「南カリフォルニア」ココロとカラダが癒される、砂漠とオアシスの旅

パームスプリングスの街とジョシュア・ツリー国立公園
text & photo: Hidehiko Kuwata
special thanks: Visit California
https://www.visitcalifornia.com
ロサンゼルスから西に向かってフリーウェイを走る。サンバーナディーノの山を超えると眩しい砂漠の光景が広がる。素敵な南カリフォルニアの旅の始まりだ。

ジョシュア・ツリー国立公園はパームスプリングスの東に位置しており、公園入口のビジターセンターまでは街の中心から車で約1時間の距離だ。ジョシュア・ツリーはモハーヴェ砂漠の標高400から1,800m付近で生育しており、この国立公園のシンボルである。名前の由来は、ここにたどり着いたモルモン教徒が大きなジョシュア・ツリーを見て、聖書に登場するヨシュアが天を仰ぐ姿を想像したことに因んで名付けたものだ。巨大な花崗岩の一枚岩やユニークな形の岩山が散在する砂漠の中に、巨大な枝状のジョシュア・ツリーが繁茂している光景は魅力的で、じつに写真映えする風景だ。


アトラクションは多岐に渡り、ハイキング、サイクリング、乗馬ができるトレイルが何10本もあり、岩だらけの地形はアメリカのロッククライミングのメッカのひとつになっている。春にはワイルドフラワーがカーペットのように咲き広がり、砂漠の夜空はとても澄んでいて星空観察ができるオアシスにもなっている。
パームスプリングスに戻って、洗練された街並みのダウンタウンを歩いてみる。この街がリゾート地として花開いたのは、ハリウッド全盛時代の20世中頃。当時のハリウッドスターたちには「2時間以内にスタジオに戻れる距離にいること」という暗黙のルールがあり、パームスプリングスはこのルールにぴったりの避寒地だったのだ。多くのハリウッドスターがこの街に別荘を建て、アレクサンダー親子をはじめ、優れた建築家たちがミッドセンチュリーモダンと呼ばれる、お洒落でシンプルなデザインの住宅を建築していった。

街の中心はかなり開発が進んだが、当時の面影はしっかりと残されており、これがパームスプリングスの大きな魅力となっている。華やぎとシンプルさがバランス良く共存し、中でも周辺の歴史あるホテルには、ハリウッド全盛時代の華やかさが今でも漂っている。
ワイナリーと熱気球の街、テメキュラ
カリフォルニアで最初のブドウが植えられたのは、ナパでもソノマでもなくサザン・カリフォルニアで、このエリアはミッション・ワインの発祥地と伝えられている。アナハイムにある有名なディズニーランドも、かつてはブドウ畑だった。現在、サザン・カリフォルニアでワイナリーの中心となっている場所は、ロサンゼルスの南東約150キロに位置するテメキュラ・バレーで、ワイン・ビジネスはテメキュラの街を急速に発展させる原動力となった。


1974年に設立された「キャロウェイ・ワイナリー」は、ゴルフクラブで有名なイーリー・キャロウェイのワイナリーであり、この地における大規模なワイン生産の始まりとなった。2000年代に入るとワインビジネスはさらに加速し、テメキュラ・バレーを走るランチョ・カリフォルニア・ロードを中心に、現在は40カ所を超えるワイナリーが点在している。サザン・カリフォルニアらしいトロピカルな雰囲気に包まれたワイナリーは、どこもじつに個性的で、他のワインカントリーとは一味違う“奔放”な雰囲気が漂っている。

「サウスコースト・ワイナリー・リゾート&スパ」は、大規模で華やいだ雰囲気を持つワイナリーだ。名称通りホテルとスパが併設された大型のリゾート施設で、メインダイニングの「ヴィンヤード・ローズ」では、専任のソムリエのガイドで、自社ワインと素晴らしい料理とのペアリングが楽しめる。オハイオ州出身のオーナー、ジム・カーター氏は、12歳の時から農場や工事現場で働いてきた苦労人で、2002年にこのワイナリーをオープンさせたのだ。

サウスコースト・ワイナリーに次ぐ規模を誇るのが「ウィルソン・クリーク・ワイナリー・アンド・ヴィンヤード」だ。家族経営のワイナリーで、テメキュラのテロワールを活かした上質なワイン造りを実践している。地元のワインメーカーから評価も高く、数々のアワードを獲得してきた。このワイナリーも「ウィルソン・クリーク・マナー」という、広大なブドウ畑を望む瀟洒な建物のブティックホテルを運営しており、宿泊してダイニング「クリークサイド・グリル」の料理とワインをゆっくり味わうのもいいだろう。ワイナリー巡りとともに、テメキュラを代表するアクティビティとなっているのが熱気球だ。毎年6月には有名な「テメキュラ・バレー・ワイン&バルーン・フェスティバル」も開催されている。熱気球は空気が冷たい時間帯しか飛行できないので、日の出とともに起床して早朝のフライトを楽しむことになるのだが、朝陽に映し出されるテメキュラ・バレーの絶景が満喫できる。地平線まで続く360度のパノラマを望めるのは、カリフォルニアならではの醍醐味である。加えて着陸時の絶妙な熱気球の操縦も一見の価値ありだ。熱と風をコントロールする巧みな操作はまさに見事の一言。
サルベーション・マウンテンの不思議
パームスプリングスの南東約130キロの砂漠の中に、カラフルに彩られた粘土で築かれた山がある。バーモント州で生まれ、この砂漠の中にある小さなコミューン「スラブシティ」に移り住んだレナード・ナイト氏が、1984年から30年近くの歳月を費やして築いた「サルベーション・マウンテン」である。「GodisLove」をテーマに、この地でとれるアドべ粘土と寄付されたペンキ、廃棄されたタイヤや窓、自動車の部品などを用いて素手で造りあげた山だ。レナードは休むことなく一日中制作に没頭した。電気も水道もない山の麓でトラックの荷台に寝泊まりして、入浴は近くの天然温泉を利用した。その理念は『罪人の祈り』を中心に構築されており、キリスト教の格言や聖書の詩で描かれた多くの壁画などをモチーフにしている。



砂漠という過酷な環境から守るため、レナードは塗装の層が厚くなるように年に2回山を塗り直すことを考えていたが、怪我を負ってしまいこれを続けることが出来なくなった。そこで2011年にこの山を守るプロジェクトを支援する公的慈善団体「サルベーション・マウンテン社」が設立され、2013年にはアネンバーグ財団が「セキュリティの向上と運営強化」のための資材・設備費用として3万2千ドルを寄付している。80歳になったレナードは認知症のため長期介護施設に入所し、2014年に他界した。彼の死後に出版されたナショナルジオグラフィックの記事にはこう記されている。

「レナードは先見の明があった。時間の概念を超えて、唯一の目的である“God is Love”というメッセージを広めるために、自分の意思を貫き整然と仕事をした」P.B.
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