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BOAT&YACHT

YANMAR CX570

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黒潮が育んだ「ラグジュアリー・クロスオーバーヨット」という新しいカテゴリーの創出セミカスタムで仕上げるフィッシング仕様orサロンクルーザー仕様を選択する贅沢

text: Kenji Yamazaki 
photo: YANMAR MARINE INTERNATIONAL ASIA, Makoto Yamada 
special thanks: YANMAR MARINE INTERNATIONAL ASIA
https://www.yanmar.com

そのアクティブでモダンなフォルムはとてもラディカル。斬新なデザインアプローチがもたらすプレジャーボートの新しいカタチはワクワク感を呼び起こす。海の遊びや趣味、エンターテインメントのすべてを網羅するマルチパーパスなボートと。もちろんフィッシングシーンの追求はヤンマーの得意とするところ、さらに50フィートオーバー艇の優雅なクルージングを演出する設えも併せ持ち、ラグジュアリーな趣を漂わせる。そのフォルムが主張するフィッシングボートとしてのストイックさとラグジュアリーなクルージングボートとしての両局面、2基掛け艇であり、広いキャットウエイを採用しウォークアラウンドとしたのはジギングフィッシングやゲストや子供の安全確保の対応が見える。与えられた情報から詳細を読み解いていこう。その取り組みは極めて贅沢、言わばカスタマーコンシャスだ。まず2タイプの選択が可能。フィッシング仕様かサロンクルーザー仕様か。さらにエクステリアやインテリアレイアウトの一部のオーダーメイド、セミカスタムで仕上げることが可能と。なんとわがまま、贅沢なことか。自分のボートを思いのままにカスタマイズし仕上げる。ビスポークの喜び、審美眼が問われそうだ。


フィッシング仕様はまずフライブリッジのヘルムステーションの位置がフライブリッジ後端に位置する。ヘルムのキャプテンからファイト中のアングラーとターゲット状況を確認しやすく、リバース走行時には艇体後部と視認性を確保しキャプテンの操船の安全を確保するための位置だ。アフトコクピットはファイティングチェアのセットやライブベイトウェルやジギングステーションの用意がなされる。もちろんアウトリガーの設営も施される。ボトムフィッシングにはフォアデッキ、ウォークアラウンドの両キャットウェイ、アフトコクピットが生かされる。どのようにもマルチに対応可能だ。

さあサロンクルーザー仕様を見てみよう。フライブリッジはヘルムステーション位置が前方にセットされる。フライブリッジがオープンラウンジになる広々としたスペース展開。サロンシート、テーブル、ウエットバーにBBQグリルのキャビネット、サンベッドとリラクゼーションゾーンが広がる。アフトコクピットもラウンジソファが用意され、電動式HI‐LOWプラットフォームがマリンアクティビティに対応する。スキューバー、シーカヤックやシートイのベースに。フォアコクピットもオープンラウンジスペースとして展開。オーニングを張り、ソファにサンベッドとリラクゼーションゾーンとなる。あれこれエンターテインメントを考えてみよう。デッドスロー、360度海、水平線のその先を見ながら音楽仲間とジャムセッションも悪くない。のんびり気の向くままに瀬戸内海や伊豆七島アイランドホッピング。それこそテーマは自由奔放。

採光豊かなサロンに入ってみよう。落ち着いたシックなインテリア空間が広がる。左舷サイドにフル装備のギャレー、右舷に丸窓を持つダイネッティ、その先にサロン空間が広がる。右舷前方にヘルムステーションが用意される。1脚のキャプテンシートの前、コンソールテーブルから生えるソフトグリップに6スポークのステアリングホイール、その先のコンソールには2面のGARMIN16インチMFDマルチファンクションディスプレイ、中央にはヤンマーの左右エンジンモニター、GARMINオートクルーズ、ヤンマー製ジョイスティック、左右エンジンコントローラー、SMARTジャイロモニターが整然と並ぶ。北欧のワークボートを思わせるフロントウインドウはバーチカルウインドウ、荒天時のスプレー回避や真夏日の直射日光による熱射対策に効果的なウインドウだ。ヘルム右にはキャットウェイへのスライドドアがある。しっとりとした設え感がいい。このサロンを含めたメインデッキの空間、寺院などの日本建築の古典的な美学からインスパイアされた丸い舷窓、醸し出されるのはまさに「禅空間」、ジャパンビューティ、クールジャパン、いやジャパニーズモダンの演出が施されている。

ロアデッキには3ステートルームが確保される。ミジップ右舷側のデイヘッドは共有となるが左右にツインベッドとダブルベッドのゲストステートルームがある。バウには専用のデイヘッドにパウダールームを持つフルビームのマスタースイートルームが用意される。その設えもインテリアの素材などのセミカスタムが可能だ。シックな演出で行くのか艶やかな設えで行くのか、オーナーのオーダーメイド、SDGsな素材のさらなる活用も時代的。

あらためてスペックを見てみる。全長(LOA)17.44m/57.2ftプラットフォーム含む(LH)15.75m/51.7ftプラットフォーム無し。全幅4.80m。喫水1.20m。燃料タンク1,400L×2。清水タンク560L+250L(オプション)。

搭載エンジンはヤンマー製8.71L、6LT640HP×2基、ドライブシステムはZF製Vドライブ‐ZF325マリンギアを採用。2基のエンジンとマリンギア、さらにオプションのSMARTジャイロ搭載のエンジンルームの空間を十分な作業性を確保したうえでコンパクトに設計しロアデッキの居住空間を最大限に確保している。適応認識規格CEカテゴリーB/RCD。最大搭載人員15人。ストレスフリーなイージードライビングを求めて、ジョイスティックによるコントロールも可能。VETUSバウスラスター、オプションのSMARTジャイロ、ウインドラスはMAXWELL、ヤンマーとのグループパートナー会社のマリン設備が心強い。信頼のFRPハルは強靭なPCVコア材を採用したサンドウィッチ構造、ダブルチャイン、フィンキール、セミトンネルハルのディープVハル設計。ソフトライドと荒天時の高い凌波性を確保している。

この全く新しいカテゴリーとなるクロスオーバーヨット、世界に冠たる黒潮の流れる海で生まれたCX570、その物語はプレビューが始まったばかり。受注開始は2025年秋を予定しているという。秋には間違いなく日本からのワールドトレンドリーダーとして世界の話題となるだろう。

このCX570が生まれた物語を紐解いてみよう。

このプロジェクトの始まりはCovid-19で世界中が「ロックダウン」「ステイホーム」の暗い世相の中、2020年4月に「ヤンマー造船株式会社」から「ヤンマーマリンインターナショナルアジア株式会社」に生まれ変わったそのミッションは“革新的なテクノロジーで卓越したマリン体験の未来を形作る”とされた。早速リモートミーティング中に「何かどこにもない新しいボート作ろうよ」スタッフからの一言。「そうだ、もっといいボート、ワクワクするボート作ろう」。「創意」の時期だ、スタッフの心は一致団結した。暗い水平線の向こうに新しい時代の夜明けが見える、そこに見えたのが海の遊びをすべて引き受けるマルチパーパスな大型艇、日本ではまだ無いクロスオーバーヨットへの熱い想いだった。こうして時代がひとつ動いた。

さあストイックでマニアックなビルフィッシュトーナメントにエントリーした後はフローティングヴィラとしてアイランドホッピングを愉しもうか。そんなマルチな遊びに対応するのがクロスオーバーヨット、緊張とリラックス。海をゆったりと遊びたい。フィッシング仕様かサロンクルーザー仕様か、悩ましくも胸躍るビスポークワールドに夢中になること間違いない。P.B.

YANMAR CX570
全長 (LOA) 17.44m/57.2ft
(LH) 15.75m/51.7ft
全幅 4.80m/15.8ft
喫水 1.20m/3.9ft
燃料タンク 1,400L/740 US Gal×2
清水タンク 560L/148 US Gal + 250L/66 US Gal(オプション)
搭載エンジン YANMAR 6LT640 × 2
マリンギア ZF製Vドライブ(ZF325 シリーズ)
問い合わせ先 ヤンマーマリンインターナショナルアジア株式会社 
https://www.yanmar.com/jp/marinepleasure/cx570/

17.44m/57.2ft
15.75m/51.7ft
4.80m/15.8ft
1.20m/3.9ft
1,400L/740 US Gal×2
560L/148 US Gal + 250L/66 US Ga(l オプション)