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BOAT&YACHT

ROLLS-ROYCE CuLLinan SERiESii

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2024年8月29日、ロールス・ロイス・モーター・カーズは、ロールス・ロイス史上、最も大規模なシリーズの開発から生まれた、世界屈指のスーパーラグジュアリーSUV「カリナン・シリーズII」を東京で発表した。フロントマスクの意匠は大きく変更され、より若々しく、より力強く、より都会的に進化。その進化の意味を、国際試乗会に招かれたモータージャーナリスト小川フミオ氏が詳報する。

text: Fumio Ogawa
photo: Rolls-Royce Motor Cars

世界中で若きユーザーを惹きつけているという、ロールス・ロイス「カリナン」。2018年にデビューした超高級SUVが、2024年にシリーズIIへと“進化”した。

私が初代カリナンのデビュー時に参加したメディア向け試乗会は、米国の超がつく富裕層に人気の山岳リゾート、ワイオミング州ジャクスンホールだった。おどろいたのは、飛行場の光景だ。ボーディングブリッジもない、小さな地方空港なのだが、駐機場にはガルフストリームをはじめとするプライベートジェットが所狭しと並べられていた。

今年シリーズIIをお披露目するにあたり、ロールス・ロイスが選んだのは、スペインのイビサ島。ご存知のように、1960年代から英国を中心とした富裕層があつまるリゾートで、クラビングを楽しみにくる人もいれば、ヨッティングの趣味をもつ人にも人気が高い。前回の山が、今回は海になったのだ。

ロールス・ロイスがジャクスンホールでの試乗会において強調していたのは、荒れ地でも難なくこなす走破能力と、後輪操舵システムにより山道のきついカーブでも難なく走れる万能ぶりだった。

「シリーズIIへの改良にあたって、ユーザーへのヒアリングを行った結果、性能的な不満はないということでした」。ロールス・ロイス本社でプロダクトスペシャリストの立場からカリナン・シリーズIIにかかわってきたケンザ・サーディ氏は、イビサ島での試乗会場でそう語っていた。

「超富裕層のニーズをしっかり採り入れ、市場のトレンドに対応し、カリナンへの興味をつなぐことが、たいへん重要だと判断しました」。そう、サーディ氏は説明してくれた。

具体的にいうと、それは“スタイル”だ。カリナン・シリーズIIがもたらす、新しいライフスタイルの訴求。

ロールス・ロイス車には、1930年代から現在にいたるまで、ボートテイルと呼ばれるボディスタイルがある。ヨットやスピードボートをイメージの源泉としていて、ビスポーク(特注)で注文できる。クルマ好きなら、いちど見たら惹きつけられるような、審美性の高さがあるモデルだ。

そこまでいかずとも、野外でのたのしみをカリナン・シリーズIIは提供してくれる。荷室に設けられる「ビューイング・スイート」なるオプションがよい。

ボタン操作によってふたりぶんのシートが出てくるので、そこに座っていられる。飲み物、おしゃべり、あるいは風景を眺めるたのしみ。開けたテールゲートで日差しをさえぎりつつ、潮風に吹かれながら、車内ともちがうし、ボートハウスのバーともちがう、かなり特別な気分が味わえる。これもスタイルだと思う。

カリナンがシリーズIIになって大きく変わったのは、フロントマスクだ。以前は、矩形のヘッドランプケースが目立つ、オーソドクスなデザインだった。今回は、パンテオン・グリルの存在感はあいかわらず大きいものの、フロントマスク全体をひとつの面ととらえたような意匠が採用された。

パンテオン・グリルの意匠も少しモダナイズされているし、なにより、L字を倒立させたようなLEDのシグネチャーライトが個性をつくっている。一目で新しいカリナンと知れる。

メーカーが用意したパッケージもあり、一つがここでタイトルに選ばれている「ディスラプター」。既存の価値の破壊者の意味で、デジタルテクノロジーの活用により、既存の業界の秩序やビジネスモデルを破壊する人を指したりする。おもしろい言葉の選びだ。

カリナンで獲得した新たな

カリナンの発売によってロールス・ロイスに乗る層の平均年齢がぐっと若返ったと、ロールス・ロイスでは言う。2010年は56歳だったのが、いまは43歳なのだそうだ。先日、東京で開かれたお披露目の席上で、ロールス・ロイス・モーター・カーズ・アジア太平洋リージョナル・ディレクターのアイリーン・ニッケイン氏に聞いたところ、Y世代やZ世代がカリナンを通してロールス・ロイスの魅力を発見しているんだそうだ。

もちろん、昔からロールス・ロイスの価値を知っている人が、最高の顧客かもしれないが、カリナン・シリーズIIのステアリングホイールを握ってみると、従来のロールス・ロイス車にはなかったようなドライビングのたのしさが味わえるだろう。

このところロールス・ロイスは、ゴーストや、ピュアEVのスペクターで、従来とは一線を画したようなドライビングを重視したクルマづくりへとシフトしている感が(すくなくとも私には)ある。

エフォートレスといって、ドライバーにひたすら楽ちんな気分で操縦できるポリシーは、ずっと継承されているし、マジック・カーペット・ライドという乗り心地のよさも健在だ。

観音開きのドアは後席へのアクセスをかなり楽なものにしてくれているし、たとえSUV車型のカリナンであっても、後席の居心地はすこぶるよい。何百もの光ファイバーが澄んだ空をあおぎ見たような幻想的な光景を天井に作り出す「スターライト・ヘッドライナー」を堪能できるのも、後席乗員ならではの楽しみだ。

それでも、これまで以上にダイレクトな操縦感覚があって、かならずしも後席だけがベストの場所ではなくなっている。ボートやヨットなど海のきの操舵感覚もよりダイレクト感が強い印象だ。趣味をもつスポーティな人には、喜ぶべきことだと思う。「ほとんどのオーロードホイールは外径を1インチ上げて大径化。それによってタイヤナーが自分でステアリングホイールを握っていらっしゃいます」と、前出のの扁平率は下がり、結果として、コーナリング時のたわみが少なくなりハニッケイン氏は言う。

そして、さらにより特別なドライビング体験を求めるユーザー向けに、「ブラック・バッジ・カリナン・シリーズII」なるモデルもある。

カリナン・シリーズII標準モデルの6,750ccV型12気筒エンジンは、420kWの最高出力と850Nmの最大トルクをもつ。「ブラック・バッジ」はさらにパワフル。最高出力は441kWで、最大トルクは900Nmである。足まわりもよりしっかりしているし、ステアリングホイールを動かしたときの操舵感覚もよりダイレクト感が強い印象だ。

ロードホイールは外径を1インチ上げて大径化。それによってタイヤの扁平率は下がり、結果として、コーナリング時のたわみが少なくなりハンドリングにしっかり感が出ている。視覚的にも、タイヤの存在感がより目立つようになり、スポーティさが印象づけられている。

ブラック・バッジはさらに、メッキ部分が独特の黒っぽい輝きを放つ仕上げを選べるのが外観上の魅力となっている。メッキ工程にクローム電解液を入れて処理するという凝った工程の結果だ。加わった厚みは1ミクロンだそうで、髪の毛の100分の1ほどの厚みに過ぎないのに、見た目の印象はだいぶ変わるところが興味深い。

スピリット・オブ・エクスタシーや、パンテオン・グリルも、ダーク系のコーティングがえらべる。しかも内装は、ウッドパネルにブラック・バッジを象徴するインフィニティ(無限)のシンボルが象嵌されているという凝り方。フェイシアとも呼ばれるダッシュボードのパネルや、シート地の選択の幅は、まさに無限というぐらいらしく、Y世代やZ世代の好みにも合うようだ。

ブラック・バッジの設定も、ユーザーの若返りに貢献していると、イビサ島での試乗会でロールス・ロイス本社の人に聞いた。なるほど、とりわけ「デュアリティ・ツイル」なる、チャールズ・ロールスとヘンリー・ロイスという創業者の姓の頭文字であるRとRをモノグラム化して(インターロッキングという)、それをヨットのロープを思わせる格子状のステッチと組み合わせた新しい意匠のシート地は、このクルマでしか手に入らない。デジタル化も進んで、メーター類ととともにダッシュボード中央のインフォテイメントシステムが刷新されている。23年に登場したピュアEVモデルのスペクターと同様のシステムという。トラディショナル過ぎるのを敬遠する人も、世界各地のオーナーには少なくないようで、その人たちに響くものが、きちんと用意されているのだ。

カリナン、それもシリーズIIは、ここで述べてきたとおり、内装を含めて、とびぬけて若々しい世界観を持ったロールス・ロイスだ。新しい市場へと漕ぎ出したロールス・ロイスの魅力を、堪能しない手はないと思う。P.B.

ROLLS-ROYCE Cullinan Series II
全長 5,355 mm
全幅 2,000 mm
全高 1,835 mm 
ホイールベース 3,295 mm 
車両重量 2,725 kg
 エンジン型式 V 型 12 気筒
総排気量 6,750 cc 
最高出力 420 kW [441 kW] 
最大トルク 850 Nm [900 Nm] 
駆動方式 全輪駆動0-100 km/h加速 5.3s [5.2s]
本体価格 46,454,040 円~
問い合わせ先 ロールス・ロイス・モーター・カーズ コミュニケーションセンター
TEL: 0120-980-242
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