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Amandari インドネシア・バリ島、精霊が宿るというウブドの村で、暮らすように過ごすリゾート滞在

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「アマンダリ」に惹かれウブドを再訪。村には“平和なる精神”の名に相応しいリゾートの存在があるダイナミックな自然と、神々と共に過ごす空気に癒され、ひと時の村人となる非日常に身をゆだねる

text:Kyoko Sekine 
photo:AMAN
special thanks: AMAN
https://www.aman.com

ウブドには信仰篤い人々が通う壮麗な寺院が数多く点在し、通り過ぎる度に、荘厳な飾りや圧倒的な存在感に足が止まる。ウブドは、昔ながらのバリ島中央部に残される伝統や文化、特別な情緒が溢れる地域である。村の住民たちは、一日に数回、地区の寺院や、自宅の敷地内に造られた家祠“サンガ”にチャナン(供物)を捧げ祈る習慣がある。人々はバリ・ヒンドゥーの教えを頑なに守り、大半の人々は民族衣装に身を包み、政に勤しみ、祈りを捧げる日々を日常としている。海外からの旅行者にとれば、こうした情緒的な異国のシーンを目にし、その場面を記憶に残そうと何度もシャッターを切る姿が見られる。

そんなウブドに誕生した「アマンダリ(Amandari)」には、創業以来の逸話が幾つも残る。そのひとつは、敷地の中庭に置かれる石像の「虎」にまつわる話だ。遥か昔から村に伝承されるというそのストーリーを、ある日、アマンダリのスタッフが語ってくれた。「遥か昔、高名な僧侶が虎を連れてバリ島へとやってきました。僧侶は旅の途中で神々しいバンヤンツリー(菩提樹)を見つけ、その下に神々や天使が舞う場所を見つけたのです。そして足元に湧き出る泉の水で沐浴をし、連れてきた虎を守り神としてそこに祀り、その地を“クデワタン”(=placeoftheGod)と名付けました。“アマンダリ”(=peacefulspirits)は、こうして聖なる泉の湧き出るアユン渓谷沿いの高台の、ウブド発祥の地であるクデワタン村に建てられたのです」と。

この逸話が真実であろうとなかろうと、アマンダリの敷地には、この歴史物語が実話であるかのような場所が残されている。聖水が湧き出るという“泉”は、アマンダリからさらに渓谷に向かって山肌を下りたところに実際に存在し、古く朽ち果ててはいるものの、その神聖な場所には確かに石でできた“虎の守り神”が祀られている。アマンダリのロビーに隣接する中庭に鎮座する虎は、神と崇める虎のレプリカであり、アマンダリのシンボルとして訪れる旅人を見守っている。

アマンダリは、1989年の創業時からウブドの伝統文化に敬意を込め、周囲の村の趣きと違わぬようデザインされ、村人と共に慣習を維持してきた。ヴィラの屋根や独特な表門は村の一部のようである。常に地域と共にあるリゾートとして、旅人を巻き込み、“村に暮らすような滞在”を提供している。例えば、断食と瞑想に専念するバリ・ヒンドゥー教徒の精神修養の日「ニュピ」には、バリ島全島が明りを消し、アマンダリでも同様に漆黒の夜を迎える。それでもホテルや観光施設は暗い明りを一部に灯すことが許されているが、私たち滞在者も興味津々でその祀りごとに参加する。常に7割を超える地元民をスタッフとして雇い入れるのも、こうした地元感や伝統を肌で感じるためのアマン流のもてなしなのである。

特におすすめのアクティビティは、アユン渓谷沿いのトレッキングである。とりわけ「カントリートレッキング」を選択すれば、アユン渓谷沿いやリゾート周辺の無数のトレイルや小道をウォーキング。案内人と共に時間や体力に合わせてカスタマイズでき、道案内をされながらも質問を重ねたり楽しいウォーキングが可能だ。アマンダリ流のトレーニングを受けたガイドは、瑞々しい緑豊かなジャングルや段々畑、ヤシの木が並ぶ水田地帯、小さな村々の路地などを縫うように巡り、時には現地の人しか知らない秘密基地のような場所にも連れて行く。なかなか目にしない地元の祭りや、村人たちの日常が見え、時には彼らとの接点もあるウォーキングは旅の貴重な思い出となる。

一方、アマンダリはウェルネスに於いても充実している。写真上段はアマンダリ独自のシグネチャー・ウェルネス・トリートメントのひとコマである“ヴィレッジ・スパ・ジャーニー”の一場面だ。アマンダリの朝に、水の寺院でムルカット(水の浄化の儀式)を受ける前、シャーマンのような女性が朝の祝福を準備する姿だ。さらにメディテーション、ハサヨガ、アシュタンガヨガ、インドネシア伝統のトリートメント“マンディルルール”など、スピリチュアルなエネルギーに満ちたトリートメントが用意されている。

リゾートに到着するとまず通されるのがオープンエアのロビーである。その床はジャワ産の大理石や火山石で造られており、ココナッツの木の柱が立つ広々としたロビーにはアユン渓谷から吹く風が通り、私たちは旅の疲れから解き放たれる。魅惑のプールはそのロビーからも見え、中庭を挟んだ隣のレストラン前にある。他のアマンのプール同様のスクエア型ではなく、柔らかな半月型であるにも理由があるという。当時の総支配人が話してくれた。「プールは周囲に広がる美しいライステラスの形状を考慮してデザインされました。アマンダリではヴィラもウブドの民家が再現され、すべてが隣接の村の環境に馴染むように造られています」という。

アマンダリの全客室31はすべてが独立したヴィラタイプ。特にウブドの民家の表門が幅の狭い観音開きであるように、ここアマンダリのヴィラの門も2人が横に並ぶとやっと通れる“アンクル・アンクル”という形状が主流だ。村の民家では門を開けると家の内部が見通せないよう、そして悪霊の進入を防ぐともいわれる衝立がある。これは沖縄の民家にある“ヒンプン”という衝立に酷似し興味深い。

客室用ヴィラには、それぞれに中庭、アウトバス、ドレッシングルームなどが設えてあり贅沢な広さがある。「ヴィレッジスイート」、「バレースイート」、「プールスイート」は250m²~465m²、「アマンダリスイート」になると688m²という広さだ。全客室カテゴリーは8種類が揃い、ライステラスやアユン渓谷を見晴らせるアマンダリ最大のスイート「アマンダリヴィラ」は、なんと1,728m²。全5棟のパビリオンで構成され、独立したテラススタイルの3棟の寝室、個別のリビングルーム、キッチンも完備。他にココナッツの柱と大理石の床が豪華なダイニング・バレなどから成り、稀に見る施設である。この最大級のスイートはアマンダリ本体から車で2分ほど、風光明媚な高台を利用して建てられた。まるで映画のセットと見紛うようなアマンダリ、その建築や環境デザインを手がけたのは、建築家のピーター・ミュラーだ。オーストラリア出身のミュラーは、二十世紀アメリカ建築の巨匠、フランク・ロイド・ライト(日本の帝国ホテル建築でも高名)の影響を強く受け、ライトが実践していたオーガニック・アーキテクチャー(有機的建築)を貫いた人物である。有機的建築とは「自然の中に溶け入るように、またその地の生命のリズムを乱さぬように建物を建てるべき」との考えであり、セオリー通り、ここアマンダリにもミュラーのコンセプトが強く投影されているという。

 大いなる楽しみはアマンダリの食事にもある。高級チーク材で造られた風通しの良い「ザ・レストラン」では、棚田やメインプールを見渡しながら、インドネシアに伝わる郷土料理はもちろん、アマンダリ独自の西洋料理、香しいエスニック料理なども愉しめる。レストランはオールデイダイニングとしてあり、いつ朝食を摂ろうと、それをどこで食べようと、ルームダイニングを希望しようとリクエストは可能。いずれの食材も地元のオーガニックファームから調達、近海で水揚げされた魚介類を用いて調理される美味しい料理が振舞われている。

クッキングクラスに纏わる見逃せない話もある。旅先で地元の料理を習うのは実に楽しい。アマンダリではバリの祝宴「村でのアマンダリ料理教室」が提供されている。まずはスタッフと共に市場に赴き食材を調達。次いで村人の民家を訪ね、昔ながらの竈があるオープンキッチンでアマンダリのシェフに教えてもらいながら料理をする。バリ風チキン料理、主にカレーやトマトのサンバル、炊き込みご飯、野菜料理など、初めての香辛料を用いるエキサイティングな料理教室である。作りたてを食べる楽しみも、村人との交流も、ホテル滞在だけでは見えない交流の温かな経験はトラベラーたちを喜ばせている。こうして様々な経験を楽しんだゲストは、思い出を心にいっぱいに詰めて帰路に就くことに。筆者は旅の最後にアマンダリブティックでショッピングだ。インドネシアの伝統工芸品やアクセサリー、陶器、アマンダリコレクションなど自分への土産品を買いあさる。帰国後にはそれらを眺め、次のアマン旅へと夢を膨らませる。P.B.

Amandari アマンダリ 
Kedewatan Ubud Bali, Indonesia 
日本語フリーダイヤル 0120-951-125
https://www.aman.com/resorts/amandari