1. HOME
  2. BOAT&YACHT
  3. SPENCER 44 SPORTFISH EXPRESS
BOAT&YACHT

SPENCER 44 SPORTFISH EXPRESS

BOAT&YACHT

控えめなカロライナフレアは、より軽く、強く、速いボートを追求するSPENCERの証美しいスタイリングに類い稀なフィッシャビリティを秘めた唯一無二のカスタムボート

text: Yoshinari Furuya  
photo: Makoto Yamada
special thanks: CITY MARINA VELASIS  https://www.velasis.com
HATTERAS YACHTS JAPAN. SALES https://hatteras-japan.com

「SPENCER YACHTS(スペンサー)」といえば、1996年、ノースカロライナ州アウターバンクスにあるロアノーク島の対岸、マンズハーバーでPaulSpencerが創業したカスタムボートビルダー。PaulSpencerの建造するボートの特徴。それは、美しく均整のとれたスタイリングと、ポイントを素早く移動できるスピード。そして、トップスピードだけではなく、波の中でも高速走行できるシーワージネスと、長時間の乗船でも疲れないソフトライド。Paul Spencerの目指す「Look svery good & goodride」を体現したものだ。さらに、遠征をサポートするアコモデーションもリュクスで快適。加えて、フィッシングボートにとって最も重要なフィッシャビリティのためのレイアウトやファシリティ。これらスポーツフィッシャーに求められる要素全てを高い次元でかなえる最強のカスタムボート。それが、SPENCER YACHTSのキャラクターだ。

Paul Spencerは12歳からデッキメイトとして乗船し、19歳でキャプテンライセンスを取得。ボートビルダーであった義父のSheldon Midgettが建造したボートを駆り、フィッシングチャーターのキャプテンとして経験を積む。その20年に及ぶ経験を元に、カロライナボートのレジェンドOmie Tillettの協力も得て59フィートのコンバーチブルを建造。この1997年に進水した記念すべき1号艇は、現在もオレゴンインレット・フィッシングセンターを基地としたフィッシングチャーター〈Bi-Op-Sea〉として、活躍している。

フィッシングチャーターの経験と知識を注いだフィッシャビリティは、プロのボートキャプテンから信頼を得るだけでなく、Paul Spencer自らキャプテンとして参戦したトーナメントでの活躍がボートオーナーの目に留まり、常にバックオーダーを抱える人気のカスタムボートビルダーとなった。そして、創業からたった25年で、120艇を超えるカスタムボートを建造し、ノースカロライナのボートビルダー史に名を残すレジェンドとなったのだ。

「SPENCER 44 Sportfish Express(スペンサー44スポーツフィッシュエクスプレス)」が、シティマリーナヴェラシスのポンツーンに係留されている。すべてのSPENCERに共通する、美しいスタイリングと伸びやかなシアーラインが我々を迎えてくれた。トランサムの船名〈PRIVATEIS LAND〉は以前のホームポートPalm Beachで描かれたもの。本国アメリカの雰囲気をそのままに、フロリダの空気感を届けてくれる。

トランサム形状は垂直に近く、絞り込みの少ないタンブルホーム。バウデッキのビームをピークにトランサムに向かい絞られる伝統的なカロライナスタイルとは異なり、デッキ前後のビームに差がない、ほぼ平行なアウトライン。控えめなタンブルホームや控えめなカロライナフレアは、フロリダスタイルとカロライナスタイルの中間的なデザイン。ナロービーム、ロングノーズ、ショートキャビン……。Paul Spencerも影響を受けたというTRIBUTEやJIMSMITHなどスピードやスタイリングを追い求めたフロリダスタイルとの融合が、SPENCERを唯一無二の存在にした。

アフトデッキと周りに貼られた分厚いチーク製ブルワークに足をかけ乗船する。44フィートとは思えない重厚な造りとウッドワークの丁寧な仕事は一流のカスタムビルダーの証。アフトデッキの中央には、バーニッシュが輝くPOMPANETTEのファイティングチェア。4本のロッドを立てることができるロッドホルダーと、小物を置くことができるバックレストは、機能的な定番スタイル。ファイティングチェア付近の前後はおよそ2.4m、幅はおよそ3.6m。十分な広さのアフトデッキは、リーダーマンやギャフマンも動きやすく、素早く対応することができる。

アフトデッキで特徴的なのは、コンソールボックス。2分割された上部のハッチを開けると、シンクやエンジンルームハッチではなく、深く大きいフリーザーとフィッシュボックスが現れる。その理由は、エンジンの設置場所によるもの。パワートレインは、アフトデッキの下に搭載されたVOLVO PENTA IPS600。2,100mm×2,600mmに及ぶアフトデッキの大部分を覆うフロアを油圧で開閉。エンジンの全周に手が届くので、メンテナンスがしやすい。デメリットとしては、フロア下の空間にフィッシュボックスやストレージを設けることができないこと。代わりに、コンソールにフィッシュボックスが設けられ、デッドベイトやキャッチした魚を収納することができる。また、トランサムに備わるベイトタンクも1,700mm以上のワイドなものが設置され、ライブベイトを生かしておくだけでなく、ライブウェルとして使うこともできる。

さらに大きな特徴がある。それは、フィッシャビリティに重点を置いたコマンドブリッジとアフトヘルムのレイアウト。アフトヘルムと言っても、シンメトリックのセンターコンソールスタイルとは違う。ポートサイドから伸びるコンソールの中心線に近いパイロットシートがヘルムシート。その左側がナビゲーターシートとなる2脚スタイル。これは、コンバーチブルのフライブリッジによく使われるレイアウト。前方の視認性よりもアフトデッキの視認性を重視したもの。アングラーやデッキメイトとのコミュニケーションが取りやすい、最もフィッシャビリティの高いレイアウトだ。また、センターコンソールと違いコンソールが大きいので、大型のディスプレイを3台搭載することができる。航海機器や複数の無線など、トーナメントに必要な電子機器を使いやすい位置に配置できるゆとりがあるのもこのスタイルのメリットだ。

だが、このレイアウトは、ナビゲーターシートの出入りがしにくいというデメリットがある。それを解決するためアフトデッキとコマンドブリッジを結ぶステップを左右に設置。ナビゲーターシートからアフトデッキに直接行き来することができる。他のエクスプレスにはないフィッシャビリティの高いレイアウトだ。

コマンドブリッジの前方、スライドドアから幅の広い螺旋階段をつたいロアキャビンへ降りる。44フィートとは思えないおよそ2mの天井高が確保されたサロンはサイズ以上に広く感じられる。スターボードサイドには3人掛けのソファ。ポートサイドにはギャレー。シンクはもちろん、スライドタイプのリフリジェレーターやマイクロウェーブなどが搭載され、トローリング中の食事も充実。ギャレーの左横のドアはヘッドの入口。スペースを贅沢に使ったレギュラーサイズの洗面台やトイレ、独立したシャワーブースも44フィートのエクスプレスとしてはトップクラスの広さ。全てにおいて、ゆとりのあるアメリカンサイズが心地いい。

サロンを抜けると、マスターステートルームとして使われるバウキャビン。中央には、最大幅1,900mmのクイーンサイズのワイドなアイランドベッド。左右には、大型のハンギングロッカーやキャビネットも用意され、長期遠征でも快適に過ごすことができる。そして、同等クラスのエクスプレスとの違いは、サロン後方のクルーキャビン。エンジンをアフトデッキの下に搭載したことで、ミジップにキャビンを加えることができたのだ。

螺旋階段を降りた左側のドアを開けると1,880mmの天井高が確保されたフルビームのツインルーム。フロアの左右には、幅1,120mmとワイドなシングルベッド。これほどワイドなツインベッドが並ぶクルールームは他のボートでは見たことがない。IPS艇だけに与えられた空間。大柄なクルーも快適に睡眠をとることができる。天井には、ロッドを収納するためのロッドホルダー。大型キャビネットやストレージなど十分な収納も確保され、トーナメントの遠征シーンをサポートしてくれる。VOLVO PENTA IPSポッドドライブが、アコモデーションにもメリットを生み出し、スポーツフィッシャーのインテリアに革命を起こしたのだ。

コマンドブリッジ後方のヘルムシートで操船する。離岸から港内の移動まで、ジョイスティックを使い直感的に操縦することができる。ヘルムポジションは船体中央に位置し、左右はもちろん、トランサムからバウデッキまで全周を見渡せ、死角も少ない。デッキよりも高くフライブリッジよりも低いアイポイントが、視認性とフィッシャビリティを生み出している。

港を出て加速する。1,000回転で6.6ノット、2,000回転で10.6ノット、直進性も安定性も高くノーズがほとんど上がることなく加速する。2,500回転で16.4ノット、3,000回転で23.1ノット、3,500回転で30.1ノット、アフトデッキに搭載されたIPSは、振動もノイズも少なく、静かに力強く回転を上げ、ストレスを感じることはない。

30ノットに近いスピードを保ったまま旋回に入る。IPS特有のクイックでトリッキーな挙動はなく、バランスの良いフィーリングに調整されている。ナチュラルなレスポンスでスムーズにバンクする。大きくステアリングを切るが、一定の弧を描き安定した姿勢を保ち旋回。IPSであることを感じさせないセッティング。向かい波や追い波、横からの波をソフトに受け止め、ローリングも少なく安定したマニューバを描く。

そして、SPENCER 44の最大のアドバンテージは、フィッシャビリティ。ヘルムシートのバックレストを外し、目の前のアフトデッキを見下ろしながら、パームビーチスタイルのシフトレバーを操作する。このファイト中のヘルムスタイルからは、後方の海面やロッドから伸びるラインが良く見える。また、ファイティングチェアの距離は驚くほど近く、デッキの状況を直接認識することができる。タイムラグもなく、ボートをコントロールすることができる。

次にIPSでのファイトをイメージする。後方を向き、ジョイスティックをコントロール。IPSをハイスピードに切り替え、後方にジョイスティックを倒す。曲がることなく、6ノットで真っ直ぐに後進する。そのスピードのままジョイスティックの操作だけでマニューバを描く。その場回頭や平行移動、急な前進への切り替えが、指先だけで瞬時に行われる。スロットルレバーでコントロールする場合は、ポッドドライブの方向は固定されている。左右のシフトと回転数の強弱だけで操作するので、機動力はシャフト船と同等になる。だが、ジョイスティックを使えば、シフトだけでなくドライブの向きを変え旋回するので、シフトレバーで操作するよりもクイックに旋回する。前後左右に激しく走るカジキやマグロに合わせ、瞬時に向きを変え追いかけることができるのだ。

SPENCER 44は、SPENCER YACHTSの中でも最小クラスのエクスプレス。だが、一体感と機動力ではビッグボートを上回る。その魅力から、米国でもエクスプレスのファンは多い。そして、IPSを搭載したボート建造の経験を重ねたPaulSpencerは、ポッドドライブのメリットを最大に生かすSPENCER 44 Sportfish Expressを完成させた。トーナメントリーダーを目指すために生まれた最強のバトルシップの降臨だ。P.B.

SPENCER 44 Sportfish Express

全長 13.4 m
全幅 4.4 m
全深 2.4 m
エンジン 2× VOLVO PENTA IPS600
最高出力 2× 435 HP
燃料タンク 2,565 L
清水タンク 445 L
問い合わせ先 ユニマットプレシャス 舟艇販売部
https://www.unimat-marine.com
関東営業所 TEL: 046-844-2111
中部営業所 TEL: 0533-76-3100 
関西営業所 TEL: 0798-31-5066
https://x.com/uqfztxjlgoydi8o?s=11