「CRANCHI T43」のTはTrawlerの頭文字。「T40」「T43」「T53」の3モデルをラインナップするCRANCHIの人気ラインTrawler Collectionのこと。
CRANCHIが提案するトローラーは「ECO Trawler」として明確な特徴を見せてくれる。



モダンクラシカルなフォルムとエクステリアに、シンプルで上質なインテリア
43フィートにして3キャビンを誇る、「Eco Trawler」という名の新世代ファミリークルーザー


 Trawler(トローラー)とは本来、伝統的な漁船やタグボートなどプロユースのボートからインスパイアされたデザインで、波に強く燃費が良い排水型のボトムに豪華で快適なインテリアを備えたクルージングボートのことを指していた。排水型のボトムは10ノット前後のスピードだが、燃料消費量は少なく、1,000マイル以上のロングレンジを可能にした。大西洋を横断できるトローラーも現れ、トローラーは長距離航海に向くPassage Makerとしても知られるようになった。
 また、長期間の船上生活を快適にするための、チークをふんだんに使った快適なインテリアも特徴の一つ。そのため、トローラーの外観でも走りでもなく、インテリアを見て購入を決め、洋上の別荘としてマリーナライフを楽しむ人も多い。北米のインサイドパッセージでは、リタイアした老夫婦がクルージングに好んで使い、憧れのボートとして知られている。トローラーは、時間にゆとりのあるクルージング派や秘境を航海するエクスプローラーに愛されてきたのだ。
 その後、人気は世界に広がり、「トローラー」=「クラシカルなスタイリング、波に強い、低燃費、ロングレンジ、木を多用した重厚なインテリア、艇速は遅い」というイメージが定着した。その北米中心のトローラーに対抗して、ヨーロッパビルダーが新たなトローラーを建造。デザインはモダンクラシカル。地中海的な明るく快適なインテリアと、ヨーロッパでは必須の日光浴をするためのエクステリアが取り入れられた。低速では排水型のような走りをする半滑走型のボトムデザインに、北米のトローラーほどは重くない船体。トップスピードは20ノットを超え、「ファストトローラー」として発表。トラディショナルなトローラーともサロンクルーザーとも違う、新しい魅力に溢れたデザインは、ヨーロッパのカスタマーを虜にした。
 そして、ヨーロッパの影響を受けた北米のトローラーも20ノット以上のスピードを出すようになる。エコロジーな時代背景もあり、低燃費を特徴とする「エコトローラー」や「ロングレンジトローラー」として多くのビルダーがニューモデルを発表。低燃費で、波に強く、低速での安定性が高いボトムデザインを持つ新世代のトローラーは、どこかクラシカルなのにモダンというエッジの効いたデザインが世界的に人気を集めている。その流れから生まれたコレクション、それが「CRANCHI」のTrawler Collectionというわけだ。



 「CRANCHI T43」の特徴は、キールを持つボトムデザイン。幅およそ100mm、高さは最も高いところで120mmのキールが、バウからドライブの手前まで伸びている。チャインのエッジ部分は少し盛り上がり、水を掴む。キールは直進安定性と波切りのために。そしてチャインは低速や停泊時のローリングを抑える役目も果たす。最新のボトムデザインに、43フッターにしては小排気量の330馬力 2基を搭載。高効率のVOLVO PENTA IPS450が、走りと低燃費を実現する。
 逗子マリーナのメイン桟橋からジョイスティックを操作し離岸する。キールの抵抗を受ける「T43」は、ゆっくりと離岸し、横流れは少ない。リバースチャインがローリングを最小に抑え、安定した移動をみせる。
 航路を出てスロットルを倒し加速する。エンジン音、排気音は静か、振動もフライブリッジではほとんど感じられない。風切り音や波の音にかき消される程だ。艇速は1,000回転で5.2ノット、2,000回転では8.6ノット。この時の消費燃料は36L/h。トルク感はないが、ハンプもせず、抵抗の少ないボトムデザインにより加速はスムーズ。柔らかく心地よい走り。ふわふわした浮遊感やソフトな波当たりは他には無い感覚。2,500回転で10.6ノット。3,000回転で13.8ノット。3,000~3,200回転 15~16ノットが通常のクルージングスピード。そして、MAXは3,500回転で21.5ノットを記録した。エコを優先させると10ノット程度で走りたいところ。いざとなれば20ノットで走ることもできる安心感もある。
 マイルドなハンドリングを楽しみながら20ノットでマニューバを描く。IPS独特のクイックな旋回はない。バンクも控えめ。だからと言って、オールドスタイルのキールボートのように逆バンクするわけでもない。スピードに相応しい緩やかなレスポンスで、イメージ通りに旋回する。



 繊細なボトムに対して、エクステリアの特徴はわかりやすい。スクエアでストレートなラインの組み合わせ。スターンからバウに向かい、ブルワークがストレートに高くなっていく。そして、四角い箱を置いたようなキャビン。フロントウィンドシールドも、サイドウィンドウもほぼ垂直。フライブリッジとの境目となるイーブスもストレートで水平。
 スクエアで広大なスイミングステップは昇降式。トランサムドアからアフトデッキへエントリー。定番のL字ソファには、専用ラックに収まる折りたたみ式のテーブルがマッチする。
 クランキ独特のチーク製ステップからフライブリッジに上がる。クラス最大、ビームいっぱいのフライブリッジは43フィートとは思えない広さ。フライブリッジ前方、ポート側にはヘルムステーション。そのすぐ後ろにはBBQグリルとシンクを備えたウェットバー。スターボードサイドには、6人が座れるU字ソファ。スターン側には広々としたサンベッド。ヘルムステーション前方のルーフには、「エコトローラー」らしくソーラーパネルを設置することもできる。
 バウデッキも充実。バウエリア全面を利用した2人掛けのソファと2人分のサンベッドが、ドッグハウスを覆う。スクエアなデザインがクラスを超えたエクステリアを可能にした。



 キャビンスペースもクラス最大。窓や壁は垂直でスクエア。窓も大きく開放的で、陸のエクステリアやインテリアに近い。レイアウトは、人気のアフトギャレー。アフトデッキ側のリアウィンドウは、跳ね上げるとカウンターとなる。2口のコンロに丸型のシンク、オーブンレンジのほか、扉を開けるとシャンパングラスやエスプレッソカップ、スプーンやフォークなど6人分のテーブルウェアが安全に収納されている。ポート側には4人が座ることができるU字ソファ。ギャレーの前方、スターボード側にヘルムステーション。ヘルムステーションの左側には、長距離航海には欠かせないクルージングガイドやチャートを収納するための専用ロッカー。蓋を閉めれば、その上がチャートテーブルとなる。
 アコモデーションもクラスを超える3キャビン。バウバースはマスターステートルーム。直立したステムとステム近くまでボリュームを残したバウバースは広く開放的。ダブルのアイランドベッドに大型のハンギングロッカー。左右のシービューウィンドウとトップライトにより、明るく快適な空間。専用のトイレや独立したシャワーブースも広くゆったりしている。ロアーキャビン後方のミジップはセンターで2つに分けられたゲストルーム。一つはツインのゲストキャビン。もう一つは収納の多いゆとりのシングルキャビン。2部屋兼用のゲスト用トイレとシャワーブースも広く明るい。その他、左右対称の2つのツインゲストルームバージョンや、ミジップ全面を使いアイランドスタイルのダブルベッド1つを横向きに設置し、マスターステートルームかVIPルームとして使う2キャビンバージョンも選ぶことができる。何れにしても43フィートとは思えない広い空間と贅沢な造りだ。
 明るくモダンな地中海スタイルのエコトローラー。スクエアなデザインはカッティングエッジなデザインだけでなくスペース効率も高い。長い水線長やクラスを超えた広いキャビンスペースを可能にする。そして、最新のボトムデザインとコンパクトでエコなエンジンが、スムーズな走りと低燃費を実現する。「CRANCHI」の建造するエコトローラーが、トローラーの未来を切り開く。 P.B.




CRANCHI T43 Eco Trawler
全長 13.80 m
全幅 4.37 m
喫水 0.90 m
重量 13.7 ton
エンジン 2× VOLVO PENTA D6 IPS450
最高出力 2× 330 HP
燃料タンク 1,450 L
清水タンク 540 L
■問い合わせ先
リビエラリゾート 逗子マリーナ  
TEL: 0467-24-1000
www.riviera-r.jp/zushi-marina/


text: Yoshinari Furuya
photo: Makoto Yamada
special thanks: RIVIERA ZUSHI MARINA   
www.riviera-r.jp/zushi-marina/
[Perfect BOAT 2018年1月号掲載/]/※データは掲載時のものです]