01_0516-Monaco2_LeBoreal-218cruise8_H1_03
Day 3 カンヌ – モンテカルロ

03_0515-Monaco_LeBoreal-1016 未明にカンヌを出たル・ボレアルは、朝7時モナコ・モンテカルロの沖合いにアンカーを下ろした。
 自動車レースの最高峰、フォーミュラワン。世界中を転戦する中でも最も華やかで格調高い「モナコグランプリ」がここで開催される。普通の市街地道路がサーキットに変貌する。
 船内新聞でグランプリのスケジュールをチェックしていると、市街地の方からとてつもなく大きなエンジン音が船にまで聞こえてくる。AM7:45、1回目のフリー走行が始まった。何だか血が騒ぐ。これはもう船を降りずにはいられない。朝食もそこそこにテンダーに乗り移り、モンテカルロ湾に隣接したプライベートヨットのパブリックピアに到着。ここからグランプリを観戦するパノラマビルを目指すも、すでにグランプリ予選が始まっているため、いたるところで道路が遮断されている。トラックの下を抜けるトンネルを歩いていると、爆音を轟かせてマシンが通過した。あきれるほど音がデカい。そして風圧がトラックの壁にぶち当たって、バシッ、バシッと音がする。その音でただならぬスピードで疾走していることがわかる。率直な感想、「こんな普通の街中でそんなに飛ばしたら危ないじゃないか!!」。
 ようやくパノラマビルに到着。厳重に警備されたビル、1階の警備員にパスを見せ、恐る恐るエレベーターで上がり、指定されたアパートメントのチャイムを鳴らす。すぐに中から、あのときニースのホテルでチケットを売ってくれた女性と、部屋のオーナーが笑顔で迎えてくれた。
 テラスでは、すでに親子連れや男同士の友人などが観戦している。場所は、スタート直後の第1コーナー、サンデボーテ付近。ここから坂を上り、オテルドパリのコーナーへ差し掛かるところが見れる。
 今、レッドブルの車が速い。速い車は得てして形も美しくエンジン音も力強い。このサンデボーテからの坂道はどんどんシフトを上げて加速していくので、そのエンジン音の吹け上がるサウンドが聴ける。私のお目当ては、同年代で先ごろF1に復帰したミハエル・シューマッハ。圧倒的に強かったあの男が帰ってきた。しかし歳は40を過ぎている。どんな走りを見せてくれるのか楽しみである。
 正午、午前の予選が終わり、街が静かになる。モンテカルロの街を散策してみる。少し歩いてみるだけでこの街の特異性がわかる。例えば不動産会社の物件情報には、円換算で10億以上しかない。また、なんと言えばいいのか、まぁ言うなれば飛行機屋さん。小型機から超大型旅客機まで様々なプライベートジェットを販売、値段は高すぎて忘れた。ホテルでお茶を飲むにも、グランプリ中は、関係者や宿泊者以外は入ることも許されない。ちなみに宿泊は1週間単位の販売でとてつもなく高く、食事はつかない。だからモナコグランプリを観戦するなら、ぜったいにクルーズ船で訪れることをお薦めしたい。
 PM7:30、船内のラウンジにてキャプテン主催のカクテルパーティーが催された。その最中ふと我に返った。
10_0516-Monaco2_LeBoreal-090 「モナコの沖合いで、クルーズ船上で、カクテルパーティー?」、つまり日本人としては普段の生活であり得ないシチュエーションの3連発だったのだ。ややもすれば気後れしかねない。しかし昨晩ディナーを共にした仲間が気軽に声をかけてくれる。気後れは一瞬のことで、すぐに楽しい輪に溶け込み、今日の予選の話題に華が咲いた。
 ル・ボレアルは船客260名の小型船、人と人の“距離感”が絶妙なのだ。近すぎず、遠すぎず。ふと隣の人に話しかけやすく、話しかけられやすい。船客の半分を占めるフランス人は英語を話せない人もいるが、小さな船なので何度も出くわすうちに、自然に友達になっている。身振り手振りと筆談でいつしか楽しくやっていける。そして酒をおごられたり、シガーを勧められたり……。
 パーティーのゲストはそのまま、美食のフレンチディナーへと流れていく。
 カリフラワーのムース・キャビア添え、ロブスターのサラダ、ジョンドーリー(まとう鯛)のポワレなど、船上の食事とは思えない繊細なフレンチの数々と素晴らしいセレクションのワインをいただきながら、“会話”を楽しむ。
 クルーズ中のディナーテーブル、外国の方とどんな会話をすればいいのか、英会話学校の先生に尋ねたことがある。その先生の答えは、「今日一日あった出来事などを報告しあう。また、相手に聴きたいことをまず自分から披露する。まぁ、あたりさわりのない内容がいい」とのことだった。
 たぶんそれは日本人船客との会話でも同じことが言えるだろう。時々、質問攻めに会うことがある。「お住まいは?」、「お勤めは?」、「ご結婚は?」、「お子様は?」、そして遠巻きに「年収は?」と聞かれているような気がするときもある。また反対に喋りっぱなしの人もいる。皆悪気はない。ただ会話を作るということは難しいということなのだろう。
 今宵のディナー、どこかで会ったような……、という背の高い青い目の女性とご一緒した。話してみれば、約1年前この船と同じカンパニー・デュ・ポナン社の「ル・レバン」という船で、ニースからローマまでご一緒したデンマークの方だった。こうして船上ではどんどん友達が増えて、また思いがけず次の船旅でばったりと出くわすことがある。それがまた楽しい。
 さぁ、明日はグランプリ決勝。ガンバレ、ミハエル。そして、ガンバレ! 小林可夢偉。

Day 4 モンテカルロ

02_0516-Monaco2_LeBoreal-103 朝食は、プールサイドのオープンデッキでいただいた。ビュッフェスタイルなので好きなものを取ってきて、好きな場所で食べられる。このクルーズにはポナン社のCEO ジャン・エマニュエル・サーヴが乗船している。彼は船客には笑顔を絶やさないが、厳しい視線でクルーの働きぶりや船内の雰囲気をチェックしている。
 朝食を食べながら今日の船内新聞に目を通す。昨日の予選の結果が載っている。やはりレッドブルが1位、それにルノー、フェラーリと続く。ベテランのミハエル・シューマッハと新人ニコ・ロズベルグ擁するメルセデスグランプリは6位、7位とやや冴えない。小林のザウバーは16位に沈んだ。ここモナコ・モンテカルロでは予選の順位がとても大切、とにかく抜きどころがないのだ。
 今日もテンダーに乗ってモンテカルロへ通う。パノラマビルへの道はバッチリだ。すいすいとたどり着く。
 アパートメントのテラスにはオードブルやワインが用意されていた。これらをいただきながら優雅にグランプリを観戦する。スシ詰め状態の観戦席とは比べ物にならないほど快適で優雅。ここから観戦できるチケット、1,000ユーロは高いけど安いと感じる。
 PM2:00、78周にもおよぶ決勝がスタート。アパート眼下の第1コーナー、まずはマクラーレンのジェンソン・バトンがやらかした。3周目でオーバーヒートし、エンジンから白煙が上がる。その横を縫うように高速で他車が追い抜いていく。この混乱に乗じてステップアップした車もいる。周回を重ねるごとにレッドブルの2台が見る見る後続を引き離していく。フェラーリのフェリペ・マッサがなんとか食らい付く。シューマッハは前の車との差を縮められない。F1は車の性能に依存するところが大きいスポーツだが、彼の全盛期、明らかに劣っている車でガンガン追い抜くのを何度も見てきただけに、「やっぱり、歳には勝てないのか?」と思ってしまう。結局グランプリは、レッドブルのマーク・ウェバーが勝利、アルバート大公からの祝福を受けた。
 PM7:00、トラックは一般に開放され、自動車が普通に走り出し、モンテカルロの街はいつものように穏やかなリゾート地に戻っていった。

 カンパニー・デュ・ポナン社の船旅は「ヨットスタイル」というジャンルに属する。ヨットスタイルの船旅とは、あたかも自身が豪華クルーザーのオーナーであるかのような贅沢な船旅。それは、よりアウトドア志向で、よりアクティブ、それでいてエレガントな船旅。フレンチシップでカンヌ映画祭とF1モナコグランプリを巡る旅、これは極めて特殊な、世界中で最も華やか、かつゴージャスなクルーズである。まさに……、夢のような旅だった。


06_0516-Monaco2_LeBoreal-246 13_0514-Sant-Ropez_LeBoreal-138-1 14_0516-Monaco_LeBoreal-056

東山真明
海と船の旅をこよなく愛する、海外クルーズエージェント。
大型客船よりも、プライベート感ある上質な「ヨットスタイル」のクルーズにこだわり、
国内で小型船クルーズを取り扱う4社による「スモールシップ アライアンス」に加盟、その啓蒙に励む。
マーキュリートラベル代表。
■マーキュリートラベル TEL: 045-664-4268 http://www.mercury-travel.com

■問い合わせ先
 マーキュリートラベル
 TEL: 045-664-4268
 http://ponant.jp

text: Masaaki Higashiyama
photo: Masaaki Higashiyama
special thanks: Compagnie du Ponant
OceanStyle Perfect BOAT 2012年6月号掲載/※データは掲載時のものです]