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single_H1_03「ビッグスカイカントリー」大空の州と称されるモンタナ州。ロッキー山脈の真ん中、カナダと国境を接するこの州は、日本とほぼ同じ広さに2つの巨大な国立公園と7つの国立野生動物保護区が点在する。「The Treasure State」の別名からも分かる通り、豊かな大自然を舞台に数えきれないほどのアクティビティが待っている州だ。全米の富裕層が憧れるリゾート地でもあるモンタナ、日本からはワシントン州シアトルを経ての旅となる。

アメリカの大自然を味わう「モンタナ」
感動的な本場のアクティビティ!


02_IMG_2003 モンタナという州の名前を聞いて、何を思い浮かべるだろうか? スペイン語で「山」を意味する「Montaña」という州名の通り、多くの山脈が走っている。日本人の多くは、イエローストーン国立公園やグレイシャー国立公園といった広大な自然をイメージするだろう。実際、アメリカの中で7番目に広い州だが、人口は少ない方から数えて4番目というだけあって、都会から来てカリスペル空港に降り立つと、あまりにも広々としていて身の置き場に困るほどだ。イエローストーン国立公園と比べて、日本での知名度はまだ高くないが、実はグレイシャー国立公園の人気はアメリカ国内では二分する。自然保護の観点から入場者数の制限を設けていることもあって、事前に予約しておかないと、特に夏場は入場できないこともあるほど人気なのだ。

 この地を訪れるなら、なんといっても自然を楽しむことだ。そう聞いて拒否反応を持つ人がいたら、それは大きな誤解。ロサンゼルスやシアトルといった西海岸の都市からの観光客が多いこともあって、都会派でも不便なく楽しめるだけの設備やサービスが整っているからだ。湖畔に建つ「ザ・ロッジ」のエントランスには大きな暖炉があり、訪れるものを温かく迎えてくれる。革製のたっぷりとしたソファに身を委ねて、このまま時の流れなど気にせずにリラックスしたい。ここに投宿するなら、湖畔を望むスウィート・ルームがお薦めだ。ウッドを使った温かみのある室内は、まるで自宅か別荘に帰ってきたようなリラックスした雰囲気。もちろん、ホテル内の施設も充実しており、フルサービスのスパ、湖畔のプール、ボートクラブまで併設されているから、ホテルを拠点にアクティビティを楽しんでもいい。

03_IMG_2022 都会で疲れた身体を豊かな時間の流れに合わせられるようになったら、いよいよアクティビティを楽しもう。一番のお薦めは、一休みしたあと、夕焼けに染まるホワイトフィッシュ湖でのクルーズだ。船上でカクテル・サービスを受けたあと、湖に面したホテル内のボート・クラブ・レストランでオッソ・ブーコやビーフテンダーロイン・ステーキなどの味わい深い料理を楽しめる。もちろん、町に繰り出して地ビールを味わうのもいい。実は、地ビールを楽しむのは、アメリカ観光の隠れた楽しみだ。ビール製造の規制が変わったことを受けて各地にマイクロブリュワリーができており、地元でしか飲めない個性的なビールを提供している。ホワイトフィッシュの町にあるグレート・ノーザン・ブリューイング・カンパニーは、アメリカ・ビール・フェスティバルで2年連続で賞を取っており、遠くから足を運ぶ人もいるほどだ。


クラシックなボンネット・バスの「レッドバス・ツアー」は、グレイシャー国立公園を手軽に楽しむのに格好のツアー。本格的なアクティビティをお望みなら、ホースライディングや、ラフティング、木の上にある吊り橋を使ったハイキング、フライフィッシングなど、さまざまなお愉しみが揃っている。

クラシックなボンネット・バスの「レッドバス・ツアー」は、グレイシャー国立公園を手軽に楽しむのに格好のツアー。本格的なアクティビティをお望みなら、ホースライディングや、ラフティング、木の上にある吊り橋を使ったハイキング、フライフィッシングなど、さまざまなお愉しみが揃っている。





 翌日、いよいよ、グレイシャー国立公園の中に入っていく。まずは、高い山に囲まれた国立公園を上下にわけるように横たわるマクドナルド湖へ向かう。ちょうど盆地のような低いところにあるので、この湖をボートでぐるりと巡ると、グレイシャー国立公園の中の山々の位置関係がわかる。ガイドの話に耳を傾け、心地よい風を頬に受けながらゆったりとボートツアーを楽しんだあとは、湖畔にあるロッジで一休み。正直なところ、昨晩のホワイトフィッシュ湖のロッジとは違って、ラグジュアリーな過ごし方は期待できない。が、ここには本物の自然の中に溶け込む豊かな時間という贅沢がある。もちろん、1週間の長期滞在が一般的なので、食事に関しては4ヵ所のレストランがあり、オーガニックやビーガンのメニューが充実していたり、それぞれのレストランごとに個性を持たせて飽きないように配慮されている。
 グレイシャー国立公園での滞在中、一度は試して欲しいのがレッドバス・ツアーだ。クラシックなボンネット・バスに乗って、ガイドの案内を受けながら山頂まで上がっていく。1914年にスタートした由緒あるツアーで、現役のバスのほとんどが1930年代に購入したもので、メインテナンスして大切に使われている。がたごととバスに揺られて緑の道を進んでいくと、途中から急に植物がぐっと減って岩肌が目立ってくる。高山に住む山羊やヤマネコが見られると聞いて、じっと目を凝らす。国立公園内には、絶滅が危惧される狼、マウンテンライオンといった美しい野生生物も生息しているという。
 このエリアには、自然以外にももうひとつ興味深いものがある。グレート・ノーザン鉄道だ。19世紀に創業した歴史ある鉄道で、ミネソタ州セントポールとワシントン州シアトルを結ぶ本線を軸に、アメリカ北部を走っていた。日本とも深い関係にあって、地元の歴史を書いた本に鉄道工事に日本人労働者が従事したという記述がある。実際、コロラド州のシルバーストーン鉄道のように、グレートノーザン鉄道の駅に面したホテルには、深夜に到着する列車を見るために滞在するファンも多い。今回滞在したアイザック・ウォーリントン・ホテルは、レストランや部屋から見える中庭にレールが走っており、まるで駅舎に泊まるかのような雰囲気だ。丸太がむき出しの室内で暖かい毛布にくるまって、心地よい眠りにつく。こんなとき、深夜に列車が到着して目が覚めるのも、悪くはないと感じる。


数えきれないほど醸造所があるモンタナはアルコール好きにとってまさに天国! 上から、ホワイトフィッシュの町にある「グレート・ノーザン・ブリューイング・カンパニー」。http://www.greatnorthernbrewing.com ■グレイシャー国立公園に惚れた若者が創業したウィスキー醸造所「グレイシャー・ディスティリング・カンパニー」。http://glacierdistilling.com ■カリスペルの街中にあるマイクロ・ブリュワリー「カリスペル・ブリューイング・カンパニー」は、ウィスコンシン・マディソン大学で学んだのち、この地に惚れたコール・シュナイダー氏が2002年に創業した人気店。http://www.kalispellbrewing.com

数えきれないほど醸造所があるモンタナはアルコール好きにとってまさに天国! 上から、ホワイトフィッシュの町にある「グレート・ノーザン・ブリューイング・カンパニー」。http://www.greatnorthernbrewing.com ■グレイシャー国立公園に惚れた若者が創業したウィスキー醸造所「グレイシャー・ディスティリング・カンパニー」。http://glacierdistilling.com ■カリスペルの街中にあるマイクロ・ブリュワリー「カリスペル・ブリューイング・カンパニー」は、ウィスコンシン・マディソン大学で学んだのち、この地に惚れたコール・シュナイダー氏が2002年に創業した人気店。http://www.kalispellbrewing.com





 翌日からはさっそく、本格的なアウトドアを楽しむ。このあたりは、ネイティブ・インディアンが多く住むことでも知られており、カウボーイさながらに馬を駆って山道を駆け抜けるアクティビティと呼べるかわからないほど、本格的なツアーもある。一般的な乗馬とは違って、足腰のしっかりした馬の鞍に座り、驚くほど険しい山道を登っていくのだ。ガイドを伴ってトレッキングするのも、ここではよく知られたアクティビティだ。トゥー・メディシンと呼ばれる山々が連なるエリアは特に、インディアンの伝説に満ちた地域である。相応に険しい道もあるが、この地域特有の紫の実がなるハックルベリーの入ったパイを食べれば再び元気が湧いてくる。
 川遊びもまた、この地域を楽しむ方法だ。雪解けの豊かな水をたたえる湖から流れ出す川は、川幅が広く穏やかな流れである。ゴムボートで下って行く途中、川をのぞき込むとあまりにも澄んでいて吸い込まれそうになる。フライフィッシングをしてもいいし、グラスを持ち込んで野鳥を観察するのもいい。川の中州にボートをよせて、誰もいない広大な自然の中でバーベキューを楽しむなんてランチタイムは、都会ではとうていできない贅沢だ。
 最終日、グレイシャー国立公園の玄関口であるカリスペルの町に泊まり、この町一番のバーガーを出すというホープス・グリルに立ち寄る。旅の思い出を振り返るように、レッドバス・ツアーを運転してくれたジャックおじさん、トレッキングをガイドしてくれたアンナさん、地ビールを注いでくれたボブさん、川下りをガイドしてくれたジョーさん…と、それぞれの顔を思い浮かべていて、ハッと気づいた。モンタナの地を訪れる最大の理由はなんといっても「人」なのだ。旅から帰ったあとでも、ふと彼らの暖かさを思い出す日が来るに違いない。モンタナへの再訪を心に誓って、カリスペルの街を後にした。


モンタナへの玄関口「シアトル」
都会と自然のベストミックス


30_IMG_1696 日本からカリスペルへは直行便がないこともあって、シアトルにストップオーバーすることをお勧めしたい。ワシントン州最大の都市であり、マウント・レーニアを背後に望む美しい町として知られる。日本人にとっては、イチローが活躍していたシアトル・マリナーズの本拠地であり、スターバックス・コーヒーの発祥の地である、といったところだろう。
 シアトルを訪れたなら、まずはスペースニードルに登ろう。1962年の万国博覧会のときに建てられたもので、当時の人が夢見た未来を体現している。高さ184mのタワーに登ると、シアトルの市街地はもちろん、オリンピック山脈やカスケード山脈、レーニア山、エリオット湾に浮かぶ島などを見渡せる。
 豊かな海の幸もまた、シアトル名物のひとつだ。ダウンタウンから海沿いのパイクス・ストリートを歩いて行くと、活気のある市場パイク・プレイス・マーケットにつく。1907年に物価の高騰に怒りをなした農民が自らの手で市を建てたのが、このマーケットの始まりだ。スペースニードルにつぐ観光地だが、地元の人の胃袋を満たす役割も果たしている。いかにもシアトルっ子、といった感じの年配の女性が上野のアメ横のような威勢のいい売り口調のスタッフから魚を買うと、ポーンと魚を投げて、内側のスタッフがキャッチする。

 サーモン、ロブスター、カニといった海の幸が並ぶ魚市場の隣には、新鮮な野菜や果物が並ぶファーマーズ・マーケットもある。全米でも有数の農業地帯という顔も持っているだけのことはある。その奥にある建物には、アンティークのポスターや雑貨を売る店が入っていて、意外によいお土産になりそうだ。
 この通りには、スターバックスの1号店もある。1971年に開業したときとは少し場所がうつっているそうだが、開業当時のオリジナルのロゴが掲げられている。新鮮な食材が手に入り、観光客も多いとなれば、レストランやカフェもたくさんあるのは当然。イタリア料理、南米料理、アメリカン・ダイナーなど、種類も豊富だ。
 シアトルに泊まるなら、ダウンタウンのなかでもショッピングが楽しめるエリアを選びたい。グランド・ハイアットからほど近いハイアット・アット・オリーブ8は、モダーンな内装で人気のホテルだ。パイク・プレイス・マーケットからも歩ける距離にあり、パシフィック・プレイスなどのショッピング・センターも近い。
 ホテルの近くにはレストランが充実しているが、時間に余裕があればベイエリアに行くべきだ。シアトル水族館の付近は、地元でも人気のレストランが多い。なかでも、アクア・バイ・エルガウチョは、目の前に夕日が沈む湾を眺めながら食事ができる。海を渡るヨットやボートを目の前に、新鮮なシーフードに舌鼓を打つのがシアトル流の食事の楽しみ方だ。
 何度きても、新しい感動を与えてくれる国アメリカ。海辺のシアトルから、内陸のモンタナへ。今回も、その旅はアメリカという国の広さと奥深さを、あらためて実感させてくれた。


04_Lodge Lobby 05_Daytime view of the Lodge 06_IMG_2032
ホワイトフィッシュ湖畔に面した「ザ・ロッジ」は、都会からのリゾート客でも不自由ないように充実した施設を誇る。夏はボートやヨットを楽しむ人、冬はスキー客で賑わう。夏は短く、盛夏でも肌寒い日があるほどで、暖炉に火が入る日もある。 ■The Lodge at Whitefish Lake http://www.lodgeatwhitefishlake.com


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どこへ行っても極上のテンダーロインが味わえるモンタナ。ロッジのBBQも絶品だった。右のハックルベリーをたっぷり使ったパイは、グレイシャーパークの「ルナズ・レストラン」にて。


text: Yumi Kawabata
photo: Yumi Kawabata, Montana Office of Tourism
special thanks: Brand USA
http://www.gousa.jp
Montana Office of Tourism
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Seattle & Washington State Tourism Office
http://www.seattlewa.jp
Delta Air Lines
delta.com
PerfectBOAT 2016年1月号掲載/※データは掲載時のものです]