AQUILA 44 Power CATAMARAN

世界最大のボートディーラーMarine Maxによるクルージングに特化したPower Catamaranチャーターユースを知り尽くした豊富なノウハウが、次世代のスタンダードを創り出す
text: Yoshinari Furuya
photo: AQUILA BOATS
special thanks: AQUILA BOATS
https://www.firstmarine.co.jp

ニューモデルが揃うカンヌヨッティングフェスティバルにおいても、年を追う毎にクルージングカタマランが増えている。クルージングカタマランはチャーターボートに多く使われる人気艇で、かつての中心はセーリングカタマラン。だが、近年はパワーカタマランがチャーターボートでも人気。次々とニューモデルが発表され、走行性能やデザインが向上している。今のところ、クルージング用のパワーカタマランで先行するのは経験豊富なセーリングカタマランビルダーであり、まだパワーカタマラン専門のビルダーは少ない。だが、広い空間、揺れにくい構造、優れた燃費……、クルージングボートとしてメリットの多いカタマラン。セーリングカタマランに続き、パワーカタマランの時代がすぐ目の前に迫っている。
おそらく日本に紹介するのは初めてとなるパワーカタマラン専門のビルダー「AQUILA BOATS(アクィラ)」。カンヌヨッティングフェスティバルにおいて、「AQUILA 44 Power Catamaran」に試乗することができたので紹介しよう。

「AQUILA」の特徴は、世界的にも数少ないクルージングに特化したパワーカタマラン専門のビルダーであること。今までパワーカタマランといえば、高速航行時の安定感からオフショアパワーボートレースのトップカテゴリーとして知られてきた。その技術は量産モデルにフィードバックされ、パワーボートビルダーが建造するパワーカタマランの量産艇にも現れている。また、対照的なパワーカタマランとして、静止時の安定感からフィッシングボートにも採用され人気が高い。どちらのパワーカタマランもニッチなマーケットではあるが、専門ビルダーとしてコアなファンが多い。だが、今回紹介する「AQUILA」は、そのどちらとも違うパワーカタマラン。快適なキャビンを持つクルージングのためのカタマランだ。
「AQUILA」を取り扱うのは、マイアミに本拠を置く米国最大のビッグディーラーMarineMax。彼らが扱うブランドはAZIMUT、SEARAYを筆頭に、BOSTONWHALER、GALEON、NAUTIQUE、OCEANALEXANDER、NAUTISTAR、AVIARA、HARRIS、そして「AQUILA」だ。

だが「AQUILA」に関しては、単なる販売ディーラーという位置づけではない。「AQUILA」は、MarineMaxが運営するチャーター会社Marine Max Vacationsのために開発されたパワーカタマラン。人気のカタマランを誰でも取り扱えるようにセールを無くし、エンジンだけで走るパワーカタマランとして企画。Marine Maxと中国の造船所SinoEagleYachtsがパートナーシップを結び、設計は経験豊富なJ&JDesignとSeawayが受け持ち、パワーカタマランブランド「AQUILA」が完成した。そのパワーカタマランは、Marine Max Vacationsが展開するBritish Virgin IslandsやWhitsunday Islands、Pacific Northwest、St.Luciaand Grenadines、Northern Croatia、Greeceなどでチャーターすることができる。そしてMarine Maxは、いよいよ「AQUILA」のカスタマー向け販売に力を入れ始めたのだ。

「AQUILA44」の特徴は、パワーカタマラン専用の剛性の高い船体とクルージング専用のエクステリアやインテリアデザインだ。パワーカタマラン専用のボトムはセーリングカタマランとは異なる。個々の船体には、モーターボートでは当たり前のストレーキやチャインが付けられている。ストレーキやチャインは船体に浮力を与え、プレーニングがしやすく、波あたりもソフトだ。
左右トランサムに延びる大型のスイミングステップから乗船する。ステップを上がると、前後長がおよそ3,300mmの44フィートとは思えない広いアフトデッキ。2つの船体の間には6人が座ることができるU字型のソファ。スターン方向に飛び出し、宙に浮いたU字ソファの後方には、テンダーを引き上げるテンダーダビット。海面から楽に引き揚げ、航行中も邪魔にならないように搭載することができる。44フィートの空間を有効に使ったデザインだ。
アフトデッキからフライブリッジへは、幅600mmのゆったりとしたステップ。女性や子供にも優しい緩やかな階段は9段。やや高目のフライブリッジだ。フライブリッジのレイアウトは、他にはない「AQUILA」だけの機能的で独創的なもの。フライブリッジのスターン側にはU字ソファ。その前方にはウェットバー。カウンタートップにはシンクとBBQグリル、その下にはリフリジェレーターが備わる。ウェットバーの前方にヘルムシート。センターにはヘルムともう一人が座ることができるベンチシート。ポートサイドには、ヘルムを囲むようにL字を描く直角のソファ。3人が横向きに座ることができ、シューズロングにもなる。スターボードサイドにも通路を挟んで横向きのベンチシート。2人が座ることができ、足を投げ出し前向きに座ることもできる。

ソファに囲まれた中心にはアイランド型のコンパクトなヘルムステーション。GARMINのモニターが中央にビルトイン。GPSやエンジンデータが表示されている。そしてフライブリッジの最前部、ヘルムステーションのすぐ前には、バウデッキに降りるための通路が開いている。
フロントウィンドシールドの前に設置されたステップからバウデッキに降りていく。4段のステップには、揺れた時に掴むことができるハンドレールが設置され安全性も高い。この「AQUILA」だけのレイアウトは、ショートハンドに向いている。例えば着岸時、ボートをコントロールして寄せた後、バウデッキまで素早く移動し、バウラインを素早く投げることができる。また、視界の良いフライブリッジから見下ろし、浅瀬やアンカリングポイントを確認、素早くバウに行きアンカーを落とすことも容易だろう。フライブリッジ後方のステップを降り、アフトデッキからサイドデッキを通り、バウデッキへ行くのは、時間もかかりリスクも高い。ヘルムスマンがバウデッキに素早く移動できることは、ショートハンドでのクルージングを安全で容易にすることができる理想的なレイアウトかもしれない。ワイドでローリングが少ないパワーカタマランだからこそ、44フィートで実現できたレイアウトだ。
アフトデッキからキャビンに入る。キャビンドアは中央スターボード寄り。キャビンに入るとポートサイドにギャレー。ギャレーのカウンターとアフトデッキを隔てる窓を跳ね上げ、立ててあるカウンターの一部をアフトデッキ側に倒すと船内のギャレーとアフトデッキを結ぶカウンターキッチンとなる。キッチンにはシンクやコンロ、電子レンジが整い、通路を挟んだ向かい側には大型の冷蔵庫がビルトイン。カウンターの外側にはカウンターチェアも用意され、会話に参加しながら、アフトデッキやスイミングステップ周辺で遊ぶ子供達の様子を見ながら、料理を作ることができる。
メインサロンは天井が高く開放的。44フィートクラスのカタマランの中では、トップクラスの2,020mm。フロントウィンドシールドやサイドウィンドウからの視界も広く、明るく開放的。ポートサイドの1段上がった高さにU字のダイネッティ。スターボードサイドにはポップアップのTVがビルトインされたキャビネット。フロントウィンドシールドにはオープンポートハッチが付いおり、風を通すことができるのも良い。

メインキャビンの中央には、左右のキャビンに降りていく階段がある。ギャレーの横からポートサイドのキャビンに降りる。階段からスターン側にはトイレとシャワーブース。トイレの天井高は1,960mmと高く広い。バウ側には、2,000mm×1,450mmのダブルベッド。ベッドルームの天井高は2,130mmもあり、開放的。ハルサイドの大型ウィンドウからは光が入り明るく快適だ。次に、スターボードのキャビンに降りていく。ポートサイドと同じレイアウト。階段からスターン側には、トイレとシャワーブース。バウ側には、ダブルのベッドルーム。
そして、メインキャビンの前方には、フルビームを使った、横に広いマスターステートルーム。センターには、1,800mm×2,000mmのキングサイズベッド。スターボードサイドに降りると、オープンスペースの書斎。テーブルトップを上げると鏡が現れ、バニティテーブルとなる。マスターステートルームのポートサイドは、トイレとシャワールーム。天井高は2,020mmとゆとりある広さが確保されている。

アフトデッキのハッチを開けるとVOLVO PENTAのカラーであるグリーンのエンジンが姿を見せる。エンジンカバーにはVOLVO PENTA D4-300の文字。インライン4シリンダー、3.7Lコモンレールターボディーゼル。300馬力のクリーンディーゼルを2基搭載している。エンジン上部のハッチが大きく開くので、エンジン全周に手が入りメンテナンスもしやすい。ハッチからエンジンを取り出すのも難しくはなさそうだ。チャーター艇として、メンテナンスも考えられたデザインなのだろう。

フライブリッジで操船をする。港を出てスロットルを開けていく。1,000rpmで3.5ノット、1,500rpmで5.6ノット、2,000rpmで8.5ノット、2,500rpmで10.3ノット、3,000rpmで13.3ノット、3,500rpmで18.0ノット、最大回転3,540rpmで19.3ノット。低振動、低騒音のエンジンとカタマラン特有の抵抗の少ない走行音で驚くほど静かに加速する。引き波に入るが、ノーズはほとんど上がることはない。細身の船体が波を切る。ピッチングをしないし、叩きも、ローリングもしない。斜め後方や斜め前方から波を受けても不快な感じでステアリングを取られることもない。船体の剛性は高く、軋みや捻れも感じない。

トップスピードでマニューバを試す。急旋回をするが、ほとんどバンクすることなく、水の抵抗を受けながら旋回する。水の抵抗を受けステアリングはやや重目。だが、回転半径は小さくスムーズに旋回する。
セーリングカタマランから派生したクルージングスタイルのパワーカタマラン。アンカーリングに適した、揺れが少ないパワーカタマランはチャーターヨットの主流となりつつある。パワーカタマランに対し、セーリングカタマランのメリットは燃費。デメリットは、セーリングの煩わしさとスピード。パワーカタマランの「AQUILA」は、スロットル操作だけで、セーリングカタマランの2倍以上のスピードで走ることができる。スピードやレイアウトなど、パワーカタマランのための専用設計で建造された
「AQUILAPowerCatamaran」が、パワーカタマランのスタンダードを塗り替えていく。P.B.
AQUILA 44 Power Catamaran
全長 13.44m
全幅 6.56m
喫水 1.16m
重量 15.90ton
エンジン 2× VOLVO PENTA D4
最高出力 2 × 300HP
燃料タンク 1,100L
清水タンク 680L
問い合わせ先 ファーストマリーン
TEL: 046-879-2111
https://www.firstmarine.co.jp








