YAMAHA 275SDX
YAMAHAスポーツボートの頂点となる2基掛けジェットの圧倒的な加速とスピード性能 新操船デバイス「DRiVE X」とラグジュアリーな居住空間で、さまざまなマリンプレイに応える
text: Yoshinari Furuya photo: Makoto Yamada
special thanks: YAMAHA MOTOR https://www.yamaha-motor.co.jp
遡ること37 年前、1986年は、世界で初めて座ったままライディングできる2人乗りのPC(パーソナルウォータークラフト)が誕生した年だった。「マリンジェットMJ-500T」と名付けられたそのPWCは、世界的なPWCマーケットを築いた歴史的モデル。転倒しても水が入らず、プロペラユニットが外にない安全性の高いジェット推進システムに加え、誰もが手軽に運転できる安定性を持ちながら、爽快なファンライドができる「マリンジェット」は、製造国の米国だけでなく、世界中に販売網を広げ、瞬く間に憧れの乗物となり、マリンスポーツの一つとして認知されるようになった(※「マリンジェット」は2022年に、世界で使用され定着している「WaveRunner」(ウェーブランナー)」に呼称を統一)。
居住性も兼ね備えたランナバウト
そして10年後の1996年、YAMAHAは、「マリンジェット」の運動性能や走行フィールを持ち、ランナバウトの居住性と爽快感を併せ持つジェットボートを北米で販売。2年後の1998年には、USYAMAHAから逆輸入し日本国内でも販売を開始する。2002年には、クリーンな 4 ストロークエンジンが登場。スポーツボートは、ジェット推進のメリットを残しながら大型化、アウトボードやスターンドライブのランナバウトを凌駕する走りを手に入れた。
ヤマハマリーナ浜名湖のポンツーンに係留された「275SDX」。全長8.2m、全幅2.7mの275SDXは、間近で見ると他のランナバウトとは明らかに違うゆとりの空間とラグジュアリーさを纏っている。小型のスポーツボートシリーズとは異なりオープンバウ付近は水面から高さがあり、ブルワークも深い。バウからフロントウィンドシールドへ美しいラインが立ち上がり、ミッドシップのコクピットからパッセンジャーシート周りは高さのあるウィンドシールドに囲まれ、風や飛沫を寄せつけない。流れるようなシアーラインが描かれ、最後尾で水面に繋がる美しいサイドビュー。シアーランに合わせてデザインされたハードトップも、ハードトップを支えるステーも、デザインの一部として美しい造形を描いている。洗練されたスタイリングも275SDX の大きな魅力の一つだ。ジェット推進を搭載したスポーツボート特有の、水面に近いロー&ワイドなスイミングプラットフォーム。その左右にあるEVAマットが貼られたステップに足をかけプラットフォームに降りたつ。プラットフォームからバウまで、フロア面にはEVAマットが貼られている。素足で感触が良く、濡れていても滑りにくい。スイミングプラットフォームの中央にはスイミングラダーとハンドレール。海水浴では足を水につけ後ろ向きに座ることを想定した背もたれのクッションやカップホルダーが備わる。さらに、ビーチングやアンカーリング時には、リバーシブルのカップホルダー付きテーブルを左右 2 ヶ所のブラケットに差しこみピンで固定。反転してセットすれば海外リゾートで見かけるプール BAR の水中チェアに早変わりする。もちろん、マリンプレイ後すぐに海水を落とせるシャワーも標準で装備されている。
アフトデッキからバウデッキまで、一体感のあるセンタースルーのデッキレイアウト。アフトデッキの左右には、クッションが敷かれたサンタンベッド。トランサム側からハッチを開けると、ドライブシャフトやインペラーにアクセスできるメンテナンスハッチ。インペラーの点検や巻き込んだロープの抜き取りなどを行うことができる。前方のハッチは、クッションや背もたれと一体のエンジンフード。エンジンルームにはスーパーチャージャーを搭載した1812cc250馬力のSuperVortexHighOutputEngineが左右に搭載されている。その前方、スターボードサイドには、ソファとミニシンクが備わるウェットバー。ミニシンクの下のキャビネットには、グローブボックスの他、クーラーボックスが収納できるストレージが備わる。ウェットバー前方にはアームレストが付いたドライバーズシート。フリップアップするのでリクライニングシートのように視認性の良いポジションで操船することができる。
ポートサイドには、ソファとナビゲーターシート。ナビゲーターシートの前には、カップホルダーや物入れが付いた大きな扉。開けると、簡易トイレを設置することができる広い収納スペースが現れる。フロントウィンドシールドの中央部分を開きバウデッキに移動する。左右にはシェーズロングのように足を伸ばして座ることもできるパッセンジャーシート。中央の通路にクッションをセットすれば、フラットなデイベッドとして使うこともできる。
直感的な操作で行う離着岸
ホールドの良いドライビングシートに着座する。エンジンを始動し、マルチファンクションディスプレイ「CONNEXT」のタッチパネルを操作する。画面には集中管理されたエンジン情報や走行情報が映し出される。イタリア GUSSI 社製のスポーツステアリングを握り操作する。3本スポークの下、DRiVEXモードをONにする。左舷に係留しているので、左親指でドックホールドスイッチをON に。ジェットの流が275SDXを桟橋に押さえつけている間にロープを外す。ドックホールドをOFFにし、次は右手親指で横移動のスイッチをONにする。ステアリングホイールを握り変えず、左右45度ほどの範囲で操作し、ヘディングをコントロール。パドルの操作で微調整し横移動。触っているうちに反応に慣れ、ステアリングを動かしながらパドルを操作することができるようになる。ジョイスティックよりも直感的で自然な動作。頭で考えず感覚だけで動かすことができる。
桟橋から離れ、その場で 90 度方向を変える。左手の親指でピボットターンのスイッチをONにする。ステアリングホイールを握り返すことなく時計回りに回す。船首が時計回りに回り、行きたい方向に船首が向いたら戻すだけだ。
DRiVEXのスイッチをOFFにし、右手はスロットルレバーを握る。電気式のステアリングは軽く、左右におよそ45度しか回転しない。これはDRiVEXを使うために合わせたセッティング。送りやクロスなど、位置をかえ握り直すとパドルレバーやDRiVEXの操作スイッチの位置がずれてしまう。常に同じ位置を握り親指だけでスイッチ操作ができるように設計されている。また、回転は少ないが、マニューバのセッティングはソフト。ステアリングホイール自体は一瞬でロックまで回るが、一般的なボートと同じ感覚で旋回するように調整されている。
シングルレバーに切り替え加速する3,000rpmで5.8ノット、4,000rpmで20.3ノット、ジェットの吹き出しが高い位置にあるので、ノーズはほとんど上がることなくプレーニングに入る。5,000rpmで25.0 ノット、6,000rpmで31.2ノット7,000rpmで39.1ノッ最高スピードは43.4ノットに到達した。小型ジェットボートとは異なる Vハルとキールにより、波あたりはソフト。引き波にも飛び跳ねることなく、アウトドライブのランナバウトに乗っているフィーリング。ダブルチャインも効果的でデッキはドライだ。6,000rpm前後で旋回に入る。右手はスロットルを握り、左手はステアリングを操作する。ロックtoロックが180度もないので、片手で持ったまま回転させ、握り変えることもなくクイックなマニューバを描くことができる。
YAMAHAはジェットボートの全モデルをスポーツボートにラインナップ。アウトボードモデルのSR330がジェットボート以外で唯一、スポーツボートに加えられている。ジェットボートの中では275SDXがフラッグシップだ。また、275SDXはテクノロジーばかりが注目を集めがちだが、マニューバビリティやシーワージネスは、ジェットボートの想像をこえる。その走りはアウトボードやアウトドライブ、インボードのランナバウトにも劣らない。さらに、ジェットボートの安全性も加わり、最強のファミリーボートが生まれたのだ。P.B.
YAMAHA275SDX
全長8.21m
全幅2.76m
喫水0.56m
完成質量2.63ton
エンジン2×YAMAHA1,812ccSuperVortexHighOutput最高出力2×250ps
燃料タンク340L
清水タンク53L
本体価格31,680,000円
問い合わせ先ヤマハ発動機TEL0120-090-819
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/