
DYNA63
台南に本拠を置く「DYNAYACHTS(ダイナ)」は、1986年創業と台湾でも老舗と言えるボートビルダーだ。ワンオフやカスタム建造に実績のあるビルダーだが、オリジナルのサロンクルーザーシリーズもラインナップしている。もっともシリーズとは言ってもセミカスタムに近いのがDYNAの特徴。今回は日本に初上陸した63フッターサロンクルーザー「DYNA63」をシートライアル。
text:Atsushi Nomura
photo:Makoto Yamada
special thanks: CREATION
https://creation-marine.co.jp

美しいデザイン、安定した走り、素晴らしい完成度老舗台湾ビルダー「DYNAYACHTS」が送り出した63フッターサロンクルーザー
アジアのみならず、世界的にも屈指のボートビルディング大国となった台湾。その中でも南西エリア、高雄、台南といった都市には、数多くのボートビルダーが軒を連ねている。特にこのエリアにはボートビルダーだけでなく、パーツ、ギアのメーカーやサプライヤーも多いため、造船特区とも言うべき活況を呈している。
1986年に創業した、台湾の中でも老舗の部類に入るボートビルダー「DYNAYACHTS(ダイナ)」も台南に本拠を置く一社だ。オーダーメイドに強いビルダーであり、OEM生産などを通して日本のプレジャーボートも建造してきた。特に堺にある「クリエイション」を通して日本との関係も密接だ。今回はそんなDYNAのニューモデルを紹介する。
DYNAは以前から、オーダーメイドを中心としたワンオフ艇とは別に、ベースとなるいくつかのセミプロダクションモデルもラインナップしてきた。「DYNA32」、「DYNA52」、「DYNA63」、「DYNA68」がそれで、今回紹介するのは2番目に大きなサイズの「DYNA63」である。
イタリアンデザインを思わせるエクステリアに、素晴らしいウッド使いのインテリアを持ち、全長は19.46m、全幅は4.98m、3キャビンを擁するフライブリッジサロンクルーザーである。パワートレインは標準でCATERPILLARC12.9(1,000馬力)×2基。メインデッキは、サロン中央にギャレーがくるギャレーアップ仕様と、サロン後端がギャレーとなるギャレーダウン仕様の2種類のプランが用意されている。

ファブリック、カラーリング、調度品や備品の配置などは幅広い選択肢が用意されており、オーナーの要望により、一艇毎にさまざまなカスタマイズが施される。DYNA63はこれまでに16艇が建造されているそうだが、同じ仕様は皆無。今回の艇はサロンの後部にギャレーが設けられたギャレーダウン仕様がベースとなっている。
トランサムの広いスイミングプラットフォームから乗船。スイミングプラットフォームは油圧で下降し、左側にはプラットフォームと同じくチーク張りの美しいスイミングステップも埋め込まれている。トランサム中央のハッチは、ヘッド付きのクルールームへのアクセスドア。ここはストレージとしても有用なスペースだ。

アフトデッキは後部に大型ソファと美しいデザインのテーブルが配置されている。フライブリッジの長い庇がアフトデッキ全体を日差しから守り、右舷側にはフライブリッジへのステップと、離着岸時に便利なジョイスティックが装備されている。左舷にはシンクとバーベキューグリルが備わっており簡単な食事をサーブ可能。煙の出るバーベキューはアフトデッキで、飲み物やその他の料理はサロンのギャレーからという使い分けができる。
アウトサイドは、スイミングプラットフォームからアフトデッキ、サイドデッキ、フォアデッキまですべてチーク張り。サイドデッキは大人一人が移動するのに十分な幅が確保されている。フォアデッキには幅の広いソファと巨大なサンパッドが並び、陽光を思いきり浴びたいならばフォアデッキ、日陰で涼しく過ごしたいならアフトデッキと使い分けができる。


フライブリッジも全面チーク張り。63フィート艇としてもかなり広い方で、後方に相当なスペースがある。ハードトップはフライブリッジの前半分をカバーし、後ろ半分はサンデッキ。フライブリッジの前後どちらにも大型ソファとテーブルが並んでおり、コンディションに応じて楽しむ場所を変えることができる。その中間にウェットバーとバーベキューグリルが備わる。フライブリッジのアッパーヘルムステーションは右舷側で、すぐ脇に大型ソファが並んでいるため、走行中もキャプテンはゲストと会話を楽しみながら操船できる。

続いてメインデッキへ。アフトデッキに面した全面ガラス張りのサロンドアは、フライブリッジへのステップの裏側を除きほぼ全開する。サロンに入ってすぐ右手にギャレーが配置され、この全開するドアのおかけでアフトデッキとの一体感も高い。サーブに使いやすい独立したカウンター、グリル、シンク、レンジ、冷蔵庫、冷凍庫などが揃う。ギャレーの真向かい、左舷側にはL字ソファのダイネッティが置かれており、このあたりは標準とは異なるカスタム設定だ。
サロンの前半分は2段のステップを上がった高さ。右舷にソファとロアヘルムステーション、左舷にL字ソファとテーブルが並ぶ。ドライバーズシートとソファの距離が近く、キャプテンはゲストとの一体感を感じられるだろう。サロンは十分なヘッドクリアランスがあり、そして広大なサイドウインドウのおかけで非常に広々した空間に感じられる。


ヘルムステーションには3面のディスプレイが並び、2席ある内の左側がドライバーズシートとなる。右側にはサイドデッキへ出られるハッチがあり、その脇にジョイスティックがセットされている。離着岸時には使い勝手が良さそうだ。

ヘルムステーション左のステップを降りるとロアフロアへアクセスできる。真正面にアイランドタイプのクイーンサイズベッドを備えたフォアキャビン。左舷には廊下からもアクセス可能なフォアキャビン用ヘッドがあり、セパレートされたシャワースペースも備わる。右舷側はツインベッドを配置したゲストルーム。アクセスステップの左手後ろにあるドアを開ければミジップに位置するマスターステートルームだ。ビームいっぱいの幅を確保したマスターステートルームは非常に広々している。中央にアイランドタイプのクイーンサイズベッド、化粧台やカウンターも備わる。もちろんシャワースペース付きの専用ヘッドもある。


シートライアル当日、堺沖は霧深くやや視界は悪い。時折雨交じりのコンディションで、多少風はあったものの水面は比較的穏やかだ。ロアヘルムでステアリングを取る。600rpmで6.5ノット、800rpmで8.3ノット、1,000rpmで9.6ノット、1,400rpmで12.4ノット、このあたりからぐっと加速しはじめる。1,800rpmで17.3ノット、2,200rpmで25ノットに達し、最高2,280rpmで27.1ノットをマークした。

2,000rpmまで落とし、22~3ノット前後でスラローム。ほぼ思い通りのラインを描いて旋回を繰り返す。緩やかな傾きで旋回、60フィートオーバーとは思えない走行フィールだ。高速でアグレッシブに走るボートではないが、なかなか軽快な走りを見せてくれた。右舷側にあるドライバーズシートからの視界も良く、左旋回時に見えにくい左後方もしっかりと視認できた。これはサロン後部のピラーの角度や大型サイドウインドウによるところが大きい。

DYNA63はウッドの素晴らしい内装、特に細かなパーツ類の一つ一つが作り込まれており実に美しく仕上がっている。3ベッドルーム+クルーキャビンと居住性も十分、サロンクルーザーに必要とされる要素をすべて備えた素晴らしい一艇だ。P.B.
DYNA 63
全長 19.46m
全幅 4.98m
喫水 1.57m
重量 28ton
エンジン 2×CATERPILLAR C12.9
最高出力 2×1,000HP
燃料タンク 3,785L
清水タンク 757L
問い合わせ先 クリエイション
TEL: 072-223-5884
https://creation-marine.co.jp




