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聖地巡礼

聖地巡礼#10 L&hBoats(エル・アンド・エッチ・ボーツ)

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33フィートのウォーク・ア・ラウンド・スポーツフィッシャーのみを建造する「L&hBoats」HUNTDESIGNのシーワージネス、日本のスタイルにも最適な孤高のカスタムボート

text: Yoshinari Furuya
photo: Kai Yukawa, L&h Boats
special thanks: L&h Boats
http://www.lhboats.com

「L&hBoats」のファクトリーは、アメリカ東海岸のフロリダ州、ビーチリゾートとして知られる観光地マイアミビーチから北におよそ170kmに位置するマーティン郡の郡庁所在地スチュアートにある。住所は3350SESlaterSt。先月号の「聖地巡礼」でも紹介したその場所は、観光で知られるヒストリック・ダウンタウンから南へおよそ8km。ファクトリーの並ぶ工業団地内を通るSESlaterSt沿い。交差するSECommerceAve.側から順に、JimSmithTournamentBoats、GarlingtonLandeweerYachts、そして3棟目のファクトリーが「L&hBoats」のファクトリーだ。

その出会いは偶然やってきた。「L&hBoats」の存在を知ったのは、隣接するGarlingtonLandeweerYachtsを訪問していた時のこと。建造中の3艇の内の1艇、Garlington49expressを見学するためPeterLandeweerの案内でファクトリーツアーをしている途中、スペースを借りている隣のファクトリーへ移動。そのファクトリーが「L&hBoats」のファクトリーだった。建物の壁には「L&hBoats」の看板。そして建造中のGarlingtonの横には、アフトデッキが外された、33フィートのウォーク・ア・ラウンドのスポーツフィッシャー。PeterLandeweerは、そのスポーツフィッシャーの上で熱心に作業をする職人を紹介してくれた。それが、「L&hBoats」の社長、GlennMuller。PeterLandeweerは「L&hBoatsもいいボートなので、ぜひ取材してほしい」と。我々も「L&h」に興味があることを伝えると、そのやりとりを聞いたGlennMullerは、笑顔で「どうぞ、存分に見ていってください」と、快く案内してくれた。隣り合う2社、そして2人の良い関係が伝わってくる。

一人で取り回しが可能なスポーツフィシャー

「L&hBoats,Inc.」は1992年、JohnMeyerとGlennMullerのパートナーシップにより創業された。ニュージャージーで生まれたJohnMeyerは、熱心なフィッシャーマン。BertramMoppie31からGarlington63まで多くのボートを乗り継ぎ、沿岸のストライパーフィッシングからオフショアの釣りまで幾多の釣りを経験。それらの経験から理想のボートにたどり着いた。それはキャプテンやメイト(クルー)を必要とせず、一人でも扱えるサイズ。掃除やメンテナンスも早く簡単。360度どこでもフィッシングできる釣りスペースがあるウォーク・ア・ラウンドのレイアウト。パワートレインは、スピードと信頼性を両立するインボードディーゼル。それら全てをかなえる究極のフィッシングボートを形にしたものが「L&h33」というわけだ。

そして、もう一人の創業者が、工場内の「L&h33」の船上でリフィット作業をしていたGlennMuller。彼の専門はFRPボート建造。ニューイングランドで漁船を建造し、1984年にフロリダへ。以来、FRPボート建造に携わってきた。その後Glennは、ハイエンドのカスタムスポーツフィッシングボートを建造するRichardGarlingtonの元で働く機会を得るが、当初はコールドモールドの木造船の船大工だった。その後、Garlington初のオールファイバーグラス製スポーツフィッシャーGarlington44の建造を始めた時から、Glennは工場のリーダーであり建造の責任者として、8年間働いたという。その後Garlington44の成功により、Garlingtonは拡大し、一流カスタムビルダーの仲間入りを果たした。

そして、Glennは、MeyerファミリーのためのGarlington63建造をきっかけにJohnMeyerと出会い、後に2人の理想のフィッシングボート建造がスタートすることになったのだ。

「L&h33」は、33フィートという手頃なサイズに380馬力のインボードディーゼルを2基搭載し、荒れた海を乗り超える余裕のパワーと36ノットのトップスピードが特徴。ハンドレイアップで積層されたソリッドのFRPハルは頑丈。適度に重みを持たせた厚いハルは、33フィートのサイズを超えたシーワージネスやスタビリティを実現。しかも、このサイズなのにシーキーパー(アンチローリングジャイロ)が載せられる。釣り専用のセカンドボートにするオーナーが多いというのも頷ける。

ボトムデザインはHUNTDESIGN。1960年代に、マイアミ~ナッソー・オーシャン・パワーボートレースの荒れた海況の中、圧倒的な強さを見せた伝説のディープVハルを持つBertramMoppie31を設計した革新的デザイナーCharlesRaymondHuntが創業したデザイン会社だ。HUNTDESIGNにはRayHuntの意思が受け継がれ、コマーシャルボートをはじめ、ワンオフのメガヨットからプロダクションまで多くをデザインし、名品を残してきた。代表的なボートには、日本にも多く輸入されたBOSTONWHALER、GRADY-WHITE、ROBALOなど高品質のフィッシングボートや、GRANDBANKSEASTBAYシリーズ、ALDEN、CAMPER&NICHOLSONS、HINCKLEY、LYMAN-MORSEなど、ダウンイーストスタイルを建造する一流ビルダーが名を連ねる。さらに、PALMERJOHNSON、ROYALHUISMANなど、ワンオフ・メガヨットまで大小様々なボートをデザインし、信頼されている。そのHUNTDESIGNがデザインしたボトムデザインは、36ノットのトップスピードを誇り、今でも最新モデルと張り合うことができるポテンシャルを持っている。

創業から24年で、33艇の「L&h33」を建造した「L&hBoats」。その他、フルカスタムボート建造やオールドボートのリフィットやリビルドも請け負ってきた。「L&h33」のリビルドはもちろん、オールドバートラムのリビルドでも評判となり、今も多くのオールドバートラムが持ち込まれている。
「L&h33」を見ればみるほど、日本の海、日本の遊び方、日本人にぴったりのサイズやレイアウトではないかと思えてくる。それは憧れのカスタムボートという感覚ではなく、現実的に欲しいボートとして気になる存在である。いろいろな釣りに使ってみたいと思える魅力を随所に感じるスポーツフィッシャーだ。また一つ、日本で乗ってみたいカスタムボートがリストに加えられた。P.B.

L&h Boats, Inc.
3350 SE Slater Street, Stuart, Florida 34997
TEL: (+1) 772 288 2291
Email: info@lhboats.com
http://www.lhboats.com