
RHEA800TIMONIER

古きヨーロッパの漁船たちを彷彿させるフランス生まれのピクニックボート想定外の力強い高速走行を楽しめる一艇
text:Atsushi Nomura
photo: Makoto Yamada
special thanks: CREATION
https://creation-marine.co.jp
「RHEAMARINE(レアマリン)」はフランス西部の港町ラ・ロシェルに本拠地を構えるボートビルダーだ。1996年創業、プレジャーボート産業の歴史が古いフランスにあっては比較的新興のビルダーと言えるだろう。しかしながら同社のラインナップは、ヨーロッパの古い漁船を彷彿させるようなヴィンテージスタイルが多い。一部に最新鋭のトレンドを取り入れたアウトボード艇も存在しているが、こちらもネオクラシックと称したくなるようなスタイルであり、「エレガントかつ伝統的なボーティングやフィッシングを楽しむ」という同社のコンセプトにも合致している。日本へは2021年から、「クリエイション」が窓口となって本格的に輸入が開始され、現在、オープンセンターコンソールの「Open」、ハードトップキャビンの「Timonier(ティモニア)」が輸入されている。


Timonierシリーズは美しいタンブルホームのトランサム形状が特徴的な最もヴィンテージ感の強いモデルだ。RHEAは、かつてクリエイションのオリジナルブランドとして日本国内で人気を博していたBLUEPETERシリーズ(台湾のPRIMAYACHTSが建造)の後継として、新たに白羽の矢が立ったシリーズである。現行のTimonierシリーズには「730」、「800」、「850」があり、「30Evolution」もシリーズ最大艇としてラインナップされている。
今回紹介するのは「RHEA800Timonier」。全長8.60m、全幅3.00m、重量3.80tonのハルにエンジンはディーゼルインボード1基または2基掛け。スタンダードではVOLVOPENTAのパワートレインが採用されているが、日本仕様はYANMARエンジンをチョイス。パワーレンジは260~370馬力となっており、今回の艇には最大クラスとなるYANMAR8LV370(370馬力)が搭載されていた。外観で特徴的なのは大きく湾曲したタンブルホームのトランサム周り。それに合わせてガンネルのラインも少し下に取り付けられている。船底にはかなり大きなセンターキールが設けられている。

「800Timonier」のデッキレイアウトを紹介しよう。ウォークアラウンドデッキの中央にハードトップキャビンが設けられたオーソドックスなスタイル。高いバウレールに囲まれているフォアデッキは、アフトデッキよりも2段高くなっており、最前部にはバウパルピットとアンカーロープロッカーが設けられている。フォアデッキからアフトデッキに至るまでブルワークトップはチーク張りだ。3.00mのワイドビームを活かし、サイドデッキは大人が行き来するにも十分な幅が確保されている。またキャビンの右舷側にはキャプテン用のサイドドアがあり、離着岸時にすぐにサイドデッキにアクセスできる。右舷着岸仕様の多いヨーロッパ艇らしい配置だ。


アフトデッキは、デッキ中央部分が大きく膨らんだ特徴的な作りになっている。これは大きな波が打ち込んだ際などの排水性を考えての工夫と言う。ビスケー湾、すなわち大西洋に面した港町で建造されているボートであり、耐航性能には人一倍気を使っている。「730Timonier」と同様に両サイドのブルワークには折り畳み式のベンチシートを収納。ピクニックボート的に使う際も便利だし、少し座り方を工夫すればボトムフィッシングなどの際の釣り座にも使えそうだ。中央にエンジンルームのハッチがあるが、2基掛け仕様にも対応しているだけあり、内部はかなり空間がある。トランサム中央にボックスがあるが、こちらはラダーのインスペクションハッチを兼ねる。緊急時は上部にティラーを取り付け可能であり直接舵をコントロールできる。スイミングプラットフォームの左舷側には折り畳み式のスイミングラダーが設けられている。

ハードトップには大型の木製レーダーマストが設置されている。キャビンドアはアフトデッキ側と右舷サイドデッキにある。8.60mという全長を考えるとキャビン内は広々している。ヘッドクリアランスもしっかりと取られており日本人には十分過ぎるサイズ感だ。シートライアル途中で大雨に遭い男性4人がキャビン内に籠もる瞬間があったが居場所に困ると言うことはなかった。随所に折り畳み式のパーツを含み実に上手くシートやカウンターなどがレイアウトされているのだ。

アフトドアから入ってすぐ右手にあるカウンターはギャレーとなっており、下部には収納スペースがある。ギャレーの向かいには折り畳み式テーブルを備えたダイネッティ。その前にパッセジャーズシート、右舷側にドライバーズシートが並ぶ。パッセジャーズシートとドライバーズシートは向きを変更できるため、ダイネッティを中心とした会食スペースにもなる。またドライバーズシートの下に冷蔵庫がマウントされている。
ヘルムステーションは見やすいスイッチ類、アナログメーターが並ぶ。窓際にリモコンレバーがあり、中央のステアリングホイールはかなり大きめだ。キャプテンがサイドデッキに出た状態でサイドア越しに操船しながら着岸することを想定した配置だろう。またサイドから釣り糸を垂らしてキャプテン自ら流し釣りなどのフィッシングを楽しむのも簡単そうだ。さらに前にはVバースを配置したフォアキャビンもある。独立したヘッドも備わっており居住性能も高いモデルに仕上がっている。

シートライアルはクリエイションのある堺港の沖合いで行った。以前試乗した姉妹艇「RHEA730Timonier」は230馬力搭載だったため、ゆったりした走行フィールだったが、ほぼ似たような見た目ながら370馬力搭載
の「RHEA800Timonier」はまったく別物の走りを見せてくれた。
まずはスピード計測。デッドスローで7ノット前後、2,300rpmで11ノット、2,700rpmで14ノット、3,100rpmで20ノットに至り、おそらくこのレンジが遅めのクルージングスピードとなる。さらに回転を上げ3,500rpmで24ノットを超える。最高3,900rpmまで回し28.4ノットをマーク。見た目のクラシカルさ、そしてかわいらしい風貌からは想像できないくらいにアグレッシブでクイックな走りを見せる。カタログデータによるとVOLVOのシングル300馬力でも、ツイン170馬力でもトップスピードは27ノットとされており、370馬力のYANMARエンジンのパワーが目を引く。


少しスピードを落として23~24ノット前後でスラロームを行う。「730Timonier」でも感じたが、やはりこの艇体はあまり傾きすぎない。再び25ノット近くまでスピードアップして、同じように高速スラロームも行ってみるが、やはり緩やかなヒールを見せてくれる。同乗者も左右に極端に振り回されるということはないだろう。続いて波当たりを確認するために自身で起こした波に当ててみる。ほぼ衝撃はなく非常にソフトだ。他のモデルでも感じたことだが、厳しい外洋での走行や釣行を意識して造られただけあり、RHEAのボートの剛性感はさすがである。時に厳しいコンディションに見舞われることも多い日本の海でも、十分に活躍してくれそうな魅力的な一艇である。P.B.
RHEA800Timonier
全長 8.60m
全幅 3.00m
喫水 0.85m
重量 3.80ton
エンジン YANMAR8LV
最高出力 370HP
燃料タンク 460L
清水タンク 135L問い合わせ先クリエイション
TEL:072-223-5884
https://creation-marine.co.jp



