「ラグジュアリークラス」と呼ばれるクルーズがある。意味するところはまさに、「最高峰の船旅」。その最高峰のさらに頂点に君臨するのが、米国マイアミに本社を置く「シードリーム・ヨットクラブ」である。同社のキャッチフレーズは、「It’s Yachting not Cruising」。数千人が乗船する大型船のクルーズとは全く異なることを、強く主張する。今回乗船する「シードリームⅠ」は総トン数4,300トン。クルーズ船としてはきわめて小さく、船客112名に対しクルー95名という贅沢な比率で、最高峰のホスピタリティを提供してくれる。

ヨットオーナーが選ぶクルーズ「シードリーム・ヨットクラブ」

 ニースからTGVで西へ30分、南仏随一のリゾート地カンヌへ到着。もうすぐ映画祭が始まるため、街はその準備に追われていた。さらにこれから始まるバカンスシーズンに向け、ショッピング街の店々は競うようにディスプレイを美しく飾っている。
 ラグジュアリークラス・クルーズの、その中でもさらにNo.1と言われる「シードリーム・ヨットクラブ」。その船客には、他のクルーズ船とは明らかに違う興味深い特徴がある。それは実際に、大型ボートから、スーパーヨット、メガヨットまで、自らヨットを所有するオーナーが多いということである。
 それはなぜか? 例えば日本でボートやセイルボートを所有している読者諸氏が、それを地中海まで運んでクルージングとなれば大変なコストと時間を要するであろう。それは北米のヨットオーナーにとっても同じ訳で、いわば自身が所有するヨット代わりに、4,300トンのメガヨット「シードリームⅠ」に乗船するのである。
 そして一度シードリームに乗ってしまえば、そこにはファイブスターのサービスが用意されている。高級食材をふんだんに使った美食に、アルコールを含むドリンクも無料。すべての代金はクルーズ代金に含まれており、ウォータースキーやカヤックなどのマリンスポーツもまるで自分のヨットで遊ぶようにどこまでも自由。だから最高の休日を洋上で過ごすことが出来る。そしてクルーズ船にはつきもののフォーマルナイトもないので、タキシードやカクテルドレスなども不要だ。

Day1 カンヌ(フランス)

 カンヌの街に面したマリーナからテンダーボートに乗り込む。防波堤を越えると、きらめくコートダジュールの海にシードリームⅠが停泊していた。船内に足を踏み入れると、ホテルマネージャーが笑顔で迎えてくれる。そして初対面なのにすべてのクルーが私をファーストネームで呼んでくれる。どうやらマイアミ本社からすべての情報が伝わっているようだ。
 レセプションで簡単な手続きを済ませ、ほどなくキャビンへ案内される。約18平米のヨットクラブステートルームでも、リビングエリアとベッドルームがあり十分な快適さ。シャンプーや石鹸などはブルガリ製、クローゼットには上質なコットンのバスローブとスリッパ、そして驚きは、私のファーストネームが刺繍されたパジャマ! しかも、なぜかサイズもぴったり!! 後に何人か、いろいろな身長の船客にパジャマのことを尋ねたところ、全員ジャストサイズとのこと。もちろん、クルーズの予約時に身長などは告げていないのだが……。なんとも不思議である。
 ひと眠りし、夕刻、デッキ6のバーへ。心地よい自然の風が入ってくるヨットらしいスペース。毎夕ここにカクテルとオードブルが用意され、船客同士の語らいの場となる。カナダからのご夫妻にこれまでの感想を伺うと「大型船の雑なサービスに飽きて思い切ってこの小さな船を選んでみたが、すばらしい食事と酒、惜しみないホスピタリティに大満足。これからの船旅はすべてこの会社でいいと思っている」とのこと。またある若いご夫婦に話しかけてみたところ、ニューヨークはマンハッタン在住で、ハネムーン乗船中であるとのこと。ソフィーマルソー似のとてもチャーミングな奥様とIT企業にお勤めのご主人、スマートライフ世代を絵に描いたようなお二人にこの船はとても似合っている。
 暮れかかるころ、デッキ2のメインダイニングへ。入り口でメートルディー(ダイニングの責任者)が出迎えてくれる。今宵のディナーは、ビーフのタルタルに始まり、少しスパイシーなトマトスープ、オッソブッコ(子牛すね肉の煮込み)を注文。食べ進めるうちに「おいおい、これは大変なことになってきたぞ!」と自分自身が興奮していくのがわかる。ワインも素晴らしい。木樽で熟成させたソーヴィニヨンブラン、豊かなピノノワールから生まれた赤。これらはクルーズ代金に含まれるのだが、船客の中にはさらに有料のビンテージワインを注文している方もかなり見かける。

Day2 カルヴィ・コルシカ島(フランス)

翌朝の朝食はデッキで。お薦めはと尋ねると、「パワーアメリカンならミニッツステーキですよ。そして絶対にA1ソースと一緒に!」と。[/caption] シードリームⅠは穏やかな夜の航海を経てフレンチウォーターを南へ、コルシカ島を目指す。
 正午、コルシカ島のカルヴィに到着。港の上には城壁が広がりその土壁と青空のコントラストがとても美しい。ほどなくシードリーム・ヨットクラブ名物のイベント「シャンペン&キャビアスプラッシュ」がプールサイドで行われた。シャンペン飲み放題、キャビア食べ放題という、実にゴージャスなイベントである。
 やがて陽は落ち、今宵も美食ディナーを堪能した後、自身洋上で初めてブラックジャックのテーブルにつく。
 始めはディーラーの女性と一対一。相手の裏を読み、ときに裏の裏を読む。その駆け引きが続く。隣の席に一人あらわれる。別の緊張感が生まれる。ビギナーズラックなのか、私のチップが倍に増えた。時に勝負と思えばチップの枚数を増やし、今は我慢のときと思えば少ないチップで負け試合を凌いで次のチャンスを待つ。
 ギャンブルで勝とうなんて気を起こさない方がいい。ちょっとお遊び程度で駆け引きを楽しむ程度でいい、と奇麗事を言いながらも、部屋に持って帰ったチップを換金するか、明日もやるか、思案しながらベッドに入る。(以下、次号に続く)

text: Masaaki Higashiyama
photo: Masaaki Higashiyama
special thanks: SeaDream Yacht Club
[OceanStyle Perfect BOAT 2012年8月号掲載/※データは掲載時のものです]

東山真明
海と船の旅をこよなく愛する、海外クルーズエージェント。
大型客船よりも、プライベート感ある上質な「ヨットスタイル」のクルーズにこだわり、
国内で小型船クルーズを取り扱う4社による「スモールシップ アライアンス」に加盟、その啓蒙に励む。
マーキュリートラベル代表。
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