長さ1,250mmのサンタンベッド。バウデッキ前方に2本のポールを立て、シェード後端をTトップに固定すれば、1,200mm×2,400mmの大型サンシェードを張ることができる。

コクピットのスライドドアを空け、バウキャビンに入る。27フッターでありながら、ボートステイも快適に過ごすことができるデザインもSAXDORが選ばれる理由。キャビン正面には、長さ1,950mm、最大幅1,730mmのダブルベッド。ベッド上のヘッドクリアランスは990mmと低目だが、入口付近の天井左右には同形のトップライトが二つ、スターボードサイドにもサイドデッキに設けられたトップライトが一つあり、自然光を取り込む。さらに、250mm×740mmのサイドウィンドウと、ベッド中央の天井には420mm×430mmのオープンハッチが備わる開放的な空間。コンパクトなキャビンだが、狭さや圧迫感を感じることはない。そして、スターボードサイドには、630mm×530mmのソファ。ヘッドクリアランスは1,000mm。ソファのクッションを跳ね上げると下にはトイレ。すぐ横にはミニシンクも備わる。個室ではないが、デイヘッドとしては、十分な装備だ。

ヘルムシートに立ちステアリングホイールを握る。バウスラスターを使い離岸。港の前は島々に囲まれた静穏な海面。スロットルを倒し加速する。

1,000rpmで5.3ノット、2,000rpmで7.5ノット。MERCURYのアウトボードは、機械音を鳴らしながら、静かに加速する。3,000rpmで11.5ノット。ノーズを上げることもなく、気付けばプレーニングに入っている。4,000rpmで21.5ノット。5,000rpmで30.0ノット。少し乱暴に引き波に入るが飛沫がかかることはない。ミストの巻き込みもなくデッキはドライ。トップスピードは、6,000rpmで37.3ノットを記録した。

クルーズスピードに落としターンに入る。正面の波を受ける時も、不規則な方向から押し寄せる引き波にも不安を感じることはない。チャインの効いた低重心の走り。安定したマニューバを描き、クイックなハンドリングにも、イメージ通りの自然な挙動を見せ、ファンドライブを楽しませてくれる。何より、剛性の高さに驚かされる。軋み音のないソフトライドもSAXDORの特徴だ。

今、世界が最も注目し、類を見ないスピードで成長を続けるボートビルダーSAXDOR。次にSAXDOR320も上陸を控えている。日本国内での盛り上がりはこれからだ。瀬戸内海をベースに、SAXDORが日本の海に革命を起こし、日本のボートカルチャーを豊かにしてくれるだろう。P.B.

SAXDOR 270 GTO
全長 8.45m(エンジン除く)
全幅 2.60m
喫水 0.92m
エンジン MERCURY FourStroke F225
最高出力 225HP
燃料タンク 300L
清水タンク 80L
問い合わせ先 アドカスタムヨット
TEL: 0845-25-1188
http://www.adcustomyacht.com

FROM FINLAND WITH Love

SAXDOR、それは世界を驚かせたSakari Mattilaのボートビルディングの現在進行形デザイン&マーケティングの天才Sakariが選んだ日本のパートナー「アドカスタムヨット」

photo:SAXDOR

2019年に突如現れ、世界的なアワードを受賞したSAXDOR。世界の注目を集め、急成長を続ける最もホットな新興ボートビルダーだ。ヘッドクォーターはフィンランドの首都ヘルシンキ。建造は、SAXDORのためにポーランドに設立された造船所。この造船所は、生産能力を上げるため、2022年、スバウキ経済特区内に10,000m²の広大な造船所を新設。両国合わせて400人以上のスタッフを雇用し、50カ国、70以上のディーラーネットワークを構築。たった4年という短期間で1,000隻を超える建造を果たしたSAXDORは、その後も続々とニューモデルを投入し、現在では年間1,000隻を目標にかかげ拡大を続けている。

SAXDORは、創業者でありチーフデザイナーを務めるSakariMattilaが立ち上げたボートビルダー。フィンランドにヘッドクォーターを置き、造船所をポーランドに持つビジネスモデルは、SakariMattilaが創業したもう一つのビルダーAXOPARと同じ。そもそもSAXDORは創業者Sakariの「S」、直近で創業し成功モデルを築いたAXOPARの「AX」、そして、共同創業者として初めて造船に携わったAQUADORの「DOR」を合わせた造語がブランド名。これはSakari Mattilaのボートビルディングの最初と最後。Sakari Mattilaの歴史であり集大成を意味している。ちなみにSakari Mattilaが創業に携わったAXOPARの名称も造語で、AQUADORの「A」、XO Boatsの「XO」、PARAGON Yachtsの「PAR」を合わせ作られたというのは有名な話。それまでの彼のボートビルディングの集大成を意味している。つまりSAXDORとは、AXOPARに含まれるXOBoatsやPARAGON Yachtsも含めたSakari Mattilaの歴史のすべて。そのノウハウの蓄積が、SAXDORを生み出したと言えるのだ。

SAXDORは、Sakari Mattilaの現在の理想を具現化したもの。設立直後のファーストモデルがメジャーアワードを受賞し、急成長を続けている。だが、成功の鍵は、革新的なボートデザインだけではない。拡販するための販売戦略が重要だ。それは広告代理店からキャリアをスタートしたSakari Mattilaだから成し得たこと。ボートビルダーを立ち上げる以前、Sakariはフィンランド大手の広告代理店に勤務し、フォルクスワーゲンをはじめシトロエン、ボルボ、GM、プジョー、IBMなどグローバルブランドのマーケティングを務め、業績を上げた経歴を持つ。

ボートユーザーのニーズに即したデザインを描き、建造システムの構築やプロモーションなど、スタートアップのノウハウを駆使し、SAXDORを成功に導く。SAXDORは、的確なマーケティングから生み出されたニューブランド。次々と現れては消えていく、経験の浅い新興ビルダーとは一線を画す完成度の高い製品作り。短期間でネットワークを構築する販売戦略。世界的ボートビルダーが生まれるのは必然なのだ。

世界各地のボートショーで注目を集めるSAXDOR。そして、その日本総代理店に選ばれたのは「アドカスタムヨット」。昨年までは、COVID-19やウクライナ戦争の影響で建造や流通が混乱し、販売開始も延期。だが遅れていた供給も追いつき、ついにSAXDORがジャパンプレミアを果たした。先陣を切り輸入されたのは、3つのモデル。一つ目は、SAXDORの名を世界に知らしめた20フィートの「SAXDOR 200Sport」。SAXDORのファーストモデルとなる200 Sportは、ヨーロッパやアメリカで出版される16のボート雑誌のエディターにより選考される「Best of Boats 2020」や、ヨーロッパ9カ国を代表するボート雑誌のエディターにより選考される「European Power boat of the Year 2021」など、世界が認める伝統のアワードを受賞した注目のモデル。もう一つは、SAXDOR 200をベースに、コンソールを大型化し、個室トイレを設置した「SAXDOR205」。ワイドに広がるフロントウィンドシールドなどエクステリアも充実させている。3モデル目は、今回紹介した「SAXDOR 270GTO」。手軽に出航できるファミリーサイズで、日本のマーケットにもフィットする27フッターは、フィッシングボートとしても使いやすい。これら魅力的な3モデルを第一弾として、アドカスタムヨットが日本に紹介するSAXDOR。その勢いに大いに期待したい。P.B.

■アドカスタムヨット(SAXDOR 日本総代理店) 
TEL:0845-25-1188 
https://adcustomyacht.com