02_IMG_5357美食のフランス船「ル・ソレアル」-日本初寄港クルーズ〈後編〉_03
昨年7月、イタリアのフィンカンティエリ造船所で出来たばかりの「カンパニー・デュ・ポナン」の新造船が、デビューイヤーにしていきなり日本へやってきた。「ル・ソレアル」、フランス語で太陽を意味するソレイユからの造語である。7月にベニスを出港し、アイスランド、グリーンランドを経て、ベーリング海を南下。ロシアのペトロハブロフスクを経て10月15日に小樽へ寄港し、そこから1週間の日本周遊クルーズを経て今日、大阪に至った。

DAY 9 大阪


17_IMG_5319 夕刻、新しい船客が乗船。日本人船客も20名程度乗船。大阪発ということもあり関西のお客様が多い。同じ大阪弁で話すので気楽でもあり話も盛り上がる。余談だがこういういい船に乗る方はあまりインターネットをやらない。アナログである。大阪で美味しいお店を教えて欲しいと尋ねると、一生懸命調べて、手書きで紙にその情報を書いてくださる。私は美味い店を紹介する本よりも口コミを信じる。まず間違いないからだ。
 実は次の台風が接近している。台風は太平洋を北上、「ル・ソレアル」は鹿児島へ向け南下する。ディナーを取っているとキャプテンに呼ばれた。「Masaaki、我々は定刻に出港し、できる限り飛ばす。そして翌日の未明にも鹿児島の錦江湾に船を入れる。日本人船客への承知を頼む」。物静かなレミ・キャプテンが攻めに転じた。

DAY 10 終日クルージング


 朝からなかなか厳しい海である。幼少期大阪から宮崎や鹿児島へ何度かフェリーに乗った時、ひどい揺れを経験している。それを思い出した。日本は世界的に見てもどちらかといえば悪い海に囲まれている。そして今年は例年以上に台風が多い。夕刻からのキャプテン主催のウェルカムパーティーは明日に延期、それに続く予定だった特別ディナーのメニューも明日のものと差し替えられた。

DAY 11 鹿児島


13_IMG_5336 「ル・ソレアル」は定刻に鹿児島港に入港。台風の影響かやたらと湿気がある。
 いつもはオレンジジュースとカプチーノ、それにクロワッサン1個の朝食で済ませていたが、久しぶりにしっかりと朝食をいただいた。とろとろのスクランブルエッグなど、シンプルな料理にもセンスを感じる。果肉の入ったオレンジジュース、香り立つエスプレッソも美味い。ここが日本であっても船内は思いっきりフランス船である。

DAY 12 終日クルージング


 台風に最も接近する。台風は船の東側を北上、「ル・ソレアル」は波の高さ、風を計算し、少し西回りで那覇を目指す。船内ではライブミュージック、ビンゴゲーム、ミュージカル、ダンスタイムといつもの優雅な時間が流れてゆく。
 このクルーズには日本のクルーズジャーナリストの第一人者である上田寿美子氏が乗船している。貴重な機会ゆえに様々な質問を投げかけ、教えを請う。何しろ世界最大のクルーズ会社のCEOにアポイントが取れるトップジャーナリストである。
 ディナーの後は日本人コーディネーターとしての仕事である船内新聞の和訳とその新聞の配達がある。キャビンが並ぶ通路でエンターティナーとして乗船しているフランス人ダンサーと少し話した。母親はベトナム人だという。か細い彼女は12月までこの船で働き続ける。洋上では一日も休みはない。厳しい仕事である。

DAY 13 那覇


 南国の太陽が出迎えてくれた。どこかほっとする。少し風が強いものの、太陽の日差しが「ル・ソレアル」のプールの水をきらめかせる。アドリア海の洋上にいるようなまばゆい光景だ。船客は首里城などの観光に出かける。私はレンタルしていたポータブルWi-Fiを返却するためコンビニへと向かう。明日から外国なので使えなくなるからだ。
 正午過ぎ、船内で出国審査が行われる。いよいよ「ル・ソレアル」は日本を離れる。

DAY 14 基隆(台湾)


 目が覚めると、「ル・ソレアル」は快晴の下、淡いエメラルドグリーンの海を順調に航行していた。昨晩時計の針を1時間戻した。今日のランチはシーフードビュッフェ。海老やカニがふんだんに振舞われ、焼き魚のグリルに特製のサルサソース。やさしい太陽の中、おいしいワインといっしょにいただいてると、少し遅めのバカンスといった気分だ。
 正午過ぎ、台北の外港、基隆港にさしかかる。ここは昔から世界一周などの客船が日本から香港への途中、寄港してきた。ターミナルは歴史があり、市街地まで歩いて行ける。
 基隆の街を歩いてみた。とても古い建物が建ち並ぶ。市場があってどこも活気がある。露店が並ぶにぎやかな道。家族連れで食事をする人たち。そうか、今日は日曜日だった。中華の点心や牛肉麺、たこ焼きの屋台まである。駄菓子屋もあって、昔子供の頃母親に連れて行ってもらった夏祭りの夜店を思い出した。どこか懐かしい光景であった。
 午後9時、基隆の夜景に包まれて、「ル・ソレアル」は最終地 香港へ向けて出港した。

DAY 15 終日クルージング


10_IMG_5394 このクルーズには、雑誌やテレビの取材陣が多数乗船している。日本にこのようなヨットスタイルのフランス船が来ることは珍しく、それ自体がちょっとしたトピックなのだ。キャプテンやホテルマネージャーへのインタビューをセッティングしたり、フランスのスキンケアブランド「ソティス」がプロデュースするスパでは、スタッフにモデルになってもらいトリートメントのシーンを撮影するなど、対応に追われた。
 終日航海日は、船内のイベントが楽しい。午後からはダンスレッスン、プールを使ってのウォータージム、ストレッチ体操など。料理教室ではトリュフのリゾット。普段の日常でトリュフを使うことはあまりないだろうが、そういう日常とかけ離れた料理教室もまた、フランス船ならではとも言える。
 早いもので、明日は香港。今宵はキャプテン主催のフェアウェルパーティーがメインラウンジで盛大に催された。フランス人クルーが勢ぞろい、キャプテンから乗船のお礼とこの後日本やフランスへの安全な帰宅を願うスピーチが述べられた。
 1週間もこの船で過ごせば、小さい船なので、船客同士がなんとなく顔見知りになる。自然とシャンパンのグラスで乾杯し、旅の思い出話に華が咲く。パーティーからディナーへと優雅な時間は流れる。
 今宵のスペシャルディナーは、フォアグラのソテー、大阪湾で獲れたヒラマサのソテー、ビーフテンダーローイン・フォアグラとトリュフのソースがけ、ホワイトチョコレートドーム・カラメルクリームに焼きりんご添えと、高級食材をふんだんに使用したゴージャスなフレンチディナーとボルドー産ワインの宴。この会社の船に乗るといつも感じ、教わることがある。それは「人生は楽しむためにあるのだ」と。

DAY 16-17 香港


09_IMG_5393 左手は香港島。金融街の高層ビルが立ち並ぶ。右手は九龍。ネーザンロードには2階建てバスが走り、ペニンシュラホテルはいつ見ても存在感がある。
 「ル・ソレアル」は無数の小船が行き交う中、九龍サイドのオーシャンターミナルへ無事接岸した。ここも世界を一周するクルーズ船の要所であり、クイーンエリザベスⅡも何度も接岸している。クルーズ船はフィリピン人クルーが多く、ここ香港でクルーの乗船・下船も行われることが多い。
 さすがに香港まで来るとけっこう暑い。紛れもないアジアの気候だ。日本人の船客にお誘いをいただき、いっしょに飲茶ランチを食べに出かけた。ネーザンロードはいろんな国の人が行き交う。香港の信号機はカタカタカタという独特な音が鳴る。その信号が青になるとたくさんの人がいっせいに歩き出す。九龍もずいぶんと変わってしまった。新しいビルがどんどん建ち並び、昔あったはずの安くて美味い麺類の店がなくなっていた。香港は今貧富の差がかつて以上に激しく、それが大きな社会問題となっている。高級スポーツカーに乗る人がいて、南国の果物をかごに載せて売り歩く行商の人がいて……。実は、その光景は昔から全然変わっていないのだが。
 フランスの新造船「ル・ソレアル」が誘う、小樽から大阪を経て香港へのクルーズ。船内やそれぞれの港で触れ合う人たちと言葉を交わし、時には感化され、ちょっとショッキングな光景を見たり、感動させられたり。その心の持ちよう、心のゆさぶられ具合が、船旅のいい所ではないだろうか。 P.B.



東山真明
海と船の旅をこよなく愛する、海外クルーズエージェント。
大型客船よりも、プライベート感ある上質な「ヨットスタイル」のクルーズにこだわり、
国内で小型船クルーズを取り扱う4社による「スモールシップ アライアンス」に加盟、その啓蒙に励む。
マーキュリートラベル代表。
■マーキュリートラベル TEL: 045-664-4268 http://www.mercury-travel.com

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text: Masaaki Higashiyama
photo: Masaaki Higashiyama
special thanks: Compagnie du Ponant
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      http://ponant.jp
[OceanStyle Perfect BOAT 2014年2月号掲載/※データは掲載時のものです]