イタリアのカスタムスーパーヨットビルダー「CANADOS(カナドス)」が2017年3月に公表し、
9月のカンヌ・ヨッティング・フェスティバルでお披露目した意欲的なモデル「CANADOS 428 Gladiator」は、
43フィートのセンターコンソールレイアウトのパフォーマンス・ランナバウトだ。
そこにはカスタムスーパーヨットビルダーが提案する新たなパフォーマンスボートの形があった。
カンヌで出会った真にボートを愛するオーナーたちのために造られた究極の一艇を紹介しよう。




1946年創業のスーパーヨットビルダー「CANADOS」の意欲作
遊び心とイタリアンセンス溢れるパフォーマンス・ウォータートイに惚れた!


 「CANADOS(カナドス)」は、ローマ郊外の港湾都市オスティア(Ostia)にあるカスタムスーパーヨットビルダー。ローマを流れるテヴェレ川の河口に約8万㎡の造船所を構える。他にコートダジュールとドバイにも工場を有している。ちなみにOstiaとはラテン語でテヴェレ川河口を意味し、現在の新市街をオスティア、古代ローマの港湾都市遺跡をオスティア・アンティカと呼ぶ。古代ローマ以来、2000年にわたる歴史を持つ港湾都市だ。
 「CANADOS」は歴史あるオスティアで1946年に創業した。以来、著名なヨットデザイナーとのコラボレーションにより、最大36mクラスまでのさまざまなスーパーヨットを建造してきた。その間、常に最先端の造船テクノロジーと生産プロセスを追求し、それを維持し、さらに改革する努力を怠らないビルダーだった。イタリアのビルダーとしては珍しく「CANADOS」では、すべてのパーツ類を自社内で製造している。ボートオーナー、ボートデザイナーとの綿密な打ち合わせが繰り返され、エクステリア、インテリア、そのすべてをカスタムメイドで組み上げる。そのため「CANADOS」オーナーたちの顧客満足度は極めて高い。数十年にわたり複数の「CANADOS」を乗り継ぐこともあれば、その子どもたちが新たな「CANADOS」を建造するケースも多かった。


 しかし2007年に買収され、翌年のリーマンショックなどにより「CANADOS」の業績は低迷。さらにその後も「CANADOS」の経営は悪化し、ヤードの操業も一時ストップしてしまう。2016年、そこに救いの手を差し伸べたのが現在のオーナーであるフランス人 Michel Karsenti だった。Karsentiは「Yachts Fountain」などで活躍した著名なオフショアパワーボートレーサー。世界選手権を含む数々のレースで称賛されてきた後、フロリダのYachts Magazine Groupで出版事業を手がけてきた実業家でもある。出版だけでなく、主にロシアのボートオーナー向けに「CANADOS」でのスーパーヨット建造プロジェクトを管理していたこともあり、その後の同社買収に至った。
 Karsentiの買収により「CANADOS」は復活する。オスティアで古代から受け継がれた伝統と常に最先端のテクノロジーを求めるイノベーションが融合した「CANADOS」は見事再生を果たした。彼らは「もしもスーパーヨットに既存のスーパーヨット以上のものを求めるとするならば、CANADOSに期待すべきだ」と言い切る。それは彼らの自信の表れでもある。


 2016年以降、「CANADOS」のラインナップは「CANADOS Yachts」「Gladiator Yachts」「Oceanic Yachts」の三つにカテゴライズされた。今回紹介する「428 Gladiator」は「Gladiator Yachts」ラインの43フィート艇で、「CANADOS」が過去30年間で手がけたボートの中でも最小に当たる。「Gladiator Yachts」の他のモデルはすべてカスタムベースのいわゆるメガクラス(90フィートと82フィート)で、現在はまだレンダリングの状態。つまり「428 Gladiator」は、「Gladiator Yachts」のファーストモデルなのである。
 「CANADOS」はほとんどの場合、顧客との直接取引であるカスタムスーパーヨットビルダーという性格上、これまでディーラーネットワークを持っていなかった。そのため「428 Gladiator」は、ディーラーネットワークの構築も含めて、まったく別個のプロジェクトとして計画されてきた。
 デザイナーにはイタリアのラグジュアリーオープンボート「ITAMA」のデザインを手がけてきたMarco Casaliが招聘された。「428 Gladiator」に付与されたコンセプトは、「市場で入手可能な最も豪華なデイクルーザーであること」、「現在入手可能な最高のコンポーネントと素材のみを使用すること」、「CANADOSの優れたノウハウとリソースを使用すること」、そして「同じカテゴリーで世界最高、最も完成されたボートであること」だった。
 顧客ターゲットとして考えられたのは、忙しい日常に追われる世界のエグゼクティブたち、しかもスーパーヨットのオーナーたちを含むボートプロダクツへの深い造詣のある既存のボートユーザー。当然にそこに求められるのは単なるラグジュアリーボートではない。メンテナンスの必要性が限りなく少なく、短時間で良いからボートオーナー自らの手で思いきりボーティングを楽しめるプロダクトが理想とされた。
 「CANADOS」を引き継いだ新オーナー Karsentiの経験上、潤沢な資金を持つスーパーヨットのオーナーたちは、実はクルーの管理にうんざりしているという。彼らが本当に望んでいる遊び方は、夏には2~3人の気の合うクルーと、そして冬には一人で気兼ねなく走り回れるボート遊びだった。
 そうして「CANADOS 428 Gladiator」は生み出された。2017年3月のリリース時点では、すでにプロトタイプを含め5艇が建造ラインに組み込まれ、販売予定の4艇はすでに予約済み。ハルナンバー#2~#5は、それぞれサルデーニャ島、南フランス、バレアレス諸島、マイアミへ出荷されたという。


 カンヌ・ヨッティング・フェスティバルでお披露目された艇は、インアウト仕様のVOLVO PENTA D6-400 DP(400hp)を2基掛け。このパワートレインで巡航36kt、最高速度41ktをマークする(メーカー発表値)。巡航での航続距離は約350マイル。その他、Cummins QSB6.7(550馬力)2基、サーフェイスドライブ仕様の「PERFORMANCE POWER PACKAGE」というバリエーションもあり、こちらは巡航40kt、マックス50kt、航続距離320マイルとなる。また主に米国市場をターゲットに、3基または4基の船外機仕様も進行中とのことだ。
 12種類のカラーバリーエーションのある艇体は、トランサムデッドライズ21°のディープV。強いうねりの中でも高速走行が可能であり、大きく広がったバウフレアによって全天候でのドライライドを実現している。「428 Gladiator」にとって安全性は最優先事項であり、極めて堅牢な艇体もその一つだ。
 デッキレイアウトはバウキャビンとコクピットを組み合わせたセンターコンソールタイプ。スイミングプラットフォームからキャビンドアまで、コクピット全体がフルフラットになっており、艇内の移動も安全である。面白いのはコンソール前の両舷に並ぶ2つの対面型ソファ。操船中のオーナーが、舵を取りながらゲストや家族と対面できるように工夫されている。コンソール後部にはダイネッティと大型サンパッドが並ぶ。サンパッドの下には、大きな収納スペースがあり、ここには2基のSeabobを搭載可能だ。またGPS、オートパイロット、デプスサウンダー、バウスラスター、ジョイスティックシステムは標準装備。ダッシュボードはタッチパネル式となっている。

 予約したシートライアルの当日は生憎の強風。今回のカンヌは例年になく風が強く、すでに2日もシートライアルのキャンセルが続いている。それでも「CANADOS」のイタリア人キャプテンは、我々のために舫を解いてくれた。離岸はもちろんジョイスティック。VOLVO PENTAのイージードライビング革命に感謝。港の出口はシートライアルを早々に切り上げて帰ってくる艇でごった返している。ようやく視界が広がるエリアまで出たが、強い南西風に煽られたうねりが押し寄せる。キャプテンが「ジャスト・ワン・タイム!」と大声で怒鳴る。やや乱暴にスロットルを押し込むと「428 Gladiator」は強大なフレアを持つバウを大きく上げ、うねりをもろともせずに駆け出した。ハーフスロットル、25ノット強で波頭をターン。バウのフレアが波を切り裂き、ドリフトできれいな弧を描く。……残念ながらそれ以上のトライアルは不可だったが、この海況でもどっしりとした安定感を伴う重厚な乗り味は十分に感じられた。
 パワーボートレーサー出身のオーナーが有するスーパーヨットビルダーが造り出した、イタリアンテイスト満載のパフォーマンスボート。単にラグジュアリーなパフォーマンスボートというだけでなく、走りそのものを楽しむ、本当にボートを愛するオーナーたちのための究極の一艇。日本に入れば、きっと、フレンチリビエラの風を存分に振りまいてくれることだろう。




CANADOS 428 Gladiator
全長 13.04 m
全幅 4.19 m
喫水 1.05 m
重量 8.50 ton
スタンダードエンジン 
2× VOLVO PENTA D6 – 400 HP
パフォーマンスパッケージ 
2× CUMMINS QSB6.7 – 550 HP
燃料タンク 1,050 L
清水タンク 300 L
スピード D6: Max 41 kt, Cruise 36 kt
     QSB6.7: Max 50 kt, Cruise 40 kt
■問い合わせ先 CANADOS
www.canados.com

text: PerfectBOAT Magazine
photo: CANADOS
special thanks: CANADOS
www.canados.com
[Perfect BOAT 2018年3月号掲載/]/※データは掲載時のものです]