ダーウィン – オーストラリア、地球の原風景に出会う旅

ノーザンテリトリー、野生の楽園で釣り三昧の休日「ティウィ・アイランド・リトリート」
photo & text: Masahiro Ohashi
special thanks: Tourism Northern Territory
https://northernterritory.com/jp/ja
オーストラリア大陸の北にあるティウィ諸島は、無人島を含めた11の島々から成る。そのうちのひとつバサースト島は、手付かずの自然と究極のアウトバック体験を求める旅行者を魅了する島である。

アプローチは双発プロペラ機のパイパーPA-31。狭い機内にはパイロット1名と数人の乗客が乗るだけだ。コックピットにはかなり使い込まれたアナログ計器類が並んでいる。ダーウィンの空港を飛び立つと30分ほどのフライトでティウィ諸島上空に差し掛かる。この日は快晴で風もなく機窓からの絶景を楽しめた。


しばらくすると密林に覆われた島が見えてくるが、上空からは人工的な建物はおろか人が営む様子は皆無だ。すると機体が急旋回をして高度を下げてゆく。やがて、蛇行する川と木々の隙間に赤褐色の未舗装の道が見えてきた。どうやらそれが滑走路のようで、密林に挟まれた小石だらけの滑走路へ吸い込まれるように機体が降下して、無事着陸を果たす。まるでアクション映画の主人公になったかのようでほんの少しスリルを感じたと同時に、正真正銘の秘境に来たことを悟り、眠っていた冒険心が呼び覚まされた気がした。プロペラが静止したことを確かめると、パイロットが我々ゲストを機外へ誘導する。そこからは徒歩で川の船着場へ向かい、停泊するリゾート専用のボートに乗り込み、スタッフに手渡されたビールで喉を潤しほっと息を吐く。マングローブが生い茂る自然そのままの島並みを眺めながら心地よいクルーズを楽しんでいると「ティウィ・アイランド・リトリート」の建物が見えてきた。
2019年にフィッシングロッジとしてオープンした「ティウィ・アイランド・リトリート」はこの島唯一の宿泊施設で、コロナ禍を経てラグジュアリーなグランピングテントやプール、バーなどが併設する大自然を楽しむリゾートとしてリニューアルを果たした。

ボートのキャプテンからリゾートには2つの掟があることを説明される。まず一つは、ビーチで泳がないこと。何故ならビーチにはクロコダイルがいるからだ。二つめは砂浜にマークしてあるロープ内には立ち入らないこと。頭上から椰子の実が落ちてきて怪我をすることがあるからだそうだ。この島ではリゾートの建物内だけが人間の為の空間で、我々は、この大自然に暮らす野生動物の世界ではビジターなのだ。


ボートから降りて島に上陸しようとすると、数十メートル先に水面に浮かぶクロコダイルの姿が見える。オーストラリアのアウトバック体験は危険と隣り合わせなのだと身を引き締める。人里離れたバサースト島の自然だけが例外ではなく、数十万人が暮らすダーウィンのビーチ沿いですらクロコダイルや猛毒のジェリーフィッシュが生息するのでビーチで泳ぐのは危険であると注意喚起されていたのを思い出す。オーストラリアという国では、人間と野生動物は共存しながら暮らしているのだ。


モルディブやカリブ海のリゾートホテルとは違い、ここでは必要最低限の設備とサービスが整ったミニマムな滞在となる。とはいえ、冷えたビールやワインは滞在中フリードリンクなのはうれしい。バーカウンターを備えたウッドデッキにゲスト同士が集い、ときにはスタッフも一緒に会話を楽しむ。
この島を訪れるゲストの主な目的はフィッシングだ。早速、ボートフィッシングへ向かうことにする。周辺の海域や島を熟知したガイドがボートを操りポイントへ向かう。ルアーのセッテイングからキャスティングの仕方まで丁寧に教えてくれるガイドのおかげでアカメ科に属する巨大魚のバラマンディや、鋭い歯をもつバラクーダなどが面白いほどヒットする。釣りあげた魚はリゾートへ持ち帰ると、スタッフが捌いてその日のメニューに加わり有り難くいただける。

そして、この島の夕陽についても触れておきたい。燃えるような真っ赤に染まる夕焼けが波の穏やかなビーチに映り込む幻想的な光景は至福のマジックアワー。そして裸足で砂浜を感じ、グラス片手にアペリティフを楽しむ贅沢。現代社会からエスケープして、太陽の動き、風の匂い、森の声に耳を澄ませ、輝く星空に心ときめく。自然のリズムに身を委ねることで最高の癒しを得られるのだ。
トップエンドと呼ばれるノーザンテリトリーの北部に広がる「カカドゥ国立公園」はダーウィンから東へ250kmの距離にあり、オーストラリア大陸の雄大な景色を楽しみながら約3時間のドライブでたどり着く。しかし、そこは国立公園の玄関口に過ぎない。総面積約2万km²と広大なカカドゥ国立公園は、日本の四国と同じほどの広さがあり、岩山から森林地帯まで様々な景色が広がり、マングローブが茂る大湿原にはクロコダイルやバッファローなど多様な野生動物が生息する。

船は朝日を浴びて黄金色に輝く水面を静かに進む。カカドゥで最も有名な湿地帯のイエロー・ウォーター・ビラボンは、サウス・アリゲーター・リバーの支流にあたる河川水路で、広大な湿原が広がっている。地球上に生息するマングローブのうちの39種がカカドゥにあるという。さらに、オーストラリア固有鳥類の3分の1以上が確認され、クロコダイルを含む123種類の爬虫類、60種類の哺乳類が生息している。

先住民ビニンジュ族の血を引く船長が野生動物や野鳥を素早く見つけて教えてくれる。遥か昔からこの地で暮らしてきた末裔の話はまるで詩の旋律のように、鳥の囀りや木々の梢など生きとし生けるすべてのものに役割や意志があるかのように語られる。また、X線画法と呼ばれる独特の技法で書かれた壁画が残るノーランジー・ロックでは、先住民のガイドと共に雄大な自然の中をトレッキングしながら、数万年前の先住民が残したロックアートを鑑賞することができる。手付かずの大自然に癒され、遥か昔からこの地に暮らす先住民の文化に触れる旅は刺激に満ちた素晴らしい体験となった。P.B.
■ Tiwi Island Retreat
https://tiwiislandretreat.com.au
■ Kakadu National Park
https://northernterritory.com



