
聖地巡礼#16Gamefisherman Inc.
30フィートのインボードエクスプレス艇から建造するGamefishermanRybovichでCEOを務めた男が極めた、拘りのカスタムスポーツフィッシャー

text: Yoshinari Furuya
photo: Kai Yukawa, Gamefisherman
special thanks: Gamefisherman
http://www.gamefisherman.com
現在、北米で“小型”と言われる40フィート以下のスポーツフィッシャーは、センターコンソーラーやウォークアラウンドなどアウトボード艇が主流となった。カスタムスポーツフィッシャーにおいては、エクスプレスやウォークアラウンドですら、40フィート以下は建造されることが少ない。過去にはスタンダードと言われ人気のあった37フィート~45フィートのコンバーチブルを新規で建造するカスタムビルダーは、今やほとんどいない。30フィート~40フィート前後のカスタムエクスプレスを建造したとしても、それはマザーシップのテンダーボートや、別荘のプライベート桟橋専用のセカンドボート。近年では、そのセカンドボートすらも大型化し、50フィートを超えることも珍しいことではない。
そもそも、建造方法にこだわり、納期が長いカスタムボート。ファクトリースペースも限られるカスタムボートビルダーは、建造数が限られている。プロダクション・スポーツフィッシャーの選択肢も減り、大型になればなるほどカスタムスポーツフィッシャーへ移行するユーザーが増えている。人気のカスタムビルダーは常にバックオーダーを抱え、既存の顧客だけで手一杯の状況だ。限られた制約の中で、高価な大型艇をオーダーする顧客を優先させるのは仕方のないこと。世界的な不況にでもならない限り、マザーシップをオーダーしたことのある上顧客からの依頼でなければ、小型艇の建造を受け付ける余地はないだろう。日本に適した50フィート前後のカスタムスポーツフィッシャーが少ないのも無理はない。


しかし、大型化するアメリカにおいても、大型艇を必要としないゲレンデは多い。泊地の問題、管理の煩わしさ、クルー不足、使用用途などの理由から、40フィート~50フィート前後のコンバーチブルのニーズがあることも事実。特に30~40フィート台のエクスプレスやウォークアラウンドのインボードディーゼル艇は、燃費や信頼性から今でも人気は高い。

「GamefishermanBuilders&BrokersofFineSportfishing Boats」を創業したMichaelT.Matlackも、大型艇しか建造しなくなっているカスタムスポーツフィッシャーに疑問を持っていた一人だった。かつてRybovichでCEOを務め、その時代に、40フィート前後のコンバーチブルや30フィート台のウォークアラウンドが求められていることを感じていたという。Rybovich在籍中の1986年、自身の手で40フィートのコンバーチブルを建造、カスタムボートビルダーを立ち上げる。それが、「Gamefisherman(ゲームフィッシャーマン)」の始まりだ。
MichaelT.Matlackの狙いは的中した。創業時に建造した40フッターの評判から、小型で上質なものを求めるハードフィッシャーを始め、造りやデザインに拘りを持つカスタマーのセカンドボートとしてオーダーが順調に入る。そして今では拘りのスモールカスタムスポーツフィッシャーとして全米に知られるようになった。

小型からスタートした「Gamefisherman」は、クラシカルなコンバーチブルやエクスプレス、スタイリッシュなウォークアラウンドを建造する数少ない本格カスタムビルダーとして注目を集める。その後、コンバーチブルでは「42」「45」「46」とやや大型へ移行したが、それでもカスタムボートビルダーの中では小さい方だ。さらに大きい「46」「48」「53」「55」「60」もすでにデザインされている。エクスプレスでは「30」「37」「39」「42」「45」を既に建造。ショートハンドでも扱いやすい大きさはカスタマーから高く評価され、その他「36「」43」「47」「48」「53」「58」「63」もデザインされている。人気が高いウォークアラウンドは「30」「37」「42」が建造され、「Gamefisherman」の独壇場。大型化するウォークアラウンドでも「39「」43「」45「」48「」53」がすでにデザインされている。変わったところでは「39Express」のアウトボードや「42Walkaround」のアウトボードの構想、30フッターのセンターコンソールや、トランクキャビンと呼ばれる珍しいレイアウトも。デザインだけのものを含めれば、現在既に32モデルものラインナップがある。


MichaelT.Matlackのヒストリーは、チャーターボートキャプテンから転身することの多いボートビルダーとは異なる。1964年に海軍を去ると、100トンのライセンスを持つキャプテンとして、年間を通じ、バハマやカリブ海を通り、カリフォルニアまで船舶を運行した。そして、この運行業務の後、ボートビルダーやヨットブローカーで働き始めたのだ。
1970年代には、プロダクションビルダーBertramYachtのマネージャーとしてプロダクション・スポーツフィッシャーの建造に携わる。1980年、ウェストパームビーチにある“レジェンド”Rybovich&SonsBoatWorksに入り、1991年まで、社長など要職を務める。そこで、Rybovichの魅力に惹きつけられた彼は、実際に2艇のRybovichを所有するRybovichオーナーとなった。同時に「GamefishermanBuilders&BrokersofFineSportfishingBoats」を経営し、「Gamefisherman」の建造をする傍ら、Rybovichファミリーとの良好な関係は続けられ、MichaelRybovich&SonsYachtSalesのブローカーとしても、活動が続けられている。

「Gamefisherman」の、ステムが立つクラシカルで独特なデザインは、フロリダ州ジュピターのEGYachtDesignによるもの。創業者のErwinGerardsは、クラシカルで芸術的なコンバーチブルやエクスプレス、デザインコンシャスなウォークアラウンドを得意とするデザイナー。Rybovichに認められ、ハルナンバー#100から#107のRybovichをデザインした実績を持つ。タンブルフォームにハードチャイン、ラウンドボトムが特徴。Rybovichや「Gamefisherman」など、クラシカルで美しいバランスのエクスプレスやウォークアラウンドを建造する異色のナーバルアーキテクトだ。

さらに、「Gamefisherman」とEGYachtDesignのコラボにより、マザーシップもデザイン。それは「Gamefisherman」を搭載するためのメガヨット。快適な生活空間を持つマザーシップとともに世界各地を遠征し、ビルフィッシュトーナメントでは機動力の高い40~50フィートでファンなファイトを楽しむ。各地を遠征するハードフィッシャーの理想を叶えたデザインが注目を集めている。
クラシカルで新しい「Gamefisherman」。所有欲を満たす芸術的なデザインを持ちながら、戦闘力の高いスポーツフィッシャー。「Gamefisherman」こそ、日本に最適なサイズとシーワージネス、フィッシャビリティを持つ理想のスポーツフィッシャーかもしれない。P.B.
Gamefisherman Inc.
3290 SE Gran Park Way, Stuart, Florida 34997
TEL: +1-772-220-4850
FAX: +1-772-220-4851
E-mail: info@gamefisherman.com
http://www.gamefisherman.com


