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AXOPAR 29 XC CROSS CABIN

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完全に新設計された29フィートのダブルステップハルがもたらす脅威の安定感AXOPARのロングセラーモデルは、新たな次元に進化を果たした!

text: Yoshinari Furuya photo:Makoto Yamada
special thanks:OKAZAKI YACHTS https://okazaki.yachts.co.jp

2013年に設立された「AXOPAR(アクソパー)」。RIBに着想を得て設計された革新的なAXOPAR28を開発し、2014年ヘルシンキボートショーでAXOPAR28Openと28Cabinの2モデルをアンベール。28Openは、このボートショーで「MotorboatoftheShow」を受賞。北欧各地で開催されたボートショーで注目を集め、各国のボート雑誌で紹介される。翌2015年には、世界中のメディアが注目するbootデュッセルドルフとカンヌヨッティングフェスティバルに出展。ファーストモデル発表後の18か月間で200隻を生産したというニュースがカンヌでアナウンスされ、北欧だけでなく世界のボートビルダーに衝撃が走る。そしてメジャーアワードの一つ「BestofBoats」のBestforFunを受賞。快進撃はさらに加速する。

2016年のbootデュッセルドルフでは、AXOPAR37とAXOPAR24レンジを発表し、AXOPAR37が「MotorBoat of The Year2017」のSportsboats & RIBs部門で受賞。2020年、AXOPAR22レンジを発表。2016年の28レンジに続き、「Best of Boats」、「European Powerboat Award」、「Motorboat Awards」の3大メジャーアワードを制覇。2022年には、フラッグシップのAXOPAR45XCを発表。また、2023年にはノルウェーの高性能電気船外機メーカーであるEvoyに出資。世界初の300hpエレクトリックアウトボードエンジンを装備したプロトタイプAX/E25を発表する。AXOPARは、たった10年で世界最大級のボートビルダーに成長を遂げた。

そのAXOPARのラインナップの中でも、ショートハンドで扱いやすいサイズにキャビンを搭載し、高い人気を誇ったモデルがAXOPAR28Cabin。世界中のアワードを総なめにした2014年デビューの初代AXOPAR28(Mk.I)。そのフィロソフィを受け継ぎ、2018年に発表された第二世代のAXOPAR28(Mk.II)。そして2024年、熟成のAXOPAR28をさらにブラッシュアップさせた後継モデルとして、「AXOPAR29XC」がbootデュッセルドルフでワールドプレミアを果たす。その注目の最新モデルAXOPAR29XCが、ついに日本に上陸した。

AXOPAR28Cabinが、全長9.18メートル、全幅2.95メートルだったのに対し、AXOPAR29XCは、全長9.31メートル、全幅3.00メートルとサイズアップが図られている。それは、従来モデル28Cabinのフィロソフィを受け継ぎ、サイズアップしただけではない。AXOPAR29XCは、ユーザーからのフィードバックを取り入れ、デザイン面で大幅な改良を行なった。サイズやコンセプトは継承しつつ、全く新しい設計とデザインで、AXOPAR28を凌駕する。

具体的には、基本となる船体ラインを一から再設計。RIBをベースにした直線的で鋭利な二等辺三角形に近い細身のデザインから、ミッドシップのビームを広げ、ブルワークを高くし、シアーラインにボリュームを持たせたダイナミックでモダンなスタイリングに変更。それにより、キャビンは広く快適さを増した。さらに、キャビンの形状が見直され、デザイン性と機能性を高いレベルで両立。ルーフと一体のイーブスは、フロントが340mm、リアは550mmに広げられ、フロントウィンドシールドを雨や飛沫から守り、アフトデッキのベンチやウェットバーをカバー。ヘルムやキャビンに入る日差しも軽減し、乗員やインテリアを紫外線から守ってくれる。また、ピラー位置やデザインも見直され、ラップアラウンドのリアウィンドシールドに変更することで、視覚的な美観と、斜め後方の視認性が大幅に高められている。

AXOPAR29XCをデザインするのは、フィンランドのNavia Designを率いるJarkkoJamsen。ナーバルアーキテクト、工業デザイン、木製ボート製造の学位を取得しているJarkkoJamsenは、NAUTOR’SSWANや、XOBOATS、PARAGONYACHTS、QYACHTSなどで量産ボートからメガヨット、クルーズ船まで設計した豊富な経験を持ち、現在、AXOPAR全モデルのヘッドデザイナーを務め、AXOPARの並外れたハルデザインやスタイリングなど全てのデザインを担当。空気力学、流体力学、エンジニアリングを組み合わせた挑戦的な技術プロジェクトを引き受け、革新的なスカンジナビアボートを生み出している。

そして、JarkkoJamsenの最新モデルAXOPAR29XCは、ヨーロッパで最も権威のあるアワードの一つ「Motorboat Awards」でBest Sportsboat up to30ftを受賞。さらに、「European Powerboat of The Year Award」でもUp to10mを受賞する。Motorboat Awardsを選考するMotorboat&Yachting誌の編集者でありMotorboat Awards代表のHugoAndreae氏は、AXOPAR29XCの受賞に際し、次のように述べている。

「AXOPAR28Cabinのような人気があり象徴的なボートをモデルチェンジすることは、リスクが高いことです。しかしAXOPARは、完璧なスキルでその難局を乗り越えました。新しいAXOPAR29XCは、AXOPAR28Cabinにあるものは全て持ち合わせ、それら全てにおいて、より良くなっています」。

アフトデッキから乗船する。オープントランサムは広々とした左右のスイミングプラットフォームをシームレスにつないでいる。トランサムに座席はなく、船外機を囲むように設置されたトーイングゲートが乗船者を守る。今回のAXOPAR29XCは、スタンダードのOpenAFTバージョン。左右のブルワークと一体のトップローディングのストレージの上にクッションを取り付けただけのシンプルなものだ。フィッシングをしたり、荷物を置いたり、アフトデッキを広く使いたい人には最適な選択肢となる。

デッキフロアのハッチを開けると、幅1,980mm×前後長1,550mmの、長尺物が入るストレージ。フィッシングギアなどを余裕で収納することができる。この仕様以外にも、オプションでアフトデッキのレイアウトを選ぶことができる。

Benchバージョンは、キャビン後部、イーブスの下に後ろ向きに座るベンチソファが装着されたもの。アフトデッキで食事をするのも良いし、フィッシング時にも邪魔にならないデザイン。

Wetbarバージョンは、ベンチの代わりに、ミニシンクが備わるウェットバー仕様。パーティーではドリンクやオードブルをサーブする基地。フィッシングでは、ベイトの作業台として、魚を捌くアウトドアキッチンとして使いやすい。

そしてAFTCabinバージョンは、キャビンを後方に伸長し、内側から繋がるアフトキャビンを設けた仕様。外側はアフトキャビン上にサンタンベッドを設置し、このクッション全体を持ち上げてアフトキャビンに入ることもできる。バウキャビンと合わせて最大4人のボートステイを可能にした人気のオプションだ。

サイドデッキを移動する。サイドデッキを囲うブルワークは、上部に向けて広くなる形状。歩きやすく移動しやすい。左右キャビンドアの前には、ブルワーク上に足を置けるステップが追加され、サイドデッキからの乗り降りがしやすい。バウデッキへは、少しの傾斜で段差はなく、安全に移動ができる。

バウデッキの前方左舷に、背もたれの付いたL字ソファ。中央には三角形のセンターテーブルが用意される。この仕様とは異なる、左右対称のU字ソファを選ぶこともできる。センターテーブルをクッションに替えれば、フラットなベッドスペースが生まれ、くつろぎのサンタンスペースにすることができる。また、AXOPAR29XCはアンカーロッカーも使いやすい。クッションを外すことなくハッチのロックに手が届き、クッションをつけたまま開閉できる。広く深いアンカーロッカーには、QUICKのウィンドラスが装備されている。

キャビンの先端、フロントウィンドシールドの前には幅1,160mmのベンチソファ。このソファを跳ね上げると、その下に、長さ1,930mm×最大幅1,800mmのクイーンサイズのベッドルームが現れる。ここは、デイヘッドを兼ねた特別なキャビン。夜は、フラットなダブルベッドとして使い、昼には、中央のクッションを持ち上げ、クッションを支えるフロアをあげ階段にする。その後方のクッションを持ち上げると電動マリントイレが現れ、さらにトイレを閉じて壁を手前に倒すと、手洗い用のシンクが現れる。コンパクトなボートに詰め込まれた巧みなアイデアが、ファミリーでボートステイを楽しむフィンランドボートの特徴でもある。

左右のサイドスライドドアからキャビンに入る。スライドドアは、高さ1,280mm、最大幅880mmのワイドなもの。全開にすれば後部座席への出入りもしやすい。コクピット前部にはヘルムとナビゲーターのためのボルスターシートが並び、後席はベンチソファ。リアウィンドシールドをラップアラウンド形状に変更したことでCピラーが細くなり、サイドの明るさや後方の視認性が格段に向上。どの席からも、360度のパノラマが見える開放感のあるキャビンとなった。さらに、開口部が1,370mm×1,220mmに及ぶワイドなサンルーフを開ければ、明るいキャビンはいっそうの開放感に包まれる。

ヘルムシートに着座し、ステアリングホイールを握る。座席を調整すると、深く腰掛けたまま操船をすることができるカーライクなドライビングポジション。スロットルに手をかけ、デッドスローで前進。東京湾のチョッピーな波の中、MERCURY350馬力のアウトボードが静かに回転を上げる。

2,000回転で8.2ノット。V10エンジンとプロペラ形状により、低速からトルクフルなレスポンスを見せる。3,000回転で16.1ノット。3,500回転で22.5ノット。時間あたり38リットルの消費燃料。AXOPAR29XCの高効率なハルデザインが低燃費を実現する。4,000回転で26.8ノット、4,500回転で28.7ノット、5,000回転で34.6ノット、5,500回転で38.1ノット。クルーズスピードは35ノット以上。そのスピードでも消費燃料は時間あたり80リットル。6,000回転で41.3ノット。トップスピードは、6,400回転で44.1ノット。エンジン自体も低騒音、低振動だが、スライドドアを閉めれば、その静穏性に改めて驚かされる。前モデルAXOPAR28Cabinと比較しても、キャビン内の静寂性は圧倒的。剛性の高い船体とボトムデザインが、ボトムを叩く波の音や振動をも軽減している。

クルージングスピードの35ノット前後でスラロームに入る。AXOPARらしい剛性感のあるステアリングフィール。回頭すると同時に、イメージ通りにラインを描く。クイックなレスポンスだが、全くふらつくことなく適度にバンクし、安定した姿勢を保ったままマニューバを描く。横波を受けながらのターンでも波にステアリングを取られることなくスピードを保ちながらターンの出口に向かう。MERCURYV10の加速とスピードに、高いマニューバビリティ。Motorboat AwardsでBest Sportsboat up to 30ft受賞。European Powerboat of The Year AwardでもUp to 10m受賞。その高いクオリティの走り。目的地はいらない、ファンライドが楽しい。P.B.

AXOPAR 29 XC Cross Cabin
全長 9.31m(エンジン除く)
全幅3m
喫水0.9m
重量 2.90 ton(エンジン除く)
エンジンMERCURY5.7L V10 350hp Verado 
適合出力 300– 400HP
燃料タンク400L
問い合わせ先 オカザキヨット
TEL: 西宮 0798-32-0202、 横浜 045-770-0502 https://okazaki.yachts.co.jp