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CANNES YACHTING FESTIVAL VIEUX PORT AND PORT CANT,10-15 SEPTEMBER 2024

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今年も南仏コートダジュールのカンヌで、ヨーロッパ最大のボートショーである「カンヌヨッティングフェスティバル」が、9月10~15日の日程で開催された。19世紀から上流階級の避暑地として発展し、世界中のセレブやアーティストが集まるこのエリアでは、9月に入っても強い陽射しが降り注ぎ、ビーチのにぎわいは夏真っ盛りという雰囲気。今年のヨッティングフェスティバルも大盛況で、約700艇のヨットが展示され、来場者は5万7千人を超えた。一般の入場料は39ユーロ、約6,300円。シャンパン飲み放題のVIPラウンジなどを利用できるVIPチケットは2人分の6日間通しで315ユーロ、約51,000円。そんな富裕層で溢れるヨーロッパ最大のフェスティバルの模様をレポート。

text:Kiyoharu Nakayama 
photo: Cannes Yachting Festival – Abracadabra Studio /YASUDA SHIPYARD special thanks: YASUDA SHIPYARD https://www.yasuda-shipyard.com

5~45mクラスに700艇以上、ワールドプレミア130艇以上、来場者55,000人余パワーボートマリーナも新設され、2025年のトレンドが揃ったボートショーシーズンの開幕

例年通り、メイン会場は2か所。旧港VieuxPortは、フェスティバルの中心的なハブであり、展示される多くのモーターヨットが集結する場所。多様なラインナップが揃い、カンヌ映画祭の会場としても有名なパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレを中心に、多くの客で活気に満ちている。もうひとつの会場であるPortPierreCantoは、クロワゼット通りの反対側に位置しており、主にセーリングヨットに特化しているマリーナだ。

パレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレ前のメインコリドーには、おなじみFerettiグループ、AZIMUT、SANLORENZO、PRINCESSが広大なスペースに自慢の艇を展示している。

中でも、独BOATInternational誌が発表する「GlobalOrderBook2024」で、新造艇の受注数でトップに立つAZIMUTは、今年、ワールドプレミアとしてSeadeck7とFly62の2艇を展示。他にもVerve42、Atlantis45から、Flyシリーズは53~78までの5艇、S7、S8とSeadeck6、Seadeck7、さらにMagellanoシリーズ66と30M、Grandeシリーズからは26M、36M、Trideckという大規模な陣容だ。

Seadeck7は、二酸化炭素排出量を最大40%削減することを目的とした技術的ソリューションと、海を包み込むように再発明されたコクピットである“ファンアイランド”のおかげで、最先端の効率性を実現している。Fly62は、創業以来、AZIMUTに国際的な成功をもたらしてきたシリーズから新しく誕生したモデルだ。自動車のSUVから発想を得た、トランサムのソファが外側に開いてサンベッドとなる前例のない“ビーチコクピット”を採用。年々加速するAZIMUTの進化は止まらない。


今年のカンヌには640社ものボートヨットビルダーと関連社が出展、約130艇のワールドプレミアが行われた。メイン会場VieuxPortのほかに、13mまでの小型ボートを集めたPortPierreCantoの“パワーボートマリーナ”も人気。両会場とも連日多くの観客で賑わっていた。

ABSOLUTEは、Navetta53とNavetta70を世界初公開。現代のエンジニアリングとクラシックなイタリアンスタイルが見事に融合したモデルだ。FerettiグループのPERSHINGはGTX80を披露。従来通りのスポーティなスタイルだが、オープンデッキエリアは、スポーツヨットとしては並外れて広い。SAXDORはウォークアラウンドキャビンの340GTWAを初披露、このクラスで唯一、大型の折りたたみ式サイドテラスを備え、全天候型ボートの新しい基準を確立させた。MANGUSTAはOceano39を初公開、上部デッキの全面ガラスのガンネルや、メインデッキと上部デッキの床から天井までの大きな窓など、ガラスを多用したミニマルな上部構造が特徴だ。

今年のフェスティバル開催からわずか3日で300億円以上の受注を取り付け、絶好調なのが、SANLORENZOだ。イノベーティブなヨット&スーパーヨットを創造する業界の雄であり、今年のプレスカンファレンスは、グリーンメタノールで駆動するリフォーマー燃料電池システムを搭載した世界初のスーパーヨット50Steelの広大なアフトデッキで開催された。

フェスティバルには、ヨットクラスのSX76、SX88、SX100、SL96A、SL120A、SD90、SD118、SP110と、最新鋭の技術を搭載するBLUEGAMEブランドのBG42、BG54、BG74、BGM75、BGX63が展示された。ワールドプレミアは、SL86AとSP92の2艇となる。

SL86Aは世界の舞台に初めて登場、SANLORENZOの先駆的なアシンメトリック(非対称)シリーズを牽引する。SL86Aは、このサイズのヨットの伝統的なデザインに対する大胆なアプローチを採用、左舷デッキを1段上に移動して内部容積を大幅に増加させ、メインデッキにフルビームのマスターステートを配置できるほか、サロンを拡張し、床から天井までの窓で海とのつながりを強めている。

SP92は、エキサイティングなSP(スマートパフォーマンス)ラインの2番目となるヨット。スタイルとパフォーマンスの組み合わせを求めるオーナー向けに設計されている。ショーでは、SP92に加えて、2022年のカンヌで発表されたSPライン初のモデルで受賞歴のあるSP110も展示された。SP110は、名誉あるCompassod’Oro2024デザイン賞を受賞。審査員は、SANLORENZOの特徴である、デザイン、高性能、持続可能性の優れた組み合わせを高く評価した。

連日の盛況に沸いた今年のフェスティバルは、地道な持続可能性、技術革新、そして新たなる贅沢の解釈に重点が置かれ、ヨット業界のさらなる進化を強調した。

まず、持続可能な技術革新。多くのヨットがハイブリッド推進システムや太陽光パネルなどの環境に優しい技術を積極的に採用し、環境への影響を減らすことへのコミットメントを示した。こうした傾向は、ヨットオーナーやメーカーの間で高まる環境意識を反映しているだけでなく、二酸化炭素排出量を削減する世界的な取り組みとも一致している。カンヌヨッティングフェスティバルは、ヨット業界でハイブリッド技術がますます顕著になりつつある中、業界の持続可能性に向けた動きを示すショーケースとなっている。

次に、技術の進化。フェスティバルでは、AI駆動のナビゲーションシステムや、安全性とユーザー体験を向上させる自動化システムを備えた最先端のヨットの展示も行われた。また、マルチハルが近年大きな話題となっており、2024年のカンヌヨッティングフェスティバルではその人気の高まりがいっそう強調された形となった。マルチハルは従来のモノハル設計と比較して、安定性が向上し、スペースが広く、燃費効率に優れている。今後数年でさらに革新的なデザインと機能が見られるようになると予想される。

さらに、贅沢の再定義もテーマに上った。展示された数々の新しいモデルは、広々としたインテリア、船上スパ、豪華なサロンとギャレーなど、比類のない快適さを昨年にも増して強調していた。

ワールドプレミアに関しては、合計約700艇の展示艇のうち、約130艇がワールドプレミアを果たすという欧州最大のショーに相応しい結果となった。

1977年から開催されているこの歴史あるイベントは、ヨット愛好者のみならず、エコノミストやメディアからも大きな注目を集め、贅沢なヨッティングのためのヨーロッパ最大の集まりとしての地位を再確認させてくれた。2024年のカンヌヨッティングフェスティバルは、単なる豪華なボートやヨットの展示というだけでなく、持続可能性、技術、そして洗練された贅沢さに重点を置いた業界の未来を反映した素晴らしい祭典であった。2025年のカンヌヨッティングフェスティバルは、9月9~14日に開催される予定だ。P.B.