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OTAM Millennium 58 HT
妖しく、危ない、オーラが漂っていた。マットブラックのハルに、デッキやボンネット、ハードトップはゴールドの混じったマットブラックというアウトロー的いでたち。全長18.70m、全幅4.68m、ロングノーズショートデッキの古典的黄金分割をここぞとばかりに見せるスピードボートフォルム。2014年カンヌの桟橋で初めて目にした「OTAM Millennium 58 HT」は、地中海リグリアのイタリアンパッションをアピールしていた。

13_OTAM 58HT NAVIGATION-410 1954年7月19日に、かつてのイタリア海洋国家のひとつジェノバ近郊で誕生した「OTAM(オタム)」。海を愛した4人の男たち。Organizzazione、Tigullio、Assistenza、Motoscafiの頭文字から「O.T.A.M」と名づけられた。創業初期は、カルロ・リーバ全盛期のアクアラマやアリストン等、世界のセレブリティ御用達のRIVAサービスセンターとして成功を収める。70年代には3層積層の木製ヨットを15隻建造、いまだにそのうち何隻かは元気だ。「OTAM」は伝統的な技法を使いながら素材を的確に生かし、ハイクオリティと他では得がたいパフォーマンスを示してきた。
 FRP全盛時代になり、80年代は25隻のボートをアメリカマーケットに送り出し、90年代は自身の45と55のパワーボートを建造、近年はスーパースポーツボート「Millennium」レンジの50、58、65、80をデビューさせている。2006年にはジェノバ国際空港の近くにボートヤードを新設。現在の従業員数は50名、ホームポートはサンタ・マルガリータ・リグレ。ポルトフィーノに近く、カルロ・リーバマリーナのあるラパロのマリーナに近接する、地中海リグリアのマリタイム文化の中心地だ。「OTAM」はそんなマリン文化の成熟とともに生きてきた。

15_OTAM 58HT-297 そのMillenniumシリーズのミドルレンジ58HTの最新モデルがこの「Millennium 58 HT」だ。Millenniumシリーズは「50」、「58」、「65」、「80」のレンジを持ち、100フィートも来年デビューする予定だ。
 さっそく乗り込んでみる。エンジンフードの上はサンタンベッドが敷き詰められ、サンルーフ付きハードトップのサロンは開放感に溢れている。左舷にテーブルとそれを囲むのはスーパーホワイトな本革のソファ。右舷にはウェットバーにAVユニット。フロントウィンドウはスーパースポーツらしい急傾斜を持つ1枚ガラス。スパルタンな外観に似合わず、柔らかかつコンパクトなオープンキャビンが演出されている。
 左舷前方にヘルムステーションがある。コンソールは扇形にデザインされ、パネルやトリムはカーボンブラック。センターにシムラッドのGPSモニター、左右にエンジンモニター、ZFのスロットルはコンソール左端だ。センターパネル下方にアーネソンドライブユニットの左右チルトノブ、左右のトリムタブノブが並び、ハイテックなインパクトを与えている。2人掛けパイロットシートも電動だ。頭上ハードトップにはヘルムへのベンチレーターが3箇所、その後ろにサンルーフが用意されている。
 コンパニオンウェイを降りると右舷にギャレー、左舷側にはリラクゼーションシートのゆったりとしたサロンが現れる。青いアンビエントライトが足元を照らす。グルービーなクラブサウンドが流れている。バウにオーナールーム、キングサイズベッドに専用シャワ-ルームと明るく、そして少し妖しい。左舷後方にはゲストルームが用意されている。
 搭載エンジンはCAT C32 Acert、1724hpを2基。ドライブはASDアーネソンサーフェスドライブ14L。ローラ6ペラ。この日の地中海カンヌ沖はところどころ積乱雲が発生し、晴れからいきなり南西が吹き雨が襲う不安定な気象。気温24.5℃、海象もうねりを伴う波高1.5m。だが彼らは、「パーシングより我々の方が速いぜ!」と自信ありげだ。

10_OTAM 58HT-334 デッドスロー600rpm – 6.20ノット、ドライブもトリムもダウン。1,000rpm – 10.10ノット。さほどのバウアップはない。1,200rpm – 12.00ノット、バウも下がり1,500rpm – 25.00ノット、ドライブアップ、トリムフラット、頭が後ろに引かれるような急激な加速が始まる。1,800rpm – 44.80ノット、2,000rpm – 48.00ノット。手ごろな重量感のあるステアリングを切り込む。
 バウの回頭とともに急激なインサイドバンクが始まる。ハルの波きりの良さを感じながらS字ターン。波に叩き込むがスプレーが跳ねあがることはない。1,800rpm – 33.50ノットでターン。立ち上がりの鋭さは痛快きわまりない。ハルの軽さは立ち上がりの加速やターン時のひらり感に寄与している。2,200rpm – 49.30ノット、この決してよいとはいえない海象条件での最高速度だった。
 さあ帰港だ。クラブサウンドのボリュームをあげて、パーティ気分。冷えたシャンパンがまわってくる。日に焼けた身体を水着に預けた美形たちが乗っていたら、プロバンスの海が笑顔を見せるだろう。

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OTAM Millennium 58 HT
全長 18.70 m
全幅 4.68 m
喫水 1.29 m
重量 32 ton
燃料タンク 3,000 L
清水タンク 1,000 L
エンジン 2× CAT C32 Acert
最高出力 2× 1,724 HP
スピード Max 55 kt
     Cruise 48 kt
■問い合わせ先 OTAM
http://www.otam.it

text: Kenji Yamazaki
photo: OTAM, Kai Yukawa
special thanks: OTAM
http://www.otam.it
[Perfect BOAT 2015年6月号掲載/]/※データは掲載時のものです]