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美食のフランス船「ル・ソレアル」-日本初寄港クルーズ〈前編〉_03
世界のクルーズシップのなかで現在最もスタイリッシュな「ル・ソレアル」。フランス船社「カンパニー・デュ・ポナン」の最新のフラッグシップである。ヨットスタイルらしくフローリング素材を使った船内、白とターコイスブルーとグレーを基調としたキャビン。そしてフランスクラシックスタイルのフレンチディナーと厳選ワインの宴、朝はハンドメイドなフレンチトーストと絞りたてオレンジジュースのブレックファーストが愉しめるプライベート感覚のクルーズ。その「ル・ソレアル」が今秋、初めて日本の海へやってきた。

DAY 1 小樽


02_IMG_5275 台風が接近する中、曇り空の小樽港に真新しいフランス船が佇んでいた。「ル・ソレアル」。フランス語で太陽を意味するソレイユからの造語である。
 「ル・ソレアル」擁するフランス船社「カンパニー・デュ・ポナン」として初の日本寄港、クルーもやや緊張した面持ちだ。私はここから乗船する日本人船客の対応のため、香港まで約2週間乗船する。朝から船に乗り込み、ホテルマネージャーやクルーズディレクターなど主要なスタッフと打合せを重ね、ゲストを迎え入れる準備を進めてゆく。
 今やクルーズは1泊1万円台から乗船できる。しかしそういった安いクルーズのサービスや食のレベルは「それなり」である。クルーズの低価格化は、クルーズへ行くことが出来る可能性を増やし、それはそれでいいことなのだが、他方「価格よりも質が大事である」との価値観を持つ人もいる。そういった諸氏が、今年の数ある日本寄港クルーズの中でこの「ル・ソレアル」を選んでくれた。
 夕方5時、船客が続々と乗船してくる。早々、ボートドリル(避難訓練)が行われる。今回はシニアの船客も多いため、日本語できっちりと説明をするよう、クルーから指示が入る。
 午後7時小樽を出港。台風が気になるところではあるが、「ル・ソレアル」の日本周遊クルーズが静かにスタートした。

DAY 2 終日クルージング


 10月16日、台風26号は太平洋を北上、ルソレアルは日本海を南下。台風の西側は比較的影響が少ないとされる。それでも5mの波は「ル・ソレアル」のデッキ3から見ると目線を超えている。
 しかし見た目の荒々しい海ほどこの船は揺れない。非常に安定している。就航後3ヶ月の新造船ゆえの最新技術が備えられているせいだろうか。事実、ロールスロイス社製のフィンスタビライザー(横揺れ防止装置)など最新のテクノロジーが搭載されている。さほど揺れていない証拠にディナーテーブルには全船客が顔を見せ、いつもの談笑と共に美食の宴が始まった。

DAY 3 金沢


06_IMG_5153 昨日の海が嘘のように穏やかな朝、「ル・ソレアル」は定刻どおり金沢港へ入った。
 やわらかな日差しのすがすがしい朝だった。「ル・ソレアル」初入港の歓迎式典には着物姿の女性が並び、遠いフランスからの船客はその姿に見とれていた。金沢は兼六園をはじめ、東茶屋街など見所がたくさんあり、伝統的な日本をフランス人船客に楽しんでもらうには日本海側ではうってつけであろう。
 夕刻の出港時、すでに暮れているにもかかわらず、たくさんの人たちが「ル・ソレアル」の出港を見送りに来てくれた。今宵はキャプテン主催のウェルカムパーティ。会場の入り口でキャプテンが一人ずつ船客を出迎える。キャプテンと船客は記念撮影に収まり、シャンペンのグラスを受け取り、席に座る。ほどなく「カナッペはいかが?」とウェイターが差し出す。ここは紛れもなく日本の海なのだが、船の中は地中海やエーゲ海と何ら変わらない、いつものフランス船の優雅な時間が流れてゆく。
 フランス人キャプテン、レミ・ジェネバス。実は小樽でキャプテンの交代があり、キャプテン・レミは、交代早々2つの台風と格闘する困難な操船を担うこととなった。しかし経験から来る勘が働くのだろう。時に静、時に動、巧みな戦術で上手く台風をかわし、結局すべての港に定刻に船を着けた。その手腕には感心するばかり。
 パーティーからフレンチディナーへと時間が流れてゆく。通常のディナーは前菜、スープ、メインディッシュ、デザートを各数種類の中から選ぶのだが、今宵は特別なキャプテンズ・ガラディナーであり、チョイスはなくセットメニューとなる。そこには、フランス人エグゼクティブシェフの「私のもっとも自信作の一皿をみなさんに食べていただきたい」との熱い思いが込められている。

07_IMG_5281 キャビアの前菜に始まり、鯛のソテー・ライムブーレソース、子牛のテンダーロイン、チョコレート&レッドフルーツのデザートと続くフレンチディナー、その水準の高さに日本の船客も唸る。人は美味しいものを食べると笑顔になり、会話が弾む。最後はエスプレッソかカプチーノで締める。圧巻のディナーに満足した後は、ピアノコンサートやダンスミュージックなどのナイトライフへと続く。
 …あらためて我に返る。今日金沢を出港し、今は境港へと向かう日本海の洋上である。しかしながら、そう、いつか乗船した南仏ニースからカンヌ、モンテカルロへとむかう洋上とまったく同じ雰囲気なのだ。一瞬ここがどこなのかわからなくなるぐらいの錯覚をおぼえる。フランス人ダンサーが踊り、モーリシャス人のウェイターがカクテルを作る。実に不思議である。

DAY 4 境港


14_IMG_5247 日本人であっても、知らない日本がたくさんある。このクルーズは日本人船客にとって、日本再発見の旅でもある。ここからは足立美術館や出雲大社へと船客が観光に出かけてゆく。私の洋上での仕事は、簡単に言えば「日本語対応」。具体的には船内新聞やディナーのメニューを毎日日本語訳し、入出国審査の案内、寄港地観光の手配、レストランやスパの予約など、様々である。秋の美しい日本を巡るクルーズではあるが、残念ながら昼間観光に出かけることは出来ない。いつかリタイアする日が来れば、そのときの楽しみに取っておこうと思う。
 朝食をカプチーノとクロワッサンで済ませようとしていたところに、ダイニングのマネージャーであるTOTOさんが話しかけてくる。彼とは昨年、姉妹船「ロストラル」でベニスからアテネへのクルーズで知り合った。
 彼の相談はフィリピンに暮らす奥さんに仕送りをしたいのだがどうすればいいか、ということだった。まず「ウェスタンユニオンバンクはこの街にあるか?」との質問。私は「この街にはないだろう。」と告げると困った表情。よほど大事な金なのだろう。私は考えて「私のPCはネットに繋げられる。ネットバンキングを使って送金しようか? ただし、私を信用できればの話だが」と提案した。すると、「是非頼む!」とのこと。数時間後、彼は私に現金700ユーロを手渡した。よし、しっかりと届けてやろう!!

DAY 5 釜山


 快晴の中、「ル・ソレアル」の眼前に都会が見えてきた。韓国最大の貿易港、釜山である。
 実は、私の最初の外国船の旅はアメリカの貨物船だった。小学校3年の時、親父に連れられ、神戸から乗船、ここ釜山へ降り立った。当時韓国は厳しい戒厳令下にあり、銃を持つ軍隊が列をなして道を行く、そんな時代だった。港に近いチャガルチ市場も今よりも貧しい建屋で、海産物の干物などが山のように並んでいた記憶がある。今や世界有数の貿易港、街には高層ビルが建ち並び、車の数も多い。
 今日は少し自由な時間が取れたため、懇意のお客様と街へ繰り出し、美味しいカルビ焼肉を堪能した。

DAY 6 終日クルージング


 昼過ぎ、「ル・ソレアル」は一列に並ぶ船隊に加わり、関門海峡を通過。思いのほか幅が狭く、海流が混ざり合うのが肉眼でも見て取れ、なかなかエキサイティングである。海峡を抜けるとそこは、美しく穏やかな瀬戸内海だった。多島海に沈む太陽、穏やかな海、ここはヨットマンにはきっと素晴らしい海に違いない。

DAY 7 広島


15_IMG_5147 美しい朝焼けの中、「ル・ソレアル」は穏やかな広島湾を静かにクルージング、宇品の東にあるクルーズ専用ターミナルへ接岸した。
 プールサイドのビュッフェでコーヒーを飲んでいるとダイニングマネージャーのTOTOさんが満面の笑顔で寄ってきて、握手を求めてきた。お金が奥さんに届いたそうである。よかった、よかった。
 私の仕事は一言で言えばクルーズのセールスである。しかしこの「ル・ソレアル」は比類なき独創的なフランス船であり、今までなかなか理解してもらえなかった。船とはある意味動く広告塔でもある。百聞は一見にしかず。各寄港地で地元の方を船内へ招いて船内見学会を行った。クルーズマーケット拡大にはこういった活動がとても大切なのだ。
 はかなくも洋上の楽しい時間はどんどん過ぎてゆく。気がつけば明日は下船日、今宵はフェアウェルパーティー&ディナーである。今宵のディナーは、マグロのたたき、フォアグラ・ハイビスカスのジュレ添え、帆立貝のソテー、ビーフステーキ・フォアグラとトリュフのソースと一層贅沢な晩餐。あらためて思う。フランス人とはなんと贅沢な人たちなのだ、と。

DAY 8 大阪


 目が覚めると「ル・ソレアル」は大阪湾に入っていた。たくさんの船が大阪港を目指してくるのが見える。港が近づくとフェリーや貨物船などがさらに増え、都会の港特有の入港シーン、それは今年3月に訪れたシンガポールの光景と重なった。
 下船日の朝もゆったりと朝食を摂り、船客は船を後にする。フランス人船客の大半はここから京都観光へと出かけてゆく。さて、あと数時間もすれば次のゲストが乗船してくる。ここ大阪から香港へ、あたらしい船旅が今日、スタートする。(次号に続く)


東山真明
海と船の旅をこよなく愛する、海外クルーズエージェント。
大型客船よりも、プライベート感ある上質な「ヨットスタイル」のクルーズにこだわり、
国内で小型船クルーズを取り扱う4社による「スモールシップ アライアンス」に加盟、その啓蒙に励む。
マーキュリートラベル代表。
■マーキュリートラベル TEL: 045-664-4268 http://www.mercury-travel.com

■問い合わせ先
 マーキュリートラベル
 TEL: 045-664-4268
 http://ponant.jp

text: Masaaki Higashiyama
photo: Masaaki Higashiyama
special thanks: Compagnie du Ponant
Mercury Travel
      http://ponant.jp
[OceanStyle Perfect BOAT 2014年1月号掲載/※データは掲載時のものです]