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MARITIMO M55 BLACK EDITION

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快適な居住空間と快適な走行性能を両立。レジェンドによって産み出されたボート乗りが造り上げた珠玉のモーターヨット登場。

text: Atsushi Nomura 
photo: Makoto Yamada 
special thanks: Eins A Resort. https://www.eins-a.jp
Wakayama Marina City Yacht Club

「MARITIMO(マリティモ)」はオーストラリア・ゴールドコーストに本拠地を置くボートビルダー。今回紹介するのは「MARITIMO M55 Black Edition」だ。原形となる「M55」は2021年のSanctuary Cove International Boat Showでワールドプレミアを迎え、その後、2024年に新たに登場したのが今回紹介するM55 Black Editionである。全長17.31m、全幅5.22m、乾燥重量3.1700 tonの艇体に、ツインVolvo Penta D13(1,000馬力)というパワートレインをインストールしたフライブリッジ・モーターヨットである。なお標準エンジンはD13(800馬力)2基となる。M55はMARITIMOの現行ラインナップの中でも最も販売艇数の多いモデルであり、今回和歌山沖でシートライアルを行ったモデルは艇番70に当たるそうだ。

MARITIMOの創業者であるBill Barry-Cotterは1944年生まれ、オーストラリアのボート業界では重鎮中の重鎮として知られる人物だ。ハイドロプレーンボートのレーサーだった叔父KeithBarry-Cotterの影響で10代の頃にボートに目覚め、シドニーのある造船所で見習工となる。その後、自作のボートを製造、1966年に「MARINER CRUISERS(マリナー・クルーザース)」を創業した。同社はオーストラリア屈指のボートビルダーに成長したが1978年に同社を売却。次いでBillは1980年に「RIVIERA(リビエラ)」を創業。同社もまたオーストラリア最大級のボートビルダーに育て上げた後、2002年に売却。翌2003年、オーストラリアのボート業界を変革する新たなブランドを創造すべくMARITIMOを立ち上げた。BillBarry-Cotter自身はオフショアパワーボートレースでも活躍、オーストラリアの国内選手権で7度の優勝を果たしている。MARITIMOは、パワーボートレース部門とセーリングレース部門を社内に抱えているユニークなボートビルダーであり、レーシングテクノロジーからのフィードバックを製造艇に活かしている点も特徴の一つである。例えば過酷なボートレースによって得られた知見により、キャプテンにとってのインターフェースを重視し、より信頼性と安定性に優れた操縦性を実現している。また、すべてのMARITIMOは、8~10時間の海上における試運転を行っているという。エンジン出力や特性に合わせたプロペラ調整、電子機器、ジャイロ、ジョイスティック、スラスターなど、それぞれ海上でテストされている。工場から出荷されるまでに3~4回は試走している。

現在のMARITIMOには、フライブリッジ・モーターヨットのMシリーズ、セダン・モーターヨットのSシリーズ、オフショア・モーターヨットのOFFSHOREシリーズの3つのラインが存在する。MシリーズにはM75、M60、M55、M50(開発中)の4モデル、SシリーズにはS75、S60、S55の3モデル、OFFSHOREシリーズにはM600、S600の2モデルがラインナップしている。なお50フィートのフライブリッジ・モーターヨットであるM50は現在開発中だが、同様にセダンタイプのS50の開発も進んでいる。

MARITIMOM55自体は前述のように2021年にデビューしたが、インテリアやエクステリアの一部に黒いファブリックを用いたBlackEditionは2024年に登場。日本にはスタンダードタイプのM55に続き、MARITIMOM55BlackEditionとしては初となるモデルが上陸した。

和歌山マリーナシティヨット倶楽部の桟橋に舫われたM55BEは、遠めに見ても明らかに高さが目立つ。数隻離れて舫われている80フィート近いクルーザーよりも高さがあるようだ。実際、間近にしてみるとそのボリューム感に圧倒される。エクステリアから紹介していこう。フォアへ向かってほぼまっすぐに伸びる上がるシアーラインを持ち、両舷ハルサイドに大型ウィンドウを備える。ブリッジ自体の高さも充分だが、フライブリッジは完全密閉型のエンクローズドブリッジを採用。モーターヨットの名に恥じない重厚感を見せる。最後尾には大型スイミングプラットフォームが設けられているが、油圧による上下動が可能である。もちろんちょっとした海水浴スペースにもぴったりだ。トランサムにある大型コンソールは左に冷蔵庫、右にBBQグリルを備え、中央は下部に設けられた大型ストレージへのアクセスハッチとなっている。またコンソール全体が油圧で開放可能なため、こちらの大型ストレージには、水中ジェットなどのマリンアクティビティ・ギアを収納できる。チーク貼りのアフトコクピットはテーブルを中央に配置し3方にソファが並ぶ。サロンドアは全開可能であり、サロン後部のアフトギャレーからのサーブもしやすい配置となっている。またエンクロージャーによって全体を囲える。両舷に3段のステップのあるサイドデッキ。フォアデッキは広大なスペースとなっており、中央にはソファが配置されている。なおオプションでクレーンを設定すれば、フォアデッキにもテンダーの収容が可能だ(試乗艇の場合、より簡便に揚降可能なスイミングプラットフォームをチョイス)。

サロンは、後ろ寄りの右舷にアフトギャレーが配置されているが、中央にアイランドタイプのコンソールがあり、アフトコクピットへのサーブに便利。左舷側にはフライブリッジへのアクセスステップが設けられている。ロアーステーションが無く、天井高があるため、サロン空間は非常に広々としている。とても55フィート艇のボリューム感の室内空間ではない。両舷にソファが並び、左舷よりに大型テーブルが設けられている。また両サイドのウィンドウは高さもあり採光性にも優れている。面白いのは前寄りのサイドウィンドウを開閉できる点だろう。サロンのサイドウィンドウにこの意匠は珍しい。室内に設けられたアクセスステップを登るとフライブリッジへ。完全密閉型のフライブリッジで、まさに全天候型。そしてここもサロン同様高さがしっかり確保されており、頭では55フィート艇と分かっていても、より大きなスーパーヨットのような錯覚に陥る。ヘルムステーション及びドライバーズシートとナビゲーターズシートを右舷に配置、左舷にはL字型のソファが並ぶ。フライブリッジ後部のドアを開けると風や太陽光を直接感じられるスカイデッキへアクセスできる。

サロン前部の中央のステップを下りると居住空間のあるロアフロアへと至る。ロアフロアのレイアウトは3キャビン+2ヘッドの構成だ。フォアキャビンは、右舷側にオフセットされたアイランド型クイーンサイズベッドを配置。ストレージ類の他、左舷側には個室ヘッドがある。こちらのヘッドはフォアデッキからもサロン側からもアクセス可能だ。右舷側にはツインベッド仕様のサイドキャビンがある。そしてミジップにフルビームのマスターキャビン。キングサイズベッドが中央に配置され、専用個室ヘッドも備わる。両サイドには大型ウィンドウが配され、その手前にはカウンターと収納スペースがある。とにかくこの空間には高さが確保されており、字義通りのマスターキャビンとなっている。

和歌山マリーナシティヨット倶楽部の桟橋を離れ、デッドスローで沖合いへと向かっていく。フライブリッジからの景色はまるでスーパーヨット。ヘルムステーションのインパネ周りは、光の反射に幻惑をされないようにマットブラック仕様であり、明るい日差しが差し込んでいたとしても非常に見やすい。低速ではジョイスティックコントロールも可能であり、油圧仕様の強力なバウスラスターも備わっているので、離着岸時も安心だ。またアフトコクピットの左舷にはオプションのジョイスティックも備え付けられているため、特に左舷への着岸時やクルーが少ない場合は、そちらを使用するのも有りだろう。エンジンルームにはジェネレーターの他にSEAKEEPER9も搭載されており、横方向への揺れは非常に少ない。走行を初めてからも結構SEAKEEPERの効果は感じられた。徐々に加速を始める。試乗時のマックススピードは2,450rpmで27.8kt。エンクローズドブリッジにいるとスピード感覚がまったく無いため、思いの他スピードが出ていることに少し驚く。速度データと燃費を見てみよう。600rpmで速度6.05kt、燃費は9.4L/h。1,000rpmで8.44kt、37.3L/h。1,500rpmで12.2kt、111L/h。2,000rpmで18.6kt、235L/h。2,450rpmで27.8kt、351L/h。燃料容量は4,550Lだから600rpmで走れば理論上480時間強、2800ノーティカルマイル以上の航続距離と言う計算になる。モーターヨットならではの低速域でのロングレンジクルーズに対応しつつ、28kt近い高速走行も可能と言うのがとても実用的な設定に思える。次いで2,000rpm~2,250rpm程度に落として旋回マニューバを試してみる。ややインサイドにヒールしながら非常に安定した角度で曲がっていく。ステアリングは非常に軽く、55フィートのモーターヨットとは思えない軽快さだ。重厚感ある見た目だったからもう少し重い走りをするのかと想ったが、想像以上に軽快。旋回性能の高さ、旋回半径の小ささに驚いた。この辺りの走行性能の高さがMARITIMOに根付くレーシングDNAなのだろう。続いて自艇の引き波や撮影艇の引き波を横切ってみる。白波を突っ切ったはずなのに衝撃が来ない。横揺れについてはSEAKEEPERの効果もあると思うが、縦方向の揺れも少ないから非常にバランスの良い船体設計なのでろう。実に走らせやすいモーターヨットだった。

非常に快適な居住空間、そしてさらに快適な走行性能。ロングレンジクルーズに対応したオーストラリア製モーターヨットの素晴らしい性能を垣間見た。オーストラリア周辺の海域も、日本列島と同様に外洋に面しており、時に荒いコンディションとなる。そんな中で育まれたMARITIMOの性能、そして自らボートに乗り舵を取る経営陣、「普段からボートに乗っている人たちが造り出したボート」それがMARITIMOである。是非ともM55でその魅力を体感してみて欲しい。P.B.

MARITIMO M55 Black Edition
全長 17.31m
全幅 5.22m
喫水 1.47m
重量 31.7ton
燃料容量 4,550L
清水容量 750L
エンジン 2 × Volvo Penta D13-1000HP 
最大出力 2 × 1,000HP 
問い合わせ先 アインスAリゾート
TEL: 072-224-4040
https://www.eins-a.jp

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