
ROSSINAVI50m”Piacere”

英国海軍からチャーターヨットまで様々な船を渡り歩き、これまで30万海里以上にもなる航海経験をもつキャプテン・ナイジェル。世界のトップセレブリティを相手にチャーターやコンサルティングを手がける彼が、独自のネットワークでつながるメガヨットの世界を紹介する。
壮大かつ華麗な、メガヨットワールドをご堪能あれ。
text:Captain Nigel Beatty
photo:ROSSINAVI
〈Piacere(ピアチェーレ)〉とは、「喜び」という意味だ。この美しいヨットに乗ると、すぐにその真意がわかる。ROSSINAV(Iロッシナビ)による50メートルのこのヨットは、2021年に進水したが、私は雑誌でしか見たことがなかった。しかし最近、モナコに到着し、私のオフィスのすぐ前に停泊した!

同じ頃、ROSSINAVIのCOOであるフェデリコ・ロッシもモナコにいたので、私は彼をオフィスに招待して〈Piacere〉について話をした。もちろん彼は、オフィスの玄関から歩いて2分のところにあるこの素晴らしいヨットに乗ることも手配してくれた。
フェデリコが率いるイタリアの造船所ROSSINAVIは、今日のカスタムシップビルドの世界で高い地位にある。〈Piacere〉は長距離航海用のヨットだ。全長50メートルだが、大型ヨットの特徴を多く備えているため、乗船すると60メートルクラスにも感じられる。このスチール&アルミニウムのヨット〈Piacere〉の誕生は、グラスファイバー製ヨットを何隻も所有した後、スチール製ヨットに乗り換えたいと考え、初のカスタムメイドを考えていたオーナーから始まる。オーナーのいちばんの希望は、家族で楽しめるヨットを持つことだった。
〈Piacere〉のデザインはタイムレスで、クリーンかつシンプル。家族が暮らすためのヨットでもあり、あらゆる年齢層のニーズに応えられるよう、機能的で広いエクステリアエリアが設計されている。窓や手すりにはガラスが多用され、開放的で、室内空間に明るさを与えている。このヨットのどこにも暗さや圧迫感はない。

〈Piacere〉に乗船する人は皆、サンデッキの広さに驚く。彼らは正しい。サンデッキの広さは130m²もあり、素晴らしいアウトドアスペースだ。私にとってサンデッキは、スパプールやたくさんのくつろぎスペースがあり、一日中過ごせる空間だ。ガラスのウインドブレイクの後ろにはバーがあり、ハードトップの下には大きなダイニングテーブルがある。アウトドアリビングはヨットの醍醐味であり、〈Piacere〉は50メートルクラスのヨットとしては広大なアウトドアスペースを持つ。
メインデッキのサロンは、親密な集まりに最適な居心地の良い空間だ。外側に広いサイドデッキがあるためサロンを小さくしたのだが、スーパーヨットに乗船経験がある人なら、実際はメインサロンはあまり使われず、フォーマルなおしゃべりをしたり、お茶を飲んだりする程度の用途しかないことを知っているだろう。だから、このメインサロンはスマートなデザインだと思う。使用目的に対して十分な広さがあり、無駄なスペースではない。

「航続距離4,500マイル近いこのヨットは、本物のロングレンジヨットであり、60メートルヨットでしか見られなかった機能をすべて備えています」とフェデリコ・ロッシは言う。「ロアデッキからサンデッキまで続くエレベーター、本格的なビーチクラブ、大きなガレージなど、60メートルクラスのヨットのような機能をこのクラスで提供するには、非常に慎重に計画を立て、小さなスペースひとつひとつを正確に設計しなければなりません。どんなスペースも無駄にはできないのです」。
〈Piacere〉は、エンジンルームからの騒音や振動を低減するゼロノイズテクノロジーを採用している。その他の特徴としては、ロアデッキにビーチクラブがあり、天窓のある広々としたラウンジエリアとスチームルームがある。プライベートオフィスとラウンジエリアが自慢の、フルビームのオーナーズスイート。バスルーム付きの豪華な客室が4室。23フィート/7メートルのヨット用テンダー、13フィート/4メートルのサービスボート、ジェットスキー1組を収納できるガレージ。これらの豪華なシートイを支えるプラットフォームは、ROSSINAVIが〈Piacere〉のために特別に開発したユニークな技術で船外に出る。また、アッパーデッキのジムエリアも忘れてはならない。


〈Piacere〉はエレガントでコンテンポラリーなヨットであり、モダンなデザインの家具やアクセサリーはオーダーメイドだ。スチールや大理石などの貴重な素材を組み合わせることで、職人の技と大工仕事のひとつひとつのクオリティを際立たせている。
「オーナーがこのボートを見たとき、彼はとても喜びました。家族全員が乗れるこの大きなヨットを、彼は長い間夢見ていた。ヨットがこのように使われているのを見ると、私は本当に嬉しくなります」。

この素晴らしい訪問の後、私はモナコでフェデリコと昼食を共にし、ROSSINAVIの将来について話し合った。今後数ヶ月のうちに、この巨匠ヨットビルダーによる美しい作品を紹介することができるかもしれない。その日が待ち遠しい。P.B.
ROSSINAVI50m“Piacere”
全長 49.95m/163ft11in
全幅 8.80m/28ft11in
喫水 2.45m/8ft1in
重量 500GT
構造 SteelHull/AluminumSuperstructure
エンジン 2×CATERPILLARC32ACERT
出力 2×1,081kW
ジェネレーター 3×99kWCatC4.4
トップスピード 15ktクルージングスピード12kt
レンジ 4,400NM
燃料 68,000L
清水 12,500L
アコモデーション Owner’s+Guestcabins:5クルー11
ビルダー ROSSINAVI
建造 2021
ナーバルアーキテクト ArrabitoNavalArchitects
エクステリア HoracioBozzoDesign
インテリア TeamforDesign–EnricoGobbi
船級 Lloyd’sRegister


