
NORD STAR42+

100年以上の歴史と、4,000隻以上の建造実績を誇るフィンランドボート「NORDSTAR」堅牢かつ機能的なレイアウトに、ラグジュアリーなインテリアが最もモダンな個性を持つ
text:Yoshinari Furuya
photo:Aleksi Mäkinen / Finnboat Floating Show 2023, NORD STAR
special thanks:NORD STAR https://nordstar.fi
日本未上陸の「NORDSTAR42+(ノードスター42プラス)」を、本国フィンランドで試す。2023年のフィンボートショーFinnboatFloatingShow、その会場はフィンランド最古の都トゥルクの南西、アーキペラゴ(多島海)の島にあるNaguGuestHarbor。フィンランドのボートビルダーが一堂に介し、数々のボートがハーバーに並ぶ。世界各国のマリンジャーナリストが招待され、1日に7~8艇に乗船。3日間にわたり計20艇以上のシートライアルを行う、メディア向けのボートショーだ。

「NORDSTAR(ノードスター)」は、TARGA、SARGOとともに、トラディショナルなフィンランドスタイルの3大ブランドの一つとして数えられることが多い。フィンボートショーにも揃って出展。比較するまたとない機会だ。このようにスタイルやターゲットが類似するフィンランドボートは、それぞれコンペティターと比較され、切磋琢磨されることで、品質が磨かれてきた。その中でNORDSTARは、日本上陸を果たした時期が、3ビルダーの最後。そのため新しいビルダーの印象があるが、意外にもボートビルダーとして建造を始めたのは1920年代と、他社に比べ圧倒的に早い。SARGO(旧名Minor)は1966年、TARGAは1976年の設立。NORDSTARは、100年以上の歴史あるビルダーなのだ。
1920年代、SivertLindkvistは木製の漁船と作業船の製造を開始。そのきっかけはSivertLindkvistの生まれた中央オストロボスニア(スウェーデン語を話すボスニア湾沿岸地域のこと)にある。ボスニア海沿岸に住む人々は海と共存し、多くは漁師として生計を立てていた。SivertLindkvistも、自分の漁船を建造するためボート製作の技術を習得。その建造技術は高い評価を得ていた。彼は、他の漁師からも船を作ることを頼まれるようになり、そこから自然と造船業が始まった。
1947年、Sivertの息子RudeやSvenが加わり建造する作業船も大型化、グラスファイバーを材料に使用してレジャーボートも作り始める。Sivertの知識は息子のRudeに受け継がれたが、Rudeは造船と同様にスピードにも興味を持ち、独自に高速ボートを建造。レースに出ることで、さらなる技術や知見を得ることになった。1959年、Rudeが建造したレーシングボートは、当時としては驚異的な55ノットを記録。1968年、Rudeは、40ノットをカバーする居住可能なデイクルーザーを完成させる。1984年、Rudeの息子Olliもボート建造に加わり、グラスファイバー製ボートSEASTAR660DCCabinを完成させる。そして1998年、ついにNORDSTARブランドの建造を開始。2000年には、初めて海外(スウェーデン)で販売、世界に向け拡大を始めた。
2003年から2006年は、NORDSTAR24、26、28、31をラインナップ。Olliの息子であるSimonも加わり、各地のボートショーに出展を始める。2008年から2010年は、ニューモデルNORDSTAR32、34、37、40を発表。2010年にはSimonがボートデザイナーのポジションに就き、2016年、フラッグシップNORDSTAR49を発表。フルラインナップが出揃う。2020年、Simonは4代目のCEOに就任し、ニューモデルに刷新された28+を導入。新しいNORDSTARブランドの展開が始まる。2021年にはNORDSTAR31+。2022年には、NORDSTAR33+、42+。2023年には、NORDSTAR26+、36+、49+を発表。全モデルが新世代の+シリーズにアップデートされたのだ。
この100年以上の歴史と、4,000隻以上の建造実績が、NORDSTARが伝統に裏づけられた信頼のボートビルダーであることの証明。NORDSTARは、フィンランド国内はもとより世界でも認められ、拡大を続けている。

天然のチークが敷き詰められたワイドなスイミングプラットフォームから乗船する。スイミングプラットフォームから1段上がり、左右のトランサムドアを開けアフトデッキにエントリー。アフトのチークデッキには、サロンクルーザー定番のトランサムボードと一体のU字ソファ。ソファ本体はストレージになっていて、スイミングプラットフォーム側を開けると、中にはフェンダーホルダー。綺麗に収納することができる。ソファの前には、固定されたセンターテーブル。揺れる船上で体を支える強度をもつ。アフトデッキは、キャビンルーフの後方に延びるイーブスで守られ、フィックスのグラストップから光を取り入れる。イーブスはソファの位置までエクステンドされ、快適なテラス空間が作られている。

デッキレイアウトはフィンランドでも日本でも人気のウォークアラウンド×クローズドキャビン。ハンドレールで守られたサイドデッキからコクピット横のサイドスライドドアに移動する。サイドドアの目の前はブルワークが一部下げられ、ハンドレールを捻るだけで簡単にロックが解除できるサイドゲート仕様。ポンツーンの乗り降りをスムーズに行うことができる。
サイドデッキから1段上がりバウデッキへ。ドッグハウス外周やアッパーバウデッキも、滑りにくく作業性の高いチークデッキ。アンカーリング作業やバウからの乗り降りを想定した北欧スタイル。バウキャビンにあたるドッグハウスは、椅子として釣りにも役立つ。


キャビンには、左右のスライドドアとリアのスライドドアの3カ所からエントリーできる。スターボードサイド、ヘルムシートの後方にはギャレー。シンクやグラストップのエレクトリックコンロ、フルサイズのリフリジェレーターが備わる。ポートサイドは、1段上がったフロアにL字のソファ。ソファの前には2つ折りのセンターテーブル。電動で上下する。この1段上がったフロアの一部が電動で持ち上がり、クッションを乗せればソファが延長される。L字ソファがU字ソファに変形する。

スターボードサイドにはヘルム用のアームレスト付きのパイロットシート。逆傾斜したフロントウィンドシールドは、水滴が残りにくく、直射日光の侵入を防ぎ、乱反射しづらい。ワイドなサイドウィンドウとともに高い視認性を実現。サンルーフの面積も大きく、他のフィンランドボートと比べても、グラスエリアが広く、明るく開放的だ。

ポートサイド前方にはパッセンジャー用のベンチソファ。背もたれは前後し、L字ソファの背もたれに切り替えることができる。このベンチソファの座面を船首方向に上げ、ベンチソファ側面のドアを開けると、ロアキャビンに降りる階段が現れる。ミジップに置かれたロアキャビンはコンパクトだが、ベッドやヘッドコンパートメントの動線となるスターボードサイドの通路はヘッドクリアランスが確保され、サイドウィンドウからの光も十分に取り入れられている。最後部にある専用の個室トイレまで屈むことなく移動することができる。船体に対し垂直に並ぶツインベッド。ベッドの間にスペーサーを入れれば、ほぼ正方形のキングサイズベッド。大人でも縦に寝ることができ、子供ならば4人でも寝ることができる広さ。ベッド上のヘッドクリアランスは低目だが、落ち着く快適なアコモデーション。サロンソファのフロアを上げたことで生まれた、必要十分なロアキャビンの高さ。秀逸なエルゴノミックデザインもNORDSTARの人気の理由だ。

ヘルム横のステップから前方のバウキャビンに降りる。正面ドアを開けるとマスターステートルーム。中央にアイランドタイプのクイーンベッド。ベッドの左右にはハンギングロッカー。ポートハッチ以外に円形のトップライトから光が入る。バウキャビンの手前スターボードサイドには個室トイレ。通路側とバウキャビン側の2つのドアから出入りでき、デイヘッドとして兼用で使うことができる。ポートサイドには独立したシャワー専用ルーム。日本人の好きなセパレートタイプは、家族や仲間とのクルージング時にも使いやすい贅沢な造りだ。


ステアリングホイールを握り、チルトを下げ、ダンパー付きのパイロットシートを調整。ステアリングとシフトレバーの位置が最適なポジションに合わせる。フロントウィンドシールドやサイドウィンドウからの視界も良好。24インチの大型ディスプレイの視認性も最適な角度に設置されている。
サイドスライドドアを開けたまま、桟橋を確認しながらジョイスティックで離岸する。サイドスライドドアから半身を乗り出し、スターボードサイドの船側や桟橋を直接目視。距離感も分かりやすく離着岸を安全に行える。パワートレインは、VOLVOPENTAD6-440+スタンドライブ2基掛け。ジョイスティックコントローラーを使い直感的に横移動できる。

シングルレバーに切り替え、スロットルを開け加速する。フラットな海面が続くアーキペラゴの中、全開で40ノットを記録。42フッターの安定感を保ったまま、スラロームはクイックレスポンス。スポーツボートのようなマニューバビリティ。他船の引き波に侵入しても、堅牢な船体が衝撃をソフトに受け止め、波を切る。高いシーワージネスと静穏性で、コクピット内での会話も普通にすることができる。

NORDSTARの特徴は、ユーザビリティの高いフィンボートスタイル。ヘビーデューティーな堅牢さや機能的で実用的なレイアウトに加え、サロンクルーザー並みのラグジュアリーなインテリアが取り入れられ、北欧の厳しい冬でも快適な居住性を併せ持つ。NORDSTARはフィンボートの中でも最も明るく、最もモダンな個性を持つ。そのユーザビリティの全てが、NORDSTAR42+に受け継がれている。P.B.
NORD STAR 42+
全長13.4m
全幅3.85m
重量10.00ton
エンジン2×VOLVO PENTA D6-440DPI
最高出力2×440HP
燃料タンク1,000L
清水タンク230L
問い合わせ先 ユニマットプレシャス
関東 TEL:046-841-2138
中部 TEL:0533-75-2780
関西 TEL:0798-31-5066
https://www.unimat-marine.com
https://youtu.be/2zHC4HSTcUI?si=0aeAvV7x5VHk0BWn




