01_GB_2012_KN_-420

British-Pullman,-Claridge's,-The-Connaught--&-Chewton-Glen,-England,-GB_03

Claridge's_1

Claridge’s [クラリッジス]

 国民から絶大な人気を誇るエリザベス女王だけあって、戴冠60周年を祝うにあたっては、世界各国から集まった1000艘を越えるボートやヨットがテムズ川を下る盛大な水上バレードが開催されるなど、国民を上げての祝祭が開催された。ロンドン南部のパットニーからロンドン塔まで、王室用の平底船「ロイヤル・バージ」に乗った女王が船団を率いる様は、まさに壮観であった。それだけではない。前年のウィリアムズ王子とキャサリン妃のご成婚、今年のロイヤル・ベビーの誕生と、華やかな話題に事欠かない。

 ロンドンで投宿するとすれば、一番に名前が挙がるのが「クラリッジス」だろう。約200年前にメイフェアの一等地に創業し、1854年にクラリッジ夫妻の手に渡って以降、時の流れとともに独自のスタイルを確立した。現在のエレガントな佇まいは、1930年代にアール・デコ様式に模様替えした際のもの。豪奢なシャンデリアの足元に幾何学模様のタイルが敷き詰められたエントランスに一歩足を踏み入れた瞬間、このホテルが”アール・デコの宝石”と称される理由がよくわかるだろう。

Claridge's_2  英国王室とのつながりは、ヴィクトリア女王がフランスのウジェニー王妃との会合場所として「クラリッジス」を選んだことに端を発する。晩餐会の会場や国賓の投宿先に選ばれていることもあり、“バッキンガム宮殿の別館”とも称される。現在はイングリッシュ・ヘリテージに指定されているため、改築はできない。が、時代ごとのモードを取り入れたきたホテルらしく、2010年にはファッション・デザイナーのダイアン・フォン・ファステンバーグに内装を依頼するといった新たな試みにも挑戦している。

■Claridge’s
Brook Street, Mayfair, London, England, UK, W1K 4HR
TEL: +44 20 7629 8860
日本語でのメール: asiaservices@maybourne.com
http://www.claridges.co.uk



The Connaught_2

The Connaught [ザ・コノート]

 よりモダーンでリラックスした滞在を望むなら、同じメイボーン・ホテル・グループに属する「ザ・コノート」がお薦めだ。ロンドンの中心地であるメイフェア地区にありながら、シックな雰囲気で落ち着いた滞在ができる。1897年の創業時にはヴィクトリア女王の夫君にちなんで「コーブルク・ホテル」と呼ばれていたが、1917年に第三王子のプリンス・アーサー・コノート公爵の名を冠して、現在の「ザ・コノート」という呼称に変わった。

 ドアマンの招きに応じてエントランスをくぐると、瀟洒なコンシェルジュデスクが目に留まる。その脇、建物の中央に鎮座するようにマホガニーの階段が上へと延びている。外装のレンガ作りと呼応する重厚さの中に、モダーンな若々しさも持ち合わせる不思議な雰囲気。2007年の改築で、ヴィクトリア調のインテリアに現代的な要素を取り入れた結果だ。ロンドンを一望するバルコニー、大理石のバスルーム、コンテンポラリーなアート作品など、個々の部屋ごとに個性が与えられている。

The Connaught_1 ボンドストリートからも徒歩圏という好立地ゆえに買い物に繰り出すのもいいが、外出するより、ここに居てくつろぎたくなるタイプのホテルだ。食事を楽しみたい向きには、女性シェフであるエレーヌ・ダローズ氏が手がけたミシュランの2スター・レストラン「Helene Darrozeat the Connaught」をお薦めしたい。繊細でありながら、既存の価値観に縛られない自由な食事に魅了されるに違いない。気軽な食事を望むなら、ビストロ・スタイルでアフタヌーンティーやランチが楽しめる「Espelette」がいい。あのアマン・リゾーツが運営する「Aman Spa」も、一度は経験する価値がある。

■The Connaught
Carlos Place, Mayfair, London, England, UK, W1K 2AL
TEL: +44 20 7499 7070
日本語予約ダイヤル TEL: 001 010 800 7671 7671
日本語でのメール: asiaservices@maybourne.com
http://www.the-connaught.co.uk


British Pullman_2

Belmond British Pullman) [ベルモンド ブリティッシュ・プルマン]

 ロンドンでの滞在をさらに華やぐものにしたいなら、「ベルモンド ブリティッシュ・プルマン」の席を予約してみるべきだ。今回乗ったのは、ヴィクトリアステーションから出発し、ロンドンの南東方面に位置するケント州のカントリーサイドを巡り、4時間半かけて再び、ロンドンへと戻る人気の路線。19ものホームを持ち、人の往来の激しい構内だが、比較的落ち着いたエリアにオリエント急行専用ラウンジが用意されている。レセプションで受付をしてレザー製のケースに入れられた乗車チケットを受け取ると、否が応でも旅情感が盛り上がる。列車と同時代のファッションを纏って颯爽と搭乗する粋な老夫婦や、伝統的なファションの中にモダーンな要素を取り入れたドレスなど、乗客がそれぞれに趣向を凝らした装いで乗り込む様子は往時のオリエント急行もかくやといった雰囲気を醸す。英国では特別な記念日に搭乗する人が多いというのも頷ける。

British Pullman_1 制服を身につけたスチュワードたちに導かれて客車に乗り込む。1920〜30年代のオリジナルの客車による11両編成で、車両はそれぞれに呼称があり、謂れも異なる。各車に20〜26席あり、4人用個室または1〜2人用テーブルを備えるオープンサロンから選べる。
 車掌が発車の合図をし、がたんと重い音を建てて列車が動く出す。車窓を流れる景色は、いつの間にか都会の喧騒を離れて、緑豊かな田園風景に変わっている。今回、搭乗した「グェン」はロンドンーブライトン間を走った食堂車である。ヴィクトリア女王や皇太子によって愛用されていたというだけに、ヴィクトリア様式で設えられた客室の格調は高く、英国王室とのゆかりの深さを感じさせる。英国の食事はまずいと言われる上に、列車の中で食べる食事なんて…と心配することはない。そんな定説を覆すような豊かなひとときが楽しめるはずだ。世界で最も古い鉄道の歴史を持つ国だけに、英国における鉄道趣味は広く、深い。

■Belmond British Pullman
ベルモンド・ジャパン
TEL: 03-3265-1200
http://www.belmond.com/ja/


Chewton Glen_1

Chewton Glen [チュートン・グレン]

 英国の郊外特有の美しさを目にしてしまったら、車窓から眺めるだけでは満足できない。英国のカントリーサイドといえば、日本では湖水地方やコッツウォルズといったエリアが人気だが、英国人に人気があるのは王室の狩猟場だったことで知られているハンプシャー州の海辺に広がるエリアだ。ロンドンから南に向かってクルマで走ること、約2時間。懐かしい景色と緑が広がる田園都市、ニューフォレストに着く。現在は国立公園に指定されており、静かな森のなかを散策していると、野生動物が穏やかに暮らす様子が垣間見れる。そんな光景に溶けこむかのように佇むのは、英国屈指のラグジュアリー・ホテル「チュートン・グレン」だ。

 18世紀のカントリーハウスらしい伝統的なレンガ造りの本館は、英国流カントリー様式が徹頭徹尾貫かれている。テラスや窓からは、長年かけて丁寧に作り上げられたイングリッシュガーデンを望める。アンティーク家具に質感の高いファブリックを組み合わせた伝統的なインテリアではあるが、WiFi環境やAV機器は最新の設備が整えられており、快適な滞在を約束してくれる。

Chewton Glen_2 そうした老舗らしさを守る一方で、より自然を身近に感じながらの滞在を楽しめる「ツリー・ハウス・スイート」がオープンした。優美なカントリー様式でまとめられた本館とはまた違う、自然の中に身を置くことを堪能できるように配慮されたホスピタリティに溢れている。大きなベランダでは緑の森を望みながらジャグジーに浸かることもできるし、簡単な料理ができるキチネットや冷蔵庫が備わり、小さな子どものいる家族もリラックスした雰囲気で滞在できる。朝食が詰まったかわいらしいボックスはゲストをむやみに起こさないように配慮しながら運ばれてくる。豊かなニューフォレストの森を、アウトドアの厳しさだけ取り除いた形で存分に楽しめる。

 王室のある国らしい文化の香りを感じさせる旅ができるのは、英国ならではだ。伝統的なものに近代的な要素を加えることで、しなやかに時代の変遷を生き抜いてきたこの国の王室文化には革新と伝統が絶妙なバランスで溶け合っている。だからこそ、英国は人々を魅了してやまないのかもしれない。

■Chewton Glen Hotel & Spa
New Milton, New Forest, Hampshire, England, UK, BH25 6QS
TEL: +44 1425 275 341
日本での問い合わせ先:ルレ・エ・シャトー予約センター
TEL: 03-5472-6789
http://www.chewtonglen.com


text: Yumi Kawabata
photo: Hiro Matsui
PerfectBOAT 2013年11月号掲載/※データは掲載時のものです]