MAGELLANO60
EuropeanPowerboatAward2024を受賞したクロスオーバー「Magellano60」クラシックモダンでエレガントなフォルム、セミプレーニングハルのスムーズネスを味わう
text: Kenji Yamazaki photo: AZIMUT YACHTS
special thanks: YASUDA SHIPYARD https://www.yasuda-shipyard.com
Azimut-Benetti Group https://www.azimutbenetti.com
2009年にデビューした74に始まる「Magellano(マジェラーノ)」。そのネーミングは冒険家マゼランに由来する。Explorer、探検家への夢。ロングレンジモーターヨットの新たなカテゴリー。メインテーマはクルージングオリエンテッド。そしてサステナビリティとグリーンが叫ばれる今、2023年Cannesで「Magellano60」がワールドプレミアされた。ノーブルなモスグリーンのハルカラー、ホワイトのルーフ、一目でMagellanoと認識できるが、CピラーのICON、6条の木製ライン、スラッツに目が行く。ナチュラルな印象をアピールしている。少しふくよかになったバーチカルバウ、高いガンネルラインが中央で下がりサロンからのシービューを確保する。フライブリッジのレーダーポールにTトップ。クラシカルなフォルムが醸し出す気品に魅了される。エクステリアデザインはKenFreivokh’s。インテリアデザインはAZIMUTYACHTS。ハルデザインは流体力学の研究機関を持つスウェーデンのProfjordABとAzimutR&D。
全長18.47m、全幅5.15m。スイミングプラットフォームは油圧で昇降、後部ボンネットにクルーキャビンへのアクセスドアがある。
アフトコクピットに縦置きの対面ソファとテーブル。デッキ後部にはグラスウォールがセットされ、水面への見通しが効く新たな設定。海との連続性を提供する透明な欄干を備えたインフィニティテラスだ。サロンとの境には右舷にサロンからのオープンカウンター。ウッドスラッツの外はウォークアラウンドで、オープンラウンジが広がるバウへと導かれる。
景観と快適性を持ったサロン
サロンに入る。ワイドなウィンドウからの光が煌めいている。右舷サイドに上下2段の冷蔵庫、その前方にワインセラーが潜むテーブル。左舷にブラックアウトされたカウンタートップが広がり、モダンなギャレーユニットがセットされる。
アフトデッキとの一体感。ギャレーゾーンの前方は一段上がり、ゆったりとしたラウンジが展開する。ファニチャーとウォールはメイプルレッドの柔らかいブラウン。右舷サイドにはテーブルを挟み横置きのソファがセットされる。初めて目にする設えだ。サイドウィンドウはサロンの床まで下がり、抜群のシービューを約束する。左舷にはU字シェイプの柔らかなラウンジソファ。アフトデッキのインフィニティテラスとこのサロン、素晴らしい。左舷前方に2脚のシートのヘルムステーションがある。中央寄りがキャプテン。コンソールからはウッドグリップのラット、ブラック塗装のコンソールデッキは右にMANエンジンコントローラージョイスティック、左に前後スラスター等、正面に2面のディスプレイが位置する。落ち着きのある清廉としたヘルムステーションだ。
ロアデッキへ。ミジップに淡いミルキートーンのオーナーズステート。クラシカルな設えの編み込みやアートフルなアーキテクトが生かされている。アイランドベッド、バニティチェア、パウダールーム、すべてがどこかクラシックモダンでリュクスなたたずまいを見せている。バウに同様の設えのVIPステート、ツインベッドのゲストルームが用意される。
フライブリッジは広々としたオープンラウンジ。ルーフにはなんとシャワーが組み込まれ、その基部にはウェットバー、BBQグリルのユニットキャビネットが仕込まれている。後端には横置きのラウンジソファとテーブルセットが置かれ、ここもインフィニティテラス。前方にはU字ソファ、サンベッドのラウンジが展開し、右舷前方にはメインデッキ同様のヘルムステーションが用意される。ウッドグリップのラットを握れば目の前にブルーホライゾンが広がる。
100%再生可能な材料とAZIMUT初であるバイオ燃料で走る地球に優しい船
このMagellano60、つい先日、2024年1月のデュッセルドルフボートショーで「EuropeanPowerboatAward」を受賞した。クラシックモダンでエレガントなフォルム、DualModesemi-planinghullのもたらすロングクルージングの快適性、低速から高速まで波へのエントリーのソフトさ、そして低燃費。まさにクロスオーバー艇の存在感への評価だ。そしてMagellano60は、CO2排出削減の代名詞でもある。100%再生可能な原材料を使用して、EniLive(EniSustainableMobility)によって生産されたバイオ燃料HVOで走るAZIMUT最初のボート。造船所のテストではバイオ燃料HVOとDualModesemi-planinghullの組み合わせで走行し化石燃料で駆動する同等サイズのボートと比較して80%以上のCO2排出量の削減に寄与する結果を出している。
シートライアルは9月15日、晴れ、気温26°C、南西風5m/s、波高1m。2×730HPMANi6、ZF製Vドライブ。燃料、清水それぞれ50%。600rpm5.5ノット、燃料消費2×4.0L/h。1,000rpm8.8ノット、2×16.0L/h。1,200rpm10.1ノット、2×28.0L/h。静寂の中ゆったりと進んでいく。1,600rpm13.5ノット、2×59.0L/h。安定感に満ちた走行が続いている。1,800rpm17.0ノット、2×72.0L/h。回頭を試みる。ステアリングの切り込みにニュートラルに反応する。加速する。駆動がシームレスに速度に繋がっていく。2,000rpm20.7ノット、2×96.0L/h。2,200rpm24.2ノット、2×117.0L/h。うねりがある。潮境のチョッピーな波と重なる他艇の引き波に突っ込んでみる。
綺麗な切り分け、波音の後に静寂が蘇る。セミプレーニングDualModeHull。船底に膨らみを持たせバウの浮力を増しながらVボトムを得ている。更にハードダブルチャインでスロースピードでの安定性、ハイスピード領域でのスムーズネスを確保した画期的なハルだ。トップスピードを試みる。2,355rpm26.3ノット、2×150L/h。レンジ345nm/18ノット。
ステアリングラットを握る視界のはるか先、ブルーホライゾンが広がる。ジブラルタルを超えて大西洋に漕ぎ出そうか、……煌めく世界がそこにあるから。P.B.
AZIMUTMagellano60
全長18.47m
全幅5.15m
喫水1.37m
重量34.92ton
エンジン2×MANi6最高出力2×730HP
燃料タンク3,650L
清水タンク740L
https://www.youtube.com/watch?v=VqO6qZjj-xk
https://youtube.com/shorts/E4FmyLQcUa0?si=ZxERNQqtH3s_5IEC