
AZIMUT FLY53

TrydeckやSシリーズと同じ、デザイナーAlberto Manciniによる最新のイタリアンモードAZIMUT YACHTSらしいスポーティな走り、オーナーヘルムの醍醐味を存分に愉しむ「Fly53」
text: Yoshinari Furuya
photo: Makoto Yamada
special thanks: SEABREEZE BOAT SERVICE
https://www.seabreeze.co.jp/boatinfo/usedboat
「AZIMUT Fly53(アジムットフライ53)」は、「AZIMUT YACHTS(アジムット)」の中でも常に注目度の高いモデルレンジ。それは、オーナーヘルムで気軽にクルージングできるミドルクラスのAZIMUT。コンパクトでありながら、必要十分なボリュームある室内空間。さらに、パワートレインにVOLVO PENTAのIPSを搭載し、ショートハンドでのイージードライブを実現。つまり、操船や管理のしやすさと、充実したアコモデーションのバランスが優れたモデルであるということ。AZIMUT YACHTSワールドのエントリーモデルとして重要な役割を担っている。
AZIMUT Fly53を包む、ThamesMe(tテムズメット)と呼ばれる印象的なハルカラー。上下を接合するステンレスのガンネルを低目にすることで感じる、安定感のあるロープロファイルなデザイン。ステムの角度に同調されたミジップの大型ウィンドウや、躍動感を演出する矢のように突き刺さる一条のサイドウィンドウ。キャラクターを決めるブラックアウトされたサイドウィンドウはアーティスティック。デザインコンシャスなサイドウィンドウが、ラグジュアリーでありながらスポーティなキャラクターを生み出している。

エクステリアデザインは、ヨットデザイナーAlberto Mancini。若き日のAlbertoは、RIVAのデザイン全般を手掛けるOfficina Italiana Designにて、Aquariva 33やRiva rama 44のデザインに参加。その後、Ken Freivokh Designの設計チームとともに、数々のアワードを受賞した88mのスーパーセーリングクルーザー「Maltese Falcon」の設計に加わる。そして、あのNuvolari & Lenard Studioと協力し、Cantieridi SARNICOのデザインを手掛けるなど、多くのプロジェクトを経験した後、2009年にプライベートデザインスタジオを設立。AZIMUT YACHTSのフラッグシップでもあるTrydeckの他に、S7、S8、S10をデザイン。AZIMUTFlyモードでは53以外に68や78をデザイン。また、AZIMUT YACHTS以外にも、MANGUSTAをはじめ、BAGLIETTOやBARRACUDA、DOMINATORなど数々のラグジュアリーモーターヨットを描く、世界が注目するモーターヨットデザイナーの一人として知られている。
トランサムステップから乗船する。1,300mm×3,650mmのワイドなチークデッキが油圧で上下。トランサムボードには、水密ハッチとリアウィンドウ。ハッチを開けるとおよそ4m²の広さの明るいガレージ。このユーティリティスペースは、マリングッズなどを収納するストレージとして利用するだけでなく、クルールームに変更するオプションもある。

トランサムステップからスターボードサイドに設けられた3段のステップを上がるとイーブスで守られた非対称のアフトデッキ。後部には、2,600mm以上の長さがある4人掛けのL字ソファ。その前方には1,650mm×730mmのワイドなテーブルが固定されている。アフトデッキの左右には、クリートとフェアリーダー。左右クリートの横には、電動のキャプスタン。メディテラニアンスタイルの係留時にスターンライン引き込みに利用されている。ポンツーンへの着岸時でもキャプスタンを利用すれば、格段に楽になる。


サイドデッキを通り、バウデッキへ向かう。チークのサイドデッキは、300mmの幅があり、素早く安全に移動ができる。バウデッキは、ブルワークで囲まれたアフトデッキとは異なり、開放的なテラスラウンジ。フロントウィンドシールドのすぐ前には、ゆったりと4人以上座ることができる2,800mmの大型のソファが固定されている。その前方には、最大幅2,600mmの広大なサンタンベッド。日中は、カーボンポールを四隅に立て、バウデッキ全面をカバーするオーニングが張られたオアシス。日が落ちてからは、LEDのカーテシーライトの光がやさしく広がる空間を演出。騒がしいパーティーエリアから離れたチルラウンジとなる。また、バウの先端は、ウィンドラスやバウクリートが備わるワーキングデッキ。スクエアバウとバウパルピットに囲まれたチークデッキは広く、デザインだけでなく安全性も高い。

アフトデッキからチークのステップを8段上がると、フライブリッジ。ここは、見晴らしの良いアウトドアリビング。フライブリッジを覆うのは、ビミニトップではなく、船体に合わせてデザインされた軽量、高剛性のハードトップ。ハードトップは2,100mmのヘッドクリアランス。2,400mm×2,000mmのサンルーフを開ければ、オープンデッキの開放感。サンルーフにキャンバスのソフトトップを使うことで軽量化が図られ、トップヘビーにならないようにデザインされている。


フライブリッジのスターン側には、非対称のU字ソファ。幅2,800mm×前後長2,600mmに1,250mmのシェーズロングを加え、全幅を使った大型のラウンジエリア。ポートサイド前方には、ヘルムステーション。ホールドの良いAZIMUT YACHTSオリジナルのパイロットシートが2脚並ぶ。ヘルムステーションは、VOLVO PENTAとGARMINが共同開発をしたタッチパネルが並ぶグラスコクピット。物理スイッチのないタッチパネルは、ナビゲーションや魚探、レーダー、アナログ風のメーター、エンジンデータなどすべての情報を切り替え表示する。
ヘルムシートからは、ポートサイドの視認性が良く、左端に配置されたスロットルやジョイスティックコントローラーの操作で、着岸がしやすいポジション。アフトデッキのスターボード側に、オプションのジョイスティックを増設すれば、死角の多いスターンファーストの着岸や右舷着岸も安全に行うことができる。そして、ヘルムステーションを囲むように敷き詰められたクッション。フライブリッジの全幅を目一杯に使った見晴らしの良いサンタンエリアだ。

アフトデッキから3分割されたリアドアを開けキャビンに入る。ポートサイドにはオープンギャレー。このアフトギャレーと呼ばれるレイアウトは、ゲストやファミリーと会話をしながらサロンやアフトデッキにサーブできるファミリーユースに人気のレイアウト。ギャレーには、シンクの他に、MieleのコンロやVitrifrigoのリフリジェレーターを搭載。対面のスターボードサイドには、Mieleのマイクロウェイブが隠されている。その横には、カウンタータイプのキャビネット。天板を上げるとACやDCのスイッチパネルが設置されている。シンクとグラストップコンロ以外を隠すことで、生活感を最小にとどめている。

ギャレーゾーンを通り、ステップを2段上がるとダイネッティを兼ねたサロンスペース。250mm上げたサロンは視界が広がり、海を見渡すことができる。ギャレーに立つ人とのアイポイントも近づき、コミュニケーションが取りやすいメリットもある。サロンのフロアは、ギャレーのフロアと同じシャビーな木目のフローリング。カーペットとは異なり、清掃がしやすく衛生的な理由から、選ぶユーザーが増えている。スターボードサイドには、幅1,900mmの3人掛けのベンチソファ。背面には、電動で現れるTVが格納されている。ポートサイドには大型のU字ソファ。座面の前後長は2,540mmとワイド。1,460mm×910mmのテーブルは、電動で上下し、低目のコーヒーテーブルにも高目のダイネッティにも変化。最下部まで下げてクッションを敷けばダブルベッドにもなる。


サロンからロアデッキに降り立つ。スターボードサイドには、ツインベッドのゲストルーム。バウキャビンは、クイーンサイズのアイランドベッドが備わるVIPルーム。左右のウィンドウから光が入る明るく快適なキャビン。センターには、デイヘッドと兼用ではあるが、独立したシャワーブースが備わるVIPルーム用ヘッド。ドアロックをすればVIPのプライバシーは守られる。

そして、ミジップには、フルビームを使ったマスターステートルーム。中央にクイーンサイズのアイランドベッド。ベッドサイドには、1,500mm幅のソファ。同じポートサイドには、独立したシャワーブースを備えたヘッドコンパートメント。ウォークインクローゼットも用意されている。クラスを超えたアコモデーションがAZIMUTFly53の特徴でもある。


フライブリッジのヘルムシートに座りステアリングを握る。パワートレインはVOLVO PENTAのIPS950。725馬力の直6、10.84lのコモンレールディーゼル。低騒音、低振動のクリーンエンジンが、静かにそしてパワフルに加速する。1,200rpmで11.0ノット。1,900rpmで20.0ノット。2,550rpmで33.3ノットのスピードを記録。

クルージングスピードの26~27ノットで旋回に入る。ステアリングホイールを回すと同時にバンクし、イメージ通りにターンをする。ターン弧も小さく、スポーツボートを操船しているようなタッチ。かといって、傾きすぎるわけでもなく、姿勢を保ったままスムーズにマニューバを描く。AZIMUT YACHTSらしいファンなドライビングが特徴。スポーティな走りが運転する喜びを与えてくれる。

AZIMUTYACHTSのラインナップの中ではコンパクトなAZIMUT Fly53。ファミリーユースだけでなく、初めてAZIMUT YACHTSに触れるニューカマーから、オーナーヘルムにこだわるベテランユーザーやシングルハンダーにも愛されている。AZIMUT Fly53は、サイズを超越したAZIMUT YACHTSの魅力が凝縮された、最新モードのAZIMUT。その存在そのものが、DolceVitaなのだ。P.B.
AZIMUT Fly 53
全長 16.78m
全幅 4.95m
喫水 1.4 m
重量 30ton
エンジン 2 ×VOLVO PENTA IPS950
最高出力 2×725HP
燃料タンク 2,400L
清水タンク 590L
問い合わせ先 シーブリーズ
TEL: 045-771-1000
https://www.seabreeze.co.jp









