素晴らしきワイン、美食体験、世界的なモダンアート、さらに建築の粋を一気に体験できる場所

プロヴァンスの5つ星ワイナリーリゾート「ヴィラ・ラ・コスト」オーガニックワイナリーの中にあるホテルで、ワイン、グルメ、アート、建築を堪能
text: YUKI
photo: Hiro Matsui
南仏エクス・アン・プロヴァンス近郊にあるワイナリー「シャトー・ラ・コスト」は、1682年から続く伝統あるワイナリーで、2004年に、アイルランド人のホテリエにして実業家のパディ・マッキリンが取得した。バイオダイナミック農法で栽培される広大な葡萄園、世界的なフランス人建築家ジャン・ヌーヴェルがデザインした他に類を見ないお洒落な醸造所、安藤忠雄氏設計の正門やギャラリーを始め、世界の名だたるアーティストや建築家の作品が200ヘクタールの広大な敷地に点在している。2011年からはそれらのインスタレーションが一般公開され、2016年には敷地内にラグジュアリーなブティックホテルがオープンした。プロヴァンスに3軒あるパラスホテルの一つ、「ヴィラ・ラ・コスト」である。


ここは、2021年に京都祇園にオープンした9室のみの究極のブティックホテル「The Shinmonzen(ザ・シンモンゼン)(」2022年5月号で紹介)の姉妹ホテルと聞いて、一度は行ってみたいところだった。古都、京都との最大の違いは、その敷地の広さだ。ワイナリーの葡萄畑と醸造所、アートのインスタレーション展示エリアを除いてもまだまだ広い。その広大な敷地の小高い丘の上にあるのが、ワイン、グルメ、アートが楽しめるヴィラ・ラ・コスト。シャトー・ラ・コストにおけるアート作品の紹介も話題は尽きないが、今回はホテルの魅力を紐解いてみたい。アートに関しては、日本人アーティストだけでも、安藤忠雄、隈研吾、杉本博司、大舩真言、と一流どころの名前が連なる、とだけ報告しておこう。
Villa La Costeヴィラ・ラ・コスト
まずは、最大の魅力であるグルメから。2021年にオープンしたホテルのファインダイニングは、フランス人女性シェフの「エレーヌ・ダローズ・アット・ヴィラ・ラ・コスト」。彼女の店はトータル3つあり、このホテルのエレーヌ・ダローズはミシュラン1つ星、パリ店は2つ星、ロンドンのザ・コノート店は3つ星獲得という偉業を達成している。


ヴィラ・ラ・コストの総料理長は、シェフ・トーマス・ペゼリル。プロヴァンス産はもちろん、敷地内のオーガニックキッチンガーデンの採れたての野菜や果物をふんだんに用いた料理を幅広く提供する。魚や肉料理ももちろん選べるが、メニューのメインは野菜料理。そして、その生産者への感謝を込めて、シグニチャーメニューには「シャトー・ラ・コストと地元生産者へのオマージュ」と題名が付く。ちなみに、敷地内のキッチンガーデンは、フランスの著名な造園家であるルイ・ベネシュがデザインしている。

レストランは、天井までの大型窓から降り注ぐ南仏の自然光が美しく、さらに特筆すべきは中央部に天井からシャンデリアのように吊り下がるルイーズ・ブルジョワ作のモダンアートの醍醐味。そしてワインセラーには、シャー・ラ・コストのワインと合わせて、6,000本のセレクションが揃う。美食と、ワインと、アートを、共に満喫できる特別な場所だ。
ヴィラ・ラ・コストのアートに目を向けてみよう。ホテルのロビーエリアもギャラリーを兼ねていて、ロビーギャラリーと呼ばれ、様々なモダンアート作品が並ぶ。日本人美術家、大舩真言の作品も、と思ったらなんとご本人が作品を搬入している最中に遭遇したのだ。シャトー・ラ・コストの古い醸造庫の一つがジャン・ミシェル・ヴィルモットによりモダンなアート展示場に変身しており、大舩氏の作品がそこに展示されるという。筆者が滞在したのは2023年の10月。2024年6月時点では、ダミアン・ハーストの展示会が開催中だ。

ロビーギャラリーから、屋外プール越しに広大な葡萄畑とシャトー・ラ・コストの一部を臨む。外に迫り出した大型テラスからの眺めはまさに絶景で、このテラスでの朝食はお勧めだ。早朝、霧が立ち込めるとまるで葡萄畑を雲海が覆うような景色で、なんとも幻想的。生涯の思い出に残る朝食となることは間違いない。京都の姉妹ホテルもあたかもアートホテルであるかのよう、と称されることがあるが、両ホテルのオーナーであるマッキリンのアートに対する想いとコレクションはどうやら半端ないレベルだ。

館内を歩いていると突然宙に浮いたような大型ベッドが目の前に現れた。コペンハーゲンの現代美術家、カーステン・ホラーの回転ベッドのインスタレーションだ。一方、細いレールが30本近く楕円を描いている作品は、よく見るとミニチュアの列車が、人の顔などの白黒写真を貼り付けた貨物車と共に楕円形のレールの上を走り続けている。30段近いレールを走る貨物車の写真が一瞬揃うと誰の顔かわかる仕組みだった。ヴィラ・ラ・コストではロビーギャラリーに限らず、あらゆる場所にモダンアートが見られる。モダンアートのファンは、ホテルに滞在しながら、館内の作品はもちろん、シャトー・ラ・コストのアートも時間をかけてじっくり堪能することが望ましい。そして、たとえアートに興味がなくても、南仏の心地よい気候と、ワインとグルメだけでも十分楽しめることを付け加えておこう。

ヴィラ・ラ・コストは28のヴィラスイートを有する。いずれも白を基調としたモダンなデザインで、広々とした空間に自然光が美しく映える。全室に葡萄畑を臨む広々としたバルコニーが備わり、プライベートダイニングの場としても最適だ。100m²のヴィラスイートに滞在したが、バルコニー、居心地のよい大型ソファとダイニングエリアを備えるリビングルーム、ベッドルーム、バスルーム、いずれもゆったりとしたスペースで明るい自然光が心地よい。夜の照明もデザイン重視の間接照明に走らず、見たいものがはっきり見える、つまり快適に過ごせる心配りが感じられた。プール付きヴィラスイート(130m²)のチョイスもあり、そこを拠点としたら部屋から一歩も出ずに過ごしたくなるかもしれない。全ヴィラスイートには日本製シャワートイレを完備し、ウォークインレインシャワーやダイソンのヘアドライアーを備えるバスルームなど、京都のThe Shinmonzenと共通点が随所に見られるのも楽しい。


プロヴァンスでの滞在は紛れもなくリゾートステイなのでスパも見過ごせない。天井が高く、コンテンポラリーなデザインのスパエン
トランスエリアでは、セラピストからプロヴァンス産のオーガニックプロダクトの説明を受け、自分用を選ぶ。施術室では好みの香りに包まれながらどっぷり癒される。スパには、ハマム、フランス由来の水圧マッサージ、ヴィシーシャワーやリラクゼーショラウンジなど多彩な設備を有し、充実したスパメニューを提供している。セラピストの技術の高さにも驚く人が多い。

ヴィラ・ラ・コストでの滞在には、朝食のほかに、シャトー・ラ・コストのワインテイスティング、アート&アーキテクチャーツアーが含まれる。ワインテイスティングは、シャトー・ラ・コストのワインショップで行われるが、ワイナリーの代表的なロゼ、赤、白ワインと、ロゼのスパークリングをぜひ味わって欲しい。マルセイユ空港から車で約45分、エクス・アン・プロヴァンス市内からは車で20分のロケーションに位置するヴィラ・ラ・コストは、エントリーレベルのヴィラスイート(パヴィリオン・スイート、90m²)が975ユーロより。決して安いホテルではないが、オーナーのマッキレン氏の「芸術を全ての人に見てほしい」という考えから、若者にも手が届く価格帯の新しい宿泊施設「オーベルジュ・ラ・コスト」もまもなくオープンする。3階建て76室を有するこのホテルは、シンプルながらも洗練した内装と設備を備え、ヴィラ・ラ・コスト同様に、アート&アーキテクチャーツアーが含まれる。212ユーロから宿泊可能なオーベルジュ・ラ・コストアートは、建築を学ぶ学生達にも人気が出ることは間違いない。P.B.
■ Villa La Coste ヴィラ・ラ・コスト
https://www.villalacoste.com
https://www.instagram.com/villalacoste/?igsh=dGZ4ZW14dHdsbHJ2






