北米のクルージングヨットの中でも特別なパッセージメーカーとしてリスペクトされる「FLEMING YACHTS(フレミング)」。その最新のモデル「FLEMING 58」が日本に初上陸を果たした。2010年、創業25周年の節目に発表された「FLEMING 58」は、「55」「75」「65」に次ぐ4番目に投入された新しいモデル。200艇をはるかに超える「FLEMING 55」の建造経験を生かし、カスタマーのニーズから生まれた58フッター。「FLEMING 58」に与えられたのは、先進のセミディスプレイスメント・ハル。その進化、「FLEMING 58」の魅力に迫る。



古典的な外観に、新設計のセミディスプレイスメント・ハル
トラブルを想定し、バックアップや冗長性が徹底的に対策された最新のエンジニアリング
類まれな木工の美しい造作を誇る、ロングレンジ航海を前提とした珠玉の Passagemaker


 「FLEMING YACHTS(フレミング)」の歴史は、1985年の50フッター建造から始まる。創業者であり元 American Marine のエンジニアだった Tony Fleming と彼のビジネスパートナーは、当初は55フィートを造ろうとしたが最終的に50フィートに変更。完成したそのボートは、後の「53」「55」によく似ていたという。

 桟橋に係留された「FLEMING 58」の美しい姿。白く輝く船体と、バウの先端からレーダーアーチ、キャビンからトランサムまで、細部にわたり均整のとれたスタイリング。まるで湖畔に浮かび、羽を休める白鳥のような佇まいで、我々を迎え入れてくれた。
 美しい「FLEMING 58」。FLEMING YACHTS のデザインチームを支援し、その基本設計を担ったのは、1909年創業、100年以上の歴史を誇る 豪ブリスベンのナーバルアーキテクト「Norman Wright and Sons」。船体設計とタンク試験に特化し、セミディスプレイスメントのパッセージメーカーを数多く設計してきた実績を持つ。この「FLEMING 58」開発のために、最新の3DモデリングとCADを使い、12分の1スケールモデルを構築。タスマニアにあるオーストラリアン・マリタイム・カレッジでタンク試験を行い、シーワージーやマニューバビリティの高い、新設計のセミディスプレイスメント・ハルを完成させた。
 「FLEMING 58」の最大の特徴は、このチャインの無いセミディスプレイスメント・ハル。排水型のロングレンジトローラーのように9ノット以下で走れば、1時間あたりの燃料消費量は20~30リットル以下。標準の5,488リットルの燃料タンク容量で1,500マイル以上のロングレンジを誇る。横浜~小笠原諸島・父島を無給油で往復することができる計算だ。そして、完全なディスプレイスメント・モデルと違うところは、16~20ノットのスピードも出すことができるところ。天候悪化を回避し、転流の時間やゲートの開閉時間、寄港地の入港時間など調整する幅が広くなる。燃費だけではなくスピードも、クルージング・ヨットにとって、重要な安全性能の一つだ。
 ポンツーンに横付けされた「FLEMING 58」。アフトデッキに近いサイドゲートから乗船する。アフトデッキと同じ高さで開くサイドゲートは、低めのポンツーンからの乗り降りが容易にできる。そしてもう一つ。バウ寄り、コックピットのサイドスライドドアから出てすぐ目の前にもサイドゲート。ライズドコックピットと同じ高さのポルチュギス・デッキ(portuguese deck)に備わるゲートは、水面から高さのある大型ポンツーンや岸壁への上陸を容易にする。コックピットとの動線も最短。ショートハンドでの岸壁への係留作業もスムーズに行うことができる。高さの違うゲートにより、着岸場所を選ばない。初めて訪れる泊地への入港も安心だ。



 アフトデッキはルーフで覆われ、雨や日差しを遮り快適なアウトドアリビング。全てのデッキにはチークが貼られ、ブルワークにも32mm厚の無垢のチークが贅沢に使われクラシカルで機能的。サイドデッキをバウに向かう。ハル側の壁には、大型で丈夫なムアリングホールが左右各6箇所、その横には長さ370mmの大型クリート。この磨きこまれたクリートは左右それぞれに10箇所設置され、係留状況で使い分けることができる。チークデッキはミジップから高くなり、ライズドコックピットを囲むようにポルチュギス・デッキが続く。素早く安全に反対の舷に移動できるメリットは大きい。
 フォアデッキに降りるゲートは中央ではなく、左右の2箇所。荒天時も安全にフォアデッキにアクセスすることができる。中央にはフォアキャビンのスカイライトハッチを備えたドッグハウス。ドッグハウスはキャビンの高さを確保するためではなく、物入れを確保するためのもの。ドレン付きの4箇所のロッカーには、ムアリングロープやフェンダーなど、ウェットなものを整理できる。これもロングクルージングに必要なエクステリアだ。バウの先端にはワイドなバウスプリット。セカンドアンカーを含む2つのULTRAアンカーは、それぞれにウィンドラスが搭載されている。それは、同じ重さのアンカーというだけではなく、同じ大きさのウィンドラスに、同じチェーンが搭載され、クルージング先でのアンカートラブルをバックアップ。重要な装備は、トラブルを想定し2組用意する。それが、FLEMING のスタンダードであり、創業者 Tony のフィロソフィーでもある。



 観音開きのキャビンドアを大きく開く。壁やキャビネット、テーブル、ソファ、カウンターやギャレーなど、ファブリックや天井以外は、明るい色目のチークで覆われ、樹脂はどこにも見当たらない、上質で落ち着いた雰囲気のメインサロンが現れる。ポート側には4人がゆったりと座ることができるL字のソファ。目の前には、大型テーブル。スターボード側にもソファ。その奥は、カウンターでサロンと区切られた大型のギャレー。コンロやオーブンはMIELE、マイクロウェーブや大型のリフリジェレーターはGE、アメリカの広いキッチンで使われている一流品が揃えられている。
 カタログなどに見る FLEMING のモデルより明るい印象のインテリアは、この「58」だけのビスポーク。カウンタートップやファブリック、センターテーブルは、現代的な明るいオフホワイト。インテリアデザインは、オーナーの友人でありブルーボトルコーヒーの店舗デザイン等でも知られる建築家、「スキーマ建築計画」の長坂常 氏による。”Special Edition Interior by Jo Nagasaka”、重厚すぎず華美でもない、日本人好みのシンプルさとトレンドがさりげなく取り入れられた清涼感のあるインテリアに仕上がっている。
 サロンの前方には、ギャレーの壁で仕切られたライズドコックピット。くつろぎのサロンを完全に分けることで、機能が優先された使いやすい操縦席が生まれた。ライズドコックピットの特徴は、前方の視認性が良いこと。さらにパイロットシート1脚をセンターに設置することで、揺れも少なく左右の視認性も良い。コックピット全面を使ったコンソールは、大型モニターディスプレイを中心に、計器類も見やすいレイアウト。パイロットシート後方には、ナビゲーターやパッセンジャーが座るためのL字ソファが備わり、ヘルムシートに合わせた高いアイポイントでワッチにも良い。そしてスターボード側には、デイヘッド(トイレ)。シングルハンドやショートハンドのロングクルージングには欲しい装備の一つだ。



 ライズドコックピットから後方にステップを上がるとフライブリッジ。すぐ右、ポートサイドにヘルムステーション。ヘルムシートはStiddの2人掛け。インサイドパッセージやアーキペラゴのフラットな海面をクルージングする時には、展望デッキに早変わり。フライブリッジから見える風景やそこに棲む生き物達を観察することは、クルージングの楽しみの一つである。フライブリッジのラウンジソファの後方には、定番のBBQグリル。スターン寄りのルーフトップにはテンダーを積むことができる。クレーンの能力は1,000ポンド、およそ450kgのパワーで、テンダーを揚げ下げする。そして、ポート側のコーナーには、アフト・コントロール・ステーション。Twin Disc のジョイスティックコントロールが備わり、スターンファーストの着岸を容易にする。
 ライズドコックピットに戻り、スターボード側のステップから前方に螺旋階段を降りていく。バウキャビンがVバースとなるオプションCのアコモデーション。Vバースには左右2段ベッド。ベッド上の天井高は 2.2m、専用ラダーで上がる中央のスカイライトハッチ部分は2.5mと高く、4人分のベッドでも圧迫感を感じさせない。ポート側の扉はランドリー。BOSCHの洗濯機と乾燥機が縦に収まる。その横クルールームは、2段ベッドの下段をテーブルと椅子に変更。コンパクトな書斎にカスタマイズされている。そして、ミジップにはフルビームのマスターステートルーム。1.6m×1.2mの広さを持つウォークインクローゼットをはじめ、収納スペースが豊富。アイランドベッドを囲む壁や家具、部屋全体がチークで覆われ、”The Ultimate Cruising Yachts” に相応しい品格を漂わせる。P.B.(続きは雑誌で)




全長 19.9 m
全幅 5.33 m
喫水 1.52 m
重量 40 ton
エンジン 2× MAN i6-800
最高出力 2× 800 HP
燃料タンク 5,488 L
清水タンク 1,211 L
■問い合わせ先 
ファーストマリーン  
TEL: 046-879-2111
http://www.firstmarine.co.jp