北イタリア、トスカーナ地方の中心都市フィレンツェは、「天井のない美術館」と称されている。多くの芸術家を輩出したルネッサンス発祥の地であり、訪れる多くの人々を魅了してやまない、まさに芸術の宝庫の街だ。この街に、そんなイタリアの魅力である“人”と“美しいもの”との程よい距離感に浸ることのできるハイダウェイ・リゾートがあった。

ルネサンスの都Firenze
1320年生まれの貴族の館

 イタリアには、どの街にも必ず人が集まる場所、Piazza(広場)がある。街の中心にあることが多いため、人々の足は自然と広場へと向かう。その広場の中心には大概、街の人たち自慢の美しい教会があり、そこで毎日神に感謝と祈りをささげる。そうして、自分よりも大きなものの存在を日々感じ、大切にしながら毎日を暮らしている。イタリアには、そんな“人”と“美しいもの”を愛でる文化が、悠久の時を刻みながら、今日に至るまで日々の暮らしに根付いている。

 フィレンツェの中心地から北東方向に、トスカーナの起伏が続くフィエゾーレの森まで車で走ること約20分、美しいフィレンツェの街並を一望できる丘に、「IL SALVIATINO(イル・サルヴィアティーノ)」はある。ゲートをくぐると、そこは約11ヘクタールという広大な敷地。そこに、まるで15世紀の貴族の邸宅を思わせる静謐な別世界が佇み、訪れるゲストを異空間へといざなう。

 たしかに、イル・サルヴィアティーノの歴史は1320年にまでさかのぼる。館は時代とともに持ち主を変えながらも、常に貴族の社交場であったという。16世紀にはフィレンツェのウール業界で傑出した成功を収めていたサルヴィアティ家が取得。その後長きに渡り、芸術家など知的階級の貴族が集う、まさに文化人の社交の場であった。

 そして2007年、国際的に活躍するホテリエ、マルチェロ・ビゴッツォ氏との幸運な出会いをきっかけに2年の年月をかけた大改装が行われ、2010年4月に万を侍してホテルオープンを迎える。イル・サルヴィアティーノはまさに、ビゴッツォ氏自身の数々の経験をもとに「こういうサービスを実現したい」と熱望する内容を実現したホテルなのだ。そこには、ゲストが快適に滞在を過ごすためのさり気ない配慮がそこかしこにあった。

“美しいもの”に満たされたホテル
計算しつくされた“ホスピタリティ”


 重厚な扉の内部へ進む。まず、驚いたのが到着時のゲストへのアプローチだ。入り口を入ると通常のホテルのようなレセプションデスクは存在せず、中世を思わせる重厚なウッドパネルが施されたライブラリーに通される。リラクシングジャズが流れるなか、ゲストは思い思いのテーブルでチェックイン。まるで個人の邸宅に招かれたようなパーソナルな歓迎に期待感が広がる。

 従来のバトラーサービスに替わるワンランク上のサービスを目指して設けられた“サービスアンバサダー”は約40名。彼らはみな、分野は様々ながらもトスカーナ地方をこよなく愛し、ホスピタリティ業界での豊富な知識と経験を有するスペシャリストたちだ。客室のファシリティから、食事やスパの手配などはもちろんのこと、パーソナルショッピング、美術館巡りプライベートツアーの同行、そしてイタリアが誇る名車フェラーリのレンタルアレンジなど、ゲストのあらゆる要望に対してきめ細やかに応えてくれる。その完璧な対応とさりげない配慮に、上質なホスピタリティを見出すことができる。

 49ある部屋はすべてスイートタイプ。天井は高く、重厚感のあるマホガニーの木目が色彩の基調となる。しかもミラーの中に設置されたプラズマTVなど、クラシックな雰囲気のなかにも最新の設備が揃っている。リネンはトスカーナの地元ブランド、アメニティのシャンプーなども全てトスカーナ産のオーガニックオリーブを原料とするこだわりの品だ。キャンドルライトに照らされた階段などのパブリックスペース、スイートルームの天井にあるフレスコ画(15世紀に描かれたもの!)など、いたる所にオーナーの“美しいもの”へのこだわりを感じることができる。

 もちろん、食事でも、フィレンツェの街並みを眺めながらの美食体験を堪能できる。フィレンツェ出身のエグゼクティブ・シェフ、サヴェリオ・スバラグリ氏はトスカーナ料理の巨匠としても有名。オールディダイニングの「ラ・テラッザ ラウンジバー&レストラン」でその腕前を堪能したい。

 最後に、イル・サルヴィアティーノに来て忘れてはならないのがスパだ。数々の受賞歴に輝く「タイ・スパ・テワラン」がアジア以外で初の展開をイル・サルヴィアティーノで果たした。熟練のタイ人セラピストによるシグネチャートリートメントは、タイ式マッサージ、アユールヴェーダ、指圧、スウェーデン式、アロマセラピーを独自にミックス。体の奥から丁寧に解きほぐしてくれ、体内からの真のリラックス効果をもたらしてくれる。

 イル・サルヴィアティーノを訪れたゲストだけが堪能できる、すべてが計算された“美しさ”と、サービスアンバサダーによる心からの“ホスピタリティ”。それは、ここイタリア独特の突き抜けるような空の青さや、眩しい太陽の光、豊かな緑、美しい景観とあいまって、心地よい距離感のあるくつろぎをもたらす。だからこそ、訪れる人の心を、真に開放してくれるのだろう。
 人は開放感を味わったときに、素直になれる。感性が鋭くなることで、非日常の中から新たなインスピレーションが生まれる。そしてそれはきっと、“非日常”の空間から“日常”に戻る際の、生きるヒントへとつながっていくことだろう。

text: Mine Nakao
photo: IL SALVIATINO, Hiro Matsui, Mine Nakao
[OceanStyle Perfect BOAT 2012年11月号掲載/※データは掲載時のものです]


■問い合わせ先
 IL SALVIATINO
 Via del Salviatino 21, Florence, 50137, Italy
 Tel: +39-055-901-111
 URL: http://www.salviatino.com