
聖地巡礼#12 BonadeoBoatworks(ボナデオボートワークス)
創業から10年、わずか16艇のセンターコンソーラーでスチュアートのレジェンドに仲間入りした「Bonadeo」最高のデザイン、最高の素材、最高の技術、最高の仕上げ……そのすべては自分のための1艇から始まった

text:Yoshinari Furuya
photo:Kai Yukawa ,Bonadeo Boatworks
special thanks : Bonadeo Boatworks
http://www.bonadeoboatworks.com
「Bonadeo34」との出会いは数年前のスチュアート。緩やかなカーブを描くクラシカルで美しいタンブルフォーム。アフトデッキを囲む低めのブルワークから、船首に向かい弧を描く美しいシアーライン。よくあるセンターコンソールと同じレイアウトでありながら明らかに違うオーラを放つ。北米に数え切れないほどあるセンターコンソーラーのどのボートビルダーとも違う存在感。「Bonadeo(ボナデオ)」はセンターコンソーラーの枠を飛び出していた。センターコンソーラーなのにまるでガーリントンのエクスプレスを見ているような錯覚を覚える。それが、「Bonadeo」の率直な感想だった。そして、いつか乗ってみたいと思うボートの一つでもあった。

「Bonadeo」のファクトリーはカスタムビルダーの聖地フロリダ州のスチュアートにある。アメリカの映画やドラマでも度々登場する、アールデコが有名なマイアミビーチから北におおよそ100マイル。車で2時間弱の距離にそのカスタムビルダーの聖地がある。聖地と呼ばれる理由、それは、「聖地巡礼」でも紹介してきた数々のカスタムボートビルダーが、スチュアート周辺に集まっているからだ。スチュアートの中でも、ヒステリックダウンタウンと呼ばれるオールドタウンのおよそ8km南にあるSESlaterSt.とSECommerceAve.が交わるT字路周辺は特に有名。5つのカスタムボートビルダーが100m圏内に集まる集積地だ。SESlaterSt.側には、そのT字路から順にJimSmithTournament、5月号で紹介したGarlingtonLandeweerYachts、6月号で紹介したL&hBoats、3つのカスタムボートビルダーが軒を連ねる。その東側、SECommerceAve.を挟んだ向かいにはWillisMarine。そして、SECommerceAve.を数十m南に歩けば、今回紹介する「BonadeoBoatworks」のファクトリーが現れる。


「BonadeoBoatworks」の創業は10年前。LarryBonadeoと長男のTonyBonadeoを中心に、ファミリーでスタートした新しいカスタムボートビルダーである。
もともとLarryBonadeoは、コミュニケーション通信事業で成功を収め、PaulMannの63フッターを所有。家族で釣りを楽しんでいたという。ある時自分達が使うための、気軽に乗れるセカンドボートが欲しくなり、35フィート前後のセンターコンソーラーを探し始める。だが、Larryが希望するセンターコンソーラーはプロダクションには見当たらない。そこで、理想を求め最上級のセンターコンソーラーの建造を自らすることにしたという。
デザインの特徴は何と言っても他のセンターコンソーラーと一線を画す美しいスタイリング。そのデザインは、伝説の名艇Garlington44expressやGarlington58convertibleをデザインしたSteveFrench率いるAppliedConceptsUnleashed。それが、Garlingtonと雰囲気が似ている理由だったのだ。

SteveFrenchといえばGarlington以外にもSpencerYachts、MerrittBoat&EngineWorks、F&SBoatworks、ScarboroughBoatworks、BriggsBoatworks、SculleyBoatbuildersなど、名だたるカスタムボートビルダーのデザインをした実績を持つ。そのSteveFrenchがデザインする34フッターを、A1A沿いの1艇がやっと入る大きさのファクトリーを借り、家族の共同作業で建造し始めた。
「BonadeoBoatworks」の基本は、モールドによるセミカスタム。だが、最初の2艇「34」と「31」はジグを使ったフルカスタムスタイル。その後、2タイプのモールドを製作し、セミカスタムのラインナップをスタートした。次に36フッターを建造。そして、現在最も人気の高い「37」へ。他には「14」のローボートと「43」を現在建造中。また、27フッターのモールド製作は始まったばかり。そして、次には「35」の建造も決まっているそうだ。さらに45フィートのウォークアラウンドのプランも進行中というから楽しみだ。もちろん、希望があれば、ジグを使ったフルカスタムも建造するという。



「Bonadeo」をスチュアート周辺でよく目にするが、現在までに建造したのは16艇と意外と少ない。あれだけ多くのセンターコンソーラーを目にするステュアートやフォートローダーデールにあっても圧倒的な存在感を見せ、誰もが惹きつけられてしまう。それがカスタムボートビルダー「Bonadeo」の魅力だ。「Bonadeo」が注目を集めたのは、デザインだけではない。スモールサイズでアウトボードのパワートレインというセンターコンソーラーでありながら、マテリアルやストラクチャーにこだわり、クラス最上級のシーワージネスを持つ。LarryBonadeoの妥協をしないこだわりにより、超軽量で超高剛性のセンターコンソーラーが完成した。この究極のセンターコンソーラーは、メガヨットやビッグボートを持つオーナーのセカンドボート市場や大型スポーツフィッシャーからの乗り換え市場で瞬く間に評判となった。

素材に拘ったボート建造
例えばハルナンバー#1のマテリアルは大型のカスタムスポーツフィッシャーと変わらない最新の複合素材。ケブラーとE-グラス、カーボンの間にコアセルをサンドイッチ。ストリンガーはフォームのコアにグラスファイバー。それらを強度の高いエポキシレジンのバキュームインフュージョンで成型。現在考えられる最高の素材をバキュームインフージョンでワンピース化し、1つの塊のような強い船体が完成した。LarryBonadeoが求めた理想のボートは、そのデザインや高い剛性、シーワージネスから注目を集め、販売する気のなかったボート建造の依頼が入るようになったという。そこからカスタムボートビルダー「BonadeoBoatworks」の歴史が始まった。
現場の指揮をとる若きビルダーTonyBonadeoの案内でファクトリーを見学。その後、Larryの好意により、ファクトリーからすぐ近くの桟橋に係留されている、「Bonadeo34」での試乗がかなった。

Tonyの運転で桟橋を離れる。広くスピードの出せる安全なエリアで運転を変わる。走り出しや加速はスムーズ。剛性の高いハルは、波や飛沫を受けてもソフトな波当たりで、とても静かだ。これだけでも剛性の高さを十分に感じることができる。気がつけば40ノットを超えるスピードをマーク。だが、感覚的には30ノット以下のスピード感しかない。恐怖心を感じることはなく45ノットも超える。他船の引き波に当たる。波を切る鋭いエントリーと剛性によりソフト。大きなチャインは飛沫を落とし、デッキはドライ。低速時や停泊時、つまり、トローリングやボトムフィッシング時と同じ条件下でのローリングはしっかりと抑えられている。適度なカロライナフレアは、しっかりと飛沫を左右に飛ばし、大波の中でも浮力を確保しノーズダイブを防ぐだろう。


シーワージネスやスピード、そして美しいデザインを併せ持つ「Bonadeo」。LarryBonadeoの理想が詰まった究極のセンターコンソーラーを日本に紹介できたことを誇りに思う。そして、いつかこの究極のセンターコンソールが日本を代表するトーナメントJIBTに参戦し、スタートフィッシングの最前列からスタートし、美しいスプレーをあげながらトップを走る姿を見てみたい。P.B.
Bonadeo Boatworks
4431 SE Commerce Avenue, Stuart, FL 34997
TEL: +1-772-463-7447
Info@bonadeoboatworks.com
http://www.bonadeoboatworks.com


