エッフェル塔の景色を望む、パリ屈指のラグジュアリーなショッピング・ストリート、モンテーニュ通り。街を歩けば華やかなこの通りに、客室の窓辺を彩る赤いゼラニウムと赤いファザードに象徴されるランドマークホテル「プラザ・アテネ」は壮麗に佇んでいる。創業以来、パリのエレガンスのシンボルとして君臨してきた、「ホテル・プラザ・アテネ」には、様々な人のストーリーがある。




ドーチェスター・コレクションの至宝、 PALACE の称号
クチュールのメゾンとも関係の深いファッショニスタ垂涎のホテル
女性をより魅力的に演出してくれる場所「ホテル・プラザ・アテネ」


 パリを代表するホテルの一つ「プラザ・アテネ」、パラスホテルならではの威厳ときめ細やかなホスピタリティに魅了され、多くの人がこのホテルを再訪するという。そもそも、パラス(Palace)とは、フランスのホテル格付け最高位にあたる称号で、5つ星ホテルの中でもさらに、立地の素晴らしさ、歴史的・美的あるいは文化遺産としての特異な価値、利用客のニーズに応じたサービスを誇る秀逸なホテルのみに与えられる。フランス全土でも厳しい審査に合格した0.15%(2017年現在)のホテルのみが持つ最高級の格付けで、パリでは10軒のホテルだけがパラスの称号をもつ。
 1913年の創業以来、世界中に常連客を持ち、特にファッションや映画関係者が数多く訪れるこのホテルがパラスの認定を受けたのは、2011年、創業から98年目のこと。数百万ドルを投じた大改修を経て、創業100周年を記念して2013年10月に新生「ホテル・プラザ・アテネ」が完成した。伝統的なエレガンスは変わらず保ちながら、さらにファッショナブルな現代性が加わりますますパワーアップした、「プラザ・アテネ」の魅力をもっと知りたいと思った。そして、そこにまつわる様々な人たちのストーリーも……。


 ユニフォームに身を包んだドアマンに迎えられ、映画のワンシーンに飛び込むかのような、緊張感と高揚感に包まれる。回転扉を抜け一歩入ると、柔らかい照明の館内はどこか温かみが感じられるアットホームな印象でゲストを迎え入れてくれてほっとしたのを覚えている。この日、パリは珍しく31年ぶりといわれる大雪に見舞われていた。そのためか、ちょっとしたハプニングが発生。足場が悪く到着した途端、すぐにお気に入りの毛皮つきの帽子を落としてしまい、大きな黒いシミがついてしまった。到着早々凹んでいたのだが、すぐにコンシェルジェに相談したところ、翌日にはシミひとつない元通りの状態で届けてくれたのは嬉しい思い出だ。
 そんな頼もしいコンシェルジェが常駐する優雅なフロント空間を過ぎると、そこは サロン・ド・テ の入り口となっている。横に長く伸びた サロン・ド・テ には、上品なムッシュとマダムの姿がちらほら。地元の人との打合せなどにも使われている様子が伺える。優雅なライフスタイルを横目に サロン・ド・テ を横切り、部屋へと向かう。
 エッフェル・スイートは、文字通りエッフェル塔を目の前に見渡せる角部屋。エッフェル塔を絵画のように楽しめる、額縁に見立てた大きな窓、フランスの王政時代にタイムスリップしたかのような重厚なインテリアが、ゲランのアメニティとともに、非日常気分を盛り上げてくれる。



 この部屋にまつわるストーリーとして、マレーネ・ディートリヒの話を聞いた。彼女はこのエッフェル塔の見える部屋で約3年にわたり、俳優ジャン・ギャバンと一緒に暮らしていたという。赤いゼラニウムの花を飾ることも彼女の暮らしを彩るアイデアから生まれたそうだ。その後、あまりにこの景色が気に入ったため、マレーネ・ディートリヒはホテルの目の前のアパルトマンに1962年から亡くなる1992年まで30年間住み続けていたのだそうだ。
 「プラザ・アテネ」といえば、クチュールの殿堂との深い縁もまた有名なエピソードがある。「モードは時代に即したものでなければならない」という言葉とともに、第二次世界大戦から間もない戦後の時代に、兵隊の制服のような装いに身を包んだままの女性たちを、豊かさと優しさに溢れたコレクションによって解放したデザイナー、クリスチャン・ディオールである。彼は1941年にデザイナーとしてスタートをきり、5年後の1946年、「プラザ・アテネ」の目と鼻の先にある、パリ・モンテーニュ通り30番地に自身1号店となるメゾンをオープン。翌1947年には、パリ・オートクチュール・コレクションに鮮烈デビュー。“ニュールック” と呼ばれる新しいスタイルを提案し旋風を巻き起こした。
 そのディオール初のショーで発表された90点におよぶコレクションを象徴する、“BAR” と名づけられたジャケットは、夕暮れの「プラザ・アテネ」のバーで、シャンパンカクテルを味わう時に装うことをイメージしてデザインされたという。ウエストのくびれはより滑らかに、ミニマムな曲線を描くシルエットに進化。そして時にはフロントを開けてゆったりと羽織ったスタイルで、動きのある女性らしさを表現している。「プラザ・アテネ」が存在しなければ、ディオールのクリエーションも生まれていなかったかもしれないと思うと、感慨深い。



 そしてまた、ニュールックで女性の美しさを讃えたディオール氏の想いに共鳴するかのように、「プラザ・アテネ」もまた女性を魅力的に演出してくれる場所であり続けているのである。そんなディオールとの深い絆から誕生したスパ、「アンスティテュ・ディオール・オ・プラザ・アテネ」もホテルの中にある。世界でも唯一の、ディオールのスパ施設だ。
 そしてもう一人、「プラザ・アテネ」を語る上で欠かせない人物が、フランス料理界の巨匠、アラン・デュカスである。2014年の改装にあわせ大胆なインテリアに生まれ変わった「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」は、デュカスプロデュースの3つ星レストラン。もともとアラン・デュカスのレストランは、モナコ、NY、香港、東京と世界中に広がるが、メニューは一つとして同じものはなく、それぞれのレストランにスペシャリテがあるのが特徴である。

 ここ「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」は、メインダイニングながら肉料理を一切提供せず、魚介類、野菜、雑穀の3つを軸にメニュー構成。「ナチュラリテ」=「自然と大地を重んじ、より健康的に食べること」をコンセプトに、素材の入手からデュカスがすべて自分で目を配る。たとえば野菜や果物は、デュカスのおめがねにかなった、ヴェルサイユ宮殿の菜園とパートナーシップを組み、デュカスだけに独占提供。魚介は、ブルターニュやバスク地方の漁師が獲る、絶滅品種などに指定されていない鮮魚や甲殻類。穀物も良質なヒヨコ豆、レンズ豆、トウモロコシや麦などと、厳選して選び抜いたものだけを入荷する。それぞれの食材がもつ味わいをシンプルかつ型破りな哲学をもって表現した、地球環境への配慮にこだわりぬいた究極のヘルシーな美の饗宴だ。
 デザイナーはフィリップ・スタルクの下で力をつけた、伝統と革新を融合した建築ユニット、パトリック・ジュアン&サンジ・マンクによる「ジュアン・マンク」。天井には約1万個ものスワロフスキークリスタルを贅沢に配し、曲線が多く、柔らかな印象の素材を使った店内のデザインは、きらびやかな中にも温かみがあり、ナチュラルなテーブルアートという素材の組み合わせが斬新な空間となっている。2017年「世界のベストレストラン50」の13位にもランクインしている、おすすめのレストランだ。



 「ホテルは人がつくる」とかつて誰かが言っていた。台本の1ページを大切に捲るように、滞在した人の数だけ想いやストーリーが紡がれ、「プラザ・アテネ」というホテルを作り出している。チェックアウトした後も、その余韻に浸り、何度も繰り返し見た映画のように、幾つものシーンが心に残っている。 P.B.

Hôtel Plaza Athénée
25 avenue Montaigne, 75008 Paris
ドーチェスター・コレクション 
TEL: 0120-914-084
www.dorchestercollection.com/en/paris/hotel-plaza-athenee/


text: Mine Nakao
photo: Hôtel Plaza Athénée
special thanks: DORCHESTER COLLECTION
www.dorchestercollection.com
PerfectBOAT 2018年5月号掲載/※データは掲載時のものです]