仙石原古今 リゾート旅館を知り尽くしたオーナーが、満を持して箱根にオープンした寛ぎの宿

箱根仙石原、わずか5室、その全てが92m²以上のスイートルーム大涌谷温泉、プライベートサウナ、薬草湯など多様な湯浴みを満喫できる「仙石原古今」
text: Tatsuya Kushima
photo: COCON
東京オリンピック2020を機に東京にホテルが増えた。60年前ホテルニューオータニや東京プリンスホテルが開業したように、オリンピック効果が現れたと言っていいだろう。都心で目につくのは高級外資系ホテル。ひと昔前までは海外に旅行した時に泊まるようなホテルの名が連なった。

となると興味が注がれるのはランキング。最近は五つ星を最上位としていろいろなホテルが評価されている。審査するのはミシュランガイドのように一つとは限らず、あらゆる団体やメディアがある。が、それでも概ね高いランクのホテルは絞られるからおもしろい。個人的な肌感では、フォーシーズンやリッツカールトンあたりがトップエンドだろうか。ファシリティからサービスまで期待度は高い。ラグジュアリーな空間でリッチな気分に浸りたければこの辺のホテルへ足を運ぶのがいいだろう。
とはいえ、広く宿泊施設ととらえた場合、こういったブランド化したホテルチェーン以外にも“五つ星レベル”と呼ばれるところは多い。もっと規模の小さなアットホームなラグジュアリーを提供してくれる場所だ。


例えるなら、英国にあるマナーハウス。コッツウォルズに代表される郊外にある英国風の小さな宿は、庭にはイングリッシュガーデンが広がり、それを眺めながらアフタヌーンティーを楽しむことができる。牧歌的な雰囲気で時間の流れを忘れさせてくれることだろう。思わず「こんな贅沢な時間が過ごせるとは……」、なんて口にしてしまう人は多いに違いない。

ヨーロッパに多いシャトー(古城)もそう。300年前、500年前の古城に泊まるのは贅沢な時間の使い方。「まさかお城に泊まれるなんて」って感じになる。部屋によっては領主になった気分になれるだろう。歴史ある建造物は趣に溢れているのがいい。もちろん水回りは最新のものにリノベしているので何も不自由はない。

ヨーロッパではこうした宿泊施設をスモールラグジュアリーホテルとカテゴライズしている。前述したメジャーなホテル群とは対照的な小規模がウリの宿だ。今回ここで紹介する「仙石原古今」はまさにそんな場所。今年2月、箱根・仙石原の一角にオープンした全室スイートのスモールラグジュアリーホテルである。
ではまずその規模だが、部屋は全部で5室のみとなる。いずれも92平方メートル以上の間取りで、リビングからベットルームまでゆったりとしたスペースを持つ。それもそのはず、庭を入れての敷地面積は1000坪以上。そもそもとある企業の上層部御用達保養所かつゲストハウスだっただけにせせこましさはない。仙石原古今はそれを新築に見違えるくらいのレベルでリノベーションした。


よってお風呂ひとつとっても特別感が強い。と言うのも、全室に湯船があるのはもちろん、サウナと水風呂を完備している。サウナはタイマー式で滞在期間自分のタイミングで楽しめる。サウナーにはたまらない。また、それとは別に大浴場が備わるのもポイント。連泊時には気分を変えてこちらを使うのがお勧めだ。ここでは半露天となる湯船と薬草湯を楽しむことができる。薬草湯は香りを嗅ぐだけで、元気になれた気がする。脱衣所は清潔感あるし、そこに設置される冷蔵庫のドリンクがフリーなのが嬉しい。そういったところにいちいちフィーを発生させないのもまたラグジュアリーさを感じる。そしてお湯は箱根ならではの大涌谷温泉。旅慣れた諸兄も納得の泉質だ。

食事は宿泊のプランにもよるが、基本的にチェックインした夜のディナー、翌朝の朝食が用意される。ディナーはレストランで、朝食はレストランもしくはお部屋でとることができる。どの部屋もスイートなので、朝食サービスを部屋に招いても空間的に遠慮はいらない。ダイニングテーブルにセットしてもらっている間もリビングのソファでくつろげる。

ディナーのメニューはモダンフレンチをベースとした創作料理で構成される。ユニークなのはその調理方法で、薪焼きや発酵料理を取り入れた。特に薪焼きはテーブル席からその火を眺められる演出付き。薪焼きならではのスモーキーな香りとともに楽しめる。
また、レストランにはソムリエが常時でサービスしてくれる。なので、メニューに合わせたアルコールの相談に気軽に乗ってくれる。「ブルゴーニュの赤もいいけど、ウィスキーって気分でもあるんだよね」なんてワガママもOK。お酒と共に会話を楽しめるのもスモールラグジュアリーホテルの醍醐味となる。朝食は地産地消の和食。朝から胃にやさしいメニューに癒される。ボリュームも適量なのがいい。そういえば、ディナーの後に小さな小箱を渡されたのを思い出した。部屋に戻って開けてみるとお夜食が……。こんな心遣いが嬉しい。

といったスイートルームや温泉に代表されるファシリティ、薪焼きのディナーが自慢の仙石原古今だが、正直ここまではそれほど驚きはない。ラグジュアリーホテルを定宿とする旅なれた諸兄なら幾度か経験していることだろう。ただ、ここには他にないものがある。それはヤギ。3匹のヤギがゲストを歓迎してくれる。
3匹のヤギにはそれぞれに名前がある。“織部(おりべ)”、“琥珀(こはく)”、“空(そら)”だ。それぞれ異なる性格なので見ているだけで楽しい。やんちゃなヤギもいればおとなし過ぎるヤギもいる。エサに飛びつく姿を見ているとだんだんとかわいく思えてくるから不思議だ。ワンちゃんと同じような愛らしさを感じる。

なので、宿泊客の中にはこのヤギに惚れ込んでやってくるリピーターも少なくない。彼らはロビーでチェックイン後、部屋に入らず庭でウェルカムドリンク片手に目を細くしてヤギを眺めている。また、部屋によっては窓からずっとヤギを見続けられるので、そこを指定する方もいるとか。3匹は首輪の色で分けられるので、訪れたらどの色が織部でどの色が琥珀なのかとか聞くといいだろう。誰のファンになるかはあなた次第!


そんな仙石原古今の宿泊プランはいろいろある。ホームページを確認してもらえればわかるが、思いのほか柔軟に対応してくれている。と言うのも、ディナーを箱根にある別のレストランでとる朝食だけのプランがあれば、まったく食事なしのプランもある。と思えば、自宅までのハイヤー送迎プランやディナーにドン・ペリニヨン付きという贅沢なものも。個人的に気に入ったのは大人のひとり旅プラン。家族や友人と一緒もいいが、たまにはそんな気持ちになるってもんだろう。ここなら誰にも邪魔されず読書や趣味に没頭できる。それにもし会話を楽しみたければソムリエと楽しいワイン談義が可能だ。“おひとり様”を満喫できるってもんである。
いずれにせよ、ここには充実施設と美味しい料理、 ホスト側のスマートなサービスがある。スモールラグ ジュアリーホテルを日本で味わうのであれば仙石原古 今はおすすめである。P.B.
いずれにせよ、ここには充実施設と美味しい料理、ホスト側のスマートなサービスがある。スモールラグジュアリーホテルを日本で味わうのであれば仙石原古今はおすすめである。P.B.
■仙石原古今
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原 1245-280
TEL: 0460-83-9585
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