
MASERATI MC20 CIELO
MASERATIが16年ぶりに解き放ったミッドシップスーパースポーツカーMC20のオープントップバージョンMC20チェロ。そのデリバリーが始まった。美しいフォルム、グランドツーリングカーとしての成熟度の高さ、F1由来の新設計V6ツインターボエンジン、630ps/730Nm。永遠をイメージする海と空の色、アクアマリーナ。どこかノーブルでエレガントなスーパースポーツカー、ふと極めつけの海を目指して走りたくなる。

text: Kenji Yamazaki
photo: MASERATI
https://www.maserati.com/jp/ja?redirect=1
ガレージ脇の桜は見事なグラデーションを見せ、伸び始めた緑の若葉がやさしく煌めいている。教会のエントランスにあでやかな色彩、コリドー脇のミモザの木のシルバーリーフとイエローの綿毛のような房の重なりに朝陽が差し込んでいる。季節が海への誘いを始めていた。
MaseratiMC20チェロは流麗なたたずまいを見せている。淡いピンクの指先が朝のエスプレッソカップをつまみながら、視線を下げ、ガレージを眺めている。斜め後ろから見下ろすように眺めるのが好き。サイドフォルムのあでやかな抑揚、ボリュームに満ちたリアデッキ、シートバック2座からトノカバー上部に峰を作り、流れる2条のスピードの意匠、そのサイドのトライデントバッジが煌めき、トノカバーセンターのあでやかな三叉槍デカールが誇らし気。ミッドシップをさりげなく見せるエアルーバー、翼のように両脇へ広がるテールライト、カーボンでブラックアウトされたアンダーボディ、エキゾーストとディフューザー。

MC20チェロ、Cielo=‘空’を表すチェロ専用の外装色、アクアマリーナ。海と空が重なりあう水平線を映し出す白雲の色。淡く、永遠を思わせる海の色。フロント周りのメッセージ、ブラックメッシュのフロントグリルのセンターを占めるのはMaseratiのアイコン、トライデントが煌めいている。レーシングマシンのようなフロントリップ、しかしまるでスパルタンな趣を隠すよう。エレガントなたたずまいを漂わせている。チェロのデザインはトリノのCentroStileMaserat(iチェントロ・スティーレ・マセラティ)。レーシングシャシーのトップブランド、ダラーラの作品、軽量高剛性なカーボンモノコックボディの美しいフォルムにうっとりしながらバタフライドアを跳ね上げ腰から乗り込み、濃紺のSPERRYのデッキシューズでブレーキペダルを踏む。ホワイトステッチの施されたリュクスな趣のスポーツシートはアイスカラーのアルカンターラとレザーで整えられる。アルカンターラの巻かれたしっかりとしたグリップのステアリング、メーターナセルと低いスカットル、カーボンパネルのセンターコンソールにはダイヤルリングのWET、GT、SPORT、CORSA、ESCOFFのドライブモードコントローラー、デフォルトはGTモード。その手前にD/Mのミッション選択ボタン、リバースは更に手前のボタン。自然に指はその位置に行く。しっとりと落ち着いた設えが静かにドライバビリティを刺激する。

さあセールオン!軽い儀式、ブレーキペダルを踏む。ステアリングポストの左のスポークにあるスターターを押す。右にはローンチコントロールボタンがある。瞬時に3LV6ツインターボのパワーユニットが目覚める。軽やかだが低周波のこもりをもったエンジン音がガレージに響いている。フェラーリ製V8の系譜をやめ、90度Vバンクの新設計エンジン、F1由来のNettuno(ネットゥーノ)、‘ネプチューン’と名付けられたMaserati新規開発のエンジン。副燃焼室を持ち、ツインインジェクション、ツインチャンバー、ドライサンプのネットゥーノエンジン。次の世代にはEVを、とEVシフトを明らかにしているMaseratiが自主開発したV6‐90°MTCツインターボ、2,992cc、463kw(630ps)/7,500rpm。730Nm/3,000‐5,750rpm。歴史的にも貴重なエンジンとなる。そのエンジンが目覚めている。
センターコンソール上部の10インチセンターディスプレイ、タッチセンサーからSpyderモードのアイコンをタッチすることでリトラクタブルハードトップが作動する。トノカバーを兼ねるエンジンフードが跳ね上がり、キャビンのガラスルーフが背後のハウジングに収納される。わずか12秒の作法。50km/h以下なら走行時にも作動させることができる。このルーフのPDLC調光ガラスはワンタッチでスモークから透明へ変化する。熱射を避けるときはスモークに、キャビンはいつも快適に。その設定はイージーそのもの。
朝の気温8°C、昼時には15°Cになると気象予報。海に会いに行くには十分暖かい。Dモードで静かに発進、邸宅街にくぐもったエキゾーストノートが流れている。

ループエイトに合流する。ほんの少し右足首に力を加える。心地よい加速が軽やかなエキゾーストのビブラートを置き去りにしていく。深い傾斜のフロントスクリーン、オープントップのキャビン内は外界の雑音を遮断し解放感を増していく。エアロダイナミクスの丁寧な処理の現れ、小気味よいオープンエア、オープンルーフドライビング、両サイドのウィンドウを上げていれば巻き込む風の音はない。イタリアのエクセレントブランドSonusFaberのオーディオシステムからヴィヴァルディの『四季・春』が流れている、清廉な朝のシーンがふくよかに演出される。
フロントウィンドウの先に、南に向かうキャピタルハイウェイのエントランスが見えてきた。駆け上がり合流すると視界は南に一気に開けた。0→100km/h3.0秒以下、総重量1,750kg、パワーウェイトレシオ2.77kg/ps、リッター馬力210ps/L。前後重量配分フロント40%リア60%。カタログ最高速度320km/h以上。前後ダブルウィッシュボーンのサスペンション、長いサスペンションストローク、GTモードのしなやかさはSPORTで硬質感を増し、サバンナを疾走するチーターの足回りになる。中央環状センターループまでのワインディング、しなやかな硬質感の心地よさ、低いアイポイントからの路面とのコンタクト、リズミカルなトレース感が快感を増幅してくれる。伸びあがりはじけていく……。

パシフィックコーストハイウェイのインデックスに導かれるように海への高速道路へ吸い込まれていく。2車線のコーストルート、パドルシフトで3速に落とし加速する。強烈なトラクションが後輪を蹴りだしていく。4速、5速に上げる、その先の緩やかなコーナーを回り込めば、春は一気に4車線。レーシングトラックでもないコーストルート、CORSAモードは使わない。SPORTからGTモードへ切り替える。デフォルトのGTモードでDドライブ、GTの硬質な設えの中にしなやかさを潜ませる、リニアで爽やかな足回りが海への道程を夢見心地にしてくれる。
ハイウェイを降りてマリーナベイをめぐるコーストウェイに入る。青く澄みきった海がフロントスクリーンの向こうに広がる。空との端境に薄く青いカラーチューブの色が染みわたっていく、軽やかなエキゾーストノートが深く入り込んだ入り江の白く切り立った岸壁に響き渡る。海沿いに白いコンクリートの打ちっぱなしの細長く四角い建物がある。ポンツーンが海に一本伸びている。その先に深い紺色のハルカラー、白いパイロットハウスの40フィート艇がもやわれている。
建物の前庭にフラッグポールが立っている。その先端にUW旗がはためいている。携帯電話なぞには出ない人物、大御所の作家。Maseratiを愛し、海とフネを愛し、こよなく人を愛する人物。その彼が潜み執筆にいそしむ隠家のUW旗とボートフラッグ。スタンバイOKの合図、君を待っているよの合図。
EricGaleの「BlueHorizon」が流れてくる。トロピカルなギターワーク、青く広がる水平線のかなたに。もやいを解いて、さあセールオン!P.B.
MASERATI MC20 Cielo PrimaSerie Limited Edition
全長4,670mm
全幅1,965mm
全高1,215mm
ホイールベース2,700mm
車両重量1,750kg
エンジン型式V型6 気筒ツインターボ
総排気量2,992 cc
ボア×ストローク88mm×82mm
最高出力630ps/7,500rpm
最大トルク730Nm/3,000–5,750rpm
トランスミッション8速AT
駆動方式RWD
タイヤF:245/35ZR20R:305/30ZR20
0-100 km/h加速3.0s以下(社内測定値)
最高速度320km/h以上(社内測定値) 車両本体価格44,380,000円
問い合わせ先マセラティコールセンターTEL: 0120-965-120
https://www.maserati.com/jp/ja?redirect=1
https://youtu.be/Pd-8cK-UuyA?si=P0VVmi5PGNDjGUUl
https://youtu.be/hHaRjr0_jNk?si=eJfZD-WN-td75jQh


