
新世代のマルチファンクションディスプレイFURUNO NavNet TZtouch XL

避航すべきルートまで、驚きのレベルの早さで提案されるルーティング機能キャプテンの判断を補完するための最適解
text: Atsushi Nomura
photo: Makoto Yamada
special thanks: FURUNO https://www.furuno.com/jp/
SHIN-NISHINOMIYA Yacht Harbor
航海計器の進化は著しい。
近年、プレジャーボートに限らず各種船舶で使用する航海計器の類いが著しい進化を遂げている。あらゆる面でのDX化の賜物であるが、スマートフォンやタブレット端末などの普及により、タッチパネルによる操作に慣れてくると航海計器でも同様の操作感のものが主流となってきている。また従来の航海計器はGPSプロッタ単体、レーダー単体、魚群探知器単体というように複数台個別に搭載していたが、これらの機器を統合させたいわゆる複合型航海計器が圧倒的に増えてきている。日本国内に限らず世界でも屈指の航海計器メーカーである古野電気(株)(以下、FURUNO)は、「NavNe(tナブネット)」シリーズという独自の製品ラインを2001年に誕生させ、この分野で先駆的な役割を果たしている。

「NavNe(tナブネット)」とは、1台のディスプレイに様々な航海情報を集約できる複合型マリンギアだ。たとえばGPSプロッタ、レーダー、魚群探知器、AIS、ソナーなどの航海機器や周辺機器センサーを接続することで、統合して1台のディスプレイに表示・展開できる。しかもプラグアンドプレイ方式を採用しているため、接続するだけですぐに利用できるユーザビリティの高いシステムネットワークである。日本国内だけでなく、世界的に普及しており多くのプレジャーボートで利用されている。従来のFURUNOのハイエンドモデル「NavNetTZtouch3(ナブネット・ティーゼットタッチ・スリー)」は2020年に発売されたが、2024年10月にその後継機として登場したのが、今回紹介する「NavNetTZtouchXL(ナブネット・ティーゼットタッチ・エックスエル)」だ。
FURUNO NavNet TZtouch XL
NavNet TZtouch XLの特徴を紹介しよう。従来機NavNetTZtouch3からさらに操作性を高め、内蔵魚探・CHIRP(チャープ)サイドスキャン、オートルーティングなどの機能を充実させている。高速処理を可能にするヘキサコアプロセッサを搭載し新たに追加されたチャートTZMAPSによって、高精細かつ色彩豊かな表現でリアルな海底地形を表示するTZBathyVision機能、陸地・浅瀬を避けてルートを自動作成するAIルーティング機能など、高度なナビゲーション機能とフィッシング機能を実現。主に大・中型プレジャーボートに最適化されたネットワーク対応の航海計器だ。

画面サイズは10.1型(TZT10X)、13.3型(TZT13X)、15.6型(TZT16X)、21.5型(TZT22X)、24型(TZT24X)の5タイプがありディスプレイレスのブラックボックスタイプ(TZTBBX)も用意されている。TZT10XとTZT13XにはRotoKeyTM・ラバーキーとマルチタッチパネルを採用したハイブリッドコントロールを実装。さらにインターネット接続によりTZtouchXL上で直接チャートを購入・更新できる。またTZT10X、TZT13X、TZT16Xには1kW、2周波TruEchoCHIRPTM魚探及び230kHzまたは455kHzCHIRPサイドスキャンを内蔵。その他、「流し先選択機能」や「等深線追跡機能」など効率的なフィッシングのため機能も充実している。ブラックボックスタイプのTZTBBXは様々なマルチタッチディスプレイサイズに対応する。概ね中・大型艇への搭載を想定したTZtouchXLだが、最小のTZT10Xは10.1インチモニターであり、現実的には20ft台から搭載可能だ。
FURUNOの開発陣によるとTZtouch3の後継機TZtouchXLの開発は約3年前にスタート。従来と異なりメインマーケットでもあるアメリカの子会社主導で商品企画のプロジェクトを進めたそうだ。商品企画サイドからの要求には、より簡単であること(装備面でも操作面でも)、よりコネクテッドであること(インターネット接続によるアップデートだけでなく、自社・他社問わずさらなる接続性の拡張)を求められた。こういったキーワードを元に開発自体は日本サイドで行っていったという。TZtouchXLでは初めて全周型スキャニングソナーを接続できるようにしたそうだが、今後は他社にないFURUNOならではのセンサー類を追加・接続していくことも考慮しているという。さらに後掲するAIルーティング、避航ルート機能も進化させていきたいとのことだ。
AIルーティング機能



今回は新西宮ヨットハーバーに係留されている、NavNet TZtouch XLを搭載したFURUNOの試験艇「PEGASUS」(Hatteras)に試乗する機会を得た。実際の使い勝手や画面の見え方などをリポートしよう。特に事前に気になっていたのが陸地・浅瀬を避けてルートを自動作成するAIルーティング機能。TZMAPSチャートデータを元に浅瀬や陸地を避けてルートを自動生成してくれる。しかもボート毎に水深(喫水)も設定できる。チャートデータ、各種安全パラメータを参照し、湾口・マリーナ入り口などの最適な通過ルートを示してくれるのだ。実際の操作は本当に感覚的に行える。スマートフォンやタブレット端末を操作する感覚で指でタッチして自船の位置から目的地をタップするだけでルートが自動生成されるのだ。【写真1】は、西宮沖に停泊しているタイミングで広島県呉市の倉橋島沖合いをタップしてみた例だ。【写真1】ではカーソルの動きに伴い淡路島の南側のルートを経由して倉橋島の沖合いへまっすぐにグレーの線が引かれた状態。目的地周辺にできる扇状の円形が全円になるとルーティングが完了する。【写真2】はルーティングが完了し、淡路島の北側(明石海峡)を抜けていくより適切なルートを示してくれている。【写真3】は同じくAIルーティングの例だが、今度は大阪湾へ流れ込む木津川、そこに掛かる木津川大橋の少し上流を目的地にしてみた。試験艇のHatterasの喫水でも木津川大橋の手前までは行けそうだ。ブルーラインが航行可能でレッドラインが喫水的に浅瀬に該当するエリアとなる。こういったルーティングが数秒でできてしまう。従来であれば紙の海図とコンパスを使ってやっていたチャートワークがAIによって補完されるのだ。これは非常に便利な機能である。
AI避航ルート機能



さらにもう一つ今回の試乗時に是非とも試してみたかった機能が「AI避航ルート機能」である。これはFURUNOが業界初の試みとしてNavNetTZtouchXLに搭載した機能である。従来機種でもプロッタ・レーダーは他船との衝突の危険を知らせてくれる機能はあったが、その後の判断はキャプテンにゆだねられていた。しかしこの新たな「AI避航ルート機能」は、危険を回避するためのより最適なルートをAIが計算、表示してくれるのだ。視界良好な日中であれば良いが、夜間航行時や濃霧の中や悪天候下での航行時には非常に役立つ機能である。特に今回テストした大阪湾、または東京湾・名古屋湾と言った輻輳海域では衝突の可能性のある船舶がどちらの方向に、どのくらいの速度で進んでいるかを判断しづらいシーンも多い。そういった時に自船のスピードと自船の位置から目的地をタップするだけでルートが自動生成されるのだ。【写真1】は、西宮沖に停泊しているタイミングで広島県呉市の倉橋島沖合いをタップしてみた例だ。【写真1】ではカーソルの動きに伴い淡路島の南側のルートを経由して倉橋島の沖合いへまっすぐにグレーの線が引かれた状態。目的地周辺にできる扇状の円形が全円になるとルーティングが完了する。【写真2】はルーティングが完了し、淡路島の北側(明石海峡)を抜けていくより適切なルートを示してくれている。【写真3】は同じくAIルーティングの例だが、今度は大阪湾方向、衝突可能性のある他船のスピードと方向から的確に避航ルートを提案してくれるのだ。もちろんこれはあくまでも提案であり、オートパイロットなどと連動している訳では無い。そのため、最終的な判断はキャプテンが行うのだが、ほぼ瞬時に避航ルートを指定してくれるのは実に使いやすい。テスト時は視界良好な日中だったが、過去に夜間航行した時の判断までの時間を考えると、こういった機能によって補完してくれるのは非常に有難い。


【写真4】はその実例の一つだ。画面中央やや上にある赤い船のマークが自船の位置。神戸港沖合いを南下中だ。レーダーによると東側から3隻の船舶が接近中なのが分かる。レーダーの映像解析機能によりこの3隻の位置と進行方向、速度が自動的に割り出された結果、この3隻のうち中央の先行している1隻にグレーのバーが表示された。これは、グレーのバーの位置で衝突する可能性があることを示している。自船がこのままの進路で南下を続けると衝突する可能性があるわけだ。西側にオレンジ色の避航ルートが表示されているが、これがほぼオンタイムで変化し表示されていくのだ。さらに【写真5】を見てみよう。西側にいて【写真4】の時点ではやや北東方向へ向かっていた船舶がより東寄りに進路を取っている。そのため今度はこちらの船舶と衝突する可能性が出てきた。するとすぐさま【写真6】のように西側から接近中の船舶をも回避するための最適な避航ルートを表示してくるのだ。実際、自身で周囲のワッチをしつつ、この機能を目の当たりにしたが、視界良好な日中ですらAIによる表示は人間の判断より早いだろう。これが夜間であればより有用なのは言うまでも無い。もちろんベテランキャプテンであれば、ある程度まで自身の経験値からくる予測で回避できるシーンも多いだろう。しかしたとえばロングクルーズの終盤、疲労が蓄積している状況ではどうだろうか?そういった困難な状況の際に適切な補完をしてくれるのがNavNetTZtouchXLなのである。
欠かせない航海計器
さて以上のようにNavNet TZtouch XLの中でも特筆される2つの機能を紹介してきたが、その他にも、「CHIRPサイドスキャン」などのNavNet TZtouch XLを使いこなせばフィッシングシーンまで大きく変化してくるだろう。

もちろん、実際の航行にはしっかりとしたワッチが必要とされるし、最終的な判断はキャプテンに帰すものであるは言うまでも無い。しかしNavNet TZtouch XLを使いこなせば、より適切により早くキャプテンがさまざまな判断を行えるのも事実だ。ボートフィッシングやクルージングを大きくサポートしてくれるNavNet TZtouch XLは今後のボーティングシーンには欠かせない航海計器となっていくだろう。P.B.
■問い合わせ先古野電気拠点情報
https://www.furuno.co.jp/corporate/bases/domestic/







