1989年にデビューした初代NSX、ニュー・スポーツ・エクスペリエンス、オールアルミボディの先進技術と精密精緻なクオリティがスーパースポーツカーワールドを刺激した。2005年12月末での生産中止以来約10年の間を経て2016年秋にデビューを果したニューNSX。国内販売年間100台、納車まで数年待ちの次世代ハイブリッドスーパースポーツカー、マリンライフのブランニューパートナーとなるか。

 パフォーマンスファースト、アグレッシブプラン、エモーショナル、スーパースポーツカーの条件だ。ニューNSXの3モーター・スポーツハイブリッド=SH-AWDシステムへの期待が膨らむ。コンベンショナルなモチーフではなく斬新で未来を感じさせる革新性に惹かれるのだ。2011年北米国際オートショーでNSXコンセプトとして正式に姿を現したNSX。生産はUSAオハイオ、メアリズビルの専門工場。2008年のリーマンショックで頓挫したV10エンジンのスーパースポーツ計画、東日本大震災、その苦難ののちに登場したNSX、オハイオ製であれホンダ製、感慨深いものがある。

 改めて2016年、新型NSXとして国内デビューを果したNSX、全長4,490mm×全幅1,940mm×全高1,215mm。目の前のロープロファイルな造詣の深みを見せるそのクーペフォルムはレンダリングからの発想だけではなくレーストラックと空力の整合性を極限まで求め、近代的な美学を基に仕立て上げたカッティングエッジなスタイルと艶やかに映る。
 


低重心化のために75度のバンク角を採用しドライサンプ化を図ったV6ツインターボ507psエンジンは、ダイレクトドライブの48psのモーター+9速DCTとでパワーユニットを組みミッドに縦置きに搭載される。更に左右前輪にはそれぞれ37psのモーターが駆動の役を担う。このツインモーターユニットTMUは加速だけでなく減速時、コーナリング時にもそれぞれ個別にトルク制御をするトルクべクタリングを可能にしたスーパーハンドリング4WDマシンを誕生させたのだ。システム全体でのアウトプットは最高出力581ps、最大トルク646Nm。リチウムイオンバッテリーとAC-DCコンバーター、ECUで構成されるインテリジェントパワーユニットIPUは徹底したコンパクト化が施され、シート背後にセットされる。IPUからの直流電気は3つのモータに伝達されるべく交流に変換、更には回生に対応する3つのインバーターを搭載するパワードライブユニットPDUは、左右シートセンタートンネル下に搭載される。

 高剛性を謳うボディは初代と同様アルミ製だが、モノコックではなくアルミ押し出し材を使ったマルチマテリアルから成るスペースフレーム。適材適所に数々のアルミ素材を採用し、高剛性を実現する。CFRPはフロアパネルに採用し、フラットボトムでボディ下部を整流。さらに日本仕様はルーフもCFRPが標準だ。車重はスポーツカーとしては重量級だがバッテリーとハイブリッド4WDシステム搭載を考えれば1,780kgに抑えているといえる。サスペンションはF/インホイール・ダブルウィッシュボーン、R/インホイール・マルチリンク、ブレーキはブレンボ。その走りを体感してみたくなる。



 ドアノッチをプルタッチする、軽やかにドアが開く。太いグリップ感の異型楕円のステアリングホイール、深く低い着座位置のスポーティな本革のドライバーズシート、中央部はアルカンタラ仕様。バイザーの効いたメーターナセル。奥のスピード&レブ等のTFTディスプレイ、ドライブモードで表示や色が変化する。レッドのエンジンスタート&ストップボタン。やや幅広のセンタートンネルから伸び上がるT字形状のセンターコンソール、上部にはナビなどのインフォメーションモニター、その下にドライブモード切替のダイヤル、ミッションPボタン、リバースプル、そしてドライブボタン。さらにパーキングブレーキPボタン、ブレーキホルダーが並ぶ。

 ドライブモードはクワイエット、EV走行も約2km程度可能、スポーツ、スポーツ+、サーキットモードのトラック。それぞれのモードでエンジンレスポンス、変速スピード、シャシー特性が制御される。乗り込みシートに座り込む。低い着座、小径のステアリング、ABぺダルもぴったりフィットする。始動ボタンを軽くプッシュ。低く乾いたドラミングノートが響く。モードはスポーツ、トルクフルで軽やかな走りだし。フロントのTMUが73Nm×2=146Nmのトルクを前輪に瞬時に伝え、同時にリアのモーターが148Nmのトルクをリアの駆動に働かす。ツインターボの過給圧ラグを覆い、圧倒的な加速に活かされている。低く広々としたフロントウィンドウからの視界。モードをスポーツ+に、スロットルを踏み込んだ瞬間エキゾーストノートが高周波を伴う咆哮に変わり強烈な加速Gに乗る。タービン過給圧のウエストゲートからの噴出音が気分を高揚させる。V6ツインターボエンジン507ps+3モーター=システム581psが4輪を制御駆動する。景色がワープしアニメの画像のように左右に流れる。それはライバル他車、メルセデスAMG-GTSをも陵駕する立ち上がり加速を見せる。


 高速から山岳ワインディングへ向かう。2速から8速までクロスレシオの9速DCTはオートマティックでの変速速度はポルシェ911-GT3RS同等の電光石火。すべてのコーナーをかなりの速度でクリアしている。コーナーインではアンダーステアが出る状況のはずが、ステアリングを切り込むことなくトレースしている。タイトコーナーのコーナーインからの立ち上がりで不用意にスロットルを踏み込みオーバーステア状況に入りこんだ時も、ステアリングを脱出方向に向けるだけでことがすむ。フロントモーターTMUが左右のトルク配分を、時には片方をネガティブにトルク配分してシームレスに最適なコーナーリングフォームを作り上げ、常に最適な旋回速度でコーナーをクリアしていくのだ。トルクべクタリングの成果だ。ドライバーのアクセル入力、ブレーキング、蛇角、全てをセンサーからコンピュータが受け取り制御する。その制御はドライバーに違和感を及ぼすものではない。快適痛快のドライビングの範囲が広がった。ほどよい硬さに秘められたしなやかさをもつ足回りは磁性流体ダンパーの働きによるものが大きいだろう。ハイテックマシンの新型NSX、パワーとトルクを高効率領域で制御し、マニューバビリティを高次元で統合させる、知的なメカマシンなのだ。異次元のマンマシンのドライビングエクスタシーがそこにはある。

 外装色は赤、黒、白、シルバー、ホワイトパール、グレイ、レッドパール、ブルーパールの8色。選ぶならブルー、ヌーベルパール。カリブの海の色を思い出させるブルーパールのボディ色、インテリアはレッドレザー、やはり海がお似合い、情熱のコーストルートを走りたくなる。

 崖の上のシービューカフェに彼女がいた。日暮れ時のウィンドウサイド席。神戸港が見下ろせる。柔らかい日差しが端正な横顔をシルエットのように浮き上がらせている。演劇ステージのハードな仕事が終わると彼女はこの場所にくる。テーブルのコースターの上にはカクテル「ブルーコラーダ」が真夏のカリブの煌きを漂わせている。

 「やあ、気分は夏だね。ここだと思った」
 「そ、今は私だけ夏気分なの……」
 「ボクも気分は夏、カリブの海まで行かないか、迎えにきたんだ」
 「うそでしょ……」
 「カリブ海色のクルマでね」
 「コーストルートドライブ……あなたのマリーナまで……」  P.B.



HONDA NSX

全長 4,490 mm
全幅 1,940 mm
全高 1,215 mm
ホイールベース 2,630 mm
車両重量 1,780 kg
駆動方式 4WD(SPORT HYBRID SH-AWD)
エンジン型式 V型6気筒ツインターボ
総排気量 3,492 cc
ボア×ストローク 91.0 mm × 89.5 mm
エンジン最高出力 507 PS(373 kW)/ 6,500 – 7,500 rpm
エンジン最大トルク 550 Nm / 2,000 – 6,000 rpm
モーター F×2(H3) R×1(H2)/ 260 V
モーター最高出力 F(H3) 37 PS(27 kW)/ 4,000 rpm (1基あたり)
         R(H2) 48 PS(35 kW)/ 3,000 rpm
モーター最大トルク F(H3) 73 Nm / 0 – 2,000 rpm(1基あたり)
          R(H2) 148 Nm / 500 – 2,000 rpm
システム最高出力 581 PS(427 kW)
システム最大トルク 646 Nm
トランスミッション 9速 DCT
タイヤ F: 245/35ZR19 93Y R: 305/30ZR20 103Y
車両本体価格 23,700,000 円(税込)
問い合わせ先 HONDA お客様相談センター
TEL: 0120-112010
http://www.honda.co.jp/NSX/


text: Kenji Yamazaki
photo: HONDA MOTOR
http://www.honda.co.jp
Perfect BOAT 2017年3月号掲載]/※データは掲載時のものです