
JEANNEAU DB37

CamilloGarroniとMichaelPeters、人気デザイナー二人によるカッティングエッジな「DBライン」サイドテラスは14秒でフラットに広がり、60フィートクラスに匹敵するビーチクラブになる「DayBoa(tデイボート)」を再解釈し、世界のトレンドに高めた、珠玉の37フッター
text: Yoshinari Furuya
photo:Makoto Yamada
special thanks: ODYSSEY MARINE
https://www.odysseymarine.co.jp
世界的に人気が上昇する「デイボート」や「ウィークエンダー」。そのトレンドは、ハイパフォーマンスでマニューバビリティの高いファンなオープンボート。デザインコンシャスなスタイリングはさらに自由に。オープンスタイルにミニマムなキャビンを設け、オーバーナイトができるラグジュアリーなアコモデーションが備わる。ボート本来の楽しみに回帰したスポーティなドライビングとオープンエアの爽快感が、多くの人の心を捉えたのだ。それは、大型のモーターヨットを所有する人たちにとっても魅力的なセカンドボート。ラグジュアリーなオープンボートの販売が世界的に拡大している理由だ。また、新興のビルダーがデザインを競い合うことで、革新的なデザインが登場。アワードを賑わせている。そのラグジュアリーオープンボートに世界的ビルダーの一つ「JEANNEAU(ジャノー)」が本気で取り組む。それが、JEANNEAUDBという名称で呼ばれるDayBoatシリーズなのだ。
「JEANNEAU DB37(ジャノーDB37)」は、2023年にワールドプレミアされたDBラインの2艇目となるモデル。ファーストモデルは、2022年に発表されたJEANNEAU DB43。DBライン初のDB43は、80年代に建造されていたDBの名を復活させ、JEANNEAU YACHTSのデイボートセグメントを再解釈したモデル。旧DBはランナバウトスタイルだが、新DBは、現代のトレンドを取り入れたオープンデッキスタイル。その新しく生まれ変わったDBラインのフラッグシップとして登場したのがDB43だった。
DBラインは、JEANNEAUの既存のパワーボートシリーズ(Merry Fisher、NCなど)とは異なる新しいスタイルを提案。Camillo Garroni率いるGARRONI DESIGNによるカッティングエッジなデザインと、Michael PetersのMICHAEL PETERS YACHT DESIGNによる優れた船体設計により、洋上でのマリタイムを特別なものにする。DBは、JEANNEAUの長い歴史とノウハウを受け継ぎながら、プレミアム・デイボート市場における新たなマイルストーンとして位置づけられた。

この衝撃的なファーストモデルDB43は、権威ある最古のボート雑誌MOTOR BOAT&YACHTING誌が選ぶ「Motor Boat Awards」や、アメリカとヨーロッパの16のボート雑誌によるボートテストで選考された「Best of Boats」、ヨーロッパを代表する9つのボート雑誌のテストライダーとエディターが選ぶ「European Power Boat of the Year」など世界3大アワードにノミネートされ世界の注目を集める。DB43のパワフルな走りとリュクスなデザインが、デイクルーズに最適なボートとして高く評価されたのだ。そして、JEANNEAU DB43に続く2モデル目が、今回紹介するJEANNEAU DB37。もちろん、DB37のデザインを手掛けたのも、Camillo GarroniとMichael Peters。カッティングエッジなデザインを継承し、品質に妥協することなく再設計したモデルがDB37なのだ。

トランサムステップから1段上がりオープンデッキを見渡す。ハードトップとハードトップの後方に950mm延長されたソフトオーニングに守られたテラスラウンジが広がる。37フッターとは思えない広さと充実したエクステリア。だが、DB37の全長11.84m、全幅3.55mという数値は、代表的なセンターコンソーラーと比較しても、特別に大きいわけではない。広く感じる理由はハードトップのデザインにある。一般的にセンターコンソーラーのハードトップを支えるステーは、コクピットの形状に沿うようにデザインされている。センターコンソールを支えにして、横方向の強度を高めている。そのステーは、サイドデッキより内側に設置されることになり、逆にサイドステーは外側になる。その存在は、サイドデッキの一部を犠牲にしている。だが、DB37のハードトップはブルワークと一体にデザインされたもの。コクピットと一体のフロントウィンドシールドからシームレスにハードトップにつながるデザイン。3方向を広く支えることで、前後左右の強度を上げながらブルワークの内側を目一杯デッキスペースとして利用できるようにデザインされている。ウォークアラウンドのスペースを確保しながらラウンジエリアを広く取ることが可能になり、フルビームのハードトップが日ざしや雨を遮り、エクステリアを広く守ってくれる。

コクピットの後部、1,470mm×830mmのダイニングテーブルの前後に4人掛けのベンチシートが配置されている。最後尾にある幅1,800mmのワイドなベンチシートは、バックレストを前後にすることで、前向きにも後ろ向きにもできるだけでなく、完全に倒せば、1,800mm×1,160mmのサンベッドとして利用することもできる。しかも、左右のブルワークが開閉するオープンサイドテラス。わずか14秒で水平まで開き、左右デッキをハルの外側から770mm広げることができる。フラットに広がるアフトデッキのビームはおよそ5m。これは、60フィートクラスのビームに匹敵する広さ。クラスを超えたビーチクラブが生まれるということなのだ。

ダイニングテーブルは前にも後ろにも2つ折りに縮小することができ、多彩なシートアレンジに対応している。テーブルの船首側にも1,800mmのベンチシート。前後に向きを変えられるところは同じ。違うのは、ランナーの上で前方にスライドできるところ。もちろんスライドできるのには意味がある。
まず最後部の場合、バックレストを前方に倒し、船尾側を向いて座れば、ギャレーのスペースが確保されたダイニングキッチンのレイアウト。バックレストを後方に倒し、船首側に向いて座れば、走行中でも快適なパッセンジャーシート。そして、ソファ全体を最前部までスライドすると、エンジンルームへのアクセスハッチが現れる。揺れる海上で、電動の大型ハッチを開ける必要もないし、電気系統が故障をした時でも手動でエンジンルームにアクセスできる。発電機やSEAKEEPERなどの様々な機器をメンテナンスすることができる。それは、整備のメリットだけではない。テーブルとベンチシートの間に通路スペースを作ることで、サンベッドを利用している時、日光浴スペースと座席スペースを完全に分けた快適なゾーニングができるのだ。

1,710mm幅のワイドなギャレーは、本格的なもの。左舷側にはKENYONのBBQグリル。中央はシンク。右舷側には、ENOのガスコンロ。発電機を搭載すれば、電気グリルと電気コンロを選択することもできる。ギャレートップの下には、冷凍冷蔵庫の他に、ダストボックスやストレージが備わる。そして、左右のコーナーにはポップアップライトが備わり、夜の利用にも対応している。電球色の淡い光は、手元を明るくする実用性だけでなく、美しい光の演出がデザインされている。
アウトドアギャレーのすぐ前には、ヘルムシートとギャレーユニットの間で支えるステーを境いに、3脚のボルスターシートが並ぶコクピットゾーン。コクピットの左右を通るサイドデッキから2段上がると、バウデッキにアクセスできる。バウデッキの中心には1,140mmの幅、1,460mmの長さにバックレストのついたサンベッド。ウォークアラウンドを挟んだバウの先端にクッションを取り付ければベンチソファ。ハッチを開けた下には、LEWMARのウィンドラスやデッキウォッシュが備わり、アンカーやアンカーロードの洗浄を行いながらアンカーロードを収納するができる。また、バウデッキの前後にカーボンポールを立てれば、バウデッキ全体をオーニングで覆うことができる。実用性だけでなく快適さにも気が配られているところこそ、JEANNEAUが愛され続ける理由だ。

ナイトスペースはコクピットの左舷側。コンパニオンハッチからエントリー。ステップを降りたロアデッキの左舷側には、ロアデッキまで光を届けるサイドウィンドウ。さらに、光を反射するPaleWoodsの明るい色調が室内を明るくしてくれる。ポートサイドの壁にインサートされているのは、WhirlpoolのマイクロウェイブとIsothermの冷凍冷蔵庫。ギャレーと呼べるものではないが、ホテルの客室だと考えれば、十分なファシリティ。ボートステイを快適なものにしてくれる。スターボードサイドには、独立したシャワーブースが備わる広く快適なヘッドコンパートメント。1,910mm以上の天井高が確保され、デイボートの想像を上回る。
最前部のバウキャビンは、マスターステートルーム。中央には、長さ1,980mm×幅1,500mmのクイーンベッド。ベッドの向かい側には、バニティテーブルを兼ねたワーキングデスク。1,410mm×510mmの大きな鏡は姿見としても使え、部屋を広く見せる効果も発揮している。アイランドベッドの手前フロアは、1,900mmの天井高。ベッド上のヘッドクリアランスも1,030mmとゆとりの高さ。ベッドの左右には1,880mm×150mmのオープンポート付きのワイドなサイドウィンドウ。バウデッキにあるサンベッドの中央クッションを外せば、オープンハッチのトップライトからも光が降り注ぎ、明るく快適に滞在することができる。

そして、驚くのはミッドシップのキャビン。そこは、もいう一つのマスターステートルーム。通常このサイズのオープンボートの場合、ミッドシップのキャビンは無いことが多い。ましてや、キャビン内で立てることは想像もしていない。だが、アッパーデッキとロアデッキのデザインや配置が工夫されたエルゴノミックデザインにより、入ってすぐの天井高は2,100mmが確保された。屈むことなくミッドキャビンに入ることができるのだ。また、高身長の人でもキャビン内で普通に着替えをすることができる。

その奥は、キャビン全面をベッドとソファで覆った空間。一部はベッド、一部は同じ高さのソファ。その変形ベッドは、縦に使えば1,940mmの長さのツインベッド。ツインベッドの間は1,430mmの長さのベッドスペースで繋げている。このスペースには、小さな子供が最適。真ん中に子供を挟み川の字で寝ることはできる。また、横向きのベッドとして使うこともできる。長さ2,080mm×幅1,430mmのダブルベッドになる。この場合には左右に飛び出た部分をソファとして使う。しかも、このキャビンにも左右にサイドウィンドウやクローゼットが用意されている。ベッドに座って本を読むのに十分なヘッドクリアランスもあり、落ち着く空間。小さな子供がいるファミリーの場合、ここをマスターステートルームとするのも良いし、夫婦でバウキャビンを使い、ミッドシップキャビンは子供部屋にするのも良いアイデア。秘密基地のような空間は、子供達に喜ばれるだろう。

コクピットには、3脚のボルスターシート。ルーフを支えるステーで、アウトドアリビングと隔離されたヘルムステーション。ヘルム用のシートはセンターにあり、左右の視認性が高い。シートポジションはステアリングホイールに近く、フットレストも足をかけやすい適切なポジション。前後を調整すると、スポーツカーのようなポジションで体をホールドしてくれる。
スロットルに手をかける。320馬力のVOLVO PENTA D4エンジン2基から生み出されるパワフルなトルクで37フッターを軽々と加速させる。1,000rpmで6.0ノット、2,000rpmで11.2ノット、2,500rpmで18.4ノット。数々のレースボートの設計を手掛けてきたMichael Petersの優れたボトムデザインは、バウを上げたり、スターンを下げる様な感覚は皆無。チャインとストレーキが効果的に働き、全体がリフトアップし、スムーズにプレーニングに入る。スプレーもチャインで飛ばされ、デッキ上にはミストもなくドライだ。3,000rpmまで一気に回り、クルージングスピードの25.6ノットまで加速する。3,500rpmで31.5ノット。3,600rpmを超え、トップスピードは34.7ノットを記録。他には、39ノットのトップスピードと発表されている425馬力のツインYAMAHAアウトボードを選択することもできる。


JEANNEAUDB37が魅力的な理由はいくつもある。それは、ロングノーズ&ショートデッキのプロポーションに、カッティングエッジなハルデザイン。コクピットと一体にデザインされたエアロダイナミックなハードトップデザイン。これらシャープなスタイリングに相応しい、スポーティなファンライド。2キャビンが確保された充実のアコモデーション。そして、オープンデッキに設けられたクラスを超えた広く開放的なラウンジ。
エクステリアやインテリアなど全てがラグジュアリーでスタイリッシュ。フライブリッジを設けず室内サロンもない振り切ったデザインが、JEANNEAU DB37を特別なボートに変えている。JEANNEAU DB37とは、自分らしさを重視するフランス人のエスプリが産んだ個性的なDayBoatなのだ。P.B.
JEANNEAU DB37 IB
全長 11.84 m
全幅 3.55 m
喫水 1.17 m
エンジン 2 × VOLVO PENTA D4-320
最高出力 2×320HP
燃料タンク 690L
清水タンク 250L
問い合わせ先 オデッセイマリーン
TEL: 046-875-0650
https://www.odysseymarine.co.jp





