Fun under the Sky SAXDOR 320 GTO
50ノットを超えるハイスピードに、オープンの爽快さと、拡張するサイドテラスの魅力世界を虜にさせたスポーティネス&ファンライド「SAXDOR320GTO」
text: Yoshinari Furuya
photo: Makoto Yamada, AD CUSTOM YACHT
special thanks: AD CUSTOM YACHT https://adcustomyacht.com
世界各地のボートショーに登場し、注目を集める「SAXDOR(サックスドール)」。創業から5年足らずで1,000隻以上を建造し、急成長を遂げている。日本でも昨年から「アドカスタムヨット」がインポーターとなり、横浜をはじめ日本各地のボートショーに出展。全国に次々と進水されることで、その存在は日本中に広まりつつある。そしてついに、20フッター、27フッターに続き、世界的にも人気の高い32フッターが日本の海に登場。日本に上陸したSAXDOR320GTOと320GTCは、ニューカマーからベテランまで、ボートユーザーの心を掴み、320は、30フィートクラスの選択肢の一つになった。その320シリーズの中でも、最もSAXDORらしいファンなオープンスタイルが「SAXDOR320GTO」。開放的なエクステリアやインテリア、鮮烈なスポーツライド。そのポテンシャルに世界中のボーティーが魅了されている。
SAXDORYACHTSを創業したのは、フィンランド出身のSakariMattila氏。SAXDORは、デザイナーであり、主任戦略家でもあるSakariMattilaの経験から生まれた最新のビルダー。そのSakariMattilaは、AQUADOR、PARAGON、XO-BOATS、AXOPARという国際的なアワードの受賞歴を持つ4つのビルダーを設立し、成功に導いた経歴の持ち主。そして2019年10月にSAXDORYACHTSをヘルシンキに設立した。名前の由来は、SakariMattilaのこれまでの経歴にちなんだもの。SakariのS、AXOPARのAX、AQUADORのDORを合わせた造語だ。現在は、200の他、205、270GT、270GTO、320GT、320GTO、320GTC、400GTO、400GTCの9モデルがラインナップされ、急拡大を続けている。
そして、今回紹介するのはSAXDOR320GTO。本誌6月号で紹介した320GTCと同じ船体を使ったオープンモデル。シートライアルを同時に行い、デザインや走りを比較する機会を得た。
SAXDOR320GTO最大の特徴は、キャビンを持つ320GTCと大きく異なるオープンスタイルがベースであること。屋根のない完全なオープンスタイルの320GT、それに船体とともにデザインされた空力性能の高いハードトップを加えた320GTO。GTは走りのグランツーリスモ、GTCのCはCabinのこと、そしてGTOのOはCと同じルーフ(ハードトップ)を備えたOpenスタイルを意味する。その走りとデザインは、受賞歴のある200や270に続き、第三者のニュートラルな立場で多くのボートを比較する専門家にも高く評価されている。欧米15誌のマリンジャーナリストが選ぶBestofBoatsAward2021のBestforFun部門ファイナリスト。そして、1904年創刊の最も古く、歴史と伝統のあるイギリスのボート雑誌MOTORBOAT&YACHTING誌が選ぶMotorboatsAward2022のSportsboatsOver30ftセグメントで最高栄誉の「Winner」に選ばれている。デザインだけでなく、ファンな走行フィールと完成度の高いエクステリアが、選考委員に高く評価されたのだ。
左右のトランサムステップ、アウトボードブラケット、左右を行き来できるサイドデッキなど、トランサム周りはGTCと同じ。選択できるエンジンも同じ。320の象徴であり、最大の魅力である左右のサイドコーミングが電動で開閉する「サイドテラス」もGTCと同じだが、それ以外は別物。遊び方の異なる、全く違うエクステリアを持つボート。そのキャラクターは、地中海スタイルの開放的なオープンスタイル。水遊びや日光浴を楽しむデイボートであると同時に、快適なアコモデーションを持つウィークエンダーとして、魅力的なエクステリアに包まれている。
アフトデッキはリビング仕様。トランサムには3連のボルスターシートが並ぶ。高速走行時でもパッセンジャーの体をホールドし、安全に乗船できるもの。3連のボルスターシートの前方には、折り畳みできるワイドなチークトップテーブル。揺れる中でも体を支えられるよう、強固に設置されている。さらに前方には、センターテーブルを挟み3連のボルスターシートが並び、向かい合わせでテーブルを囲む。この中間の3連シートは前後にスライドすることができるもの。スターン方向にスライドさせた時には、ウェットバーとの間に人が立てるスペースが生まれ、調理など作業をすることができる。また、テーブルを折り畳み、中間のボルスターシートを180度回転させ最後部にスライドさせれば、パッセンジャー全員が前を向くスポーツ仕様。高速クルーズに向くレイアウト。ウェットバーには、シンクの他、リフリジェレーターが備わり、アウトドアギャレーとして料理を作ることもできる。ポップアップライトのオプションもあり、スタイリッシュなナイトバーとしてゲストを楽しませることができる。
バウデッキへは左右のサイドデッキから移動。キャビン内を通りポートサイドからアクセスするGTCとは異なるシンメトリックなウォークアラウンド。アクセスがスムーズに行え、ショートハンドのドッキングやアンカーリング、フィッシングにも適している。バウデッキの中央には足を伸ばせる2人掛けのシェーズロングソファ。サンラウンジャーとして快適なソファ。バウのワーキングデッキを開けるとアンカーロッカー。バウのピークにアンカーローラーは無く、使うときだけバウステムの途中からアンカーと一緒にアンカーローラーが飛び出す。ステンレスのストックレスアンカーがバウステムに固定されることで、カッティングエッジなデザインの一部となる。マイナスのバウステムと余計なものが飛び出ていないミニマルデザインが、他のボートにはないスタイリッシュなデザインを生み出している。
32フィートクラスのスポーツボートとは思えないゆとりのアコモデーションも320GTOの魅力。キャビンには、コクピットのポートサイドからエントリー。ステップを降りたポートサイドにはソファ。正面には、1,950mmの長さがある最大幅1,650mmのダブルベッド。ベッド上には換気のためのオープンハッチ。人の出入りもできる。トイレは個室。トイレのドアは、開口部が大きく開く変則ドア。これらの配置はGTCと同じ。違いは窓くらい。トップウィンドウは4分割で広く、GTCには無い窓が左右にあり、広く明るい。これは、フロントウィンドシールドやデッキレイアウトの違いから生まれた相違点だ。
コクピットに戻り、揺れの少ないセンターに位置するヘルムシートに着座する。コクピットには、3連のボルスターシート。2+1で間に通路を挟むGTCとは異なり、3つがシンメトリックに並び、サイドデッキからアクセスするレイアウト。ボルスターシートは前後にスライドし、フリップアップする。スタンディングでも操船しやすい。ヘルムシートに座りフットレストに足をかける。体を支えるホールドの良いボルスターシートはカーライク。スポーツカーのドライビンングシートに腰掛けている感覚に近い。
バウスラスターを使い離岸し港を出る。スロットルを前に倒し加速する。静かな瀬戸内にエンジンのエキゾーストが静かに響く。パワートレインはMERCURYの300馬力×2基。1,000rpmで5.1ノット、2,000rpmで8.4ノット。低速域からパワフルに加速し、ノーズアップすることなくプレーニングに入る。3,000rpmで19.7ノット、軽く30ノットを通過し4,000rpmで31.1ノット。鋭いエントリーが、スムーズに波を切る。チャインとストレーキが船体をリフトさせ、ツインのステップハルと共に抵抗を減らしスムーズに加速させる。洗練されたパフォーマンス重視のツインステップハルは、スピードとソフトライドを可能にする。また、ダブルチャインが効果的に飛沫を落とし、引き波を通過しても飛沫はデッキに一切上がることなくドライだ。4,500rpmで36.3ノット、5,000rpmで41.1ノット。静かなエンジン音とピッチングのない安定感のある走りは、30ノット程度で走っている感覚。5,500rpmで44.0ノット。最高の6,000rpmの瞬間に50.4ノットを記録。進水したばかりでなければチルトを調整し、さらに2~3ノットは速くすることができるだろう。
35ノットから40ノットのクルージングスピードで旋回に入る。軽量構造で低重心の船体は最適なバンク角で安定し、横に流れすぎることはない。また、不用意に横流れが止まることも、急減速する感覚もない。同じ姿勢を保ったまま自然な挙動でトランサムがスライドし、減速も最小。ターンの出口に向けステアリングホイールを戻すと自然にグリップし、すぐに加速しスピードを取り戻す。GTCに比べエンジンはハイパワーの300馬力×2基が搭載されている。加速感は比べものにならないほどのGがかかりパワフル。しかも、オープンのGTOは、GTCに比べ全体の重量が軽く、浮きも良い。クローズドキャビンに比べハードトップは軽く重心が低い。横方向にかかる力も小さく、横流れが少ない。旋回時の軽快さが明らかに異なる。
季節を選ばず疲れない320GTCに対し、走りと開放感の320GTO。同じハルでありながら、はっきりと異なる2タイプの個性。どちらも捨て難い魅力を持つ。利用の仕方、ゲレンデ、乗船人数などを考慮し、どちらが適しているか選ぶのが良いだろう。P.B.
SAXDOR 320 GTO
全長 10.28 m
全幅 3.10 m
喫水 0.86 m
重量 2.65 ton
エンジン 2×MERCURY Fourstroke V8 300
最高出力 2×300HP
燃料タンク 428L
清水タンク 117L
問い合わせ先 アドカスタムヨット
TEL: 0845-25-1188
https://adcustomyacht.com
https://youtu.be/BJ36DbjPIB4?si=K7qXfr0syyRhaZQ9
https://youtu.be/8mYaNLmkZyQ?si=7jpKbGM-Dy_4hTmg